TESOL(テソル、ティーソル)とは、英語を母語としない学習者へ向けた英語教授法の学問領域のことです。
英語を教える仕事をしている方、あるいは教員・講師を目指している方にとって、英語教授法を学ぶことは大きな武器となり得ます。「教え方を学ぶ」英語教授法の知見は、英語力の高さを示すTOEIC、TOEFL、IELTSなどのスコアと同様、指導者としての価値やスキルを高めるものです。
そこで今回は、英語教授法と関連して話題にのぼることが多いTESOLについて詳しく解説します。「そもそもTESOLとは何なのか」に加え、TESOLを学ぶための具体的な方法や注意点も見ていきましょう。
※記事内の情報は、2023年6月調査時点のものです。
目次
TESOL(テソル、ティーソル)とは
TESOLは英語教授法の学問分野を指す
TESOL(Teaching English to Speakers of Other Languages)は、英語以外の言語を母語とする人たちへ向けた英語教授法のことです。
学問領域そのものを指すため、日本における教員免許や、英語検定試験を受けて手に入れる資格・スコアとは位置づけが異なります。一般的には「TESOLを学んだ」「TESOLプログラムを修了した」などと表現され、大学や大学院で学んだ場合は、学士号(BA in TESOL)・修士号(MA in TESOL)・博士号(Ph.D in TESOL)の学位を取得可能です。
TESOLとTEFL・TESLの違い
TESOLに似た言葉として、TEFL(テフル)やTESL(テスル)という用語を聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。
そもそもTESOLは、TEFLとTESLを包括する大きなカテゴリーの総称としての役割を持ちます。文脈によっては、これらの用語が同義的に使われる場合もありますが、TEFLとTESLの定義については以下の通りです。
TEFL(Teaching English as a Foreign Language)
TESL(Teaching English as a Second Language)
日本人が日本で英語学習をする場合と、英語圏に留学して学ぶ場合とでは、授業以外の日常生活で英語に触れる機会・時間など、言語の学習環境に違いがあります。TEFLとTESLが区別されているのはこのためですが、これら二つを含め、「英語を母語としない人たちに向けた英語教授法」として存在するのがTESOLです。
英語教授資格ならCELTA、DELTA
TESOLが学問領域自体を意味する一方で、英語を教えるための国際的な資格といえば、CELTA(セルタ)やDELTA(デルタ)が挙げられます。CELTAは、ティーチングの入門資格として英語講師を目指すネイティブスピーカーからの知名度が特に高いですが、本人の国籍や英語が母語どうかを問わず取得できます。
CELTA(Certificate in English Language Teaching to Adults)
英語を母語としない大人の学習者に対して英語を教えるための入門資格。ケンブリッジ大学英語検定機構により認定されている。
DELTA(Diploma in Teaching English to Speakers of Other Languages)
CELTAと同じく、ケンブリッジ大学英語検定機構が認定を行う英語教授の上級資格。資格取得には最低でも1年以上の英語指導経験があることが条件とされ、英語を母語としない子どもから大人まで、あらゆる年齢の学習者を対象とする。
CELTA、DELTAのいずれも資格取得のためのコースはすべて英語で行われ、プログラムへの参加にはネイティブスピーカー同様の英語力(最低でもIELTS7.5~8.0程度のスコア)が求められます(※)。英語が母語でない場合は、まずはこの参加要件を満たすことが課題となるでしょう。
※CELTA、DELTA取得プログラムへの参加条件の詳細は、コースの提供機関により異なります。
TESOL関連の資格・学位の取得方法
英語を教える立場としてTESOLを学ぶ際には、具体的にどのような方法があるのでしょうか。ここからは、語学学校や専門スクールに通う場合と、大学・大学院で学位を取得するパターンの2種類をご紹介します。
1. TESOL講座のある語学スクール・専門学校で学ぶ(日本・海外)
TESOLを学びたい人たちに向けて、日本国内・海外を問わず、数多くのスクールで専用の講座が開講されています。受講形式や期間・費用は、コースを提供する教育機関ごとに異なるため、自分の希望やライフスタイルに合わせて選べる幅広い選択肢が魅力です。
現役の英語教員・講師のスキルアップのための講座だけではなく、これから講師を目指す英語指導未経験の方にもぴったりなコースが見つかるでしょう。
受講形式は通学またはオンラインを選べる
TESOLコースを提供しているスクールには、通学をして対面形式で受ける講座のほか、オンラインのクラスもあります。時間の融通が利きやすいオンラインコース・通信講座で仕事を続けながら学んだり、短期間の通学で集中して授業を受けたりと、人によって活用方法はさまざまです。自分のスケジュールや学習に費やせる時間と照らし合わせた上で、最後までしっかりと受講を続けられるプログラムを選びましょう。
日本にあるスクールで学ぶ場合は、現役の教師や、同じように日本で英語講師を目指すクラスメイトと一緒に切磋琢磨しながら学習に取り組めます。しかし、TESOLが学べるのは、日本国内に拠点を持つスクールだけではありません。海外の学校では、世界中の国から集まった受講生と一緒に授業を受けるケースも多く、お互いの国の英語教育事情について話してみるなど、グローバルな環境で生まれるコミュニケーションも楽しみの一つです。
