英検(実用英語技能検定)は、英語の4技能を測る試験として日本国内で広く知られている検定です。2022年度実施分の合計志願者数は400万人以上にのぼり(※)、中学・高校(高専を含む)の生徒を中心に幅広い世代が受験をしています。
従来は、マークシートを使った筆記テストや面接試験のみが行われていましたが、近年ではコンピューターを活用した受験形式も登場しています。
この記事では、コンピューター形式の「英検S-CBT」の試験概要をはじめ、従来型の英検との違いも解説します。
従来型の英検とS-CBTのどちらを受けるべきか迷っている方や、それぞれの違いを比較したい方は、ぜひ参考にしてみてください。
※参照:公益財団法人 日本英語検定協会|受験の状況
※この記事は、2024年4月時点の調査内容をもとに作成しています。最新情報については、英検のウェブサイト等をご確認ください。
目次
英検S-CBTとは
英検S-CBTは、コンピューターを使用して英語の4技能を測る受験形式です。2021年3月までは、コンピューター形式の中でも「英検CBT」と「英検S-CBT」の2種類があり、マークシートへの記入、またはマウス操作で答えを選ぶ解答方法の違いによって試験自体が分かれていました。
その後、コンピューター試験におけるマークシートへの解答の記入が廃止され、2021年4月からは名称が「英検S-CBT」に統一されています。
英検S-CBTと従来型の英検の違いは?
従来型の英検と比べて、英検S-CBTには下記3つの特徴があります。
- コンピューターを使用した受験形式
- 一日で4科目の試験が完了する
- 受験日の選択肢が豊富
試験の実施方法には違いがあるものの、英検S-CBTで取得した級やスコアは、従来型の英検と同様に扱われます。また、試験の問題形式や難易度にも違いはありません。
英検S-CBTと従来型英検の比較表
英検S-CBTと従来型の英検の項目ごとの比較については、下記の表を参考にしてください。
英検S-CBT | 従来型英検 | |
試験日程 | 原則、毎週土日 (会場によっては平日も実施 ※1) |
年3回 |
受験級 | 3級、準2級、2級、準1級 | 5級、4級、3級、準2級、2級、準1級、1級 |
試験形式 |
コンピューター形式 (一日で4科目を受験) |
一次試験:筆記形式 二次試験:面接形式(一次試験合格後、別日に実施)※2 |
科目ごとの解答方法 |
リーディング:マウス操作 リスニング:マウス操作 ライティング:下記いずれかを選択 ①解答用紙への手書き ②キーボードでのタイピング入力 スピーキング:マイクでの吹き込み式 |
リーディング:マークシートへの記入 リスニング:マークシートへの記入 ライティング:解答用紙への手書き スピーキング:試験官との面接 |
検定料 |
3級:7,800円 準2級:9,100円 2級:9,700円 準1級:10,600円 |
5級:4,100円 4級:4,700円 3級:6,900円 準2級:8,500円 2級:9,100円 準1級:10,500円 1級:12,500円 ※個人/団体での本会場受験の場合 |
受験会場 | 申込時に会場を選択可 | 受験地のみの選択で、会場は指定不可 |
※1:級や受験する地域によっては毎週実施でない場合があります。
※2:5級・4級では、面接試験はなく、スピーキングテスト(オンライン)を受験できます。ただし、スピーキングテストは級認定には影響せず、一次試験の結果のみで合否が判断されます。
※表内に記載されている金額はすべて税込表記です。
英検S-CBTのメリット
コンピューター形式の英検S-CBTにはどのようなメリットがあるのでしょうか。ここでは3つの主な利点を紹介します。
4科目の試験を一日で受けられる
英検S-CBTの場合、リーディング・リスニング・ライティング・スピーキングの4科目すべての試験が一日で完結します。一方、従来型の英検は、一次試験の筆記テストを受けた後、合格者のみが二次試験(面接)に進む形式のため、スピーキング試験は別日での実施となり、合計2日が必要です。
受験に向けて予定を空けておいたり、試験会場までの移動などで時間と手間を取られたりすることを考えると、「一日で4科目の受験を済ませてしまった方が楽」と考える方も少なくないでしょう。英検S-CBTは、学校行事や部活動で忙しい中学・高校生や、仕事の都合に合わせてスケジュールを立てたい社会人まで、幅広い世代にとってより負担の少ない受験形式と言えます。
試験日程の選択肢が多く、受験会場も指定可能
