CELTA(セルタ)とは、英語を母語としない学習者に対してティーチングを行うための、国際的な英語教授法認定資格です。CELTAを取得することで、日本国内のみならず、世界を舞台に英語講師として活躍できる可能性が広がります。
CELTA取得コースのカリキュラムには、英語教授法やクラスでの指導方法に関する講義に加え、実際の英語学習者を相手にして行う教育実習が含まれます。英語のティーチングに活かせる実践的な知識とテクニックが詰まった内容で、これから教員・講師を目指す人や、すでに英語を教えていてさらなるスキルアップを図りたい人のどちらにも適したコースとなっています。
今回は、CELTAの概要やコースの受講費用、日本で取得する方法などを解説します。
※記事内の情報は、2024年1月更新時点のものです。
目次
CELTAとは
国際的な英語教授法資格のCELTA
CELTA(Certificate in English Language Teaching to Adults)は、ケンブリッジ大学英語検定機構が認定を行う国際的な英語教授法資格です。CELTA取得のためのコースは、座学形式の講義、授業計画の作成指導、英語学習者に対する教育実習を含む、120時間分以上のカリキュラムで構成されています。
筆記試験はなく、トレーナーがコース期間を通して受講生のパフォーマンスを評価します。教育実習の様子や受講中に取り組むライティング課題の内容などをもとに、pass A/pass B/pass/failのいずれかの評価が付き、pass以上の成績でCELTAの資格が与えられます。
CELTA取得コースでは、トレーナー1人に対して受講生は最大6人までという上限が定められており、指導員の目が行き届きやすい少人数制のクラスが特徴です。
CELTAを取得するメリット
英語を教える上で欠かせない知識を学び、授業計画の立案や教育実習を通じて実践的なスキルも磨けるCELTAは、英語教育に携わるあらゆる人たちにとって価値ある資格と言えます。
2017年11月から2018年1月にかけて、世界60ヵ国における600件の英語教育関連の求人情報を調査した結果によると、応募者にCELTAの取得を求める案件の割合は、ヨーロッパ・中東・アフリカで71.5%、イギリスでは88%にのぼりました(※)。
この結果から、CELTAは世界で広く認められており、語学教育機関が講師の採用を行う際に重視している資格の一つであることが分かります。
※参照:Cambridge English Language Assessment「Three quarters of ELT jobs ask for Cambridge CELTA」
CELTAとTESOLの違い
英語教授法について調べる中で、CELTAのほかに「TESOL(テソル、ティーソル)」という言葉を聞いたことがある方もいるのではないでしょうか。
CELTAは英語を教えるための資格である一方、TESOLは英語以外の母語を持つ人たちへ向けた教授法の学問分野そのものを指します。TESOL関連のプログラムを開講している語学スクールに加え、学位を取得できる大学・大学院もあることから、TESOLを学ぶ方法は多岐にわたります。
CELTAとTESOLは、英語教育の分野においてお互いが密接に関わるものですが、CELTAは「教える資格」、TESOLは「学問領域」を表すと認識しておくとよいでしょう。
CELTA取得コースについて
CELTAコースは、ケンブリッジ大学英語検定機構が認めた語学スクール・教育機関でのみ提供されています。2022年5月時点で、CELTAコースを開講しているスクールは、世界中で350ヵ所以上あります(※)。
ここからは、CELTA取得コースへの参加要件に加え、資格取得の難易度についても確認していきましょう。
※参照:Cambridge English Language Assessment「Find a teaching qualification centre」
CELTAコースへの参加要件
CELTAコースに参加するには、決められた要件を満たす必要があります。その上で希望のスクールへ申し込みを行い、トレーナーとの面接を経て受講の可否が決定します。
ケンブリッジ大学英語検定機構が定めているCELTAコースへの参加要件は、以下の通りです。
- 18歳以上であること
- 高等教育レベルのプログラムで学ぶために必要な水準の教育を受けていること
- 上級レベル以上の英語力を有すること(CEFR C1以上)
※上記の基準は、最低限満たすべき内容としてケンブリッジ大学英語検定機構が定めた要件です。コースを提供する各スクールによっては、詳細が異なる場合があります。
