全国通訳案内士(通訳ガイド)になるには?試験の難易度や科目免除の条件も

全国通訳案内士(英語表記:National Government Licensed Guide Interpreter)は、観光庁が主催する試験に合格し、居住する都道府県での登録を受けた人に与えられる国家資格です。海外からの旅行客に日本を紹介する役割を担う全国通訳案内士は、語学力に加え、歴史・文化などの幅広い知識が必要な専門性の高い仕事として注目を集めています。

今回は、観光を通じて国際交流に携われる全国通訳案内士について詳しく解説します。年に1回実施される試験の難易度や合格率、一部の試験科目が免除となる条件も紹介しますので、資格取得に興味のある方はぜひ参考にしてみてください。

※記事内の情報は、2022年6月調査時点のものです。

目次

全国通訳案内士とは

通訳案内業務を行うための国家資格

全国通訳案内士の業務は、「報酬を得て、通訳案内(外国人に付き添い、外国語を用いて、旅行に関する案内をすることをいう。)を業とする。(※)」と定義されています。

2017年までは、有償で通訳案内を行う業務の対象者を通訳案内士の資格保有者のみに限定する業務独占規制が設けられていました。しかし、2018年1月の改正通訳案内士法の施行以降、資格を持たない人でも報酬を得て業務をすることが可能となっています。

法律の改正により、通訳案内業務の門戸は広がったと言えますが、名称の使用に関しては制限があるため注意が必要です。たとえば、資格保有者以外は、「全国通訳案内士」をはじめ、「通訳ガイド」「日本ガイド」「認定ガイド」などの類似名称も含めて使用が禁じられています。

※出典:通訳案内士法(昭和二十四年法律第二百十号)

全国通訳案内士になるには

全国通訳案内士になるには、毎年1回実施される全国通訳案内士試験に合格し、居住地の都道府県にて登録を行う必要があります。

また、2020年4月からは、全国通訳案内士の資格保有者を対象とする通訳案内研修がスタートしました。研修は、5年に1度のペースで受講が義務付けられているもので、観光庁が定める登録機関リストで研修内容や日程を確認し、期限までに各自で受講を完了させなければなりません。

地域通訳案内士との違い

地域通訳案内士は、外国人旅行客にその土地ならではの観光の魅力を伝えるために創設された資格です。各市町村または都道府県が定めた応募要件を満たし、所定の研修を修了することで資格が与えられます。活動範囲は特定の地域内に限られており、全国通訳案内士試験の受験は不要です。

一般的に、応募要件の中では、語学力の証明としてTOEICスコア(英語)やその他の言語の検定試験結果が求められるほか、研修の受講後に口述試験を設けている地域もあります。

2021年4月時点では、東京都、北海道、沖縄県、京都市をはじめとする全国40地域が地域通訳案内士の育成に取り組んでいます(※)。募集の有無や対象言語、登録までの流れは自治体ごとに異なるため、地域通訳案内士を目指す場合は、各地域の募集要項や応募方法をよく確認しておきましょう。

※参照:国土交通省 観光庁「地域通訳案内士の導入状況(全国一覧)

全国通訳案内士試験について

資格を取得するためにまずクリアしなければならないのが、全国通訳案内士試験です。受験のチャンスが年に1度しかないことから、合格を目指すには入念な準備が欠かせません。

ここからは、試験内容の詳細やその難易度について見ていきましょう。

全国通訳案内士試験 概要

全国通訳案内士試験は、年齢や国籍を問わず、資格取得を目指すすべての人が受験できます。試験内容は、大きく分けて筆記と口述の2種類です。

筆記(第1次)試験

筆記試験の科目は、下表の通りです。外国語に関しては、英語、フランス語、スペイン語、ドイツ語、中国語、イタリア語、ポルトガル語、ロシア語、韓国語、タイ語のうち1つを選択します。

