英語コーチングはなぜ急速に広まったのか。人気の理由と今後の展望

英会話教室への通学、オンライン英会話の受講、教材を使った独学などと並び、英語学習を始める際の選択肢の一つとなった英語コーチング。

英語コーチングスクールに加え、フリーランスとして活動する英語コーチも増えているほか、オンライン対応も一般化し、受講形式の幅がますます広がっています。

英語の勉強とコーチングを掛け合わせて効率よくスキルアップを目指す方法は、近年特に注目を浴びている学習スタイルです。その人気の高まりの背景には、どのような理由があるのでしょうか。

今回は、英語コーチングの変遷を振り返るとともに、これからの英語学習がどう変わっていくのかについて考えます。

目次

英語コーチングの定義

英語コーチングとは?

英語コーチングとは、解決すべき課題に対する学習者本人の「気付き」を引き出し、自主的に学習に取り組むための習慣作りなどを含む多角的なサポートによって目標達成を目指す手法のことです。

英語コーチングスクール各社は、それぞれ異なるサービス内容で独自の強みを打ち出していますが、その中でも多くのスクールに共通する点は下記の通りです。

【英語コーチングの主な特徴】

  • 画一的なカリキュラムではなく、個人の目標や課題に合った学習プランを提案する
  • コーチングセッションでは、克服すべき課題の発見や今後の勉強方法についてのアドバイスの提供を中心に行う
  • 受講生が継続的に自主学習に取り組むためのサポートがある
  • アプリやチャットツールを使い、コーチングセッション以外の時間でも学習に関する質問や相談ができる など
  • ※サービス内容の詳細はコーチングスクールにより異なります。

英語コーチングとティーチングの違い

英語コーチングの手法が、英会話スクールや英語教室での学びと具体的にどう異なるのか気になる方も多いでしょう。そこで鍵となるのが、コーチングとティーチングという二つのスタイルの違いです。

一般的に、英語のティーチングを行うスクールでは、講師から受講生への知識のインプットに重点を置いています。語彙・文法の解説や問題演習を通じて基礎を固めつつ、英会話練習なども取り入れながら英語力を磨きます。

一方、英語コーチングで行うのは、受講生が抱える英語の課題分析や、一人ひとりに合った学習方法の提案が中心です。カリキュラムで定められた項目を一通り順番に学ぶのではなく、現状の英語力と弱点に合わせて必要なポイントだけに的を絞ったうえで、どんな学習に取り組めば課題を克服できるかをコーチがアドバイスします。

このように、英語ティーチングとコーチングは、「英語そのものを教えること」に重きを置くのか、あるいは効果的な学習のための総合的なサポートを行うのか、という点において大きな違いがあります。

英語コーチングの人気の理由

コーチングスクールの登場は、英語学習業界における大きな変化の一つと言えます。英語を学ぶ方法として、コーチングの受講に注目が集まったのはなぜでしょうか。

ここからは、英語コーチング人気の背景にある2つのポイントを掘り下げていきます。

1. 課題に関する本質的な「気付き」を得られる納得感

「英文の内容を正しく読み取れない」「リスニングが苦手」など、英語学習にまつわる悩みの内容は多岐にわたります。

そのような状況下で、一般的な学習者が自らの課題の原因を正確に突き止めるのはなかなかハードルが高いものです。自分自身で対策を考えようとした結果、「毎日できるだけたくさんの英語の長文問題を解く」「ひたすら英語の音声を聞いて耳を慣れさせる」など、時間も手間もかかる手段を選んでしまうこともあるでしょう。

英語コーチングでは、「なぜできないのだろう」と行き詰まっている学習者に対し、専門的な知識を持ったコーチが傾聴や質問のやり取りを通して解決策を提示します。「聞き取った英語の音と意味を結び付けるプロセスに時間がかかっている」というように、ピンポイントで課題を指摘した上で、改善のためのトレーニングを提案してくれるのが特徴です。

課題の詳細な分析によって根本的な原因が明確になると、弱点克服を目指して受講生自身がより主体的に学習に取り組めるようになります。

自分一人では思い付かなかった「気付き」が得られ、課題に対してダイレクトにアプローチできているという実感は、英語コーチングを受ける醍醐味の一つです。

これまで抱えていた英語学習の悩みについて、その原因をコーチがプロの目線から言語化してくれる納得感と心地よさのような感覚こそが、英語コーチングが人気を集めている理由なのではないでしょうか。

2. 忙しい社会人のニーズにフィットする短期集中型のコース

英語コーチングスクールでは、目標を達成するまでの受講期間を3ヶ月~1年程度に設定しているケースがほとんどです。

はじめから長期の受講を想定し、数年単位で地道に時間をかけて英語を習得していくというスタンスではなく、短期集中で成果を出すことを目指すスクールが大半を占めます。

特に社会人の場合、英語を使う仕事への転職や海外転勤、昇進に向けた英語試験の受験など、間近に迫った目標に向けて、時間の余裕がない中で英語学習に取り組むことも多いでしょう。

