英語試験における障がいのある方向けの配慮まとめ(英検・TOEIC・IELTS・TOEFL iBTほか)

英検、TOEIC、IELTS、TOEFL iBTなど、英語力測定試験にはさまざまな種類があります。自分の英語力の腕試しをしてみたいと思いながらも、身体と心に関わる何らかの事情によって、受験ができるのか不安に感じている方もいるのではないでしょうか。

そこで今回は、各英語試験で実施されている受験上の配慮・サポートについて紹介します。

※記事内の情報は、2024年3月更新時点のものです。最新の情報については、各英語試験運営団体のウェブサイトをご確認ください。

目次

英語試験における障がいのある方向けの配慮・サポート

実用英語技能検定(英検)

英検では、下記の区分に当てはまる方に対して受験上の配慮を講じています。一部、別室受験も可能となっているため、希望する方は条件を確認した上で申請を行いましょう。

以下は一部の例ですので、具体的な配慮内容の詳細は、英検ウェブサイトの「受験上の配慮について」をご参照ください。

障がい区分 受験時の対応例
視覚 ・点字、弱視用の問題冊子の使用
・拡大読書器の使用
・マークシートではなく文字による解答 など
聴覚 ・音声の代替としてモニターとテロップの使用
・強音放送(ボリュームの調整)
・座席位置の配慮(スピーカーに近い位置)
・筆談、フラッシュカードの使用(二次試験) など
肢体不自由 ・チェック解答(問題用紙に直接○印を付けるなど)
・タブレット解答(1~3級、時間延長あり)
・口述解答(代筆)(4・5級のみ) など
その他 ・別室受験(病弱・発達障がいの方)
・二次試験時の筆談、発話への配慮(吃音症、器質性・運動障がい性など音声言語障がいのある方) など

英検で受験上の配慮を希望する際の手続き

  1. 既定の受付期間内に「受験上の配慮申請」を行う
  2. 英検ウェブサイトの専用フォームに必要事項を記入し、申請を行います。受験上の配慮に関する申請受付は、通常の英検の受験申込受付期間より1週間前倒しで始まります。受付締め切り後の申請や、申請内容の変更・追加はできないため、時間に余裕を持って準備を進めましょう。

  3. 検定の受験申込を行う
  4. 受験上の配慮に関する申請に加え、英検の受験申込が別途必要です。申請と検定申込の順番はどちらが先でも問題ありません。

  5. 試験会場にて受験票と専用用紙を提示して受験する
  6. 一次試験・二次試験のいずれの場合も、試験日の6日前までに受験票と受験上の配慮に関わる専用用紙の2点が郵送されます。受験当日に忘れずに持参し、総合案内/受付に申し出ましょう。

    4技能のスコアが必ず残る「英検S-Interview」も

    英検受験後の成績表に記載される「CSEスコア」は、大学入試などでも活用されています。ただし、従来型の英検では、一次試験(筆記テスト)の合格者のみが二次のスピーキング試験(面接)に進む形式となっているため、仮に一次試験で不合格となった場合は、スピーキングのCSEスコアが残りません。そこで、コンピューターを使用して1日で4技能すべての試験を受けられる「英検S-CBT」が導入されました(※1)。

    また、受験時に点字、テロップ、筆談といった合理的配慮を必要とし、英検S-CBTのようなコンピューターを使った解答が難しい方向けの試験としては、同じく一次試験の合否にかかわらず4技能すべての実力を試せる「英検S-Interview」が用意されています。その際、リーディング・リスニング・ライティング試験は筆記形式、スピーキングは対面形式(※)で行います。「英検S-Interview」を受験する際は、従来型の英検と同様、前もって「受験上の配慮申請フォーム」への入力が必要です。

    大学入試などで英検CSEスコアを利用するために、4技能すべてのスコアを確実に残したいという場合は、英検S-Interviewの受験も一つの選択肢となり得るでしょう。

    ※1:「英検S-CBT」は、基本的にコンピューターを使用した試験となりますが、ライティングのみ解答用紙への手書きまたはキーボードでの入力を選択できます。
    ※2:「英検S-Interview」のスピーキングテストは、筆記試験とは別日の実施となります。

    TOEIC

    TOEIC® Programでは、受験時に個別の配慮が必要な方に対して「プライオリティサポート」を提供しています。以下の表は、TOEIC L&R・TOEIC Bridge L&Rでのサポート内容です。TOEIC S&Wや、TOEIC Bridge S&Wでの対応については、申し込み前にプライオリティサポート専用フォームより問い合わせを行ってください。