試験科目 試験時間 満点 合格基準点
外国語 90分 100点 70点
日本地理 30分 100点 70点
日本歴史 30分 100点 70点
産業、経済、政治及び文化に関する一般常識 20分 50点 30点
通訳案内の実務 20分 50点 30点

試験形式は、いずれもマークシート方式です。筆記試験では、原則的に上記の科目すべてで合格基準点に達しているかどうかで合否が判定されるため、どの分野でもバランス良く得点することが求められます。

口述(第2次)試験

口述試験は、通訳案内の現場を想定した実践的なコミュニケーション能力の判定を目的として行われるものです。試験時間は10分程度で、「通訳案内の現場で必要となる知識等に関する外国語訳及び全国通訳案内士として求められる対応に関する質疑」と「プレゼンテーション問題」の2つの課題に取り組みます。

1つ目の課題では、試験委員が読み上げた日本語を外国語に訳し、その内容に関連する質問に答えます。口述試験で使用する外国語は、筆記試験時に選択した言語と同じものです。

プレゼンテーション問題では、提示される3つのテーマの中から受験者が1つを選び、テーマについて外国語で説明をした上で試験委員との質疑応答に臨みます。

口述試験の合否については、以下の評価項目に基づき、合格基準点(7割が原則)に達しているかどうかで判定が行われます。

【口述試験での評価項目】

  1. プレゼンテーション
  2. コミュニケーション(臨機応変な対応力、会話継続への意欲等)
  3. 文法及び語彙
  4. 発音及び発声
  5. ホスピタリティ(全国通訳案内士としての適切な受け答え等)

試験の難易度・合格率は?

全国通訳案内士の登録者数は、2022年4月1日時点でおよそ2万6,000人です。

観光庁の代行機関として毎年試験を実施している日本政府観光局(JNTO)によると、2021年度は、対象の全10言語で総勢3,834名が全国通訳案内士試験を受験し、最終合格者は347名でした。全体の合格率は9.1%となっており、資格の取得は狭き門であることが分かります。

また、受験者数の多い上位5言語のデータは以下の通りです。2021年度の試験で最も合格率の高かったフランス語の場合でも、合格者の割合は20%を下回っています。

言語 受験者数(人) 最終合格者数(人) 合格率
英語 2,955 251 8.5%
中国語 343 25 7.3%
フランス語 134 25 18.7%
スペイン語 117 13 11.1%
韓国語 103 15 14.6%

※出典:日本政府観光局「2021年度 全国通訳案内士試験 受験者数及び合格者数

試験科目の一部免除を受けるには

全国通訳案内士試験の筆記試験科目は5つあり、そのすべての対策を完璧に行うことは容易ではありません。そこで、すでに取得している語学試験のスコアなどで十分な実力を示せる場合は、一部の科目の受験が免除となる制度を活用するとよいでしょう。前年度に受けた筆記試験において、一部または5科目すべてに合格しているケースでも、当該科目が免除となります。

以下に示す免除科目とその条件は一例です。英語以外の言語でも対象となる検定試験が設定されているので、詳細については日本政府観光局のウェブサイトで公開されている「施行要領」をご確認ください。

免除対象の科目 免除の条件
筆記試験(英語) ・実用英語技能検定1級に合格
・TOEIC L&R Testで900点以上を取得
・TOEIC Speaking Testで160点以上を取得
・TOEIC Writing Testで170点以上を取得
※TOEICはいずれも公開テストのスコアのみが対象
筆記試験(日本地理) ・総合・国内旅行業務取扱管理者
・一般・国内旅行業務取扱主任者
・一般・国内旅行業務取扱主任者認定証保有者
※旅程管理主任者(ツアーコンダクター)の資格は対象外
筆記試験(日本歴史) ・歴史能力検定で日本史1級または日本史2級に合格
・大学入試センター試験の「日本史B」で60点以上を取得
筆記試験(一般常識) ・大学入試センター試験の「現代社会」で80点以上を取得
前年度の試験で合格した一部科目 ・前年度の筆記試験で一部科目に合格
※外国語科目は前年度と同一の言語に限る
前年度の試験で合格した5科目すべて ・前年度の筆記試験で5科目すべてに合格(口述試験の不合格者・未受験者が対象)
※外国語科目は前年度と同一の言語に限る

