英語コーチング・プログラムの「TORAIZ(トライズ)」は、2021年12月、公益財団法人日本サッカー協会(以下JFA)と「TORAIZ英語サポーター基本契約」を締結したことを発表しました。
このサポーター契約は、トライズのプログラム提供を通じ、JFA職員・指導者・審判員の英語力とコミュニケーション力を高めることで、日本サッカーの国際力向上を推進しようとするものです。
選手をはじめ、日本のサッカーを支える仕事に携わる人たちにも英語力や国際化が求められている背景には、どのような理由があるのでしょうか。今回は、日本サッカー界のさらなる発展と英語習得の関係性について、トライズを運営するトライズ株式会社代表取締役の三木雄信氏にインタビューを実施しました。
三菱地所株式会社を経て、ソフトバンク株式会社に入社。27歳で同社社長室長に就任。英会話は大の苦手だったが、ソフトバンク入社後に猛勉強。仕事に必要な英語だけを集中的に学習する独自のやり方で「通訳なしで交渉ができるレベル」の英語をわずか1年でマスター。2006年にはジャパン・フラッグシップ・プロジェクト株式会社を設立し、同社代表取締役社長に就任。同年、子会社のトライオン株式会社(現・トライズ株式会社)を設立し、2013年に英会話スクール事業に進出。2015年には1年で英語をマスターできるプログラム『トライズ(TORAIZ)』を開始し、日本の英語教育を抜本的に変え、グローバルな活躍ができる人材の育成を目指している。著書に『海外経験ゼロでも仕事が忙しくても英語は1年でマスターできる』『ムダな努力を一切しない最速独学術』『【新書版】孫社長にたたきこまれた「数値化」仕事術』などがある。
インタビュー目次
「TORAIZ英語サポーター基本契約」について
Q:JFAと「TORAIZ英語サポーター基本契約」の締結に至った経緯を教えてください
トライズはこれまでにも、サッカー日本代表の中山雄太選手や菅原由勢選手をはじめとする、トップアスリートの英語学習をサポートしてきました。受講の結果、両選手は英語スピーキング力テストのVERSANT®で47点(「身近な事柄において伝えたいことの要点を包括的に述べることができる」レベル)以上のスコアを達成するなど、着実に英語力を身につけています。このような実績が評価され、グローバル人材育成を目指すJFAと、今回の「TORAIZ英語サポーター基本契約」を結ぶこととなりました。トライズは今後、日本のサッカー界を盛り上げていくためのサポーターとして、JFA職員・指導者・審判員の英語力向上を支援していきます。
サッカー選手が世界で活躍するために身につけるべき英語力とは
Q:選手が必要とする英語力とは、具体的にどのようなものですか
戦術に関する英語での綿密なコミュニケーション
現代サッカーは機動的で、数秒単位で攻守が入れ替わるほどのスピード感があります。指示を待つのではなく、選手同士が連携し、お互いの動きに対して瞬発的に反応するようなプレースタイルです。そこで、日本人選手が海外で活躍する条件の一つとして、英語でのコミュニケーション力が非常に重要視されています。
極めて流動的な試合状況の中で瞬時に判断をするには、お互いが考えていることも含めて、チームメイト間できちんと戦術を言語化しておく必要があります。そのため、共通言語である英語を使って対話をするスキルが欠かせません。普段のコミュニケーションや練習中のフィードバックでも、言葉で考えや状況を共有することで、チーム内での信頼感が作り上げられるのだと思います。
自分のコンディションを英語で適切に伝える力
また、これまで選手にプログラムを提供した中では、フィジカル面の状況を適切に共有するための英語にも力を入れてきました。海外でプレーをする場合、単に「足が痛い」だけではなく、どこがどう痛いのか、少し違和感があるのかなど、監督やトレーナーに対して選手自身が正しく伝えなければなりません。指導者側も、選手の調子を具体的に把握できていれば、試合に出場させても大丈夫かどうかの判断がしやすくなります。試合にフル出場できるかは選手にとっての大事な指標なので、体調に関しても英語でしっかりとコミュニケーションを取ることが必要不可欠です。
