児童英語教師になるには?子どもに英語を教える仕事

2020年度からの新たな学習指導要領の実施に伴い、日本の小学校では、3・4年生を対象に外国語活動が始まり、5・6年生では新たな教科として英語の授業が加わりました。

小学校入学前に子どもを英会話スクールや英語塾に通わせ、より早い段階から英語に触れ合う機会を作ろうとする保護者も多く、子どもに対する英語教育熱の高まりが感じられます。

このような状況を背景に、未就学児から小学生程度の年代までの子どもたちを教える児童英語教師には、さらに活躍のチャンスが広がっています。

そこで今回は、子どもの英語教育において重要な役割を担う児童英語教師の仕事について解説します。仕事内容や求められる役割とスキル、児童英語教師になるための具体的なステップを紹介するので、キャリアプランを考える際の参考にしてみてください。

目次

※この記事の内容は、2024年7月時点の情報をもとに作成されています。

児童英語教師の仕事内容

児童英会話講師は、下記に挙げる通り、レッスンの計画・準備から実施、保護者とのコミュニケーション、さらにはイベントの企画まで、幅広い業務をこなします。

英会話レッスンの計画と準備

まずは、レッスンの計画と準備が必要です。子ども英会話教室の講師として働く場合、スクールの方針により、講師自身がレッスン内容をどの程度自由にデザインできるかが異なります。カリキュラムがあらかじめ決まっているケースでも、レッスンをスムーズに進めるため、内容の予習や時間配分の事前確認が欠かせません。

講師自らがレッスン内容を決められるケースでは、子どもの年齢・興味に合わせたアクティビティーの選択を行います。また、フラッシュカードやワークシートの作成、歌・ゲームの準備が必要となるケースもあるでしょう。

このような事前準備によって、講師は子どもたちが楽しみながら英語を学べる環境を整えます。

英会話レッスンの実施

実際のレッスンでは、事前の計画に基づき、子どもたちと一緒に英語の発話練習や語彙のインプット、歌・ゲームを取り入れた活動などを行います。

スクールによって授業のスタイルはさまざまですが、対面レッスンを提供する英語教室ではグループ形式、オンラインレッスンの場合はマンツーマンでの指導が一般的です。

また、レッスン中に子どもたちの理解度を確認し、適宜サポートを提供することも大切です。特に生徒の人数が多いグループレッスンの場合は、授業の内容についていけず、取り残されている子がいないか常に気を配りながらアクティビティーを進めます。

子どもたちの成長やつまずきを敏感に察知し、一人ひとりの学習状況を適切に把握することで、より効果の高いレッスンの実践が可能となります。

保護者とのコミュニケーションや面談

児童英語教師として働く上では、子どもたちと関わるだけでなく、保護者とのコミュニケーションも欠かせません。

スクールによっては、レッスンごとのフィードバックレポートの作成・共有、保護者との定期的な面談の実施などが講師の業務内容に含まれます。

子どもたちの頑張り・成長を保護者に伝えることは、子ども本人のモチベーションアップにもつながります。このような家庭との綿密な連携も、子どもの英語力を育む大切な要素の一つです。

英語関連イベントの企画と実施

子ども向け英会話教室の中には、クリスマス、ハロウィーンといった季節ごとのパーティーや、サマーキャンプ、英語スピーチ大会などのイベントを開催しているスクールが数多くあります。

これらのイベントは、普段のレッスンとは一味異なる環境で英語を実践的に使う機会となるほか、他国の文化・風習に触れることで子どもたちの学習意欲をさらに高めるきっかけにもなります。

児童英語教師は、子どもたちが積極的にイベントに参加して楽しめるよう、コンテンツを企画し、事前準備を行います。

児童英語教師に求められる役割

同じ英語を教える仕事の中でも、子どもを相手にする場合と、大人の学習者を対象とする場合とでは、それぞれ求められる役割が異なります。 

児童英語教師として子どもたちと接する上で特に意識すべきポイントは、どんな点にあるのでしょうか。

英語を学ぶ動機づけのサポート

大人の学習者は、仕事や学業に役立てるためなど、具体的な目的を持って自ら英語学習と向き合っているケースがほとんどでしょう。一方、スクールに通い始めたばかりの子どもの場合は、英語を学ぶ動機がそれほど強くないことも考えられます。

