海外の人の目に、日本の日常生活はどのように映るのでしょうか?
今回は、アフリカ・ボツワナ出身で、日本に4年間の留学経験があるTumiさんにインタビューを実施。Tumiさんは、女優・映画製作者として活躍する傍ら、オンライン英会話「Cambly(キャンブリー)」で講師としても活動しています。
ボツワナでは、公用語が英語、国語がツワナ語です。「環境を一新し、英語以外が話される国で学んでみたい」という想いから、ボツワナ政府の奨学金制度を活用し、立命館アジア太平洋大学(大分県別府市)に留学したTumiさん。日本で感じた母国との違いや共通点、滞在期間を経た自身の変化などについて伺いました。
目次
日本に留学したボツワナ人女性が感じた、母国と日本との共通点とは?
Q:日本に来る前、日本に対する印象はありましたか?
正直に言うと、日本文化についても、日本語についても、来る前は何も知らなかったんです。1つ挙げるなら、ボツワナでの日本のイメージは「車」ですね。多くの人が、日本車に乗っています。
食べ物の美味しさも、街がすごくクリーンで整っていることも、日本に来て初めて知りました。
Q:日本語はどのように学ばれましたか?
大学に入って最初の4ヶ月間は、毎日6時間、日本語の授業を受けていました。日本語のクラスでは、英語は一切使いません。20人弱のクラスで、毎日宿題があって、翌日にはテストがあります。
日本語が全く分からなかった当初は本当に大変で、しょっちゅう泣いていました。でも、振り返ると、必死で取り組むしかなかったあの学び方は、言語を習得するベストの方法だったと思います。3ヶ月が経った頃には、先生が話す内容を理解できるようになっていました。日本を離れて10年経つ今でも、多くの日本語が頭に残っています。
ツワナ語と日本語
ツワナ語の発音は、日本語の発音にとても近いので、発音に関しては問題ありませんでした。でも、発音以外の部分、特にライティングは本当に大変でしたよ。ひらがなにカタカナに漢字と、覚えないといけないことがたくさんあるので。カタカナの『バスケットボール』の、小さい『ッ』とか、『ー』とか(笑)。
Q:大分県別府市で、印象に残っていることは?
別府は緑がとても多くて、特に春は本当に美しかったです。お年寄りの方が多く、皆、優しくてフレンドリーでした。今でもよく、その人たちのことを思い出します。
また、別府タワーにカラオケ店があって、そこに行くのが好きでした。ボツワナにもカラオケはありますが、オープンなスペースで、知らない人たちの前で歌うスタイルなんです。個人的には、プライベートな空間で歌える日本のカラオケがとても好きですね。
あと、バス停でベンチに座って待っているときに、知らないおばあさんが、私のアフロをそうっと触ってくる、ということがありましたね。私が気づいていないと思っているのですが、気づきますよね、私の髪だから(笑)。
ボツワナ出身の私を含めアフリカ人の多くは、同じ経験をしたとしても、それほど気にしないんじゃないかな。「アフロを見るのが珍しいから、興味が湧くんだろうな」と理解できますし。でも、アメリカの人の場合、異なる歴史背景があるので、もし髪を触られたら怒ると思います。
Q:日本滞在中に、母国との違いを感じた経験はありますか
1番感じたのは、日本は全体的に、とても静かなことですね。
ボツワナでは、隣の家と物理的な距離があったこともあって、大きな音で音楽をかけて、よく踊ったり歌ったりしていました。でも、日本のアパートだと、なかなかそういうわけにはいきませんよね。
音の感じ方が変化
日本に来て数ヶ月経った後、ボツワナに一時帰国する機会があったのですが、その時には、レストランをはじめ、どこもかしこも、すごく音が大きく感じたのを覚えています。日本の静けさが恋しくなりました。バスの中で大きな声で話す友人に、「もう少し声のボリュームを落としてくれない?」と頼んだら、不思議な顔をされましたね。
日本で過ごした4年間の影響で、私は以前に比べておとなしい人間になったと思います。周りを気遣って、なるべく静かに過ごすというか。私自身は、このバージョンの自分も好きです。
知らない人同士の交流が少ない
ただ、日本だと知らない人同士はあまり話さないので、孤独を感じることもありましたね。日本に来て最初の頃は、エレベーターで乗り合わせた人や、バスで隣に座った人などにも挨拶をしていたのですが、身構えられてしまうことが多かったので、声をかけるのを止めました。
日本では一人で過ごすのが普通であることを、海外から来る人は、理解しておく必要があると思います。そうでないと、周囲とのつながりを必要とするタイプの人の場合、落ち込んでしまうかもしれません。
人と街のエネルギーを感じた大阪
全体的に日本は静かな印象でしたが、観光で訪れた大阪では、街や人のエネルギーをすごく感じました。歩いているだけで、「Hi! Let’s take a picture! 写真、写真!」と、声をかけられたり。人が、とにかく元気でした。
そうやって声をかけてもらうのは、個人的には、全く嫌ではありませんでした。世界の他の場所、たとえばアメリカもそうですし、ボツワナでも、知らない人に話しかけることは珍しくないので、私自身は、大阪でのコミュニケーションは自然に感じられました。
文化の壁を越える「お笑い」
文化も価値観も、日本とボツワナでは大きな違いがあります。だからこそ、その壁を越えて人を笑わせられるコメディアンは、本当にすごいと思います。日本のコメディアンで特に好きなのは、(チュートリアルの)徳井さん。彼のジョークは、いつも私を笑わせてくれます。
Q:逆に、母国と日本との共通点は何だと思いますか?
共通点を挙げるとしたら、コンサバティブなことだと思います。服装であったり、話し方であったり。もちろん人にもよりますが、ボツワナでは、ものごとを遠回しに伝えるのが礼儀だと考えられています。「空気を読む」ということも、自然と行っていたと思いますね。
日本にいる間、他の外国人からよく、「君は、日本人みたいだね」と言われました。周囲の人に気を遣ったりするところが、そう思われるようです。私は特にそうですが、基本的にボツワナ人は穏やかな性格だと思います。アフリカの中でもボツワナ人は比較的、柔らかい話し方をしますね。
編集後記
英語と日本語を織り交ぜながら、終始朗らかな笑顔でインタビューに応じてくれたTumiさん。日本滞在後、音の感じ方が以前と大きく変わり、また性格も変化したというお話が印象的でした。私たちの感覚やパーソナリティは、自分の想像以上に、環境による影響を強く受けているのでしょう。
場所や組織など、身を置く環境に応じて、様々な「当たり前」は変わっていくもの。異なる環境にいる人と会話をしたり、短期間、短時間でも普段と居場所を変えたりしてみると、自分自身を客観視でき、思いがけない気づきを得られるかもしれません。
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English Hub 編集部
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