一人ひとりに合わせてカリキュラムを最適化し、弱点をピンポイントで克服していく英語コーチングの手法は、学習の即効性を期待する忙しい社会人のニーズとも一致しています。

短期集中学習を掲げる英語コーチングのスピード感が、「これまで何年もかけて英語を学んできたのに、十分な英語力が身に付いた実感がない」と感じていた大人の学習者に特に響いたと考えられます。

英語コーチングスクールの変遷

日本で初めての英語コーチングスクールは、2001年に開校したプレゼンス(PRESENCE)です。英語と中国語の語学コーチングを行うプレゼンスは、就職活動やキャリアデザインの支援を手掛ける株式会社ジャパンビジネスラボの事業の一つとしてスタートしました。

下記の表は、各英語コーチングスクールの開校のタイミングなどを時系列に沿ってまとめたものです。

英語コーチングスクール年表

作成:English Hub編集部

【2015年~】英語コーチングスクールが次々と開校

2015年には、英語コーチングを専門とするENGLISH COMPANY(イングリッシュカンパニー)トライズ(TORAIZ)が開校します。

短期間で高い効果を発揮する学習方法として英語コーチングの注目度が高まると、翌2016年以降にはRIZAP ENGLISH(ライザップ・イングリッシュ)やPROGRIT(プログリット)などが次々と誕生。英語コーチングスクールの選択肢が一気に広がりました。

身体を鍛えるためのパーソナルトレーニングと英語学習に共通点を見出し、もともとはスポーツジムを運営していた企業が英語コーチング業界に参入し始めたのも興味深い点です。

その後、サービスの利用者の急激な増加に伴い、一部のスクールで入会待ち期間が発生するほど英語コーチング熱が高まりました。

【2020年~】コーチングセッションのオンライン対応が本格化

2020年に入り、新型コロナウイルスの感染予防対策が拡大すると、社会を取り巻く環境は大きく変化しました。

英語コーチングスクールも例外ではなく、外出の自粛や複数の人々が集まる空間を避ける動きが強まるにつれて、対面ではなくオンラインでのコーチングセッションの提供へと移行していきます。

リモートワークやビデオ通話ツールの普及が加速し、さまざまなサービスのオンライン化が進む中、通学のための教室拠点を持たないオンライン特化型の英語コーチングスクールも登場しました。

フラミンゴ・オンラインコーチングENGLEAD(イングリード)をはじめとするオンライン専門のコーチングサービスは、教室の維持費などのコストがかからないメリットを活かし、一般的なスクールよりも受講費を比較的安く抑えているのが特徴です。

また、オンライン英会話サービス各社が、新たな受講コースやオプションプランにコーチングの要素を取り入れるなど、「英語コーチング」という名の下で提供されるサービス内容が多様化しました。

アプリやデータ分析技術の活用で英語コーチングの効率性がさらに高まる

現在、多くのスクールでは、コーチングセッション以外の時間にも受講生が継続して英語学習に取り組めるよう、アプリなどを使ったサポートに力を入れています。

アプリの仕様はスクールごとに異なりますが、スマートフォン一つでさまざまな教材にアクセスできたり、勉強時間・内容を自動で記録してくれたりと、場所を問わず手軽に自習に取り組める仕組みが整っています。

また、学習者が過去に間違えた英単語や文法問題の傾向をデータとして蓄積し、アプリ上で数値にして示すなど、コーチからの評価とフィードバックがさらに効率よく提供できるようになりました。

机に向かって勉強するだけでなく、スキマ時間でも英語に触れることを可能にするアプリは、学習習慣の確立という面でも大きな役割を果たしています。

英語コーチングは今後どう進化するのか

英語コーチングスクールにおいて、受講生一人ひとりと向き合い、課題の分析やアドバイスの提供を行うコーチは、学習者が英語力アップを達成する上での重要な役割を担っています。

しかし、マンツーマンまたは少人数のグループで手厚いサポートを提供する英語コーチングスクールの性質上、これまで一人のコーチが担当できる受講生の人数には限りがありました。

そんな中、最近ではテクノロジーツールの発展・多様化により、コーチングを提供する側が行う業務の効率化も進んでいます。

自動翻訳の質の向上やAI技術を搭載した多言語チャットボットの登場により、「AIに任せられること」が増えた一方で、「生身の人間にしかできないこと」も浮き彫りになりつつあります。

第二言語習得論や英語教授法に関する深い知見を持った専門性の高い人材と、最新のテクノロジーツールの掛け合わせにより、今後の英語コーチングでは、さらに付加価値の高いサービスが生まれることが期待されます。

まとめ

短期集中の受講スタイルや、専属のコーチから詳細な課題の診断が受けられる点が高く評価されている英語コーチング。

学習テクノロジーの進化とともに、今後ますますサービス内容が多様化していくと考えられるでしょう。

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