てんかんがある高校生が学校を続けるために決めておきたいこと

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発作そのものは薬で落ち着いている。それでも、授業中に起きたらどうなるか、体育や実習に出てよいのか、修学旅行はどうするのか。決まっていないことが多いまま、学校生活が進んでいく。

この記事では、てんかんのある高校生が学校と何を決めておけばよいかを、制度の裏づけとあわせて整理します。先に書いておくと、学校に伝えることは選択肢を狭める行為ではなく、増やす行為です。伝えていないと、学校は安全側に振り切った判断しかできません。

記載内容は2026年10月時点で、制度に関する部分は末尾に挙げた公的機関の資料にもとづいています。発作の型や活動の可否については主治医の判断に従ってください。

結論:学校に伝えることが、選択肢を増やす

  1. 学校に配慮を求める法的な根拠がある。2024年4月1日から、事業者による合理的配慮の提供が努力義務から法的義務になった
  2. 発作時の対応を文書で決めておくと、その場の判断で一律に止められることが減る
  3. 行事や実習は「参加の仕方を変える」交渉ができる。全部か不参加かではない
  4. 欠席が重なる場合は、教科ごとの欠課時数を数える。単位は教科ごとに判定される
  5. 運転免許については、取得や更新の際に質問票への正確な記載が求められる。進路を考えるうえで早めに知っておく

学校と決めておきたいこと

発作が起きたときの手順を文書にする

いちばん効くのは、発作が起きたときに誰が何をするかを紙に落としておくことです。これがないと、居合わせた教員がその場で判断することになり、毎回対応が変わります。

決めておく項目 書き方
発作の見え方 どういう様子になるか。動きが止まるだけなのか、倒れるのか。周囲から見て何が起きているか
その場でやること 安全の確保、周囲の物をどける、時間を計る。やってはいけないことも書く
救急車を呼ぶ目安 主治医と相談して決めた基準を書く。ここを決めておかないと毎回呼ばれる
保護者への連絡 誰がどの順番で連絡するか。連絡先を複数書く
発作後の休養 どこで何分休むか。そのまま下校するか、授業に戻るか
休養時間の出席扱い 保健室で休んだ時間を欠課とするかどうか。ここを同時に決める

最後の行を忘れないでください。発作のあと休む配慮を受けていても、その時間が欠課として記録されていれば単位が危うくなります。対応を決める話し合いのなかで、出席の記録まで一緒に決めてください。

配慮を求める根拠

障害者差別解消法が改正され、内閣府の案内によれば2024年4月1日から、事業者による合理的配慮の提供がそれまでの努力義務から法的義務になりました。文部科学省が定めた対応指針は、この「事業者」に学校法人なども含まれるとしています。つまり私立学校も合理的配慮を提供する法的義務を負い、公立学校は行政機関として、それ以前から義務の対象です。

話し合いが進まないときは段階を上げられます。学年主任や管理職、次に設置者である教育委員会または都道府県の私学担当部署、さらに内閣府が設けている「つなぐ窓口」です。つなぐ窓口は、障害者差別解消法に関する質問や、配慮を求めたのに理由なく断られた場合の相談を受け付け、適切な窓口へつなぐ調整も行っています。

誰まで知らせるか

全員に知らせたくないという気持ちは当然ですが、知らない教員の授業で発作が起きるのがいちばん危ないという事情があります。落としどころとして、次のような区切りで相談している例があります。

  • 担任、養護教諭、学年主任、管理職には手順書を共有する
  • 授業を担当する全教員には、手順書の要点のみを共有する
  • 体育、理科、家庭科など危険が伴う授業の担当者には詳しく伝える
  • クラスメイトには伝えない。または、本人が選んだ数人にだけ伝える

行事と実習をどうするか

ここで大事なのは、参加するか・しないかの二択で考えないことです。やり方を変えれば参加できる活動は多くあります。

場面 起きがちな扱い 交渉できる形
水泳 一律で見学 主治医の判断を前提に、付き添いや浅いレーンでの参加、見学レポートでの代替
高いところでの作業 参加不可 地上でできる役割に替える。評価の対象を調整する
調理実習・理科の実験 見学のみ 火や薬品を扱う工程を他の生徒と分担し、別の工程を担当する
宿泊行事 不参加を勧められる 服薬の管理方法、就寝時間の確保、部屋割り、夜間の体制を事前に決めて参加する
長距離走・球技 全面的に見学 強度や時間を調整して参加する

宿泊行事でとくに効くのは睡眠時間の確保です。消灯後に起きている生徒が多い部屋だと睡眠が削られます。部屋割りの段階で相談しておくと、当日の負担が大きく変わります。

評価の点も先に確認してください。見学になった授業の成績がどう付くのか、代替課題で評価されるのかを決めておかないと、学期末に成績の話で揉めます。

欠席が単位に響く前に数える

全日制高校では、各教科の授業にどれだけ出席したかが単位認定の条件になっています。基準は学校ごとに定められていて、欠課が一定の割合を超えるとその教科の単位は認定されません。

確認するのは次の4点です。

  • 教科ごとの欠課上限と、現時点の欠課時数
  • 遅刻や早退が何回で1回の欠課になるか
  • 保健室で休んだ時間の扱い
  • 欠課分を補う課題や補習があるか。あるなら条件と締切

危ういのはたいてい一部の教科に偏っています。数えれば、どうしても無理な日にどの授業を落とすかを選べるようになります。学年末の3か月前には、単位の見通しを担任と確認してください。

学校を続ける形を変える場合

方法 どういうものか 注意する点
今の学校に残る 配慮を受けながら続ける 教科ごとの欠課に余裕があるかで判断する
転入 今の学校に在籍したまま別の学校へ移る 取得済みの単位や在籍期間を引き継げることが多い
編入 退学したあとに別の学校へ入り直す 空白の期間ができる。先に転入を検討する