CELTAの受講中は、英語の4技能をフル活用することから、コースについていくためのハイレベルな英語力基準が設けられています。英語を母語としない人たちにとっては、英語力に関する要件を満たすことが一番の課題となるでしょう。英語レベルが上級(CEFR C1以上)と認められるには、IELTSでいうと最低でも7.0以上、TOEFL iBTでは95点相当のスコアが必要です。
2005年のデータによると、CELTAコース受講者のうち、英語を母語とする人の割合は75%でした。しかし、2018年頃には英語のネイティブスピーカーの割合が50%程度まで下がり、英語を母語としない参加者が増えてきていることが分かります(※)。
CELTA取得コースへの参加要件を満たすため、まずはIELTSやTOEFLでのハイスコア取得を目指すという方は、「TOEFL・IELTS対策に強いオンライン英会話を比較」の記事も参考にしてみてください。
※参照:Cambridge English Language Assessment「Does CELTA remain relevant in the 21st century?」
CELTA取得の難易度
受講に際して高い英語力が要求されるCELTAコースですが、実際に資格を取得する難易度はどの程度なのでしょうか。
2022年に実施されたCELTAコースに関するデータ(※)を見てみると、全受講者中、「fail」の評価が付き、資格を取得できなかった人の割合は0.4%でした。また、日本国籍を持つ受講生に限定した場合は、同年のデータで「fail」となった人はいませんでした。
参加者の資格取得率が高いのは、申し込み後のトレーナーとの面接段階において、コースを修了できるだけの英語力があるかを丁寧に見極めているからだと考えられます。つまり、無事に面接をクリアし、受講が認められた人には、CELTAを取得するための実力がきちんと備わっているとも言えます。
与えられた課題を提出しない、クラスを欠席するなどの行動がない限り、コースをパスすることは十分可能なため、過度に心配する必要はないでしょう。
※参照:Cambridge English Language Assessment「CELTA Grade Statistics 2022」
CELTAコースで学べること
CELTAコースの目的は、効果的な英語指導のために必要な知識を学び、大人の学習者を対象とした実用的なティーチングスキルを身に付けることです。
受講期間中は、英語教授法について学ぶ講義に加え、授業見学や教育実習にも取り組みます。
- 座学形式の講義
- トレーナーによるチュートリアル・サポート
- 授業計画の作成指導
- 6時間分の教育実習、トレーナーからのフィードバック
- 受講生同士の教育実習の見学
- 英語指導のプロフェッショナルが行う授業の見学(6時間分)
教育実習では、受講生一人ひとりが最低2つの異なる英語レベルのクラスを担当するなど、実際に英語を教える場面を想定した非常に実践的なコース内容となっています。
また、講義のセッションで学ぶ項目は、大きく分けて以下の5つです。
- Learners and teachers, and the teaching and learning context
- Language analysis and awareness
- Language skills: reading, listening, speaking and writing
- Planning and resources for different teaching contexts
- Developing teaching skills and professionalism
このほか、与えられたトピックに関する合計4つの英語ライティング課題(各750~1,000語で執筆)の提出が求められます。
選べる受講形式
CELTAコースは、提供するスクールごとにさまざまな受講スタイルがあります。受講期間によってフルタイムとパートタイムの区別があるほか、クラス形式についても対面授業またはオンラインを選べます。
- フルタイムコース
- パートタイムコース
- 対面形式(face-to-face)
- オンライン形式
- 対面とオンラインのブレンド形式
CELTAのフルタイムコースは、4~5週間の受講ですべてのカリキュラムを修了するスケジュールとなっています。短期間で集中的に資格取得を目指したい方におすすめです。
スクールによってタイムテーブルは異なりますが、午前中~夕方、昼頃~夜の時間帯に開講されることが多く、受講期間中は、休講日を除き毎日8時間程度の時間を必要とします。
パートタイムコースでは、平日や週末の決められた時間を使って受講を進めます。コース期間は、1週間あたりの受講時間によって変わりますが、8~14週間程度かかるケースが一般的です。
