英語力を測定する指標として日本で最も頻繁に使用されているテストの一つが「TOEIC」です。(本記事では「TOEIC L&Rテスト」のことを「TOEIC」と呼んでいます。)企業の中には採用時や昇進時の条件としてTOEICスコアを活用しているところも多く、TOEICでハイスコアを獲得することは多くの英語学習者にとって重要な目標の一つとなっています。
一方で、TOEICをめぐっては様々な否定的意見を聞くこともあります。皆さんも一度は「TOEICを勉強しても無駄」「いくらTOEICを勉強しても英語を話せるようにはならない」「TOEICのハイスコアは英語を使える証明にはならない」といった批判を聞いたことがあるのではないでしょうか。
たしかにこれらの意見には一理あり、「TOEICでハイスコアをとれる=英語を話せる」ではないことは事実です。特にスピーキングやライティングといった実践的なアウトプットの力がより重視される昨今においては、こうした主張が広く支持される理由も分かります。
しかし、本当にTOEICの勉強は英語を習得するうえで無駄なのかと言えば、実は全くそんなことはありません。今回はその理由について、人間が母語以外の第二言語を習得するプロセスについて研究する学問領域である「第二言語習得研究」の観点からご紹介したいと思います。
「TOEICのスコアアップが必要なものの、勉強にモチベーションが出ない」という方や「自分の今の勉強に本当に意味があるのかを疑問に感じている」という方はぜひ参考にしてください。
「TOEICハイスコアでも話せない」はあるが「話せるけどTOEICロースコア」はない理由
第二言語習得研究の話に入る前に共有しておきたい事実が一つあります。それは、「TOEICがハイスコアがとれても英語を話せない人」はいっぱいいる一方で、「英語を話せるけどTOEICはロースコア」という人はいないという事実です。
もちろん、一言で「英語を話せる」といってもそのレベルは様々ですので、かりにTOEICスコアが400点だとしても英会話をすることは可能です。しかし、TOEICスコアが400点の人がビジネスの現場で英語を使いこなし、外国人と共に英語でコミュニケーションをとりながら仕事を円滑に進めることは難しいでしょう。
このTOEICスコアと英会話力の関係を別の言い方で表すならば、TOEICでハイスコアを取れることは英語を話せるようになるための十分条件ではありませんが、必要条件ではあるということです。つまり、TOEICスコアを高めるだけでは英語を話せるようにはなりませんが、英語を話せるようになるためには少なくともTOEICでハイスコアをとれるだけの実力が必要だということです。なぜこのようなことが起こるのでしょうか。その理由を第二言語習得研究の観点から説明していきます。
第二言語習得におけるインプットの重要性
第二言語習得研究は、言語学や脳科学、心理学などの様々な学問領域をまたぎつつ、人間が母語以外の第二言語を習得するプロセスについて科学的に解き明かす研究分野です。
第二言語習得研究の世界にも様々な仮説が存在しているものの、研究者らの間で合意がとれていることは、第二言語習得における「インプットの重要性」です。インプットとはリスニングやリーディングによってその言語に接触することを指し、単語や文法規則の習得もこれに含まれます。
クラッシェンが唱えた「インプット仮説」
インプットの重要性についてはクラッシェンの「インプット仮説」(別名「モニターモデル」とも呼ばれる)が有名です(詳細は「クラッシェンが唱えた第二言語習得5つの仮説「モニターモデル」とは?」を参照)。
クラッシェンは、第二言語の習得はインプットのみによって行われると考え、特に「i+1」という数式で示される「理解可能なインプット」の重要性について唱えました。理解可能なインプットとは、自分の知識よりも少しだけレベルが高いインプットのことを指しています。クラッシェンは、この理解可能なインプットを繰り返すことが第二言語習得においては最も効果的だと主張しました。
しかし、クラッシェンの主張は言語習得におけるアウトプットの有用性を否定している点や「i+1」のレベルが具体性に欠けるといった点から批判され、新しい仮説が登場します。それが、スウェインが唱えた「アウトプット仮説」やロングの「インタラクション仮説」です。
