1型糖尿病の高校生が学校と決めておくことと、進路の考え方

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血糖を測る場所がない。注射を打つために毎回保健室まで行く。補食をとりたいのに授業中は食べてはいけないと言われる。病気そのものより、学校の決まりとの噛み合わせの悪さに疲れてくる。

この記事では、1型糖尿病のある高校生が学校と何を取り決めておけばよいかを、制度の裏づけとあわせて整理します。先に書いておくと、学校との取り決めを先に作ってしまえば、学校生活そのものはほとんど変わりません。問題が起きるのは、取り決めがないまま場面ごとに判断されるときです。

記載内容は2026年10月時点で、制度に関する部分は末尾に挙げた公的機関の資料にもとづいています。血糖の管理や活動の可否については主治医の指示に従ってください。

結論:学校との取り決めを先に作れば、生活はほぼ変わらない

  1. 学校に配慮を求める法的な根拠がある。2024年4月1日から、事業者による合理的配慮の提供が努力義務から法的義務になった
  2. 測定・注射・補食の3点を「どこで・いつ・誰の許可なく」できるかを文書で決めておく
  3. 低血糖時の対応と、その時間を出席として扱うかを同時に決める
  4. 体育と宿泊行事は、やり方を変えれば参加できる。全部か不参加かではない
  5. 医療費には小児慢性特定疾病医療費助成という仕組みがある。糖尿病は対象疾患群の一つに挙げられている

学校と決めておくこと

測定・注射・補食の3点

日常の負担をいちばん左右するのがこの3点です。「そのたびに許可を取る」形にしてしまうと、一日のなかで何度も手続きが挟まります。許可を前提にしない形で決めておいてください。

項目 決めておく内容
血糖測定 教室の自席でできるか。できない場合の場所。授業中に測ってよいか。センサーを使っている場合、アラームが鳴ったときの扱い
インスリン注射 どこで打つか。保健室まで行くのか、教室や空き教室でよいのか。昼食前の時間をどう確保するか
補食 授業中に食べてよいか。許可を取らずに食べられるか。どこに置いておくか
器具の保管 インスリンの保管場所(保健室の冷蔵庫など)。使用済みの針の処理方法
低血糖時の対応 誰が何をするか。回復後に授業へ戻るか下校するか。救急車を呼ぶ目安
休養時間の出席扱い 保健室で休んだ時間を欠課とするかどうか

補食は交渉のつまずきやすい項目です。学校の飲食のルールは学習環境を保つために作られているので、「おやつを食べたい」ではなく「低血糖を防ぐために必要な医療上の行為である」と位置づけて説明すると通りやすくなります。主治医の書面があるとさらに進みます。

最後の行も忘れないでください。低血糖で休む配慮を受けていても、その時間が欠課として記録されていれば単位が危うくなります。対応を決める話し合いのなかで、出席の記録まで一緒に決めてください。

配慮を求める根拠

障害者差別解消法が改正され、内閣府の案内によれば2024年4月1日から、事業者による合理的配慮の提供がそれまでの努力義務から法的義務になりました。文部科学省が定めた対応指針は、この「事業者」に学校法人なども含まれるとしています。つまり私立学校も合理的配慮を提供する法的義務を負い、公立学校は行政機関として、それ以前から義務の対象です。

障害者手帳の有無は要件ではありません。話し合いが進まないときは、学年主任や管理職、次に設置者である教育委員会または都道府県の私学担当部署、さらに内閣府が設けている「つなぐ窓口」に相談できます。つなぐ窓口は、障害者差別解消法に関する質問や、配慮を求めたのに理由なく断られた場合の相談を受け付け、適切な窓口へつなぐ調整も行っています。

誰まで知らせるか

  • 担任、養護教諭、学年主任、管理職には取り決めの全文を共有する
  • 授業を担当する全教員には、補食と測定を止めないことだけでも共有する
  • 体育の担当者には、運動前後の対応まで詳しく伝える
  • クラスメイトに伝えるかどうかは本人が決める

