英会話スクールに入学はしたものの、当初のやる気が続かず、消化不良のまま通学をあきらめた、という話を耳にすることがあります。仕事や学校のため、趣味としてなど、入学した理由は人によって異なっても、通学の「モチベーションを維持する」必要性は、学習の成果を得たいすべての受講生に共通です。
では、英会話教室に通うモチベーションを失って学習に支障をきたすことがないように、どのようなポイントを押さえておけばよいでしょう。
1. モチベーションの2つの種類
まずは、そもそも「モチベーション」とは何なのかを見てみましょう。第二言語習得理論(SLA)では、モチベーションを大きく2種類に分けて考えます。
- 統合的モチベーション
習っている言語(ここでは英語)が話されているコミュニティの一員になりたい、という言語習得そのものを目的とするモチベーション - 道具的モチベーション
言語を習うことで得られる、学校や仕事でのメリット(受験に合格、会社で昇進など)が中心であるモチベーション
研究では、統合的なモチベーションで外国語を学んでいる人のほうが、道具的な理由で学んでいる学習者よりも上達が早いことが確かめられています。
英会話スクールに通学するためのモチベーションも、「統合的/道具的」な観点から考えることができます。「講師やクラスメートと楽しく英語で会話したい」というのが統合的、「学校や仕事で有利になるための手段」として通うパターンなどが道具的だと言えるでしょう。
前者のタイプは、通学そのものが楽しいプロセスなのに対し、後者は「すぐに結果が出ない」ようなときに、通学がおっくうになりがちです。では、統合的なモチベーションをアップさせて、通学自体が楽しくなるコツを考えましょう。
2. モチベーションを維持するための5つのポイント
①時間に余裕をもって登校する
仕事が忙しく、レッスンに行くのがいつも時間ギリギリだったり、開始5分過ぎになってしまうという人もいるでしょう。時には仕方がない場合もあると思いますが、常に余裕のない状態で教室に駆け込んでいると、モチベーション低下につながりかねません。
レッスン開始より早く登校することで、予習・復習はもちろん、他の生徒やスタッフと会話や情報交換、レッスン内容についての質問などをする時間的・心理的な余裕が生まれます。特に日本語での「スモールトーク」は、レッスンで積極的な会話をするために欠かせません。
例えば、新しいクラスメートがいたら、出身地や職業、趣味や家族構成などについて積極的に話しかけ、また自己紹介もすませておきましょう。それによって、レッスン中に「どんな人なのか分からない」という気まずい雰囲気を避けることができます。また、最近何をしたかなどをお互いに知っておけば、それらをレッスン中の発話のために活かすことが可能になります。特に初心者が多いクラスでは、レッスン中にすべてを英語で伝えようとするより、あらかじめ日本語でコミュニケーションをとっておくと効率的です。
このように、英会話スクールとは「英語を学ぶ」ためだけの場所ではなく、「コミュニティ」であるということを認識しておくことで、通学自体が楽しくなるはずです。
②講師についてよく知る
レッスンを楽しくするためには、講師のバックグラウンドについて知っておくことも大切です。例えば講師が、アメリカ・オハイオ州出身のネイティブだったと仮定します。ここで、漠然と「アメリカ」とだけ考えるのではなく、「オハイオってどんな所?」というように、興味を掘り下げてみましょう。
アメリカは多数の州(states)によって構成されている国ですが、それぞれに独自の歴史・伝統といったカラーがあることも特徴です。「アメリカ出身の講師」とだけ考えるよりも「アメリカのオハイオ州出身の講師」として接する方が、より会話の幅が広がります。
たとえば、ウィキペディアなどを使って「オハイオ州」について簡単にリサーチをすることで、講師と話せるトピックを大きく広げることができます。オハイオでは、「オハイオ州立大学(Ohio State University/OSU)」が規模の大きさや日本との交流の深さから有名です。また、大統領選のたびに注目される「スイング・ステート」としても知られているので、政治や経済の話にまで発展させることができます。
このように、講師を「ネイティブスピーカー」とだけ見るのではなく、具体的な出身州(イギリスならばイングランド、ウェールズ、スコットランドなど)について軽く知っておくだけで、レッスンで話せるトピック数が格段に上昇します。その知識収集を通して興味を深めることで、英語をスクールで学ぶモチベーションの向上にもつながるでしょう。