インプットの重要性を否定しない「アウトプット仮説」と「インタラクション仮説」
スウェインは、第二言語習得にはインプットだけではなくスピーキングやライティングといったアウトプットのトレーニングも重要だと主張し、アウトプットには「気づき機能」「仮説検証機能」「メタ言語的機能」という3つの役割があると唱えました。
簡単に言うと、「気づき機能」とは、アウトプットを通じて自分が言いたい(書きたい)ことと言える(書ける)ことのギャップに気づくことができるという意味です。また、仮説検証機能とは、アウトプットを通じて相手からのフィードバック(相手が話を正しく理解したか、反応してくれたか、)を受けることで、自分が持っている仮説を検証することができるという意味です。
そして「メタ言語的機能」とは、人はアウトプットを通じて自分の話す言語を意識的に省みることができ、内面化できるという意味を指しています。例えば自分が英語を話しているときに文法を間違えたことに気づき、すぐに言い直すことなどもあるかと思いますが、これもメタ言語的機能が果たしている役割だと言えます。
スウェインが唱えたこれらのアウトプットの役割は、英語学習者の皆さんであれば実感するところも多いのではないでしょうか。アウトプットの必要性に駆られることで自分のインプットの足りない部分が明確化され(単語を知らない、文法が分からない、発音が間違っていて伝わらない・勘違いされたなど)、インプットの効率を上げることができます。
また、ロングは「アウトプット仮説」からさらに進み、「インタラクション仮説」を唱えました。インタラクション仮説とは、第二言語の習得は対象言語を用いた対面での相互交流によって促進されるとする仮説で、ロングは実際の会話の中で生まれる「意味の交渉」が重要だと主張しました。
意味の交渉とは、会話者同士がお互いの話していることの意味を理解しようとする過程で生まれる努力のことを指します。伝わらなければ言い換える、発音を修正してみる、ゆっくり話す、などの努力です。ロングは、これらの意味の交渉はインプットの質を上げるうえで鍵を握ると考えました。この仮説も英会話をする機会がある英語学習者の方であれば実感できるのではないかと思います。
ここで大事なポイントは、クラッシェンはもちろんのこと、スウェインとロングもリーディングやリスニングといったインプットの重要性については一切否定していないという点です。両者の主張は、第二言語習得においては十分なインプットが必須であり、アウトプットはインプットの質を高める機能を果たしているという点で共通しています。つまり、第二言語習得においてはインプットが前提となるのです。
最も効率的な流れは「インプット」→「アウトプット」
上記で説明したように、第二言語習得研究の世界では第二言語の習得にはインプットが重要であるというのが共通の見解となっています。考えてみれば当たり前の話ではありますが、人はインプットした情報しかアウトプットすることはできません。
知らない単語を使って話したり書いたりすることはできませんし、聴き取れない単語やイディオムを発音することはできません。これは英語に限らず日本語でも同じです。「読めるけど書けない」漢字はあっても「書けるけど読めない」漢字はないのと一緒です。
これは、アウトプットできる量や質の上限は、常にインプットの量と質によって制限されるということを意味しています。十分なインプットがない段階でアウトプットのトレーニングをしても、すぐに頭打ちが来てしまうのです。このインプットとアウトプットの関係を簡略化して数式にすると、下記のようになります。
インプットは、すでに定着している英語に関する知識の質や量を指しています。アウトプットは、その知識を運用する(引き出す)能力のことを指します。例えば、下記のようにアウトプット力を20%から30%に上げるスピーキングのトレーニングを想定してみます。そのトレーニングにかかる時間はインプットの状態に関わらず同じだとすると、インプットが多い状態でトレーニングを進めたほうがより効率的に英語力を高められることが分かります。
- インプット(100) × アウトプット力(20%→30%) = 英語力(20→30)10アップ!
- インプット(300) × アウトプット力(20%→30%) = 英語力(40→90)30アップ!