英検S-CBTの利点としては、試験日程の選択肢の豊富さも挙げられます。原則、毎週土日に受験の機会があり、試験会場・受験級によっては平日の受験も可能です。また、一部の会場・級では、18時以降に試験開始となるタイムスロットも用意されているため、日中は都合がつかず、夜の時間帯しか空いていないという方でも受験のチャンスが広がります。
年に3回実施されている従来型の英検では、直近の試験への申し込み期限を過ぎてしまうと、次の試験まで最大5ヶ月程度の期間が空いてしまう場合があります。英検S-CBTの試験日程の多さは、級を取得するまでの目標期限が迫っている方にとって、特に大きなメリットになるでしょう。
また、従来型の英検では、受験者が選択した都道府県や市単位の受験希望地に応じて協会側が試験会場を決定する仕組みとなっていますが、英検S-CBTの場合は、申し込みの時点で自らテストセンターを指定することができます。
同一の検定期間中に同じ級を2回受験できる
英検には、下記の通り1年に3回の検定期間があります。
- 第一回:4月~7月
- 第二回:8月~11月
- 第三回:12月~3月
従来型の英検は、各検定期間中に1回ずつ開催されていますが、英検S-CBTの場合は、同一検定期間内であっても同じ級を2回受験できます。従来型英検と併願すれば、受験のチャンスは年に最大9回まで広がり、複数の選択肢から試験日程を選びやすいのが特徴です。
英検S-CBTのデメリット
受験者にとってメリットの多い英検S-CBTですが、受験形式を選ぶ際は以下の2点も認識しておきましょう。
英検S-CBTの受験級は3級~準1級のみ
コンピューター形式の英検S-CBTで受験できるのは、3級、準2級、2級、準1級の4つの級のみです。5級、4級や、最も難易度の高い1級には対応していないので注意してください。ただし、5級、4級には二次面接試験がなく、自宅で受けられるオンラインのスピーキングテストの実施となるため、試験会場に赴いて受験をするのは一日で済みます。
同じく従来型の英検でしか受けられない1級の場合は、二次試験の受験地が全国14箇所(札幌、仙台、横浜市、千代田、新宿・豊島、世田谷、新潟、名古屋、京都、梅田、天王寺、広島、福岡、沖縄本島南部)に限られており、これらの地域以外に住んでいる方は県をまたいで試験を受けに行く必要があります。
英検S-CBTは従来型英検と比べて検定料がやや高い
受験の機会が多くチャレンジしやすい英検S-CBTですが、いずれの級でも従来型の英検と比べて検定料が高く設定されています。金額は級ごとに異なり、最小で準1級の100円差、最大で3級の800円差です。
1回あたり数百円単位の差額だったとしても、繰り返し受験をするうちに、結果的に大きな違いが生まれる場合もあります。一方で、一日で試験が完結する英検S-CBTを受ける際、従来型のように別日に実施される二次面接のために試験会場へ足を運ぶ手間や交通費がかからないメリットを踏まえると、そこまで気にする必要はないという考え方もあるでしょう。
英検S-CBT受験時の注意点
ここからは、英検S-CBTを初めて受験する方向けに2つの注意点を紹介します。
コンピューター形式での解答に慣れておく
普段からノートやペンを使って英語学習をしている場合、はじめはコンピューターで試験を受けるスタイルに戸惑うこともあるかもしれません。特に、画面上に表示されるリーディング問題を読んだり、マイクに向かってスピーキング問題の解答を吹き込んだりするのは、慣れていなければ多少のやりづらさを感じるものです。試験当日に慌てないためにも、事前にコンピューター形式での解答を想定した練習をしておくとよいでしょう。
英検S-CBTのウェブサイトでは、本番同様の試験画面の操作ができる体験版コンテンツが用意されています。マウスクリック操作や問題の見え方などの確認のために、ぜひ活用してみてください。
また、自宅のパソコンを使って英検S-CBTの模試を受けられる専用教材も発売されています。これらの問題集は、本番の環境を意識した試験対策を重視する方におすすめです。
試験当日の持ち物に注意
英検S-CBTの試験当日に必要な持ち物は以下の3点です。
- 受験票
- 身分証明書
- 筆記用具(HBの黒鉛筆またはシャープペンシル、消しゴム)
英検S-CBTの受験票は、オンラインでの申し込み完了後に専用サイトからダウンロードできます。試験当日は、ダウンロードした受験票を印刷した上で持参する必要があり、スマートフォン等での受験票の提示は無効となるため注意してください。
学生証・生徒手帳・健康保険証・運転免許証・パスポートなどの身分証明書も原本を提示しなければならず、電子学生証や、スマートフォンで撮影したデータは認められません。
英検S-CBTと従来型英検のどちらを受けるべき?
