苦手だった英語で最難関のCEFR C2レベルへ。IELTS8.5取得講師の英語試験活用法

言語能力を測る国際的な指標のCEFR(セファール)において、最も上位にカテゴライズされるC2レベル。

英語学習と長年向き合い、日々スキルアップに励んでいたとしても、CEFR C2レベルまで語学を極められる学習者は決して多くありません。

そんな中、英語講師として活動する上田哲也さんは、英語4技能試験のIELTS(アイエルツ)でスコア8.5(9.0点満点中)を取得し、自身の目標であったCEFR C2レベルへの到達を果たします。

終わりがないともいわれる語学学習において、上田さんはどのようにして英語力を磨いていったのでしょうか。英語学習に取り組み始めてから、最難関のCEFR C2レベルの実力を身につけるまでの過程について伺いました。

話者プロフィール:上田哲也さん

立教大学法学部卒。カナダ・バンクーバーでの1年間の留学を経て、大学卒業後は鉄鋼商社にて6年間勤務。2020年より英語講師として独立し、IELTSやTOEICなどの試験対策指導、学習サポートを幅広く手掛ける。TOEIC L&R 990点、英検1級、IELTS 8.5、国連英検特A級取得。著書に『時短省力 私の英語勉強法(明日香出版)』がある。
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インタビュー目次

カナダ留学を目指し、得意ではなかった英語の猛勉強を開始

──英語学習に本格的に取り組み始めたのはいつからですか。

中学・高校時代は大学付属の一貫校に通っていて、私の場合はいわゆるエスカレーター式で大学へ進学しました。大学に入ったばかりの頃は、受験競争を経て入学してきた同級生たちとの英語力の差に、劣等感を抱いていたことを覚えています。

そんな中、英語学習に対する向き合い方が変わるきっかけとなったのが、英語が得意な友人たちの存在でした。ともに大学へ通い、同じ環境にいながら英語を話せるようになった友人たちを見て、「彼らにできるなら自分にもできるはず」と刺激をもらったんです。一緒に海外旅行へ行った際も、流暢に英語を話す彼らの姿がとても印象的に映りました。

このような体験などもあり、私自身もカナダ留学という目標を立て、本気で英語を勉強することを決意します。

学生時代は時間も確保しやすかったですし、「友人たちがこれほどやっているのだから自分もやらなければ」という気持ちでひたすら英語学習に取り組んでいましたね。

加えて、留学エージェントが実施するTOEIC IPテスト(団体特別受験制度)も定期的に受けていたのですが、伸びしろが大きかった自分にとって、勉強した分スコアがどんどん上がっていくことが楽しかったです。

振り返ってみると、留学準備をしていた当時は、自分の英語学習歴の中でも特に集中的に英語と向き合った期間のうちの一つでした。

──猛勉強をして臨んだカナダ留学中、現地での手応えはいかがでしたか。

留学出発前にTOEIC L&Rで800点くらいのレベルまでは英語力を伸ばせていたので、実際にカナダに着いてからも、ある程度の英語のコミュニケーションはできていたと思います。

とはいえ、いつもたくさん話してくれるホストファミリーのお父さんとの会話では、自分はとにかく相槌を打つことしかできない、という場面もありましたね。

ただ、数年前にそのホストファザーと留学時代以来の再会をした際には、彼が話す英語がとてもクリアにわかり、「こんなに聞き取れるようになったんだ」と、自分の成長を実感しました。

今思うと、留学当時の英語力では、相手の話の内容をまだまだ理解できていない部分も多かったのだと思います。

CEFR C1からC2レベルに辿り着くまでの「尋常ではない」壁の厚さ

──留学を終えた後は、どのように英語学習と向き合っていましたか。

カナダ留学からの帰国後、TOEIC L&Rで965点と英検1級を取得しました。CEFRでいうC1程度のレベルに達し、英語試験や資格に関しては一通りやり切った気でいましたが、実際はそこから先の道のりの方が長かったですね。

大学を卒業して商社で6年ほど働いていた間は、仕事の忙しさも重なり、英語学習に思うように取り組めなかった時期もありました。当時の私の英語力は、大学時代の英語学習で培った分によるものがほとんどで、会社員の頃の英語力の伸びは決して大きくなかったと思います。

その後、2020年に英語講師として独立してからは、好きなだけ英語学習ができているので、ここ4年ほどではかなり上達したと感じます。

それでも、CEFR C1を超えてC2レベルに辿り着くまでの壁の厚さは尋常ではないな、と。そのフェーズだけで平気で数年は時間がかかるイメージですし、特にIELTSで7.5や8.0を取った後、そこからさらにスコアを上げることが本当に難しかったです。

──IELTSでCEFR C2レベルのスコアを取得できた際はどんな心境でしたか。

ここまで長かったので、「やっとか」と思ったのと同時に、「もっといけるぞ」という気持ちもありました。

IELTSでは、4科目すべてで自己ベストが出せれば、CEFR C2レベルのスコア8.5に届くとわかってはいたものの、一つの科目が上手くいくと他が上手くいかないなど、なかなか条件が揃いませんでした。

