シャドーイングには2種類ある?プロソディシャドーイングとコンテンツシャドーイングの違いとは?

英語学習法には様々なものがありますが、その中でも特によく知られている方法の一つが「シャドーイング」と呼ばれるトレーニングです。シャドーイング(Shadowing)とは、簡単に言うと「英語の音声を、聞いた直後にそのまま復唱するトレーニング」のことを指します。シャドーイングはもともと音声言語知覚、そして吃音症の研究に使われ始めたものですが、現在では主に母国語以外の外国語能力向上のために応用されており、通訳トレーニングの現場でも採用されています。シャドーイングのトレーニングによる効果は絶大で、主に以下の3つの能力の向上が見込めます。

  1. リスニング力(リンキング力)
  2. スピーキング力(発音・イントネーション)
  3. 語彙力(ボキャブラリー)

シャドーイングは何といってもリスニング力の向上に非常に効果的です。その詳細な理由については「第二言語習得から考える、なぜシャドーイングがリスニング力向上に効果的なのか?」を参照してください。

また、シャドーイングはスピーキング力の向上にも役立ちます。発話する文章を組み立てる能力自体にはあまり影響がありませんが、スピーキング力の中でも発音やイントネーションといった流暢さの向上においては大きな効果があります。さらに、シャドーイングのスクリプトを通じて新たなボキャブラリーを身につけることもできます。

このように、シャドーイングではリスニング力を初めとして様々な能力を向上させることが可能です。ただし、基礎的な単語や文法理解がないケースではシャドーイングの効果は無効化されてしまうため、英語学習を始めて間もない初心者には不向きな学習になります。初心者の方がシャドーイングのトレーニングを行う場合には、単語や文法が十分に理解できる簡単なスクリプトを使って行うようにしましょう。

ただ復唱するだけじゃない?2種類のシャドーイングとは?

様々な英語学習法が注目されている近年の日本では、シャドーイングもその代表的なメソッドの一つとして一般的な学習方法になりました。一方で、「シャドーイング=英語音声の復唱」という認識のみが広がり、闇雲にただ英語音声をリピートしている人が多いのも現実です。

しかし、実はシャドーイングには「プロソディシャドーイング」と「コンテンツシャドーイング」という2つの種類があることをご存知でしたでしょうか。これら2つのシャドーイングではそれぞれ意識するポイントが違います。

  • プロソディシャドーイング:英語音声を正確かつ素早い復唱がターゲット
  • コンテンツシャドーイング:意味の解釈・ニュアンスの理解がターゲット

プロソディシャドーイングとは、意味を意識することなく聴こえてきた音声を復唱することだけに意識を集中して行うシャドーイングのことを指します。その逆にコンテンツシャドーイングとは、音声だけではなくその意味にも意識を傾けながら行うシャドーイングのことを指します。ここでは、プロソディシャドーイングとコンテンツシャドーイングを行う上でそれぞれ意識すべきポイントを解説していきます。

音を意識するプロソディシャドーイング

プロソディシャドーイングの目的は「聞こえてきた英語音声と全く同じ発音・イントネーションで正確かつ素早く復唱すること」であり、普段「シャドーイング」と言われる場合は一般的にこのプロソディシャドーイングを指すことが多いです。

プロソディシャドーイングの方法はいたってシンプルで、聞こえてきた英語音声を復唱するだけです。もっとも意識するべきポイントは「音声に遅れないこと」になります。音声に遅れてしまうとシャドーイングから単なるリピーティングに変わってしまい、正確な発音・ニュアンスで復唱できなくなります。そのため、できればテキストやスクリプトを確認せずに行うのがベストです。視覚で言葉を確認してしまうと発音の正確性が損なわれることがあるためです。プロソディシャドーイングでは文章の意味を理解することが目的ではなく、英語の音をズレなく認識する「音声知覚」を高速化・自動化することが重要となります。

意味を意識するコンテンツシャドーイング

コンテンツシャドーイングでは、「文章の意味を理解すること」がトレーニングの目的が置かれています。流れてきた英語音声の意味を理解しイメージを頭で思い浮かべることまでがコンテンツシャドーイングになります。ただ流れきた英語音声を追うプロソディシャドーイングに比べて、意味の理解が求められるコンテンツシャドーイングはより強度の高く回転率が早い英語処理能力が必要になります。そのため、コンテンツシャドーイングを効果的に行うには、まずはプロソディシャドーイングで英語処理能力の基礎的な土台作りをする必要があります。

シャドーイングは「プロソディシャドーイング→コンテンツシャドーイング」という流れで進めるのがおすすめです。プロソディシャドーイングにより音声知覚を自動化することができれば、そのぶん意味の理解に脳内のメモリを使うことができるため、コンテンツシャドーイングがよりスムーズにできるようになります。

何より大切なのは、プロソディシャドーイングでまず正確に音を掴む力を身につけ、コンテンツシャドーイングにより掴んだ音の意味を考え頭でイメージするトレーニングを繰り返すことです。この「プロソディシャドーイング→コンテンツシャドーイング」のプロセスに沿ってシャドーイングを行うことで、英語の処理能力は大きく向上していきます。

まとめ

今回は「プロソディシャドーイング」と「コンテンツシャドーイング」という2つの種類のシャドーイングをご紹介しました。簡単にまとめると、前者は「音」に、後者は「意味」にそれぞれ焦点を当てたトレーニングという違いがあります。今後シャドーイングをする際はぜひ両者の違いを意識しながら取り組みましょう。

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