転入は本人や保護者が直接進めるものではなく、今いる高校が窓口になります。新潟県教育委員会が示している流れでは、在籍校が転学願を受けて転入希望先に事前の連絡を取り、受け入れが可能な場合に文書で転学照会を行うとされています。手続きの詳細は都道府県や学校によって異なりますが、在籍校を飛ばして進められない点は共通しています。

通信制高校の仕組み

文部科学省の案内によれば、通信制高校の学習は添削指導、面接指導(スクーリング)、試験の3つで進みます。レポートの標準的な回数は教科ごとに決まっていて、国語や数学は1単位あたり3回、体育は1回。面接指導の標準時間数も、国語や数学は1単位あたり1単位時間、理科や芸術や外国語は4単位時間、体育は5単位時間です。卒業には74単位以上の修得と、特別活動を30単位時間以上受けることが必要とされています。

また同省の案内によれば、多様なメディアを利用した学習で報告課題を提出すると、面接指導の時間数のうち10分の6以内が免除され、複数のメディアを併用する場合は10分の8以内まで免除できます。登校の負担を制度上減らせるということです。実施しているかは学校によって異なるため、資料請求や個別相談で確認してください。

確認しておきたいのは次の点です。

  • メディア学習による面接指導の免除を実施しているか
  • スクーリング中に発作が起きた場合の体制。保健室や休める場所があるか
  • スクーリングを欠席した場合の振替日があるか
  • 体育のスクーリング(1単位あたり5単位時間)の内容と、代替の可否
  • 特別活動の30単位時間をどのような形で消化するか
  • 転入を受け付けている時期

4つ目は見落とされやすい点です。体育は面接指導の標準時間数が最も多い教科なので、内容を先に聞いておく価値があります。

登校日数を自分で選べる学校の例として、N高等学校があります。ネットで学習を進めるコースから週5日通うコースまで分かれているため、どの程度の登校なら続けられそうかを考える材料になります。

進路を考えるとき

運転免許について先に知っておく

進路の選択に関わるため、早めに知っておいたほうがよいことがあります。愛知県警察の案内によれば、統合失調症、てんかん、再発性の失神、無自覚性の低血糖、そううつ病、重度の眠気の症状を呈する睡眠障害、認知症などで安全な運転に支障を及ぼすおそれがある場合、免許試験に合格しても免許が取得できないことや、運転免許が取り消されることがあります。

免許の取得や更新の際、公安委員会は質問票を交付することができ、同案内では質問票には正確に記載して必ず提出しなければならないとされ、虚偽の記載には罰則が定められています。「はい」と回答した場合は、職員が症状について具体的に聞き取る流れになります。

つまり、隠して通すという選択は取れません。実際にどう扱われるかは症状の状態によるため、進路を決める前に主治医に確認し、必要なら運転免許試験場の相談窓口に問い合わせてください。車の運転が前提になる職種や地域を考えている場合は、この確認を先にやる価値があります。

就職と進学

就職の際に病気を伝えるかどうかは本人が決めることです。伝える場合は、発作の頻度と、仕事のうえで必要な配慮を具体的に書いて示すほうが話が進みます。障害者手帳を取得している場合は、障害者雇用の枠を使う選択肢もあります。

よくある質問

学校に伝えると行事に出られなくなりませんか

伝えていないほうが、いざ発作が起きたときに一律で止められる可能性が高くなります。伝えるときに、主治医の判断とあわせて「この条件なら参加できる」という形で出すと、参加の方向で調整できます。

発作後に保健室で休んだ時間は出席になりますか

学校によって扱いが異なります。発作時の対応を決める話し合いのなかで、出席の記録をどうするかまで含めて確認してください。

修学旅行は参加できますか

服薬の管理、就寝時間の確保、夜間の体制を事前に決めれば参加できる場合があります。主治医に相談し、学校に文書で示して調整してください。部屋割りの段階から相談するのが実務的です。

担任以外にも伝えるべきですか

授業を担当する教員には、少なくとも手順書の要点を共有しておくほうが安全です。クラスメイトに伝えるかどうかは本人が決めてよい部分です。

通信制高校に移ると卒業資格は変わりますか

変わりません。通信制高校を卒業して得られるのは、全日制と同じ高等学校の卒業資格です。

まとめ

てんかんがあって高校を続けるとき、最初にやるのは発作時の対応を文書にすることです。発作の見え方、その場でやること、救急車を呼ぶ目安、保護者への連絡、発作後の休養場所、そして休養した時間を出席として扱うかどうかまでを一枚に書いて共有してください。

学校への相談には根拠があります。2024年4月1日から事業者による合理的配慮の提供が法的義務になり、文部科学省の対応指針では学校法人もこの事業者に含まれるとされています。進まないときは教育委員会や私学担当部署、内閣府の「つなぐ窓口」に相談できます。

行事や実習は参加か不参加の二択ではありません。工程の分担や役割の変更で参加できる形を探してください。宿泊行事では睡眠時間の確保を部屋割りの段階から相談すると負担が変わります。

欠席が重なるなら、教科ごとの欠課時数を数えてください。間に合わない見込みが立ったら、学年末の3か月前までに転入の相談を始めるのが現実的です。通信制高校を検討するなら、メディアを利用した学習で面接指導の時間数を10分の6以内、複数併用なら10分の8以内まで免除できる仕組みがあることを知っておいてください。

進路については、運転免許の取扱いを早めに確認しておくことをすすめます。質問票への正確な記載が求められ、虚偽の記載には罰則があります。主治医に相談したうえで、必要なら運転免許試験場の相談窓口に問い合わせてください。

この記事で参照した資料

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English Hub 編集部

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