「中国語を身につけたい」と考えてはいるものの、具体的に何から手をつければよいか分からず、動き出せずにいる方もいるのではないでしょうか。また、試しに勉強を始めてはみたものの、ゴールまでの全体像が見えず、学習方法に自信を持てないという方も少なくないでしょう。
語学学習に取り組む際、目標設定や習熟度の確認といった様々な観点から有効なのが、試験の活用です。
今回は、中国語検定「HSK」の認定校である、中国語コーチングスクール「the courage(カレッジ)」代表の伊地知 太郎氏に、仕事で中国語を使う人が目指したいHSKレベルの目安や、学習に取り組む際の注意点などについてお話を伺いました。
語学コーチングスクール「the courage」カリキュラム監修・代表コーチ 伊地知 太郎氏
中央大学商学部卒。在学中、中国の北京師範大学に留学。「1秒も無駄にしない」勉強姿勢を貫き、わずか1年で中国語力をビジネスレベルにまで高める(旧HSK10級、現HSK6級)。帰国後、三菱重工業株式会社に入社。海外人事担当として100人以上の赴任サポートを経験した後、資材調達に従事。その後、日本で最初の語学コーチングスクールPRESENCEにて700名以上の受講生の語学学習をサポート、コーチの育成、中国語コーチング立ち上げを行う。語学学習を通じて、一人一人が「自分の人生を自分で決める勇気」を持てるようにという想いでthe courage(カレッジ)を設立。雑誌「聴く中国語」への寄稿。大手英語コーチングスクールのコーチング監修など実績多数。キャリアコンサルタント(国家資格)。
インタビュー目次
ビジネスで中国語を使うなら、HSK何級レベルを目指すべき?中国語コーチング「the courage(カレッジ)」に聞く
Q: HSKは、どのような試験ですか?
HSKは、中国政府教育部直属の機関が主催する、中国政府認定の中国語資格です。「中国語レベルテスト」を中国語でいうと「Hànyǔ Shuǐpíng Kǎoshì」なので、その頭文字をとって「HSK」という名前が付いています。
HSKは中国政府認定の資格なので、世界的に自分の中国語力を示すことができます。英語圏へ留学する場合に、TOEFLやIELTSのスコアが求められるように、中国に留学する場合には「HSK何級・何点以上」といった形で、中国語レベルの証明が求められます。また、ビザの申請でも、HSKを取得していると、級(証明される中国語レベル)に応じた点数が付与されるので、ビザ取得がその分有利になるというメリットもあります。
日本で受験できるHSKには1級から6級までがあり、1級が最も易しく、6級(※)が最も難しいレベルです(2023年11月1日取材時点)。
※HSK6級:「中国語の音声情報や文字情報を不自由なく理解することができ、自分の意見や見解を流暢な中国語で口頭または書面にて表現することができる」ことが求められるレベル(参照:HSK公式サイト「筆記6級について」より)
資格自体は特に必要ない場合でも、自分の中国語力がどれくらい上がっているかを確認するために、HSKを受験される方は多いですね。
Q: 仕事で中国語を使う場合、目安として、HSK何級レベルを目指す必要がありますか
どういったシーンで中国語を使うかによっても変わりますが、どんなことをしたい方でも、まずは4級は絶対に目指した方が良いでしょう。中国語の基本文法事項の大半は4級までに出てくるので、そこまでをしっかり学んでおくと、その後の応用も利きやすくなります。
たとえば、中国語での接客で、「どの色がいいですか?」のような定型フレーズを中心に使う場合には、HSK4級レベルでも対応可能です。一方、会議や商談を全て中国語で行うような場合だと、6級レベルでもまだ足りないというのが正直なところです。6級レベルの知識プラス、実務を通して鍛えていく必要があります。
Q: 就職・転職などで、履歴書に書いて有利に働くのは、何級レベルでしょうか
英語を武器にされている方が、「プラスαで中国語力もアピールしたい」という場合であれば、3級でも書いて良いと思います。ただ、中国語1本で勝負したい場合には、やはり6級があった方が良いですね。
あとは、HSKの認知度が、TOEICのような英語試験に比べるとまだ低いので、転職などで中国語力をアピールしたい場合には、「自分はHSK何級を持っていて、中国語でこういうことができる」というところまでを具体的に伝えた方が、採用担当者も理解しやすいでしょう。
Q: 中国語初心者が、前述のHSK4級レベルに到達するには、どれくらいの学習が必要ですか?