    障がい区分 受験時の対応例
    視覚 ・拡大版の問題用紙・解答用紙の使用
    ・解答形式の変更(問題用紙に直接チェックや○印を付けるなど)
    ・点字受験
    ※点字受験の場合は通常と異なる手続きが必要です。申し込み前にTOEICのウェブサイトをご確認ください。
    聴覚 ・座席位置の配慮(スピーカーに近い位置)
    ・イヤホン/ヘッドホンの使用
    ・筆談でのやり取り
    ※リーディングセクションのみの受験も可能です。
    肢体不自由 ・会場、座席位置の配慮(エレベーター、出入り口に近い位置)
    ・拡大版解答用紙の使用
    ・解答形式の変更(問題用紙に直接チェックや○印を付けるなど)
    ・口述等での解答(試験官による代筆) など
    その他 ・試験時間の延長
    ・付き添い など
    ※内部障がい・精神疾患・その他疾患・ケガ等の方については、希望するサポート内容をプライオリティサポート依頼書に記入し、随時相談可能です。

    TOEICでプライオリティサポートを希望する際の手続き

    1. 受験申込時にプライオリティサポートを依頼する
    2. TOEIC L&R、またはTOEIC Bridge L&Rの申込画面で、プライオリティサポートを「希望する」を選択します。

    3. 必要書類を提出する
    4. 申込締切日までに「プライオリティサポート依頼書」や「診断書(試験時間延長受験用)」などの必要書類を郵送で提出します。

      前回のプライオリティサポート受験から2年未満であれば、必要書類の再提出は不要です。ただし、医師の診断書などの有効期限(書類発行日から1年間)が過ぎている場合は、証明書類の再提出が必要となります。

    5. 受験票および案内メールを受領する
    6. 試験日の約2週間前までに受験票(郵送)とプライオリティサポートの案内(メール)が届きます。試験当日は、受験票や案内メールに記載されている内容に従って受験してください。

      IELTS(アイエルツ)

      日本でIELTS(アイエルツ)の試験運営を行っているのは、IDP、ブリティッシュカウンシル、公益財団法人日本英語検定協会、UK PLUSの4団体です。それぞれの運営元によって、受験上の配慮を希望する際の申請方法などが異なる場合がありますが、ここではIDPの一例を掲載します。

      障がい区分 受験時の対応例
      視覚 ・拡大文字受験
      ・点字受験 など
      聴覚 ・補聴器を装着しての受験
      ・読唇法によるリスニングテスト など
      肢体不自由 ・車いすで移動しやすい座席の設定 など
      その他 ・常備薬、目薬等の持ち込み
      ・テスト時間の延長 など
      ※慢性の呼吸器疾患、心臓疾患、肝臓疾患、発達障がい(自閉症、アスペルガー症候群、広汎性発達障がい、学習障がい、注意欠陥多動性障がい)のための配慮を必要とする方が対象です。

      IELTSで受験上の配慮を希望する際の手続き

      1. 受験希望日の3ヶ月前までにテストセンターへ事前申請を行う
      2. IELTSでは、テストセンター・会場によって可能な対応が異なります。IDPが運営する試験での受験上の配慮を希望する場合は、試験日の3ヶ月前までにテストセンターにメールで事前申請を行ってください。

        TOEFL iBT

        TOEFL iBTは、アメリカの非営利教育団体ETS(Educational Testing Service)によって開発されたテストです。ETSのウェブサイトには、受験上の配慮について日本語でも簡単に説明が記載されていますが、詳細な資料や申請時のフォーム入力は英語のみでの対応となっています。

        障がい区分 受験時の対応例
        視覚 ・試験時間延長
        ・各種キーボード、マウスの使用
        ・音読者、筆記者(代筆者)の配置
        ・点字テスト
        ・大型活字版のテストブック/解答用紙の使用 など
        聴覚 ・試験時間の延長
        ・各種キーボード、マウスの使用
        ・音読者、筆記者(代筆者)の配置
        ・口話通訳者または手話通訳者の配置 など
        肢体不自由 ・試験時間延長
        ・各種キーボード、マウスの使用
        ・音読者、筆記者(代筆者)の配置
        ・介護者の付添
        ・高さ調節可能なテーブルやエルゴノミクスチェアの使用 など
        その他 ・試験時間の延長
        ・各種キーボード、マウスの使用
        ・音読者、筆記者(代筆者)の配置 など
        ※病弱、発達障がいの方などが対象です。