受講期間は1週間程度の短期から数ヶ月単位のコースも
TESOLの専門講座は、1週間~数ヶ月の受講期間のものから、150時間分、180時間分などのカリキュラムを決められた期限内に修了するプログラムまで多種多様です。一般的には、学習時間が長いほど学べる項目も多くなるため、そのぶん身につく内容や専門性も高まります。
「まずは短期間の受講で英語教授法に関する基本知識を身に付けたい」「英語講師の仕事を探す際に有利になるように、一定期間以上のコースでしっかり学びたい」など、受講の目的をあらかじめ明確にしておくことで自分に適した講座が選びやすくなるでしょう。
受講費用はコースの期間により異なる
短期から長期までさまざまなプログラムがあるだけに、受講にかかる費用もスクールやコースによって異なります。たとえば、「INTESOL JAPAN(インテソルジャパン)」が提供している150時間の通信講座は、4万円台~受講が可能です。
予算に見合った受講料金かどうかだけでなく、コースを終えた後に付与される修了証明書の種類、使い道なども考慮に入れつつ、最適だと思うプログラムを選ぶことが大切です。
2. 日本や海外の大学・大学院で専攻として学ぶ
よりじっくりと英語教授法の専門知識を深めたい場合は、日本または海外の大学・大学院でTESOLを専攻として学ぶことも可能です。修士課程(MA in TESOL)では、入学の際に学士課程で学んだ専攻分野や英語指導の経験を問わないケースも多いですが、博士課程に関しては、一定期間の英語教授経験などが求められることがあります。
通学での受講が一般的だが、オンラインで完結するコースも存在
大学・大学院でTESOLを学ぶ際は、実際に通学をして授業を受けるパターンが一般的です。ただし、一部のプログラムでは、オンラインで受講ができる場合もあります。アメリカ・カリフォルニア州にあるアナハイム大学(Anaheim University)は、日本にいながらアメリカの大学の授業を受けられる通信制のTESOLコースを提供しています。受講中は、ライブ授業に加え、アメリカあるいはその他のロケーションで開催される4日間の集中講義(2回分)があり、課題の提出・試験もオンラインで行いながら修士号・博士号を取得可能です。
修士課程は約1~2年、博士課程は3年程度の期間が必要
大学院に入学して学位を取得する場合、修士課程はおよそ1~2年、博士課程は3年程度の時間がかかります。大学を卒業してからそのまま大学院に進むほかは、仕事を休職または退職して臨むケースがほとんどでしょう。
選択肢としてのハードルはやや高いですが、修士号・博士号は国際的にも通用する学位のため、将来目指すキャリアのために一度腰を据えてTESOLを学ぶのも一つの手です。「英語教授法について本格的に研究したい」「指導者を教える上級トレーナーの立場を目指したい」と考えている方に向いていると言えます。
日本の大学院の授業料は年間で約50万円、在学中の生活費用も考慮すること
日本の大学院に通う際、国公立では30万円弱の入学金に加え、年間でおよそ50万円の授業料が必要です。また、海外の大学院では、1年で約200~300万円以上の学費がかかるケースも多く、経済的な負担がより大きくなる傾向にあります。
仕事を辞めて学業に専念するケースでは、授業料そのものに加え、在学中の生活費も確保しておかなければなりません。条件によっては、奨学金を使って学費を抑えられる場合もあるので、利用できる制度を調べた上で判断しましょう。
TESOLを学ぶ際の注意点
国際的に認められるのは修士号以上の学位
数十時間単位のプログラムから、1~3年程度の時間をかけて取得する学位まで、TESOLを学ぶ際には幅広い選択肢があります。いずれの場合も、英語教授法の基礎や専門知識を身に付けられることには変わりありませんが、国際的かつ専門性の高い機関で認められているのは、修士号以上の学位です。
より高度な知識とスキルを持った教員・講師を採用している教育機関は、修士号以上の学位のみを対象とし、語学スクールが発行しているTESOL講座の修了証明書(Certificate)は受け付けていないケースもあるため、求人に応募する際などは注意しましょう。
学校で英語を教える場合は別途教員免許が必要
英語教授法について学ぶTESOLは、日本の学校で教えるための教員免許のような資格とは性質が異なります。学校の先生を目指す場合は、別途教職課程を履修した上で教員免許の取得が必要です。
国際化に伴い、英語教育の重要性が一層高まる中、教員免許の取得に加え、英語の教え方を専門的に学んだ教員は、教育現場における貴重な戦力として活躍の場が広がるでしょう。
まとめ
英語を母語としない学習者に対する教え方を研究する学問分野のTESOL。指導者自身の語学力の高さと、分かりやすく英語を教えるスキルは別物であり、英語講師としてはそのどちらも絶えず磨き続ける必要があります。時間や経済的な面で一定のコミットメントが求められるTESOLのプログラムですが、英語教授法について体系的に学んだ経験は、英語を教えるキャリアの中でもきっと活きてくるはずです。
英語教育のプロフェッショナルを目指す方は、専門性を磨くTESOL講座の受講を検討してみてはいかがでしょうか。
英語を教える仕事
Moe
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