HSKの公式サイトに掲載されている学習目安は、「大学の第二外国語における第二年度後期履修程度」です。つまり、大学の第二外国語で丸2年勉強すれば取ればレベル、と紹介されています。
ただ、実際にはそこまでの学習期間は、必ずしも必要ではありません。もし、毎日2~3時間の学習時間を確保できる場合、大体4ヶ月あれば合格できるかと思います。
また、おすすめはしませんが、仮に「合格」だけを目指すなら、もっと短い期間でできてしまうケースも少なくありません。
HSK4級の試験は、「聞き取り(リスニング)」「読解(リーディング)」「作文(ライティング)」で構成されています。配点はそれぞれ100点で、300点満点です。4級の場合、トータルで6割(180点)を超えると合格なので、たとえばリーディングで9割を取れば、リスニングが6割を下回っていても合格できてしまいます。リーディングの文章は漢字なので、日本人にとっては得点しやすいパートです。
しかし、実際に中国語を使って仕事をする場合、特に現地に行かれる方の場合は、絶対にリスニング力も必要になります。「the courage(カレッジ)」では、実際に使える中国語が身につくよう、単語やリーディング・ライティングだけでなく、リスニングやスピーキング、発音練習までを徹底的に行っています。
Q: 社会人が、独学で中国語の習得を目指すことは可能ですか?気をつけるべきポイントがあれば教えてください
要領が良い方であれば、独学でも、先ほど挙げたHSK4級の合格はできると思います。ただ、「リスニングまで、本当にちゃんとできているか」という点に関しては、注意が必要ですね。HSK受験の際には「聞こえた音を頼りに、答えを選ぶ」などの方法ではなく、意味を理解できているかまでを意識していただきたいと思います。
また、特に「発音」に関しては、独学だとかなり難しいと思います。というのも、中国語は英語以上に、発音に対する要求がものすごく高いんです。発音がほんの少し違うだけで、通じないか、あるいは全く違う意味になってしまいます。できる限り、発音に関しては、適切な指導を受けるのがおすすめです。
中国語コーチングスクール「the courage(カレッジ)」について
Q: 「the courage(カレッジ)」では、どのようなサービスを提供されていますか
カレッジでは、受講生の方の現状と目標をヒアリングし、学習内容を個別にカスタマイズしています。そのため、どのような学習ニーズにもお応えできますが、大枠としては「中国語コース」と「中国語会話コース」を提供しています(※)。
「中国語コース」では、「発音」「単語」「リスニング」「リーディング」「スピーキング」「ライティング」の全項目を、バランスよく鍛えていきます。中国語初心者の方の場合、大体1年間ご受講いただくと、HSK6級レベルまで中国語力を伸ばしていただけます。
「中国語会話コース」では、受講生の方が既に持っている中国語の知識を、実際に使えるようにしていきます。「HSKで既に4級~6級に合格しているものの、会話には苦手意識がある」という方におすすめのコースです。日本人コーチと中国語ネイティブのスピーキングパートナーの2名体制(コーチングを行える中国語ネイティブの場合は1名)で担当し、毎回のセッションではネイティブとの会話練習も行います。
※カレッジでは、「中国語コース」「中国語会話コース」に加え、「英語コース」も用意されています。中国語コースと英語コースの同時受講や、順を追った受講だけでなく、「中国語コースをメインで受けながら、英語力も維持できるよう、英語の宿題も少量出してもらう」など、個別の学習ニーズに合わせた調整も行われています。(メインで受講するコースが1つの場合、受講料は1コース分のみ)
Q: どのような方が受講されていますか?
最も多いのは、中国駐在が決まった方、決まりそうな方や、既に赴任先にいらっしゃる方です。「現地に行ったらどうにかなると思っていたけれど、行っただけじゃどうにもならなかった」と、赴任の1年後くらいに連絡をくださる方も結構いらっしゃいます。
カレッジではオンラインでサービスを提供しているので、北京や上海、広州、香港、台湾、シンガポールなど、世界各地からご受講いただいています。
受講生の方の大まかな割合としては、今申し上げた駐在前後の方が50%、日本国内のビジネスでキャリアアップしたい、中国語を使いたい方が30%で、残りの20%が趣味のために中国語を学ばれている方です。中国語学習者の裾野は、かなり広がってきていると感じています。カレッジ受講生の方に共通しているのは、「本気で中国語を頑張りたい」と考えられている点ですね。
Q: 中国語学習の無料カウンセリングも提供されています。内容を教えてください。
カレッジの無料カウンセリングでは、その方の目標とする中国語力と、これまでにどのような学習をされてきたかをお伺いした上で、その方に最も適切な教材やトレーニング方法を、かなり詳しくお伝えします。たとえば「リスニング力を上げたい」という方の場合、学習方法を口頭でお伝えするだけではなく、しっかり理解できるよう、実際にその場で少しトレーニングも体感いただいています。
また、「独学方法を相談したい」という目的の方も、大歓迎です。無料カウンセリングでは、「独学される予定か、それとも受講を検討されているか」についてお伺いしています。お伺いする理由は、独学の場合、お伝えする学習内容をなるべくシンプルにしないと、一人では続けられないからです。コーチのサポート無しでも迷わず学習できるよう、テキストや学習内容をきちんと調整してお伝えしています。
カレッジの無料カウンセリングは、「スクール説明会」というわけではないので、ぜひ気軽に、中国語学習についてご相談いただければと思います。
編集後記
ビジネスパーソンを中心に、これまでに700名以上の語学力向上をサポートしてきた伊地知氏。その経験を踏まえ、「言語ができるとその分、できる仕事の幅は広がっていく。これは間違いない」と断言します。実際にカレッジでは、切羽詰まったニーズの方だけでなく、「1つ上のステージに行くために、中国語が必要」という方も多く来られているといいます。
「中国語を身につけ、仕事に活かしたい」と考えている方は、HSK目標級の目安や、試験を学習に活用する際の注意点など、ぜひ今回の伊地知氏のアドバイスを参考にしてみてください。
the courage(カレッジ) 概要
サービス名 | the courage(カレッジ) |
URL | the-courage |
運営者名 | the courage合同会社 |
スクール所在地 | オンライン |
入学金 | 55,000円 |
教材費用 | 市販品を別途購入 |
プログラム |
●推奨受講期間:2ヵ月~
【レッスン内容】 ●中国語コース ●中国語会話コース(受講目安:中国語検定HSK4級合格相当以上の方) ●フォローアップコース ●駐在員家族向けコーチング 6回(3ヶ月)など |
※表内に記載の金額はすべて税込です。
※サービス内容・料金については変更されている可能性があります。最新情報についてはホームページを参考にしてください。
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