2つ目が実務的に効きます。知らない教員の授業で補食を止められるのが、いちばん起きやすいトラブルです。

体育と部活

運動は血糖を下げるため、前後の対応を決めておく必要があります。主治医の指示を前提に、学校と次の点を取り決めてください。

  • 運動前に測定し、必要なら補食をとる時間を確保する
  • 運動中に補食や飲料を手元に置いておく
  • 低血糖の兆候が出たら、申し出ずに中断してよいことにする
  • 運動後しばらく経ってから血糖が下がる場合があるため、その時間帯の対応も決める
  • 見学になった授業の評価をどうするか

3つ目は言葉にしておく価値があります。「先生に言ってから休む」という手順だと、言い出しにくさで対応が遅れます。

宿泊をともなう行事

修学旅行や合宿は、不参加を勧められがちな場面です。事前に決めておけば参加できる場合が多くあります。

決めること 内容
インスリンの保管 宿泊先に冷蔵設備があるか。移動中の保管方法
食事の内容と時間 献立を事前に入手する。食事の時間が大きくずれる日の対応
夜間の対応 夜間に低血糖が起きた場合、誰に連絡するか。同室者に伝えるか
補食の持ち込み 持ち込みと保管を認めてもらう。行程中に食べられるようにする
移動中の対応 長時間の移動で測定や注射をする場所をどう確保するか

献立の事前入手は交渉しておく価値があります。炭水化物の量が分かれば、当日の調整がしやすくなります。

試験の日

定期試験や入試の日は、取り決めが別に必要です。

  • 試験中に測定や補食をしてよいか。机の上に置いておけるか
  • 低血糖で中断した場合、時間の延長や別日の受験が認められるか
  • 別室で受けられるか

大学入学共通テストなど外部の試験については、配慮の申請に期限があります。出願の時期より前に申請が必要な場合があるため、高校3年の早い段階で進路指導の担当に確認してください。

欠席が重なる場合

全日制高校では、各教科の授業にどれだけ出席したかが単位認定の条件になっています。基準は学校ごとに定められていて、欠課が一定の割合を超えるとその教科の単位は認定されません。

確認するのは、教科ごとの欠課上限と現時点の欠課時数、遅刻や早退の換算、保健室で休んだ時間の扱い、欠課分を補う課題や補習の有無です。危ういのはたいてい一部の教科に偏っているので、数えれば守る優先順位が決まります。

学年末の3か月前には、単位の見通しを担任と確認してください。間に合わない見込みなら、この時点で転入の相談を始めるのが現実的です。転入は本人や保護者が直接進めるものではなく、今いる高校が窓口になります。新潟県教育委員会が示している流れでは、在籍校が転学願を受けて転入希望先に事前の連絡を取り、受け入れが可能な場合に文書で転学照会を行うとされています。

通信制高校を検討する場合

文部科学省の案内によれば、通信制高校の学習は添削指導、面接指導(スクーリング)、試験の3つで進みます。レポートの標準的な回数は教科ごとに決まっていて、国語や数学は1単位あたり3回、体育は1回。面接指導の標準時間数も、国語や数学は1単位あたり1単位時間、理科や芸術や外国語は4単位時間、体育は5単位時間です。卒業には74単位以上の修得と、特別活動を30単位時間以上受けることが必要とされています。

同省の案内によれば、多様なメディアを利用した学習で報告課題を提出すると、面接指導の時間数のうち10分の6以内が免除され、複数のメディアを併用する場合は10分の8以内まで免除できます。実施しているかは学校によって異なるため、資料請求や個別相談で確認してください。

1型糖尿病との関係で確認したいのは次の点です。

  • メディア学習による面接指導の免除を実施しているか
  • スクーリングの日程と1日の行程。食事と測定の時間が取れるか
  • スクーリング中に低血糖が起きた場合に休める場所があるか
  • 体育のスクーリング(1単位あたり5単位時間)の内容
  • 特別活動の30単位時間をどのような形で消化するか