        TOEFL iBTで受験上の配慮を希望する際の手続き

        1. 専用フォームへの入力、または郵送・Eメールで申請を行う
        2. 受験上の配慮を希望する場合は、ETSへの会員登録を行い、作成したアカウントからオンラインで申請する方法と、郵送/Eメールで申し込む方法があります。

          申請には以下3点が必要ですが、希望する配慮の内容によって提出が不要となるものもあります。詳細については、ETSのウェブサイトに掲載されている「TOEFL iBT® Disabilities and Health-related Needs」をご確認ください。

          • Testing Accommodations Request Form
          • TOEFL iBT Registration Form for Test Takers with Disabilities or Health-related Needs(郵送またはEメールで申請する場合のみ)
          • 障がいなどを証明する書類(必要な場合のみ)

          書類審査は、必要書類の受領から約6週間程度かかると言われています。実際の試験への申込は、申請が承認された後に行う必要があるため、順番が前後しないよう注意してください。

        3. 審査結果を確認後、試験に申し込む
        4. ①の手続きを経て申請が承認されると、TOEFL iBTの申込手順に関する案内がメールで届きます。記載されている内容に従って、試験の申込手続きを進めましょう。

          ケンブリッジ英検

          ケンブリッジ大学英語検定機構では、さまざまなニーズを持つ方が試験を受けるための「受験上の配慮」を講じています。ケンブリッジ英検のウェブサイトでは、試験タイプやレベルごとの配慮対象者向けテスト資材のサンプルも公開されており、具体的な対応の一部を確認できます。

          障がい区分 受験時の対応例
          視覚 ・試験時間の延長(通常の試験時間から25%程度延長、応相談)
          ・問題文を読む際のヘルプ(拡大機器や画面読み取りソフトウェアなどの使用)
          ・代筆・代読の実施
          ・点字問題用紙、拡大墨字問題用紙の使用
          ・特別版リスニングテスト、スピーキングテストの実施 など
          聴覚 ・補聴器、ヘッドフォン、その他の機器の使用
          ・読唇対応リスニングテストの実施
          ・二人一組で行うスピーキングテストでの配慮(時間延長、パートナーの調整など)
          ・リスニングテスト、スピーキングテストの免除と認定証への特記事項記載 など
          その他 ・試験時間の延長
          ・途中休憩の実施
          ・コンピューターやワープロを使用した解答の記入
          ・試験問題の読み取り補助(代読、コンピューター使用)
          ・代筆、転写 など

          ケンブリッジ英検で受験上の配慮を希望する際の手続き

          1. 最寄りの認定試験センターへ問い合わせる
          2. ケンブリッジ英検のウェブサイトによると、受験上の配慮事項の準備には数ヶ月が必要とされています。受験を希望する場合は、できるだけ早く最寄りのテストセンターへ確認するようにしましょう。

          3. 具体的な対応を確認した上で受験を申し込む
          4. 受験上の配慮を講じるにあたり、具体的にどのような対応が必要かについてテストセンター側と確認を行います。その際、医師の診断書の提出を求められる場合があります。

            対応の可否や内容が決まった後、試験の申し込み締切日が伝えられるので、スケジュールに従って受験申し込みを済ませましょう。

            EPT英語発音テスト

            EPT®英語発音テストは、一般社団法人国際英語発音協会が運営する試験です。課題文の音読などを通して、アルファベット・音素ごとの発音が判定され、相手に伝わりやすい発音ができているかがわかります。

            東京または大阪のテスト会場で実施される試験は、点字受験に対応しており、点字試験問題を使用してテストを受けることができます。

            試験の開催は年3回で、点字受験を希望する場合は、会場受験申込みフォームにて該当欄のチェックが必要です。

            障がい区分 受験時の対応例
            視覚 ・点字試験問題の使用(UEB2級点字)
            ・初見文の黙読時間の延長(3分)

            まとめ

            各英語試験で実施されているサポート制度を利用することで、これまで抱えていた不安を解消して試験に臨める可能性があります。受験を検討されている方は、上記の情報をぜひご活用ください。

            【参照サイト】公益財団法人|日本英語検定協会
            【参照サイト】IIBC|TOEIC® Program
            【参照サイト】IDP|IETLS(アイエルツ)公式サイト
            【参照サイト】ETS|TOEFL iBT®テストについて(受験者向け)
            【参照サイト】一般社団法人 国際英語発音協会|EPT®英語発音テスト

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