IELTS(アイエルツ)とは?受験の流れから出題傾向まで

IELTS(International English Language Testing System:アイエルツ)は、イギリスで開発された英語の4技能テストです。アメリカ、オーストラリア、ニュージーランド、カナダ、イギリスなどの英語圏を中心に高い知名度があり、アメリカ発のTOEFL同様、IETLSのスコアは海外留学や移住申請時の英語能力の証明として採用されています。年間受験者数は2018年には世界で350万人を超え、日本でも大学入試での活用や、団体受験を行う教育機関が増えている国際的な試験です。

このページでは、IELTSの概要や試験科目ごとの出題内容、申し込み方法について解説します。

目次

IELTSの試験概要

IELTSは、ブリティッシュ・カウンシル、ケンブリッジ大学英語検定機構、IDP:IELTSオーストラリアが共同で運営する国際英語試験です。英語力の指標となるIELTSのテストスコアは、世界140ヵ国の教育・政府・国際機関、企業など、11,000以上の団体に活用されています。日本では、ブリティッシュ・カウンシルとIDPがそれぞれ直営のテストセンターを開設しているほか、パートナーシップを結んでいる公益財団法人日本英語検定協会やUK PLUSが運営する会場での受験も可能です。

「アカデミック」と「ジェネラル」の2種類の試験がある

IELTSには、「アカデミック・モジュール」と「ジェネラル・トレーニング・モジュール」の2タイプがあります。受験の際は、スコアの利用目的や提出先機関を確認した上で適切な種類を選択しましょう。

【IELTS アカデミック・モジュール】

主に英語圏の大学・大学院への留学申請時に利用される。試験内容は、大学の講義、学術論文、専門家の講演など、学術的な会話や場面を想定した出題が中心。

    IELTS アカデミックのスコアが求められる場面の例:

  • 学士および修士学位取得のための海外留学時
  • AOや推薦入試でIELTSの活用を行っている日本の大学への出願時
  • イギリスの大学に正規留学するための学生ビザ(Tier 4)の申請時
  • 英語圏の専門機関における就労時
【IELTS ジェネラル・トレーニング・モジュール】

英語圏での就職や移住に伴うビザの申請時に利用される。規定のスコアとともに他の諸条件を満たすことで、オーストラリア、カナダ、ニュージーランドへの永住申請が可能に。試験では、日常生活や職場でのやり取りに関する設問が多く出題される。

    IELTS ジェネラルのスコアが求められる場面の例:

  • 学士以下の海外留学時
  • 英語圏における一般的な就労・職業訓練への参加時
  • 英語圏への移住時

また、上記2種類のIELTSのほかに、イギリス留学や移住等でビザ申請を行う人を対象とした「IELTS for UKVI(IELTS for UK Visas and Immigration)」があります。イギリスの教育機関や移民局から指定された場合に限り、「IELTS for UKVI」の受験が必要です。

※実際に受験が必要なテストの種類を判断する際は、必ずスコア提出先にご確認ください。

試験科目は英語の4技能すべて

IELTSは、以下4科目で構成されています。試験自体の合計所要時間は約3時間ですが、リスニング・リーディング・ライティングの終了後、試験官と1対1の面接形式で行うスピーキングテストの順番が回ってくるまでに待ち時間が発生する場合もあります。 

【IELTSの試験科目と所要時間】

  • リスニング(30分)
  • リーディング(60分)
  • ライティング(60分)
  • スピーキング(11分~14分)

IELTSの試験は、マークシート方式ではなく、受験形式に応じて筆記またはコンピューターでの入力による解答が求められます。問題によっては「2ワード以内で解答」などの語数制限があるため、それぞれの設問をよく読み、指示された方法に従って解答しましょう。

ペーパー版またはコンピューター版の受験形式を選択可能

IELTSの受験形式には、紙と鉛筆を用いて行うペーパー版と、コンピューター版(CDI:Computer-delivered IELTS)の2種類があります。ペーパー版のIELTSは、東京・大阪以外にも札幌、仙台、神戸、広島、福岡をはじめとする全国各地の都市で開催されています。一方、2023年12月現在、コンピューター版は、東京・名古屋・大阪・京都の指定会場でのみ受験が可能です。

【IELTS ペーパー版の特徴】

  • 紙と鉛筆を使って問題を解く、多くの人が慣れ親しんだ試験形式
  • パソコン操作やタイピングに苦手意識がある方でも挑戦しやすい
  • リーディングの長文を読みながら問題用紙に直接メモや印を書き込める
  • 試験結果の発表は受験から13日後
【IELTS コンピューター版(CDI)の特徴】

