CEFR(セファール)とは|語学力を測る国際指標を知る

英語力試験には多くの種類があり、それぞれ目的や形式、測定の対象となるスキルが異なります。試験ごとに日本国内と世界各国での認知度に差がみられるため、「日本で高い知名度を持つ英語試験の話をしても、海外の人には伝わらなかった」ということも珍しくありません。

そんな時、言語能力を客観的に表す指標として役立つのが、CEFR(セファール:ヨーロッパ言語共通参照枠)です。CEFRは、国際的にも認知度が高く、ヨーロッパを中心とする世界中の語学教育機関などで活用されています。

この記事では、言語能力の具体的なレベル分けにより、的確な目標設定と学習戦略の設計を可能とするCEFRについて解説します。

目次

CEFR(セファール)とは

CEFRの基本概念と目的

CEFR(セファール)とは、Common European Framework of Reference for Languagesの略称で、学習者の言語能力を評価し、国際的に比較するための枠組みです。CEFRでは、個人の言語スキルをA1からC2までの6つのレベルで示します。

CEFRの主な目的は、国・地域ごとの言語や教育システムの違いを越え、統一された指標を参照しながら言語能力を評価することです。CEFRの活用によって、学習者は自身の言語スキルを的確に把握できるため、より効果的な目標設定や学習計画の設計が可能となります。また、教育機関や企業では、個人の言語能力を公正に評価する指標としてCEFRが重要な役割を果たしています。

CEFR開発の歴史

1990年代、欧州評議会(Council of Europe)は、ヨーロッパ内における言語教育の標準化と多言語主義促進を目指し、CEFRの開発に着手しました。その後、2001年に初版を発表。異なる国々がCEFRという共通の指標を持つことで、言語の学習・教授方法を効果的に共有し、より一層理解を深められるようになりました。

CEFRは当初、ヨーロッパの国々の言語を対象として開発されましたが、現在では日本語を含む世界中のさまざまな言語の学習者の能力を評価する際にも利用されています。また、評価指標の透明性と一貫性を高めるため、その内容も継続的に改善されています。

従来の4技能モデルに代わるCEFRのコミュニケーション・モード

CEFRでは、従来の言語学習において重視されてきた4技能(リスニング、リーディング、ライティング、スピーキング)に代わり、言語活動をreception(受容)、production(産出)、interaction(やりとり)、mediation(仲介)の4つに分類したコミュニケーション・モードを提唱しています。

人々が実生活の中で言語を使う際は、読む・聞く・書く・話すの4技能それぞれを単体として使用するのではなく、複数の技能を組み合わせながらコミュニケーションを取っています。さらに、実際の言語使用の場面では、語彙・文法などの知識だけにとどまらず、その言語が使われている文脈や文化的背景を理解することも必要です。

2018年に発表されたCEFRの補遺版では、このような言語使用の実態をより適切に反映するため、4つのコミュニケーション・モードの中でもmediation(仲介)の概念について特に大幅な更新と記述の拡大が行われました。

Reception(受容)

Reception(受容)とは、受け取ったインプットを処理し、自らが持つ知識構造を働かせながら話し手や書き手が伝えようとしていることを推測するプロセスのことです。

具体的な言語活動としては、一人または複数の話者から話を聞く際の聴覚的な受容、テキストの文字を読む際の視覚的な受容、テレビ番組や映画を観る際の視聴覚的な受容などが含まれます。

Production(産出)

Production(産出)には、スピーキングとライティングの両方の活動が含まれます。

スピーキングによる産出は、口頭で自分の考えを流暢かつ簡潔に表現する能力のことです。カジュアルな会話からフォーマルなプレゼンテーションまで幅広い範囲を対象とし、言語使用の正確性だけでなく、明確な表現で効果的にアイデアを伝える力も重視されます。

ライティングの場合は、書き言葉で自らの主張を表現する能力を指します。メモ、手紙、エッセイ、記事などのさまざまな形式において、論理的な構造で考えを整理し、適切な語彙と文法構造を使用することが求められます。また、目的と読み手に応じた文章のスタイルの考慮も重要です。

Interaction(やりとり)

Interaction(やりとり)は、一人または複数の人とリアルタイムで言語を使用しながらコミュニケーションを取る場面に深く関わります。その際、情報の一方的な伝達だけにとどまらず、他者から情報を受け取って応答し、その意味を解釈するアクションも重要な意味を持ちます。

また、デジタルコミュニケーションの台頭に伴い、話し言葉に加えて書き言葉によるやりとりも重みを増しています。具体的には、メールやソーシャルメディア上の交流など、当事者間で書き言葉が行き来するコミュニケーション形式が挙げられます。

Interactionの概念においては、単に言葉を話すこと・聞くことを超えて、社会規範、文化的なニュアンス、ボディランゲージの理解など、言語使用の社会的側面も強調されています。

Mediation(仲介)

Mediation(仲介)は、異なる言語や文化背景を持つ人々のあいだでのコミュニケーションの促進に焦点を当てた概念です。具体的には、ある言語から別の言語への翻訳・通訳、情報の要約や言い換え、相手が理解しやすいように言葉を単純化することなどが含まれます。

Mediationにおいては、コミュニケーションの相手の気持ちや考え方に共感し、その感情を理解するためのスキルも欠かせません。単なる言葉のやりとりだけではなく、文化的・社会的なニュアンスも含めてコミュニケーションの意図を明確化するMediationの概念は、グローバル化した世界で特に重要となる考え方としてCEFRに取り入れられました。