ただ、IELTSでスコア8.5を取得している方は他にもいますし、ここで収まるのは悔しいですから、あとは生きているうちに満点の9.0を取りたいです。

不可能な話ではなく、自分の頑張り次第かなと考えているので、まずは8.5を安定して取れるようにし、そこからさらにスコア9.0を目指していければと思います。

伸ばしたいスキルの実力を測るからこそ改善につなげられる

──継続的に英語力を磨く上で、英語試験を学習のマイルストーンとすることは有効だと思われますか。

基本的には、試験を目標とすることで学習を進めやすくなるというメリットがあるので、受講生の方にも受験をおすすめする場合が多いです。試験を受けること自体がよほど嫌いでなければ、やはりスコアなどの数値的な指標で自分の英語の実力を常に定点観測しておくのがよいと思います。

英語試験にも色々な種類がありますが、英語が苦手な初心者の方でもチャレンジしやすいのは英検です。

まずは英検3級(中学卒業程度の英語力が目安)からスタートして、その後2級ないしは準1級程度のレベルに達してから、TOEICなどの他の英語試験に移行していくとスムーズでしょう。

初心者の方がはじめからTOEICを受けても、出題される問題のうち半分も内容がわからないという状態では、試験そのものをあまり楽しめないかもしれません。

TOEICの場合は、600点程度を目指せるくらいの実力をつけてから試験に臨むことで、よりやりがいを感じられるはずです。

──試験対策そのものが本質的な英語力アップにつながっていくのでしょうか。

“What gets measured gets improved(測定されるものは改善される).”といわれるように、伸ばしたいスキルがあるなら、まずはその実力を測ることが大切です。

たとえば、英語のアウトプット力を鍛えたいのであれば、TOEIC L&Rだけでなく、スピーキングとライティング力を測るテストにも挑戦するとよいでしょう。

特に日本の就職・転職市場においては、英語力の基準としてTOEIC L&Rのスコアが広く使われているので、評価のされやすさという意味では、リスニングとリーディングのスコアを持っておくだけでも十分かもしれません。

ただし、より使える英語力を身につけていく中では、TOEIC Speaking & Writing Tests(TOEIC S&W)やその他の英語4技能試験を活用しながら、アウトプット力も測ることがおすすめです。

自分の英語力の成長というのはなかなか見えにくいですから、その伸びをテストスコアのような数値としても可視化することがとても大事だなと思います。

結果が出ない時も、自分でコントロールできるのは「その日どんな勉強をするか」だけ

──英語試験と長年向き合う中で大事にしてきた心構えを教えてください。

大切なのは、たとえ試験で結果が出なくても、楽しみながら淡々とやるべきことをやり続けることかと思います。

テスト結果そのものは自身で変えられるものではないですし、あくまでも自分がコントロールできるのは「その日どんな勉強をするか」だけです。

学んだことのすべてがすぐにスコアとして表れる訳ではない中、結果だけを見て「自分はもうダメなのかな」と考え始めるとキリがなくなってしまいます。

「この文法項目を覚えた」「こんな英語表現を使えるようになった」という、テスト結果に反映される一歩手前の成長の積み重ねを楽しめれば、最終的には当然スコアも上がっていくはずです。

実際のところ、テストスコアの提出期限に追われている状況ではなかなか難しい場合もありますが、結果が出ないことに対して必要以上に考えすぎないことも時には重要かと思います。

「自分の言葉で話したい」という気持ちが英語学習の原動力に

──高い目標に向かって常に進み続けられる、上田さんの英語学習のモチベーションの源泉は何ですか。

私は、「英語で誰かと話したい」からこそ勉強を続けています。やはり英語を使って意思疎通できることが何より楽しいですし、本当にやりたいことの根幹にあるのは、「色々な国の人たちと自分の言葉で話したい」という気持ちです。

また、学習者をサポートする英語講師の立場としても、私自身が常に学習し続ける人間でありたいですね。IELTSの試験対策であれば、スコアを0.5上げることの辛さや重みを身をもって感じ、受講生の方々と常に同じ目線でいたいという思いを強く持っています。

英語試験に関していうと、日々の勉強の成果をテスト本番で試すというプロセスには、スポーツにも似た面白さがあると思います。自己ベストを目指して淡々と準備を積み重ねながら、自分の努力がスコアなどの数値として表れる楽しさを追い求めています。

編集後記

さまざまな英語試験で得られるスコアや資格を指標とし、決して得意ではなかった英語を初級レベルから最上級のCEFR C2まで磨き上げていった上田さん。

最も時間がかかったというC2レベルの壁を破るまでの過程では、試験対策を英語学習に上手く取り入れつつ、結果やスコアだけに固執しすぎない適度なバランス感覚をもって、着実に成長を積み重ねていった様子が印象的です。

「伸ばしたいスキルがあるのなら、まずはその実力を測ることが大切」という上田さんの言葉の通り、英語試験は、時として見えづらい自分の英語力の成長を実感させてくれる存在として、私たち学習者の心強い味方となってくれるのではないでしょうか。