どちらを選ぶ?TOEFL iBTとIELTSのスピーキング試験の違いを比較

TOEFL iBTとIELTSは、英語圏を中心に、世界で広く活用されている国際的な英語試験です。海外留学や移住に向けた一歩を踏み出すには、まずは大学や各国の移民局などの関係機関がそれぞれ基準として定める英語試験のスコアをクリアしなければなりません。

スコアの提出先が、TOEFL iBTとIELTSのいずれの試験結果も受け付けている場合は、自分にとってハイスコアを狙いやすい方にターゲットを絞って試験に挑戦するのも一つの手です(※)。

そこで今回は、TOEFL iBTとIELTSの試験科目の中でも、実施形式の違いが特に大きいスピーキングテストに着目し、5項目で内容を比較します。

各試験形式に対する得意・不得意の感じ方は人によって異なりますが、目標の達成に向けて戦略的な試験選びをしたい方は、ぜひこの記事の内容を参考にしてみてください。

※スコアの提出に関する条件や詳細は、各機関により異なります。申請を行う前に、必ずご自身で最新の情報をご確認ください。

目次

多くの日本人学習者が苦戦する英語スピーキングテスト

英語の4技能を測定する試験において、多くの日本人学習者が苦手としているのが、スピーキングテストです。

試験の運営機関が公表している試験データ(2022年版)によると、TOEFL iBTとIELTSのアカデミック・モジュールにおいて、日本語を母語とする受験者のスピーキングテストの平均スコアは、他の3科目と比べて最も低くなっています。

  • TOEFL iBT、IELTSの科目別平均スコア(日本語母語話者の場合)

※TOEFL iBTは各科目30点満点、IELTSの各科目の最高バンドスコアは9.0です。

Reading Listening Writing Speaking
TOEFL iBT 19 19 18 17
IELTS(Academic) 6.0 6.1 5.7 5.5
IELTS(General) 5.7 6.0 5.7 5.7

出典:ETS|TOEFL iBT® Test and Score Data Summary 2022IELTS Test taker performance 2022

TOEFL iBTとIELTSでは、リスニング、リーディング、ライティング、スピーキングのすべてのスキルが試されます。総合的なスコアを押し上げるには、4技能を満遍なく鍛える必要があり、苦手意識を持つ人が多いスピーキングについても試験対策が欠かせません。

また、スコアの提出先によっては、総合スコアの基準に加えて、「4科目すべてで〇点以上を取得する」などの条件を設けている場合があるため、得意科目だけに専念してスコアを伸ばすやり方はあまり現実的ではないといえます。

対策が難しいと思われがちなスピーキングテストですが、試験形式をきちんと把握した上で準備をしておけば、総合的なスコアアップにつながる切り札となるでしょう。

TOEFL iBTとIELTSのスピーキング試験を5項目で比較

ここからは、TOEFL iBTとIELTSのスピーキングテストに関する5つの比較ポイントを軸に、二つの試験の具体的な違いをみていきます。

どちらの試験を受けるべきか迷っている方は、自分にとっての取り組みやすさを意識しながら、それぞれの項目を比較してみてください。

※IELTSには、「アカデミック・モジュール」と「ジェネラル・トレーニング・モジュール」の2種類があります。リーディング、ライティングでは出題内容が異なりますが、スピーキング、リスニングの場合はいずれのモジュールでも共通の問題が使用されます。

1. 試験形式

TOEFL iBTはコンピューターへの吹き込み方式

TOEFL iBTは、すべての科目の試験をコンピューター上で実施します。スピーキングセクションの場合は、マイク付きのヘッドセットを着用し、コンピューター画面に表示される問題を見ながら回答する形式です。

対人での質疑応答とは異なり、マイクに向かって音声を吹き込むため、スピーチの要素が強いテストとなっています。

IELTSは試験官と1対1での面接

IELTSのスピーキングテストは、試験官と1対1で話す面接形式です。面接室への入室時の挨拶や自己紹介なども含め、試験官と随時英語でやり取りをしながらテストが進みます。

一部、与えられたトピックについてのスピーチを行うパートもありますが、試験官を前にすることで、実際の対人コミュニケーションにより近い形でスピーキング力が試されます。

テスト中に質問が聞き取れなかった場合はもう一度繰り返すようにお願いするなど、試験官という存在がいるからこそできることもあります。

2. 試験環境

TOEFL iBTでは複数の受験者と同じ部屋で受験

TOEFL iBTをテストセンターで受験する際は、同じ部屋の中に複数の受験者がいる環境でテストに臨みます。スピーキングセクションにおいても、受験者がそれぞれのコンピューターに向かって回答を吹き込むため、人によっては周囲の音が気になるかもしれません。

一部屋あたりの収容人数や、席の間隔といった詳細な条件はテストセンターによって異なります。試験環境にこだわりたい方は、あらかじめ実施拠点の情報を調べておくのがおすすめです。

※TOEFL iBTでは、自宅受験版のTOEFL iBT Home Editionも実施しています。自宅での受験には、使用機器、受験環境などについて決められた条件を満たす必要があります。