日本サッカー界にさらなる国際化が求められる理由
Q:JFA職員・指導者・審判員の方々は、どのような場面で英語力が課題だと感じているのでしょうか
より良い試合条件を引き出すための交渉
たとえば、サッカー日本代表の場合でも、ワールドカップやオリンピックといった大一番に向けて、各国のチームと親善試合の日程を組んでいきますよね。実戦経験を積んでチーム作りをしていくわけですが、試合の詳細を設定する過程でさまざまな国の関係者との交渉が発生し、そこではJFA職員の英語での交渉力が問われます。
いつ・どこで試合をするのかは非常に大切なポイントです。昨年開催された東京オリンピックでも夏の暑さが話題になりましたが、気温や湿度が高い中で試合をするのは過酷ですよね。試合の開催場所についても、移動時間が長ければそれだけ選手に負担がかかります。日本代表の試合では、普段はヨーロッパのチームに所属している選手が招集されることも多いので、各地にいる選手たちの事情も考慮しなければなりません。
選手のプレーやチームの戦術のみならず、会場までの移動時間、時差の問題、気温などのコンディションが試合の勝ち負けに影響することは大いにありえます。選手が最高のパフォーマンスを発揮し、日本のサッカーがさらに強くなっていくためには、各国との交渉の中で、自分たちにとってより良い条件を引き出すことが重要です。これはサッカーの話だけに限らず、一般的なビジネスシーンでも同様のことが言えるのではないでしょうか。
地域の枠を超えた国際的な規格作り
監督に関して言うと、サッカー指導者には資格が存在します。ただし、Jリーグの監督になるために必要なS級の資格を取得しているからといって、ヨーロッパのプロチームでも監督になれるわけではありません。仮にJFAとUEFA(欧州サッカー連盟)の間で指導者ライセンスの相互認証が行われ、日本で取得した資格を活かせるとなれば、日本の優れた監督がサッカーの本場であるヨーロッパのチームの監督を務めることもありえるでしょう。そのためには、各地域で異なる規格をすり合わせる必要があります。国際力を高め、日本のサッカーをより強くするには、選手一人ひとりの頑張りだけではなく、国際的な規格を他国と一緒にどう作り上げていくのかも重要です。
審判員を取り巻く環境の変化
2018年からは、IFAB(国際サッカー評議会)が定める競技規則に、VAR(Video Assistant Referee)についてのルールが追加されました。VARとは、試合映像の確認を通じて、ピッチ上で行われる判定の支援をする審判員のことです。国際的な試合では、ビデオ判定に携わる審判員も、必然的に英語を話さなければいけません。試合中は、英語で言いたいことをじっくりと考えている余裕もないので、必要に応じてスピード感を持ってやり取りをする力が求められます。
JFAに提供する英語コーチング・プログラムについて
Q:今後、JFAの関係者に対してどのようなプログラムを提供する予定ですか
まずは、スタート地点とゴール地点をきちんと決めることが基本です。トライズでは、できるだけ具体的なゴールを決めた上で、個人に合わせてレッスン内容や教材を変えていきます。選手には選手向けの、戦術を語る人には戦術を語る人向けの内容を提供するということですね。サッカー関連の英語学習書籍を調べてみると、すでに色々な種類の本が出版されています。今回のサポーター契約を通じて受講される方についても、数多くの選択肢の中から一人ひとりの英語レベルに適した教材を選んでいきます。
レッスン内容も、仕事内容や目標に合わせてカスタマイズが可能です。たとえば、JFAの職員の方であれば、英語力そのものに加えて交渉力も必要となるので、英語で議論をするためのトレーニングが中心になるでしょう。その場合、トライズがビジネスパーソン向けに提供している交渉用の英語レッスンなどが役立ちます。
仕事で英語を必要としている学習者に向けたアドバイス