③ “So-so” は避けてみる
日本人学習者が多用しがちなのが “so-so” (まあまあです)という表現です。例えば “Do you like reading?” などと話をふられたときに、思わず “so-so” と返してしまうパターンがよく見られます。
断定口調を避けたがる日本文化では、質問に対し「まあまあです」と答えても問題ありません。しかし英語圏では “so-so” だけで答えてしまうと「あまり興味がないです」という意味になってしまい、結果として「質問そのものへの拒絶」とまで受け取られかねません。そうなると、コミュニケーションを広げるチャンスを捨ててしまうことになります。
そのため、レッスンでも日常会話でも、できるだけ “so-so” の使用は控えましょう。代わりに、読書が好きか聞かれたら “Yes, I’m a big fan of Haruki Murakami” や “Not really. I like reading comic books, though” など、相手の質問に対して真剣に答えていることがわかる返答を心がけてください。そうすれば、他のクラスメートにとっても “Oh, I like Murakami, too! His 1Q84 is a great book” や “I love ONE PIECE. How about you?” のように話を展開させられるきっかけともなります。こうして会話を深めることが、講師やクラスメートの連帯感を促進し、ひいてはスクールへの統合的モチベーションの強化となります。
④資格試験を受けてみる
今までは、「英語を使うこと自体が楽しい」という統合的モチベーションについて見てみました。その一方で、「試験・仕事のため」といった道具的モチベーションも無視すべきではありません。
レッスン自体が楽しく感じられても、「本当に上達しているのだろうか?」という疑心暗鬼から自信喪失、ひいてはモチベーション低下に陥る場合も考えられます。そのためには、定期的にTOEICや英検などの資格試験を受けることがおすすめです。
テストを受けることで、自分の実力を客観化することができます。例えば「リーディング力が弱い」と分かったら、そこを克服するためのコースに変更したり、また自宅学習でボキャブラリービルディングに取り組んでみましょう。その際に、スクールの講師やスタッフから様々なアドバイスを受けることも可能です。自分の英語スキルを「テストの数値」として知ることで、よりスクールから得られる価値が増え、それが通学する意義を高めることとなります。
⑤「元を取る」という意欲を忘れない
英会話スクールに通うためには、ある程度のお金を払う必要があります。ここで「高いお金を払っているのに…」という不満がたまっては、勉強にもポジティブに取り組むことができません。逆に「お金を無駄にしない!」という意識もモチベーションの維持につなげましょう。
きちんとレッスンに出席すればするほど、真剣に会話に加われば加わるほど、払った金額の元を取っていると考えられます。例えば1レッスンで、予習をおこたったために50ワードしか話せなかった場合と、しっかりと予習して150ワードを話した場合、後者の価値は前者の3倍になる計算です。忙しくても最低限の予習はすませ、1レッスンの価値を上げることで、英会話スクールへの投資(受講料)からのリターン(発話量)を上げることができます。
「発話量」というリターンを最大化するためにも、①~④で挙げた「早めの通学」や「講師についてもっと知る」、あいまいな答え方よりも「明快な意見表明」、「テストを定期的に受ける」といった取り組みを実行してみましょう。それがスムーズな発話につながり、同時に「お金を払う価値がある」という意識が生まれ、モチベーションを維持するパワーとなります。
まとめ
今回は、英会話教室に通学するにあたってのモチベーション維持について5つのポイントをご紹介しました。「レッスンで “so-so” は避ける」などの小さな努力によって会話が盛りあがり、またクラスメートへの理解も深まり、結果としてスクールに通学することが楽しくなります。日々の何気ない心がけが、結果的には「英語力アップ」という大きなリターンとして自分に返ってくることを忘れず、学習を楽しみましょう!
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茂呂 宗仁
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