「フルタイムコースを受けるための時間を毎日確保できない」「仕事を続けながらCELTAを取得したい」という方にぴったりでしょう。
対面形式(face-to-face)のコースでは、スクールに通いながら受講をします。指導を担当するトレーナーやクラスメイトたちと直接顔を合わせることで、しっかりとコミュニケーションを深めながら学べるでしょう。
CELTAコースは、世界80ヵ国以上のスクールで開講されているため、興味のある国を選び、海外留学をしながら資格を取得することも可能です。
「通学できない事情がある」「スクールに通う手間をかけたくない」という方におすすめなのが、オンラインだけで受講が完結するコースです。座学講座や教育実習を含め、すべてのセッションをオンラインで実施するので、場所を問わずにCELTA取得を目指せます。
実際に英語を教える際、対面形式とオンラインのクラスでは異なるテクニックが必要となる場合があります。オンラインでのティーチングをメインに考えている方は、100%オンラインのコースを選択して教育実習に臨むのもよいでしょう。
対面とオンラインのハイブリッド型とも言えるのが、双方の特徴を併せ持ったブレンド形式です。スクールごとに組み合わせはさまざまですが、「座学講座はオンライン」「教育実習は通学での対面形式」というように、2つの受講スタイルを取り入れられます。
CELTAコースの受講費用
CELTAコースの受講料金はスクールごとに異なりますが、20万円台~30万円弱程度が一般的です。
対面形式で受講する際は、受講料に加え、スクールの近くに滞在するための宿泊費などがかかります。スクールによっては、比較的安価な料金で泊まれる受講生用の寮やアパートを手配してくれる場合もあるため、必要に応じて利用を検討してみましょう。
日本でCELTAを取得するには?
2022年5月現在、日本でCELTAコースを開講しているのは以下の2校です。対面形式での受講を希望する場合は、スクールの所在地である兵庫県神戸市への通学が必要となります。
- Lexis TESOL Training Centres Japan(兵庫・神戸)
- Language Resources(兵庫・神戸)
受講形式:フルタイム(対面)、パートタイム(オンライン)
URL:http://lexisenglish.co.jp/courses/celta/
受講形式:パートタイム(対面)
URL:http://www.language-resources.co.jp/teachers/
そのほか、日本にいながら学ぶ手段としては、日本との時差が比較的小さいアジア・オセアニア地域のスクールが提供しているオンラインコースを受講する方法も挙げられます。自分自身にとって都合の良い時間帯を整理した上で、各国のスクールのコース日程を確認してみましょう。
CELTAコース受講時の注意点
クラス外での準備・学習に80時間程度の確保が必要
CELTAでは、コースそのものの受講に費やす時間に加え、講義の予習や課題に取り組むために最低でも80時間程度が必要と言われています。クラス外での学習時間を十分に確保できていない場合は、受講中のパフォーマンスの低下にもつながりかねません。特に仕事を続けながらの受講を考えている方は、スケジュールに無理がないかしっかりと検討した上でコースに臨むことが大切です。
CELTAで扱うのは「英語を英語で教える」直接法
すべてのセッションを英語で行うCELTAでは、ダイレクト・メソッドと呼ばれる直接法の実践が中心です。つまり、日本で開講されているCELTAコースに参加し、日本人学習者を相手に教育実習をする場合でも、授業の進行や指示を含め、「英語を英語で教える」ことになります。
これは、国籍を問わず、英語を母語としないあらゆる学習者を対象とした教授法について学ぶCELTAならではの特徴です。「日本人学習者を想定し、日本語を補いながらレッスンを進める指導方法を学びたい」という具体的な要望がある方のニーズにはマッチしないため注意しましょう。
まとめ
英語教授法の資格として、世界的に知られているCELTA。CELTAコースの受講経験者からは、授業準備や教育実習、ライティング課題など、すべてのタスクを英語でこなすのはなかなかハードだったという声も上がっています。
誰もが容易に取得できる資格ではないからこそ、CELTAを通じて得た専門知識とスキルは、英語教員・講師としてのキャリアを一層充実させてくれるでしょう。
「英語を教えるスキルを磨きたい!」という方は、世界基準の英語教授法資格であるCELTAコースの受講を検討してみてはいかがでしょうか。
【参照サイト】Cambridge English Language Assessment:CELTA
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