英会話と言うと「外国人のネイティブ講師に教わるもの」というイメージが強い一方で、「バイリンガル日本人講師」の存在をセールスポイントにしているスクールも見られます。今回は、あえて日本人バイリンガル講師を選ぶことから得られるメリットをご紹介します。英会話を始めることに不安なビギナーレベルの人でも、自信を持って英会話をスタートできるよう、日本人講師ならではの長所を考えてみましょう。
1.「日本人講師」ってどんな人?
「日本人講師」と言っても、様々なバックグラウンドを持った人がいます。ここで、日本人講師のタイプをざっくりと見てみましょう。
- 帰国子女タイプ
海外、とくにアメリカやイギリスなどの英語圏で長く生活してきた講師たちが「帰国子女タイプ」になります。その中でも、幼少期から海外に住んでいた人たちは、ネイティブのような滑らかさで話すスキルを持っています。また、育った国・地域の文化・習慣に詳しい人が多く、留学の相談をしたい時などにも大きなヘルプになってくれます。 - 国内習得タイプ
海外在住経験が短い・ほぼ無い(旅行程度)といった講師も存在します。海外にいなかったから英語レベルが低い、という訳では必ずしもありません。むしろ、日本国内だけで英語を習得した経験にもとづき、「国内で英語を習得するノウハウ」に長けているのが特徴です。また、外国語を習得する適性(aptitude)が高い人や、英語への入れ込みが抜きん出ている人も多く見られます。
以上、日本人講師の2つのタイプを見てみましたが、共通して言えることは、英語だけでなく「日本語・日本文化」の知識をもっているという点です。
2. 日本人講師の具体的メリット
1.「日本人の英語」を深く知っている
「日本人の英語学習」に対する理解度の高さで比べるなら、外国人講師よりも日本人講師が有利なのは明らかです。例えば、「中学レベルで学ぶこと」や「高校レベル」、そして「大学受験レベル」など、学習者がどのレベルにいるか把握することは、ベテランを除けば外国人講師には難しいことかもしれません。また、TOEICなど資格試験についての知識に欠けている場合も見られます。
それに対して日本人講師は、生徒の英語スキルをチェックすることで、その学習者がどのレベルにいるか、強み・弱みは何か、といったことを「日本の学校教育」と照らし合わせて指導できるのがポイントです。例えば「英検の級」や「TOEICスコア」、「大学での専攻」なども考慮しながら、単なる「スピーキング能力」だけに基づかない多面的な判断にしたがっての指導をするのに秀でています。そのため、受講生は自分の英語力がフェアにジャッジされていると実感できるでしょう。
2. ビギナーにやさしい
例えば、英会話がまったく初めて、“hello” を言うので精一杯のような初心者を考えてください。外国人講師のレッスンは、“Nice to meet you!”、”How are you today?” など、ナチュラルな挨拶から始まるかもしれません。しかし、ここでビギナーの人を指導するキーとなるのは、「ナチュラルな英語」に固執するのではなく、生徒の知識・経験を考慮しながらレッスンをすすめていくスキルです。
日本人講師は、ビギナーの生徒には “How are you?” という問いへの返答といった「ネイティブには当たり前」のことも難しい場合がある、という点を理解しています。そのため、日本人でも確実に伝わる “It’s hot!” や “Are you a businessman?” といった切り口でレッスンを始め、生徒が話しやすい展開へと持っていくことができます。このように、「日本人でも確実に知っている」英語を優先して使うことで、生徒をリラックスさせるスキルが、日本人講師の大きな強みです。
3. 日本語を知っている
「外国人講師は日本語を知らないからこそ、(生徒は)全て英語で伝えようと頑張れる」という考え方が一部にあります。間違いではないかもしれませんが、とくにビギナーの生徒の指導するような立場からは、あまり実践的ではありません。
日本語には「カタカナ語」が多数ありますが、英語では違った意味となる場合があります。例えば「ガソリンスタンド」は “gas station”、「ジェットコースター」は “roller coaster” と言わなくては伝わりません。ネイティブ講師に対し、知らずにこのような和製英語を用いてしまうと、話が大きく混乱しかねません。一方で日本人講師は、日本人がカタカナ語を誤用しやすいことを理解しているため、すばやく対処でき、レッスン中にストレスが溜まりません。また、映画などの日本語タイトルがオリジナルと異なる場合でも、生徒が何について話しているのか理解することもできます(例:『ワイルド・スピード』は原題 “Fast and Furious”、『リメンバー・ミー』は “Coco”)。
4. 日本社会・文化を知っている
日本に住んでいるからと言って、外国人講師が日本の社会のしくみや歴史など、文化の知識を持っているとは限りません。例えば、歴史好きな生徒が、英語で日本史について話そうとするシチュエーションを想像してください。「織田信長」や「坂本龍馬」など、日本人にはおなじみの名前でも、ネイティブ講師だと「???」という事態になり、説明にエネルギーを求められかねません。しかし、ビギナーの生徒にとって「織田信長が誰か」を英語で説明するのは難しいタスクです。
一方で、日本人講師ならば、そのような「文化的ギャップ」によるエネルギー・時間の浪費を避けることができます。加えて、日本史の知識を使って“I’m interested in the history of Sengoku. How about you?”と問うなど、生徒の興味に沿った話題を展開させるのも得意とします。このように、日本人講師が相手だと、幅広いトピックについて共通認識があり、結果として時間とエネルギーを「英語の使用」に集中させやすくなります。
5. 「言わんとすること」を汲み取ってくれる
最後にあげたいのが、生徒が「英語で表現したいけれど、なかなかできない」ことを察する能力に秀でている点です。これは母国語と文化を共有している最大の強みでしょう。以下で、日本人講師が使うようなテクニックを見てみましょう。ここで生徒が言いたいのは「夏目漱石が苦手」ということです。
生徒:I don’t like Natsume Soseki.
教師:Why not?
生徒:…Difficult.
教師:You mean, his novels are difficult? For example, you don’t like Kokoro?
生徒:Yes! I don’t like Soseki because Kokoro is a difficult novel.
以上のように、「夏目漱石は嫌い、難しい」という生徒の断片的な発話から、日本人講師は「高校で読んだ『こころ』が難しかったのだろう」という日本人としての実体験にもとづく推測を用いて、より完全な発話へと生徒を促す(prompt)ことができます。生徒の心理・思考を読みつつレッスンを柔軟に進められることが、日本人講師のもつ大きなアドバンテージです。
まとめ
ネイティブの外国人講師、日本人講師、どちらにも異なる強みがあります。自分の英語レベルや経験に合わせて、どちらが自分の学習に適しているのか考えてみましょう。また、ネイティブ講師でも日本語・日本文化に堪能な人や、日本人講師でも「流行りの文化」にうとい人など、講師にはひとりひとりの個性があるので、先入観にとらわれるのは禁物です。「ネイティブ」であっても「日本人」であっても、自分に合った方法で学習をサポートしてくれる講師を見出すことが、上達への近道かもしれません。
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茂呂 宗仁
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