IELTSのスピーキングテストは個室で実施

IELTSのスピーキングテストは、試験会場に用意された個室で行われます。

面接室への入室後は、他の受験者が視界に入ることもなく、試験官と1対1の空間で向き合うため、周囲を気にせず集中できる人もいれば、逆に緊張してしまう人もいるでしょう。

マンツーマンで面接を受ける緊張を乗り越えるには、「ミスをしてはいけない」と考えるよりも、「自分が持っている力を出し切ろう」という気持ちで臨むことが大切です。

3. 出題分野

TOEFL iBTではアカデミックなレクチャーやキャンパスライフに関わるスピーキング問題が中心

TOEFL iBTのスピーキングテストは、学問の場における英語のスピーキング力を測定するために設計されています。よって出題内容は、大学でのレクチャーやキャンパス内で起きる出来事といった題材が中心です。

スピーキングセクション内で使用するリスニング音源では、英語圏の中だけでも複数のアクセントが存在すること考慮し、北米、英国、ニュージーランド、オーストラリアの英語ネイティブスピーカーのアクセントが含まれています。

IELTSのスピーキングで扱われるトピックは日常生活から社会問題までさまざま

IELTSのスピーキングテストで出題されるトピックは、日常生活に関することから個人的な経験、社会問題、世界的な動向まで多岐にわたります。

IELTSの運営団体であるIDPは、スピーキングテストのPart 2で頻出するトピックとして、下記の9つを挙げています。

  1. Tourism and travel(観光、旅行)
  2. Education(教育)
  3. Transport(運送)
  4. Environment(環境)
  5. Family life(家族関係)
  6. Sport and recreation(スポーツとレクリエーション)
  7. Crime and punishment(犯罪と罰則)
  8. The internet(インターネット)
  9. Advertising and retail(広告と小売)
  10. 出典:IDP|【IELTSスピーキング対策】専門家からの10個のアドバイス

幅広いテーマへの対応力を養うには、日頃からニュースや社会問題に目を向け、自分の意見を持っておくことが大切です。

4. 問われるスキル

TOEFL iBTのスピーキングではリスニング・リーディング力も鍵に

TOEFL iBTのスピーキングテストの中でも特徴的なのが、Integrated taskと呼ばれる複合問題です。

Integrated taskでは、リーディングパッセージやリスニング音声を通じて得た情報をもとに、その内容を要約して口頭で回答します。つまり、インプットの段階で正しく読解と聞き取りができなければ、そもそも何を話せばよいのか分からなくなってしまう可能性があります。

TOEFL iBTのスピーキングテストでハイスコアを取得するには、英語を話す力だけでなく、リーディング、リスニングのスキルもあわせて試されることを念頭に置いておきましょう。

IELTSのスピーキングはインタビューとスピーチの要素が強い

IELTSのスピーキングテストは、3つのパートで構成されています。

Part 1は自己紹介と身近なテーマについてのインタビュー、Part 2は与えられたトピックに関するスピーチ、Part 3はスピーチの内容に基づくディスカッションです。

いずれのパートでも、基本的には自分の意見を述べることが求められ、TOEFL iBTのスピーキングテストで出題される、情報を要約して回答するような問題とは毛色が異なります。

5. 所要時間

TOEFL iBTのスピーキングテストは約16分

TOEFL iBTのスピーキングテストは、リスニングセクション終了後すぐに始まります。スピーキングの開始前に休憩時間は設けられていないため、序盤で受けた科目の手応えに影響されることなく、集中力を保ったままテストに臨まなければなりません。

2023年7月から導入された新形式のTOEFL iBTでは、試験の合計所要時間が約2時間に短縮されました。すべての科目の受験を終えるまでに2時間45分程度かかる(※)IELTSと比べて、TOEFL iBTはスピーキングテストまでより早く辿り着く点が特徴です。

※IELTSのスピーキングテスト前の待機時間は含まない。

IELTSのスピーキングは11~14分程度、試験前に待ち時間が発生する場合も

IELTSのスピーキングテストは最長でも15分弱で、TOEFL iBTと大きな違いはありません。ただし、1対1の面接という形式上、自分の番が回ってくるまで待機が必要です。

人によっては、順番を待つ間に集中力が途切れたり、むしろ緊張が増してしまったりすることもあるでしょう。ただし、指定された集合時間までは試験会場を出て自由に過ごせるので、近隣のカフェや落ち着ける場所で予習に取り組むなど、一呼吸置いてからスピーキングテストに挑める点はメリットともいえます。

まとめ

TOEFL iBTとIELTSそれぞれのスピーキングテストについて、具体的なイメージが浮かぶようになりましたか?

英語のスピーキング能力を測るという目的は同じですが、テスト環境や出題分野などは試験によって異なります。海外留学や移住に向けてテストスコアを提出する際、申請先の機関がTOEFL iBTとIELTSのいずれの試験結果も受け付けているという場合は、自分にとってより高いスコアを目指せる方を戦略的に選んでみてはいかがでしょうか。

苦手意識を持つ人も多いスピーキングテストで実力を十分に発揮するために、ぜひ本記事で解説した比較項目を活用してください。

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