登校日数を自分で選べる学校の例として、N高等学校があります。ネットで学習を進めるコースから週5日通うコースまで分かれているため、どの程度の登校なら続けられそうかを考える材料になります。

医療費の負担を軽くする仕組み

継続的な治療が必要なため、医療費の制度も知っておく価値があります。厚生労働省の資料によれば、小児慢性特定疾病医療費助成制度は16の疾患群・788疾病を対象とし、糖尿病はその疾患群の一つに挙げられています。

  • 対象は原則として18歳未満の児童。18歳到達時点で制度の対象であり、その後も引き続き治療が必要と認められる場合は20歳未満も含まれる
  • 自己負担割合は2割
  • 月額の自己負担限度額は所得区分により異なり、生活保護は0円、低所得Ⅰは1,250円、一般所得Ⅰは5,000円(重症は2,500円)など
  • 外来と入院を区別せず限度額を設定し、複数の医療機関や薬局、訪問看護の自己負担を合算して適用する

自分の病型や症状の程度が対象になるかは個別の判断になります。申請の窓口は都道府県、指定都市、中核市の担当課です。主治医に相談したうえで、住んでいる自治体の窓口に確認してください。18歳を超えてからの扱いが変わるため、高校在学中に確認しておく意味があります。

進路について

進学や就職の際に病気を伝えるかどうかは本人が決めることです。伝える場合は、必要な配慮を具体的に書いて示すほうが話が進みます。就職では、勤務中の測定や注射、補食の扱いが実務上の論点になるため、学校で作った取り決めの文書がそのまま下敷きになります。高校のうちに文書化しておくと、あとで使えます。

よくある質問

授業中に補食をとることは認められますか

学校との話し合いによります。低血糖を防ぐために必要な医療上の行為として説明し、主治医の書面を添えると通りやすくなります。許可を毎回取る形にせず、申し出なしに食べられる形で決めておくのが実務的です。

保健室で休んだ時間は出席になりますか

学校によって扱いが異なります。低血糖時の対応を決める話し合いのなかで、出席の記録をどうするかまで含めて確認してください。

修学旅行には参加できますか

インスリンの保管、食事の時間、夜間の対応を事前に決めれば参加できる場合があります。献立を事前に入手できるよう相談してください。

体育は見学しなければいけませんか

主治医の指示が前提ですが、運動前の測定と補食、中断してよいという取り決めがあれば参加できる場合があります。運動後しばらく経ってからの血糖の下がり方についても、対応を決めておいてください。

医療費の助成は18歳で終わりますか

厚生労働省の資料によれば、18歳到達時点で制度の対象であり、その後も引き続き治療が必要と認められる場合は20歳未満も含まれます。その先の扱いについては、自治体の窓口と主治医に確認してください。

まとめ

1型糖尿病で高校生活を送るとき、先に作るべきは学校との取り決めです。血糖測定、インスリン注射、補食の3点について、どこで・いつ・誰の許可なくできるかを文書にしてください。あわせて低血糖時の対応と、休養した時間を出席として扱うかどうかを同時に決めてください。

学校への相談には根拠があります。2024年4月1日から事業者による合理的配慮の提供が法的義務になり、文部科学省の対応指針では学校法人もこの事業者に含まれるとされています。進まないときは教育委員会や私学担当部署、内閣府の「つなぐ窓口」に相談できます。

体育と宿泊行事は参加か不参加の二択ではありません。運動前後の対応、インスリンの保管、食事の時間、夜間の体制を事前に決めれば参加できる場合が多くあります。

医療費については、小児慢性特定疾病医療費助成制度があり、糖尿病は対象疾患群の一つに挙げられています。自己負担割合は2割で、所得区分に応じた月額の限度額が設定されています。対象になるかは個別の判断になるため、主治医と自治体の窓口に確認してください。

この記事で参照した資料

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English Hub 編集部

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