Commencementと呼ばれるアメリカの大学の学位授与式では、卒業生代表やゲストとして招かれた著名人がスピーチを行います。特に、ハーバードやスタンフォードなどの歴史ある有名大学の卒業式には、起業家、政治家、研究者、芸能人など、誰もが知る各界の著名人が参加することで知られており、そのスピーチも毎年大きな注目を浴びます。
今回は、大学の卒業式で贈られた数ある祝辞の中でも、特に有名な5つの英語スピーチを紹介します。動画の字幕やスピーチの原稿も併せて確認しながら、ぜひ自分なりの解釈でスピーカーの思いを汲み取ってみてください。
心に響く有名人の英語スピーチ5選
スティーブ・ジョブズ(2005年)
“Stay hungry. Stay foolish.”
Appleの共同創業者の一人であるスティーブ・ジョブズは、2005年のスタンフォード大学の卒業式で、自身の人生において重要な意味を持つ3つのエピソードを紹介しました。大学中退、自らが立ち上げたAppleからの解雇、癌との闘病という数々の困難を乗り越えてきたジョブズのストーリーは、卒業式に参加していた学生たちのみならず、あらゆる聴衆の心を打ちます。
ジョブズはスピーチの締めくくりに、1960年代後半~70年代にかけて刊行されていた雑誌“Whole Earth Catalog”の最終号から、“Stay hungry. Stay foolish.”というフレーズを引用しました。聞く人によってさまざまな解釈の仕方ができるこの言葉は、自分が信じる道を歩み続けようとする人の背中を力強く押してくれるメッセージとして、今でも多くの人々の記憶に残っています。
J.K. ローリング(2008年)
“We have the power to imagine better.”
『ハリー・ポッター』シリーズの著者として知られるJ.K. ローリングは、2008年のハーバード大学の卒業式で、失敗から得られる恩恵と想像力の大切さについて話しました。大学を卒業後、結婚生活が短期間で破綻し、仕事がない状態で一人親として子どもを育てるなど、貧困に苦しんでいたローリングは、この経験をきっかけに自らを取り繕うことをやめ、自分がすべきことに全力を注ぐようになったと言います。
スピーチの中で、世界を変えるために必要なのは「魔法」ではなく、誰もが持つ「よりよい世界を想像する力」だと語ったローリング。苦境に立たされながらも、自らが執筆した本で世界中に大きな影響を与えた彼女のエピソードは、多くの人々の心に響きました。
オプラ・ウィンフリー(2013年)
“Learn from every mistake.”
アメリカの人気トーク番組“The Oprah Winfrey Show(1986年~2011年)”のホストを務め、慈善家としても熱心に活動を行っているオプラ・ウィンフリーは、2013年のハーバード大学の卒業式でスピーチを行いました。ウィンフリーは卒業生たちに対し、あらゆる失敗から学び、すべての出会いや経験を、自分が自分らしくあるための糧にしていくことが大切だと話します。
その他にも、ハーバード大学の学長から卒業式でのスピーチを依頼された際の様子がユーモアを交えて語られるなど、オプラ・ウィンフリーらしい軽妙かつ力強い語り口のエピソードを聞くことができます。
シェリル・サンドバーグ(2016年)
“Build resilience in yourselves.”
Facebook(現:Meta Platforms)のCOO(最高執行責任者)として活躍し、著書の『LEAN IN(リーン・イン)』が世界中で話題となったシェリル・サンドバーグ。2015年に夫を亡くしたサンドバーグは、翌年招かれたカリフォルニア大学バークレー校の卒業式で、当時の耐え難い悲しみや、今も続く喪失感について赤裸々に語りました。しかし皮肉にも、この悲痛な経験によって、友人の優しさや家族の愛、子どもたちの笑い声に対して深い感謝の気持ちを持つことができたと言います。
辛い時こそ周りの人たちと助け合い、困難を跳ね返す力を持ってほしい、と前向きなメッセージで締めくくられたサンドバーグのスピーチは、悲しみや辛い経験を抱えながらも前に進む多くの人たちを勇気づけたことでしょう。
ビル・ゲイツ(2016年)
“From those to whom much is given, much is expected.”
起業家であり、ポール・アレンとともにMicrosoftを創業したビル・ゲイツは、2016年にハーバード大学の卒業式でスピーチを行いました。ゲイツは自らの学生生活を振り返り、経済や政治については多くを学んだ一方、世界中に広がる格差の問題には十分に目を向けられていなかったと語ります。そのことに気が付くまで長い時間を要したというゲイツは、これまでに慈善基金団体である「ビル&メリンダ・ゲイツ財団」の活動を通じ、世界にはびこる飢餓や貧困の解消に向けて多額の支援を行ってきました。
スピーチの中でも特に印象的なのは、亡き母がゲイツと妻のメリンダに贈った、“From those to whom much is given, much is expected.”という言葉です。このメッセージを引用した背景には、世界トップレベルの名門校であり、優れた知性と才能を持つ学生が集まるハーバード大学だからこそ、その力を他者や社会のために活かしてほしいという力強い激励と期待の気持ちが込められているのはないでしょうか。
まとめ
卒業生の新たな旅立ちを祝福するスピーチでは、誰もがその名を知る各界の著名人が、これまでの苦労や失敗も含めて自らの人生を語る姿が印象的です。
また、聴衆一人ひとりに語り掛けるような口調や、時にはジョークを交えて場を和ませるといったパブリックスピーキングのテクニックも、英語でスピーチやプレゼンテーションをする機会がある方にとって特に参考になるのではないでしょうか。
聞いているだけで勇気が湧いてくるようなスピーチ動画を、ぜひ英語学習にも役立ててみてください。
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English Hub 編集部
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