  • リスニング時に専用のヘッドフォンを使える
  • タイピングに慣れていれば、ライティング時の文章の入力が容易かつスピーディー
  • 試験結果の発表は受験から3~5営業日後で、ペーパー版よりも早い
  • 一科目のみの再受験「One Skill Retake」が利用可能

最寄りの試験会場で受験できる形式と、ペーパー版、コンピューター版それぞれの特徴を確認した上で、自分に適していると思う方を選びましょう。

IELTSコンピューター版のみで利用可能な「One Skill Retake」とは

IELTSの「One Skill Retake」とは、通常通り4科目の試験を受けた後、任意の1科目のみを再受験できる制度のことです。コンピューター版試験のみが対象で、日本では2023年12月より順次、各試験運営団体での導入が始まりました。

留学や移住などの目的に向けて、決められた期限内に目標スコア達成を目指す人が多い中、One Skill Retakeを活用すれば、試験当日に実力を十分に発揮できなかった科目や、もう一歩スコアを伸ばしたい科目で再度目標達成のチャンスが得られます。

    【IELTS One Skill Retake概要】

  • 受験料:15,989円~(試験運営団体により異なる)
  • 受験可能期間:元の試験日より60日以内
  • 受験場所:IELTSコンピューター試験を実施する一部の会場のみ
  • ※その他、詳細な条件等は各試験運営団体のウェブサイトでご確認ください。

IELTS One Skill Retakeを利用して得られたスコアは、オーストラリア内務省を含む、世界700以上の機関での提出が認められています。出願前には、下記のIELTS公式ウェブサイトのリストを参考に、自身の出願先でスコアが正式に受理されるかを確認してください。

※参照:IELTS|Who accepts IELTS One Skill Retake?

IELTSの科目別出題内容

ライティング

  • アカデミック・モジュール
  • 2つの課題(Task)が出題され、試験時間は60分です。Task 1では、視覚的資料(表やグラフ、図形)の情報に基づいて150語以上の英作文を、Task 2では、提示された主張や問題について250語以上のエッセイを書きます。

  • ジェネラル・トレーニング・モジュール
  • 課題ごとの語数の設定はアカデミックと同じですが、Task 1では、説明された状況に対して手紙形式の英作文を行うなどの対応を求められます。Task 2では、与えられた見解や議論、問題に関してエッセイを書くため、アカデミック・モジュールと似ています。

リーディング

  • アカデミック・モジュール
  • 3つの長文パッセージが出題され、合計60分で問題に解答します。各パッセージの長さは900語程度です。書籍、雑誌、専門誌、新聞などから抜粋された文章が出題されます。

  • ジェネラル・トレーニング・モジュール
  • アカデミックと同様、問題は3つのセクションに分かれていますが、500語程度の短いパッセージ4つと、900語程度の長文1つで構成されているのが特徴です。短めのパッセージが多いことから、アカデミックの長文よりも比較的読みやすいと言えるでしょう。出題される文章の内容は、広告、企業ハンドブック、公的文書などからの抜粋です。

スピーキング

  • アカデミック、ジェネラル共通
  • 所要時間は11分~14分で、試験官との面談形式により進行します。内容は3つのパートで構成され、パート1ではまず受験者の本人確認と、仕事や出身地など一般的なトピックについての質問があります。パート2では、Task Cardが与えられ、そこに書かれているトピックについて話すよう指示されます。約1分の準備時間に続き、2分間のスピーチを行った後で、試験官から1~2つの質問を受けます。パート3では、パート2で話したトピックについて4~5分程度のディスカッションを行います。

リスニング

  • アカデミック、ジェネラル共通
  • 4つのセクションに分かれており、問題数は40問、所要時間は約30分です。スピーカーのアクセントについては、「標準発音(Received Pronunciation)」を代表とするイギリス英語のみならず、アメリカ英語など、他地域で話されている英語のアクセントも盛り込まれています。ペーパー受験の場合のみ、すべての問題音声が流れた後、解答用紙に答えを転記する時間(10分)が設けられています。

IELTSのスコアと有効期限

IELTSは、合否判定試験ではありません。「合格」「不合格」という結果ではなく、受験者の英語力を1.0~9.0まで0.5刻みの「バンドスコア」として評価します。

ライティング、リーディング、リスニング、スピーキングのそれぞれでバンドスコアが算出され、4技能の平均点がOverall(オーバーオール)スコアとなります。IELTSのスコアの有効期限は、筆記テスト当日を含め、通常2年以内です。