※参照:Council of Europe|Companion Volume with New Descriptors

CEFRの6つのレベルの概要

CEFRは、言語学習者の能力を6段階に区分しており、最も基礎的なレベルはA1、最上級はC2です。この6つのレベル分けを基本としながら、2018年の改定ではさらにPre-A1、A2+、B1+、B2+、Above C2の区分が新たに追加されました。

CEFRの基本的な6レベルのうち、A1、A2は「基礎段階の言語使用者」、B1、B2は「自立した言語使用者」、C1、C2は「熟達した言語使用者」に分類されます。また、それぞれの段階で対象言語を使ってどんなことができるのかは、下記の“Can-Do Descriptor”で具体的に定義しています。

CEFR Can-Do Descriptor
C2 聞いたり読んだりした、ほぼ全てのものを容易に理解することができる。いろいろな話し言葉や書き言葉から得た情報をまとめ、根拠も論点も一貫した方法で再構築できる。自然に、流暢かつ正確に自己表現ができる。
C1 いろいろな種類の高度な内容のかなり長い文章を理解して、含意を把握できる。言葉を探しているという印象を与えずに、流暢に、また自然に自己表現ができる。社会生活を営むため、また学問上や職業上の目的で、言葉を柔軟かつ効果的に用いることができる。複雑な話題について明確で、しっかりとした構成の詳細な文章を作ることができる。
B2 自分の専門分野の技術的な議論も含めて、抽象的な話題でも具体的な話題でも、複雑な文章の主要な内容を理解できる。母語話者とはお互いに緊張しないで普通にやり取りができるくらい流暢かつ自然である。幅広い話題について、明確で詳細な文章を作ることができる
B1 仕事、学校、娯楽などで普段出会うような身近な話題について、標準的な話し方であれば、主要な点を理解できる。その言葉が話されている地域にいるときに起こりそうな、たいていの事態に対処することができる。身近な話題や個人的に関心のある話題について、筋の通った簡単な文章を作ることができる。
A2 ごく基本的な個人情報や家族情報、買い物、地元の地理、仕事など、直接的関係がある領域に関しては、文やよく使われる表現が理解できる。簡単で日常的な範囲なら、身近で日常の事柄について、単純で直接的な情報交換に応じることができる。
A1 具体的な欲求を満足させるための、よく使われる日常的表現と基本的な言い回しは理解し、用いることができる。自分や他人を紹介することができ、住んでいるところや、誰と知り合いであるか、持ち物などの個人的情報について、質問をしたり、答えたりすることができる。もし、相手がゆっくり、はっきりと話して、助けが得られるならば、簡単なやり取りをすることができる。

※出典:ブリティッシュ・カウンシル|CEFR(ヨーロッパ言語共通参照枠)

CEFRと各英語力試験の関係

日本でも知られているTOEIC、英検、TOEFL、IELTSなどの主要な英語テストは、言語能力の評価のためにそれぞれ異なるアプローチを採用しており、試験ごとにスコアの算出方法や合否判定の仕組みに違いがあります。すでに受験したことがある試験のスコアをもとに自分のCEFRレベルを知りたい場合は、文部科学省が公表している、各英語試験のスコアとCEFRの関係を示した下記の対照表が参考になるでしょう。

日本の英語学習者のあいだで話題になることが多いTOEICについては、TOEIC Listening & Reading Test(TOEIC L&R)のスコアと、TOEIC Speaking & Writing Tests(TOEIC S&W)のスコアを2.5倍にしたものを合算した数値をもとに判定されます。

言語学習と評価におけるCEFRの役割

CEFRは、言語教育における重要な指針の一つです。このフレームワークを活用することで、個人の到達目標が明確になり、学習者だけでなく指導者も具体的な進捗状況を把握しやすくなります。

語学教育プログラムや教材の多くは、CEFRのレベルに合わせて内容を構成し、学習者が段階的に言語能力を向上できるような設計を取り入れています。

また、異なるスコア体系や合否判定システムを持つさまざまな語学試験が存在する中、テスト結果をCEFRと照らし合わせることで、その内容が国際的にも理解されやすくなり、言語能力のより正確な評価へとつながります。

このように、CEFRに基づくレベル分けは、効果的な言語学習を促進し、個人がグローバルな指標で自らの言語能力を客観的に証明するための手段の一つといえるでしょう。

まとめ

この記事では、国際的な言語能力評価の枠組みであるCEFR(ヨーロッパ言語共通参照枠)について紹介しました。CEFRは、言語学習者が自身の能力を客観的に評価し、具体的な学習目標を設定するために役立ちます。

英語学習に取り組んでいる方は、TOEIC、英検、TOEFL、IELTSなどの英語試験のスコアをもとに、該当するレベルで「具体的に何ができるのか」を示したCEFRの“Can-Do Descriptor”を照らし合わせてみると、自らの英語力をより広い視野で捉えられるようになります。

言語を学ぶ道のりの中で、CEFRは学習者が今どこにいるのか、そして次にどこへ向かうべきかを示す指針となるでしょう。

【参照ページ】Council of Europe|Common European Network of Reference for Languages
【関連ページ】あなたの英語力はどれぐらい?日本人のための英語力指標「CEFR-J」とは?

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