逆に、インプットが100しかない人はアウトプット力を100%まで高めても最終的な英語力は100までが限界となりますが、インプットが300ある人はアウトプット力が50%しかなくても英語力は150まで高められるのです。
そのため、英語力を効率的に高めたいのであれば、「インプット」→「アウトプット」という流れで進めるのが最も効果的です。まずは単語や文法、発音、リスニングやリーディングといったインプットのトレーニングを重点的に行い、英語の知識を十分に身につけることが重要です。そのうえでとても役立つのが、TOEICのテストなのです。
アウトプットの練習はTOEICで800点を超えてからでも遅くない
TOEICは、ビジネスの現場で使用されている実践的な単語や文法、発音といった基礎的な知識に加え、アウトプット力のベースとなるリスニング力とリーディング力を身につけるうえで最適な教材です。
TOEICテストの発音にはアメリカ英語、イギリス英語、カナダ英語、オーストラリア英語などが混ざっていますし、単語やイディオムも実際の会話やメール文面に即したものとなっています。リスニングパートではリスニングのトレーニングを、リーディングパートではリーディングのトレーニングを集中的にこなすことができます。
アウトプットの練習は、TOEICで800点を超えてからでも遅くはありません。TOEICで800点を獲得できる力があれば、一定のインプットはできている証となりますので、そこからオンライン英会話や英会話スクールへの通学などを通じてスピーキングやライティングなどのアウトプットのトレーニングを繰り返していけば、効率的に英語力を高めることができます。
また、アウトプットのトレーニングではインプット時には気づかなかったより細かい語彙や文法、発音の間違いなどにも意識が向くようになり、自分がインプットした知識のうち、足りていない部分が明確になります。それらのギャップを次のインプットのトレーニングに反映させていくことで、よりインプットの質が高まります。
逆に、インプットが足りない状態のままいくらオンライン英会話などでアウトプットの練習を繰り返していても、使える単語や表現の幅が限られているので、あまり伸びる余地がありません。むしろ、誤った発音や文法のままアウトプットの練習を行い、間違った型を身につけてしまうと、あとから修正するのが大変となり、逆効果となります。
スピーキングでは単語と単語をつなぎ合わせて身振り手振り伝えるだけでも相手に意味が伝わってしまうので、間違った英語でも会話は成り立ってしまうのですが、その状態に満足したままインプットを怠ると、ブロークンイングリッシュが定着してしまうのです。
TOEICは800点以下だけれども早く「英語を話せるようになりたい」という方は、アウトプットの練習をしたい気持ちを抑えてまずはじっくりと単語や文法、発音といった基礎固めを行い、そのうえで徹底的にリーディングとリスニングのトレーニングを積み重ねるのがおすすめです。
第二言語習得研究から考えるスピーキングのプロセス
上記で説明してきたことを、少し違う角度からも説明したいと思います。第二言語習得研究に基づいてスピーキングのプロセスを大まかに分類すると、下記のようになります。
- 概念化:言いたいことを概念として思い浮かべる
- 文章化:単語や文法知識を駆使して文章を作る
- 音声化:作った文章を声に出して発話する
- 自己モニタリング:発話をモニタリング・修正する
スピーキングするときは、まずは「こんなことを言いたいな」という内容を概念として頭に思い浮かべます。概念化ができたら、次はそれを実際に文章として組み立てます。この文章化のフェーズでは、自分の言いたいことを頭の中にすでにストックされている単語や文法知識と照合しながら文章を組み立てていくことになりますので、あらかじめ十分な知識がインプットされていなければ、文章を作ることはできません。
また、文章化が終われば、次は実際にそれを声に出す音声化のフェーズとなりますが、相手に意味が正しく伝わる流暢な英語を話すためには、予めリスニングのトレーニングにより正しい発音やアクセント、英語特有のリズムを習得している必要があります。