※大学入試センター試験の得点の利用は、当該得点を取得した年度、及びそこから5年以内に実施される全国通訳案内士試験のみが対象です。2021年から導入された「大学入学共通テスト」の得点は対象外のためご注意ください。

2022年度の全国通訳案内士試験日程

2022年度の全国通訳案内士試験は、下記の日程で開催予定です。受験を希望する場合は、施行要領を確認した上で期限内に手続きを済ませましょう。出願方法は、オンラインでの電子申請のみとなっています。

【2022年度 全国通訳案内士試験日程】

  • 願書受付:
     2022年6月1日(水)~7月11日(月)
  • 筆記試験:
     2022年8月21日(日)
  • 筆記試験合格発表:
     2022年11月10日(木)
  • 口述試験:
     2022年12月11日(日)
  • 最終合格発表:
     2023年2月3日(金)

※上記の日程はすべて2022年6月6日時点での予定です。
※最新情報や詳細については、日本政府観光局のウェブサイトをご参照ください。

全国通訳案内士試験の対策方法

全国通訳案内士試験に合格するには、試験日程から逆算して学習計画を立て、十分な時間をかけて準備をすることが大切です。

全国通訳案内士試験を主催する日本政府観光局では、過去の筆記試験で出題された問題をウェブサイト上で公開しています。著作権の関係上、一部の問題は非公開となっていますが、試験の全体像をつかむため、はじめに目を通しておくことをおすすめします。

市販の教材を使って独学で対策をする

独学で試験に挑む場合は、市販教材を活用して試験勉強を行うとよいでしょう。筆記試験の科目別テキストや、口述試験の対策本、問題集など、販売されている教材の種類は多岐にわたります。

試験対策講座を提供しているスクールで学ぶ

「独学での対策は難しそう」「プロの講師からの指導を受けたい」という場合は、全国通訳案内士試験に特化した対策講座を提供している専門スクールで学ぶ方法もあります。

たとえば、「ESDIC(エスディック)英語能力開発アカデミー」では、筆記試験の予想出題内容や解説が週2回のペースで配信されるメール講座、録画受講も可能なZoomセミナーなど、複数の種類の講座を開講しています。

資格対策スクール主催の公開模試を受験する

本番前の総仕上げとしておすすめなのが、資格対策スクールが主催する公開模試の受験です。試験対策教材の監修も手掛けている「True Japan School」では、最新の出題傾向を取り入れた模擬試験を実施しています。

受験後は、成績表とともに解答・解説が送付されるため、試験前の腕試しや実力チェックにもぴったりです。

資格取得後に全国通訳案内士として働くには

試験に合格し、都道府県での登録手続きを済ませると、「全国通訳案内士登録証」が発行されます。

資格は取得したものの、通訳ガイドとしての実務経験がない場合は、新人研修を実施している団体でトレーニングを積むとよいでしょう。研修終了後に旅行エージェントの求人・面接情報を提供している団体もあり、その後のキャリアに関わる情報も得られます。

全国通訳案内士として通訳ガイド業を行うだけでなく、資格を活かして旅行会社やホテルなどの観光業界で働く選択肢もあります。取得の難易度が高い国家資格を持っておくことで、関連する業界への就職・転職時にも役立つでしょう。

まとめ

専門知識を持った観光のプロフェッショナルとして、日本を訪れた外国人旅行客をガイドする全国通訳案内士。言語に関わる分野で唯一の国家資格であり、専門性をアピールする貴重な武器にもなり得ます。

「観光業に携わっており、今よりもさらにキャリアアップしたい」「英語力を活かし、全国通訳案内士として働いてみたい」という方は、資格の取得にチャレンジしてみてはいかがでしょうか。

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English Hub 編集部

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