Q:英語に対するアスリートの学習姿勢などで、社会人の学習者が取り入れられるポイントはありますか
目標達成のために必要なステップを、一つずつこなしていく
トップアスリートは、優れたスポーツ選手であると同時に、優れた学習者とも言えます。彼らは目的意識を持って物事に取り組み、PDCAサイクルを回しながら、振り返りと改善を繰り返すプロセスを継続してきた人たちばかりです。シャドーイングやフレーズの暗記といった受講中の課題に関しても、忙しい練習の合間を縫って完璧に仕上げてこられます。スポーツも英語も同じで、「やるべきことをやれば上達する」という認識で取り組まれているのだと思います。
大切なのは、その日すべきことを着実にこなす、日々の積み重ねです。トライズのプログラムでも、目標に合わせた教材を選んだ上で、「この教材を3ヶ月で終わらせるなら、今週中にここまで進める必要がある」という風に小分けにして考えて、それを実行していく。その後、プログレスチェックやフィードバックも実施しながら、ゴールに向かうステップを一つずつクリアしていきます。中山選手と菅原選手も、以前開催したトークイベントで「サッカーと英語学習の共通点は日々の向上」とお話しされていました。
Q:キャリアのために英語力アップを目指している方たちに向けてメッセージをお願いします
学習ゴールが具体的であるほど、やるべきことが見えてくる
まずは、英語を活かして自分のキャリアパスをどうしたいのかを明確にすることが一番大事だと思います。「仕事で海外に赴任したい」「取引先が日本を訪れた際に英語でアテンドができるようになりたい」など、人それぞれのゴールがあるはずです。
ゴールが定まれば、目指すべき英語レベルも見えてくるので、そこから逆算して具体的な学習計画を立てられます。自分の目標にマッチした教材・レッスンで学ぶと、その内容が仕事でもすぐに活かせる。すると、「やってよかったな」という気持ちになり、目標達成まで走り続けられます。効果が実感できなければ、なかなか学習は続かないですからね。明確なゴールを設定した上で、教材やレッスン内容も個別最適化して学ぶのがもっとも効率的なやり方だと思います。
個別最適化されたプログラムだからこそ、学習の効果を実感しやすい
トライズの「英語コーチング本科」では、1年で1,000時間の学習に取り組みます。1,000時間と聞くと、効果が出るまでに時間がかかると捉えられがちですが、ゴールに直結する学習をしているので、むしろ即効性はある。「この前学んだことがすぐに役立った」と感じられる場面があるからモチベーションが続きやすく、結果として、1,000時間の学習を終える頃には最終的な目標も達成できているというイメージですね。この即効性は、受講生一人ひとりに合わせて学習内容を個別最適化しているからこそ実現できるものです。仕事の目標や自分の人生設計と英語を結びつけながら、学習に取り組むことが大切です。
編集後記
日本サッカーの国際力向上のため、JFAの関係者にプログラム提供を行うトライズ。今回のインタビューでは、国際試合の運営などを通じてサッカー界を支えている人たちの仕事にも英語力が密接に結びついていることが分かりました。選手だけではなく、今後より多くの日本の監督や審判員が海外で活躍する姿を見るのも楽しみです。
トライズでは、受講期間12ヶ月の「英語コーチング本科」に加え、3ヶ月の短期集中で取り組む「国際学会プレゼンコース」「実践ファシリテーションコース」など、仕事で必要な英語スキルの習得に直結する目的別のプログラムを提供しています。自らの学習ゴールの達成に向けて、個別にカスタマイズされた内容で英語を学びたいという方は、まずはトライズの無料カウンセリングを利用してみてはいかがでしょうか。
【参照サイト】トライズ(TORAIZ)の公式サイト
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English Hub 編集部
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