教育機関などに対し、入学要件を満たす英語力の証明としてスコアを提出する際は、Overallスコア以外にも「各科目で○点以上を取得」といった条件が設けられている場合があります。あらかじめ詳細を確認しておきましょう。

受験時の申し込み方法と注意点

IELTSを受験する際は、各運営団体のウェブサイトから申し込みをします。

受験申し込み時には、試験当日に持参するパスポート情報の登録が必要です。パスポートの原本とともにそのカラーコピーの持参を求められるなど、運営団体によって当日の持ち物が異なる場合があるためご注意ください。

なお、IELTSでは、聴覚障がいのある方、視覚障がいのある方、難読症の方への特別措置を実施しています。点字による出題など、特別な試験問題・解答用紙の作成を希望する方は、予定試験日の3ヶ月前までに、試験時間の延長といった対応(※)に関しては、6週間前までにテストセンターへの連絡が必要です。

※IELTSコンピューター版では時間延長措置を行いません。

IELTSの試験対策

IELTSで目標スコアを取得するためには、事前の受験準備が欠かせません。留学や移住を計画しているスケジュールから逆算し、スコアの提出期限を常に意識しておくことが重要です。

目安となる勉強量(※)として、Overall 4.0から4.5へスコアアップするためにはおよそ200時間、7.0から7.5に達するためには300~400時間程度がかかるとも言われています。

問題集を購入するなどして独学での対策も可能ですが、客観的なフィードバックが特に重要なライティング・スピーキングでは、各スクールで提供しているIELTS対策専用コースの受講がスコアアップの近道となる場合もあります。

試験対策に費やせる予算や時間に応じて、効率的に目標達成を目指せる方法を選びましょう。

※参照:満点講師 正木レイヤのIELTSブログ「IELTSはどれだけ勉強時間を確保すべき?スケジュールの立て方をご紹介

まとめ

IELTSを受験する際は、十分な時間の余裕を持って試験準備に取り組むことをおすすめします。

まずは、IELTSの試験様式をしっかりと把握しましょう。マークシート方式のように、与えられた選択肢から答えを選ぶタイプの問題と比較すると、自ら解答を手書き(または入力)するIELTSの形式にプレッシャーを感じる方も多いはず。英単語のスペルミスにも注意が必要です。

公開されているIELTSのサンプルテストや市販の公認問題集を活用すれば、本番を想定した模試にもチャレンジできます。試験当日に力を発揮するためには、問題を繰り返し解き、試験形式に慣れておくことがポイントです。

※本文中の記述は、2023年12月現在の情報に基づくものです。変更の可能性がありますので、最新の情報については運営団体の公式サイト等でご確認ください。

【参照サイト】IELTS Home of the IELTS English Language Test
【参照サイト】公益財団法人 日本英語検定協会 IELTS公式サイト
【参照サイト】IDP Education IELTS公式サイト(日本版)
【参照書籍】IELTSブリティッシュ・カウンシル公認問題集
【関連ページ】英語試験における障がいのある方向けの配慮まとめ(英検・TOEIC・IELTS・TOEFL iBTほか)

記事監修:正木 伶弥先生

ブリティッシュ・カウンシル公認 IELTSエキスパート。14歳時、同機関の奨学金により、英ゴスフィールドにあるボーディング・スクールへ1か月間、人生初の留学。翌年中学校卒業後またすぐ渡英し、別のボーディング・スクールを経て、ロンドン大学クイーン・メアリー校へ進学・卒業。同校卒業直前にCELTA (Certificate in Teaching English to Speakers of Other Languages) を取得し、帰国後はIELTSをメインに指導。TOEFL iBT120点、英検1級取得後、IDP公式IELTS教員研修修了(日本第一号)。2022年には書籍『はじめてのIELTS対策トレーニング』を出版。

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Yukari

オーストリア、ウィーン在住。日本の大学ではフランス語を専攻、卒業後は英国の大学院で国際政治を学ぶ。これまでロンドン、ニューヨーク、トロント、モントリオール、パリ、シンガポールに在住。各英語圏における英語の違いに興味を持つ一方、イギリス英語に魅せられる。現在はリサーチャーとして主に欧州における英語・フランス語圏の政策調査に携わる傍、執筆活動も行う。