これまで紹介してきた英検S-CBTと従来型英検の違いを踏まえた上で、それぞれの受験形式がどのような人におすすめなのかをまとめました。
英検S-CBTがおすすめなのはこんな人
4科目すべての試験を一日で終わらせたい人
一日で4科目の試験が完結する英検S-CBTは、受験のためのスケジュールを確保したり、2回にわたって会場に足を運ばなければならないのが面倒な方にとって、負担の少ない受験形式と言えます。
また、従来型英検の一次試験で仮に不合格となった場合、スピーキング力を測るための二次試験には進めませんが、英検S-CBTであれば、スピーキングを含む4技能すべての実力を試すことができるのも利点の一つです。
目標の級を取得するまでの期限が迫っている人
英検S-CBTでは、同一の検定期間内(4月~7月/8月~11月/12月~3月)で2回まで試験を受けられるため、従来型の英検と比べてより多くの受験機会が確保されています。
合格を目指す級の目標取得期限まで時間がないという方は、受験のチャンスが広がる英検S-CBTを活用してみてください。
従来型の英検がおすすめなのはこんな人
コンピューターの操作が苦手な人
「コンピューターの操作に苦手意識がある」「パソコンの画面と長時間向き合うのは苦痛」という方には、紙とペンを使って行う従来型英検の受験がおすすめです。
ただし、英検S-CBTでのリーディング・リスニングの解答は、簡単なマウスクリック操作のみで行えます。ライティングでキーボードを使ったタイピング形式の解答をする場合も、1分間で30文字程度の入力ができれば支障はありません(ライティングのみ、解答用紙への手書きも選択可)。むしろ、タイピング形式のライティングでは、語数の自動カウントやコピー&ペースト機能が使えるため、手書きで解答するよりも文章を容易に修正できるというメリットもあります。
機械に苦手意識がある方でも、まずは「英検S-CBT体験版」のページで実際に受験時の操作を試してみてから決めるとよいでしょう。
対面形式でスピーキングの面接試験を受けたい人
スピーキング試験を受ける際、「実際に面接官が目の前にいた方が自然に話せて実力を発揮できる」という場合は、対面形式で試験を行う従来型の英検を選択してください。
英検S-CBTのスピーキングテストは、マイクのついたヘッドセットを着用し、流れてくる音声を聞き取った上で質問に対する解答を吹き込む録音式です。この点についても、事前に体験版で試験の雰囲気を確認しておくことで、自分に合った形式を選択することができます。
まとめ
従来型の英検は1年に3回のみの実施ですが、英検S-CBTの登場によって受験の機会が大幅に増えました。一日で4科目すべての試験を完結できたり、複数の受験日程の中からスケジュールを選べたりと、英検S-CBTならではのメリットも複数あります。
今回ご紹介した、英検S-CBTと従来型英検の違いを踏まえた上で自分に合う受験形式を選び、目標級の取得に向けてチャレンジしてみてください。
【参照ページ】公益財団法人 日本英語検定協会|英検S-CBT
【関連ページ】英検二次面接試験対策におすすめのオンライン英会話16選
【関連ページ】英語試験における障がいのある方向けの配慮まとめ(英検・TOEIC・IELTS・TOEFL iBTほか)
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