そして、音声化する瞬間やその直後は、自己モニタリングと呼ばれる検証作業に入ります。自分が音声化した(しようとした)際の単語選びや文法、発音に間違いがなかったかを検証し、間違いに気づけば言い直すなどして修正する作業のことを指します。ここでも、モニタリングをするためには正しい単語や文法、発音の知識を持っている必要があることが分かります。
このように私たちが英語を話すプロセスをより細分化していくと、文章化、音声化、自己モニタリングといった各プロセスをしっかりと機能させるためには前提として十分なインプットが必要であることが分かります。
TOEICの勉強は時間の無駄ではない理由
ここまで説明すれば、「英語を話す」という目標の達成に向けてTOEICの勉強をすることは決して無駄にはならないことがお分かりいただけるのではないでしょうか。TOEICの勉強を通じて培った十分なインプットがあれば、あとはそのインプットした知識を引き出すアウトプットのトレーニングを繰り返していけば短期間でも英会話力は一気に高めることができるのです。
「TOEICを勉強しても英語を話せるようにはならない。TOEICの勉強は時間の無駄だ」という意見は、例えるならば「ランニングをしてもサッカーは上手くならない。ランニングは時間の無駄だ」と言っているのと同じです。
ランニングだけでサッカーが上手くなることはありませんが、サッカーをプレイするためには十分な距離をランニングできるだけの体力が前提条件となるため、ランニングを軽視するサッカーの指導者は誰一人としていません。
スピーキング、ライティングができるようになるためにはリスニング、リーディングといったインプットのトレーニングが欠かせません。しかし、インプットのトレーニングは英会話のトレーニングなどと比べると地味であり、やる気が出ないという方も多いでしょう。その意味でも、スコアという形で明確に努力した結果を伝えてくれるTOEICを活用することはおすすめだと言えます。
第二言語習得に基づくTOEIC勉強法
TOEICの勉強は英語を話せるようになるうえで役に立つということが分かったら、最後は第二言語習得の観点から効果的だと言えるTOEICの勉強法についてもお伝えしておきます。
単語・文法・発音は徹底的に
まず、TOEICでハイスコアをとるためには目標スコアに応じた単語力と文法知識を持っている必要があります。TOEICの単語アプリや単語集などを活用し、徹底的に単語と文法をインプットしましょう。単語や文法が分からないとリスニングパートでは聞き取りが上手くできませんし、リーディングパートでは読むスピードが遅くなり時間不足に陥ったり、内容理解が不十分となり正解にたどり着くことが難しくなったりします。
また、単語・文法に合わせて発音のトレーニングをすることも重要です。TOEICではアメリカ英語に加えてイギリス英語、カナダ英語、オーストラリア英語など様々な英語が登場します。正しい発音とリズムを身につけることはリスニング力向上だけではなくリーディング速度の向上にも効果的です。発音矯正の詳細については下記を参考にしてください。
リスニングパートのスコアアップに効果的なのは「シャドーイング」
リスニングパートのスコアアップに効果的なトレーニングは、ずばりシャドーイングです。第二言語習得研究に基づいて説明すると、リスニングのプロセスは主に「音声知覚」と「意味理解」という2つのプロセスに分けることができます。このうち、シャドーイングは音声知覚の高速化・自動化に役立つトレーニングとなります(より詳細は「第二言語習得から考える、なぜシャドーイングがリスニング力向上に効果的なのか?」を参照してください)。
ポイントは、この「音声知覚」と「意味理解」は、脳内に一時的に記憶をとどめておく「ワーキングメモリ(作業記憶)」と呼ばれるメモリの中で競合しているという点です。そのため、音声知覚にメモリを使いすぎてしまうと、そのぶん意味理解に割けるメモリが減ってしまうのです。
皆さんも、英語のリスニングをするとき、相手が何を言っているのかを正しく聴き取ろうと意識を音声に集中するあまり、リスニングの最中はしっかりと聴けているつもりでも、いざ聞き終えてみると何を言っていたか全く思い出せないという経験をしたことがある方もいるのではないでしょうか。これは、まさに音声知覚にメモリを使いすぎて意味理解や理解した内容を記憶にとどめておくといった作業にメモリを割けていない状態だと言えます。