英語講師の主な役割は、学習者に知識やスキルを授けることです。しかし、子どもを教える際は、知識の伝達そのものだけでなく、なぜ英語を学ぶのかという動機づけのサポートが求められるケースもあります。

子どもたちがレッスンを受ける中で、英語を使う楽しさ、何かを学ぶことで生まれる達成感や自己肯定感を得られれば、自然と学習に対する積極性も高まっていきます。

そのため、まずはレッスンを受けるのが楽しみになるような環境作りが大切です。リラックスした雰囲気の中、失敗を恐れずにチャレンジできる環境が整っていれば、子どもたちは自発的に授業に参加し、自分のペースで英語力を伸ばすことができるでしょう。

他者との交流を通じて社会性やコミュニケーション能力を育む

児童英語教師は、英語学習を通じて子どもの社会性を育む役割も担っています。ペアワークや複数人でのアクティビティーを積極的に取り入れたグループレッスンは、子どもたちが互いに協力し合い、コミュニケーションスキルを磨く貴重な機会となります。

また、英語講師が家族や学校の先生とは異なる視点を持つ大人の一人として生徒と接することが、子どもの社会性の向上に役立ちます。

このように、児童英会話講師は、単なる知識の伝達に留まらず、子どもたちが英語を楽しく学びながら、人としてのさまざまな側面において成長するきっかけを作る役割を持っています。

児童英語教師になるには?4つの主な働き方

児童英語教師として働くには、具体的にどのような場があるのでしょうか。ここからは、子どもに英語を教える仕事ができる働き方の例を4つ紹介します。

1. 子ども向け英会話スクールの講師になる

一つ目は、子ども向け英語教室での勤務です。講師として採用されれば、普段のレッスンやスクールのイベントなどを通じて、子どもたちと密接に関わりながら英語教育に携われます。

また、近年ではオンライン英会話サービスが普及し、インターネット上でのレッスン提供も一般化しました。オンラインレッスンの場合は、講師側も在宅勤務が可能なケースが多く、フルリモートで柔軟な働き方ができます。

2. 小学校の英語指導者になる

小学校で行われる英語の授業では、教員やALT(外国語指導助手)とともに子どもたちを指導する専門の人員が配置されることがあります。このようなポジションは、「小学校外国語(英語)活動指導員」「英語教育アドバイザー」など、自治体によって名称が異なり、働き方の条件もさまざまです。

小学校の英語指導者は、すべての地域・学校で募集されている訳ではなく、働きたいと思った際に身近なエリアで必ずしも求人案件が見つかるとは限りません。しかし、英語の授業を通じて多くの子どもたちと関われる仕事であり、学級担任などと協力しながら英語の楽しさを伝える役割に大きなやりがいを感じられるでしょう。

3. 英語教育に特化したプリスクール・学童保育で働く

未就学児~小学生を対象とするプリスクールや学童保育の中には、英語教育に特化したプログラムを提供しているサービスがあります。

このようなスクールでは、講師やクラスメイトと英語でコミュニケーションを取りながら工作やダンス、スポーツに取り組むなど、バラエティ豊かなアクティビティーを通じて実践的に英語を使う機会を確保しているのが特徴です。

子どもたちが英語に触れる時間を最大化するため、オールイングリッシュのポリシーを掲げているサービスもあり、講師側にも高い英語力が求められます。

4. 独立して自分の英語教室を開く

児童英語教育の分野で経験を積んだ暁には、独立して子ども英語教室を開くこともできます。自らが教室の代表となる場合、これまでの指導経験や子どもに対する教育の専門性が集客と評価に大きな影響を与えるため、十分に実績を積んだ上で開業することが望ましいでしょう。

教室の開業は、経営面のかじ取りも含めて幅広い業務を自分でこなさなければならない厳しさがある一方、指導方針から具体的なレッスン内容まで、すべて自分で決められる自由度の高さが魅力です。

また、一からの開業はハードルが高いという場合は、大手子ども英会話スクールのパートナープログラムを利用する方法もあります。ホームティーチャーとして提携を結べば、運営に関するサポートを受けながら英語教室を開くことが可能です。

高い知名度を持つ大手スクールのもとでの教室開校は、運営元のブランド力を集客に活かせるだけでなく、教材や指導ノウハウの共有を受けられるなどのメリットがあります。

児童英会話講師になるために資格は必要?