意味理解や記憶に十分なメモリを割くためには、音声知覚のスピードを高速化、自動化するしかありません。聴こえてきた音声をそのまますぐに復唱する必要があるシャドーイングのトレーニングは、この音声知覚だけに意識を集中させるトレーニングとなり、反復することで音声知覚の高速化・自動化が促進されるのです。
まずは意味を意識せずに正確な復唱だけを心がける「プロソディシャドーイング」に取り組み、慣れてきたら意味を意識しながら復唱する「コンテンツシャドーイング」に取り組むのが効果的です。両者の違いについては「シャドーイングには2種類ある?プロソディシャドーイングとコンテンツシャドーイングの違いとは?」を参照してください。
また、意味をしっかりと理解しながらリスニングをするためには、知覚した音声を頭の中のデータベースであるメンタルレキシコン(心的辞書)と照合し、音声と単語、そしてその意味を瞬時に紐づける必要があります。
そのため、このときネイティブの正しい発音や正しい意味が単語とセットとなってしっかり頭に入っていないと、このデータベースの照合に時間がかかってしまい、意味理解のスピードが遅れ、結果としてリスニングしながら意味を掴んでいくことが難しくなってしまいます。
例えば、スーパーのレジなどで “Do you need a bag?” と聞かれたとき、ネイティブスピードの発音に慣れていない方だと「ジュ ニダ バ?」としか聞こえず、意味がとれないことがあります。「ドゥ ユー ニード ア バッグ?」という一つ一つの音や意味は分かっていても、それらが結合や脱落などの音声変化を伴うとどう聴こえるかについての知識が不足していると、知覚した音声を頭の中にある単語の知識とうまく照合できず、意味を理解するのに時間がかかってしまうのです。
また、他にも英語初心者の場合では数字のリスニングで意味理解に時間がかかってしまうケースがよくあります。例えば、”Two Point Five Million Dollars” と聞いたとき、即座に約2.5億円(250万ドル)だと理解することができないようなパターンです。
数字の意味理解に時間がかかる人は、1 million dollars = 1億円 という意味の紐づけができていないため、「1 million は 100万。1ドルは100円だとすると、100万ドルは1億円か。ということは2.5 millionは2.5億円か」といった具合で考えるため、意味の理解にとても長い時間がかかってしまうのです。TOEICにおいてはそうこうしている間にもリスニング音声が次の文章を読み上げていくため、リスニングの途中で意味を見失ってしまいます。
音声知覚の高速化・自動化にはシャドーイングが有効であり、意味理解をスムーズにするためには正しい発音やイントネーションのインプット、単語やイディオム、文法などに関する豊富な知識を持っておく必要があります。
TOEICのリスニングパートのスコアを上げるためには、Part1~Part4までのリスニングスクリプトを活用してシャドーイングのトレーニングを行うのがおすすめです。まずはスクリプトに出てくる単語や文法を一通り細かくチェックし、確実に自分の知識に加えます。それができたら、次は繰り返しシャドーイングのトレーニングに取り組みましょう。
リーディングパートのスコアアップに効果的なのは「音読」
リーディングパートのスコアアップに効果的なトレーニングは、ずばり音読です。第二言語習得の観点では、リーディングのプロセスは大きく「デコーディング」→「意味理解」の2つに分けられます。
そして、このデコーディングには、「単語認知(語彙アクセス)」→「音韻符号化」というプロセスが含まれます。単語認知は語彙アクセスとも呼ばれていますが、眼球停留(文字に目を留めること)により視覚に入ってきた文字情報をメンタルレキシコン(心的辞書)と照合し、どのような単語が使われているかを認知します。そして、認知した単語を一度頭の中で音声化(音韻符号化)し、そのうえで意味を理解するというプロセスとなります。
リスニングとの違いは情報を「耳」で知覚するか「目」で知覚するか、という点となりますが、リーディングの場合はさらに認知した単語を「音韻符号化」するという点もポイントとなります。
皆さんも、リーディングをしているときに読み方や発音が分からない単語が登場し、とたんにリーディングの速度が落ちてしまったという経験をしたことがある方がいるのではないでしょうか?
人はリーディングをするとき、実際に声を出す、出さないに関わらず、視覚から認知した単語を一度頭の中で音に変換し、その音を手がかりに意味を理解しようとしています。そのため、人は認知した単語を音韻符号化できないとうまく意味がとれないのです。
これは、黄色で書かれた「赤」という文字を見て「この文字は何色で書かれていますか?」と聞かれると、つい「赤」と答えてしまいそうになることからも分かります。視覚でとらえた「赤」という文字を一度頭の中で「あか」と音韻符号化するため、頭がその音に引きずられてしまうのです。
文章を声に出して読む「音読」というトレーニングは、この「デコーディング」にあたる「単語認知」→「音韻符号化」のプロセスを高速化・自動化するうえでとても役立ちます。音読を繰り返すことで、「単語認知」→「音韻符号化」が自動化されれば、そのぶんワーキングメモリを「意味理解」に割くことができるようになります。
意味理解のステップにおいては、リスニングのときと同じく単語の意味や文法といった知識を活用していくことが重要となります。ただし、そういった知識が十分に入っていても、意味理解のステップがスムーズにいかない人が日本人学習者には多いようです。そういう人は多くの場合、英文を逐一訳しながら読む癖がついていて、英文を頭から読んでいくことができず、何度もいったりきたりしてしまっています。
このような戻り読みの癖をなくすためには、文章を前から読み進めていく「チャンクリーディング」や「サイトラ」のトレーニングがおすすめです。
TOEICのリーディングパートでハイスコアを獲得するためには、常にハイスピードで読み進めながら正確に文章の内容を理解していく力が必要不可欠です。そのうえで音読はとても効果的です。ぜひTOEICのPart6、Part7に出てくる文章を活用して音読のトレーニングを繰り返しましょう。なお、音読トレーニングの効果的な方法については「音読の効果を最大化するために心がけたい5つのコツ」を参考にしてください。
まとめ
いかがでしょうか?第二言語習得研究の観点に基づくと、TOEICの勉強は決して無駄にならないどころか、むしろ「英語を話せるようになる」という目標を最短で達成する上でとても有効であるということがお分かりいただけたのではないかと思います。
TOEICはアウトプットのベースとなるインプットのトレーニングを行ううえで非常におすすめのツールです。ぜひ上記の内容を参考にしつつ、TOEICのハイスコア獲得を目指して勉強を頑張りましょう。
第二言語習得研究に基づくTOEIC対策を行いたい方へ
ここでは、上記で説明したような第二言語習得の科学的な知見に基づいて英語を学びたい、TOEICのスコアを効率的に伸ばしたいという方におすすめのスクールをご紹介したいと思います。
TOEIC対策にも最適!第二言語習得研究に基づく時短英語「ENGLISH COMPANY」
ENGLISH COMPANYは、大学受験予備校も運営するスタディーハッカーが運営する、英語のパーソナルジムです。長期留学経験者や英語指導資格保有者などの英語指導のスペシャリストが専任のパーソナルトレーナーとして受講生の英語学習をサポートし、90日間で飛躍的な英語力向上を目指します。トレーニングは「第二言語習得研究」の科学的な知見をベースとしており、日本人が受験勉強などを通じて培ってきた英語力を引き出し、実践的な英語力へと転換することを重視しています。ENGLISH COMPANYでTOEICスコアを大幅アップさせた受講生は多数おり、受講生のTOEICスコアアップ状況をHPでも明確に開示している点が何よりの実績の証となっています。第二言語習得に基づいて科学的かつ効率的にTOEIC対策をしたい方には非常におすすめです。ENGLISH COMPANYについては下記に特集記事をもご紹介していますので、興味がある方はぜひ参考にしてください。
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