子どもに英語を教える仕事に就くために取得が義務付けられている資格はありませんが、特定の資格やスキルを持っていると、採用時に有利になることがあります。

J-SHINE(小学校英語指導者資格)

小学校での英語教育促進を目的として創設されたJ-SHINE(Japan Shogakko Instructors of English:ジェイシャイン)は、子どもに対する英語指導の民間資格です。取得によって、児童英語教育の基礎を学んだことを証明できます。

J-SHINEは、スキルをさらにブラッシュアップさせたい現役の英語講師だけでなく、これから英語を教える仕事に就きたいと考えている指導未経験者でも取得が可能です。

保育士資格や小学校教諭免許状

英語力に加え、保育士資格や小学校の教員免許を持っている場合、児童英語教師として働く上で強いアピール材料となります。これらの資格は、子どもに接する教育者としての専門性の証明であり、雇用者や保護者に対して信頼感を与えられるメリットがあります。

しかし、資格を取得するには、指定の保育士養成施設や大学・短期大学で所定の課程を修める必要があり、一般的な子ども英会話スクールに就職するという目的のみのために一から資格取得を目指すのは、あまり効率的ではないかもしれません。

そのため、これらの資格は、すでに取得している人が求人応募時のアピール材料として活用するのが現実的でしょう。

児童英語教師になるためのステップ

1. 英語力を十分に鍛える

児童英語教師の仕事に就くには、何よりもまず十分な英語力を身につけることが重要となります。

子ども向け英会話スクールの講師募集要項では、TOEIC L&R 650~800点程度の英語力が求められるケースが一般的です。ただし、レッスンやコミュニケーションをすべて英語で行うオールイングリッシュ・ポリシーを採用しているスクールでは、ネイティブスピーカーレベルの英語力が必要となる場合もあります。

2. 指導資格の取得も視野に入れる

これまでに英語を教えた経験がない人の場合は、必要に応じて英語指導関連資格の取得にチャレンジしてもよいでしょう。

たとえば、前述のJ-SHINEの場合、資格取得のための指導者養成講座に、教育現場での実習プログラムを組み込んでいるスクールもあります。そのため、講師未経験者が資格取得の過程で知識を学びながら実習経験を得ることも可能です。

児童英語教師の求人では、未経験者が応募できる案件も存在するため、資格取得は必須ではありません。しかし、「将来のキャリアプランに向けて早い段階で資格を取得しておきたい」「事前に実習経験を積みたい」という場合は、指導者養成講座の受講がおすすめです。

はじめはアシスタント職での採用も

特定の求人募集条件を満たしていないなど、子ども向け英語教室の本講師としての採用を狙うことが難しい場合、まずはアシスタント職や任期限定のポジションを探すのも一つの手です。

特に、サマースクールや学校の長期休暇中の短期プログラムといった季節ごとのイベントでは、追加のアシスタント人員が募集されるケースがあります。そのような機会を活かして実際の教育現場に身を置くことで、講師の働き方や子どもたちの様子を間近で観察できます。

すぐに応募できる求人案件が見つからない場合は、アシスタント職も含めて経験を積めるポジションを探すとよいでしょう。

まとめ

児童英語教師としてのキャリアを築くためには、高い英語力だけでなく、実務経験の積み重ねが欠かせません。多岐にわたる仕事内容を理解し、期待される役割を果たすことで、子どもたちに楽しく効果的な英語教育を提供できます。

児童英語教師は、子どもたちの成長に関わる重要な役割を担う仕事です。この記事で紹介した情報を参考に、自分が理想とする働き方とキャリアプランを考えてみてください。

英語を教える仕事