英語を長年勉強しているにも関わらず、思うように英語力が伸びないと悩む方は少なくありません。また、忙しい社会人の方の中には、英語の必要性は感じているものの「学習が続かない」という方もいるでしょう。
そこで今回は、「1年で英語が話せる」をコンセプトに掲げる英語コーチング・プログラム「トライズ(TORAIZ)」を運営し、2021年9月には最新刊『ムダな努力を一切しない最速独学術』も上梓された、トライオン株式会社代表取締役の三木雄信氏に、独学時に学習者が気をつけたいポイントについてお話を伺いました。
三菱地所株式会社を経て、ソフトバンク株式会社に入社。27歳で同社社長室長に就任。英会話は大の苦手だったが、ソフトバンク入社後に猛勉強。仕事に必要な英語だけを集中的に学習する独自のやり方で「通訳なしで交渉ができるレベル」の英語をわずか1年でマスター。2006年にはジャパン・フラッグシップ・プロジェクト株式会社を設立し、同社代表取締役社長に就任。同年、子会社のトライオン株式会社を設立し、2013年に英会話スクール事業に進出。2015年には1年で英語をマスターできるプログラム『トライズ(TORAIZ)』を開始し、日本の英語教育を抜本的に変え、グローバルな活躍ができる人材の育成を目指している。著書に『海外経験ゼロでも仕事が忙しくても英語は1年でマスターできる』『ムダな努力を一切しない最速独学術』などがある。
インタビュー目次
英語学習の効率を高める2つのポイント
Q:英語学習における「ムダな努力」には、具体的にどのようなものがありますか
何と言っても、必要以上に単語を覚えるのは、非常に無駄だと思っています。
たとえば、TOEICで700点以上といったそれなりの高得点をとろうとすると、少なくとも5000語を覚えないといけません。TOEICのスコアが、昇進や海外駐在のために必要という方であれば、取り組めばよいでしょう。しかし、目標が「基本的な英会話ができるようになりたい」という方であれば、オックスフォード大学出版局がリストアップしている「The Oxford 3000」の3000語で約9割はカバーできます。
アメリカのバイデン大統領の就任演説を分析すると、固有名詞を除くと、約94.6%の単語が「The Oxford 3000」に含まれています。映画『プラダを着た悪魔』のスクリプトを分析してみても、「The Oxford 3000」で約86%をカバーしているのです。カバーされていない単語の多くは、普段あまり使われないような単語や、流行の表現なので、全ての学習者が覚えなければならない類のものではありません。
「The Oxford 3000」の3000語を覚えたら、仕事に関係のある英文記事を毎日読むなどして、自分のゴールに合わせた単語を追加すると良いでしょう。
ポイント①:ゴールを明確に決め、学習を個別最適化する
単語が分かりやすいので例として取り上げましたが、単語学習に限らず、「個別最適化されていない学習は、効率が非常に悪い」ということが言えます。
個別最適化された学習の効果については、「ブルームの2シグマ問題(※)」で示されています。簡単に説明すると、教室で集団講義を受けたグループと、個別指導を受けたグループでは、偏差値に20もの差がついたのです。(※「ブルームの2シグマ問題」の詳細については、英語で働く明日のために、最重視すべき学習戦略とは?【トライオン株式会社代表 三木雄信氏インタビュー】を参照ください。)
今回、『ムダな努力を一切しない最速独学術』で紹介している「インストラクショナル・デザイン(※)」の1番のポイントは、ゴールを明確にすることで、学習を個別最適化できる点です。
「何を(What)できるようにするか」を明確にした上で、「どうやって(How)できるようにするか」を体系的に考えることにより、効果的・効率的・魅力的な学習プログラムをデザインするための方法論。
三木雄信『ムダな努力を一切しない最速独学術』PHP研究所、2021年
英語コーチング「トライズ」で提供しているプログラムは全て、このインストラクショナル・デザインの考え方に基づいて作られているので、学習の「入口」と「出口」がきちんと決まっています。
たとえば「ビジネス上級プログラム」の場合だと、「VERSANT Speaking Test(※)」47点レベルから始められた方が、3ヶ月で58点レベルになる、といった具合です。「入口」と「出口」を決めて、教材も全て個別最適化して、責任を持ってゴールまで連れていくというのが、トライズが提供するプログラムの意味だと考えています。
※VERSANT Speaking Test:イギリスの教育大手ピアソン社が全世界向けに販売している英語のスピーキングテスト。20点~80点で評価され、日本人の平均は38点(2018ピアソン調べ)。
Q:「学習ゴールが分からない」という方は、どうすれば良いでしょうか
ゴールを明確にする方法として、「学習目標のABCDモデル」というものがあります。
学習目標のABCDモデル
- Audience(プログラムを受ける人):誰がその行動をするのか?
- Behavior(行動):学習者は何ができるようになるべきか?その行動とは何か?
- Condition(条件):どのような条件なら学習者がその行動を実行できるか?
- Degree(程度):その行動はどの程度できなければならないか?習熟度はどの程度か?
三木雄信『ムダな努力を一切しない最速独学術』PHP研究所、2021年
「自分一人で海外出張に行って、プレゼンをして、質疑応答もできるように」といったように、どういうシチュエーションの、どういう前提で、誰が、何をするのかを細かく定義していくと、目指すべき英語レベルや必要な教材が分かります。
各項目が明確になればなるほど、学習の成果は出やすくなります。トライズでも、専属コンサルタントが受講生の方から、ABCDの聞き出しを丁寧に行っています。
「英語学習は趣味なので、特にゴールはない」という方の場合も、仮でも良いので、ゴールを決めてみると良いと思います。「海外旅行で英語を話したい」「洋楽を歌いたい」など、何かゴールセットをすれば、そのゴールに向かって教材も絞れ、お金も時間も有効に使えるので、より大きなリターンがあるはずです。
ポイント②:達成期限を決める
ゴールを決めることと、もう一つ大事なのが期限を決めることです。期限と、達成に必要な時間が決まっていないままでは、スケジュールに落とせません。
インストラクショナル・デザインの世界に、「キャロルの時間モデル」という理論があります。簡単にいうと、「ものごとを達成するために必要な学習時間に、実際に取り組みさえすれば、できるようになる」という理論です。
「必要な学習時間」は、たとえば宅建士の資格取得であれば「300時間から400時間」といったように相場が決まっています。英語でいうと、日本人の多くは中高や受験勉強、英会話スクールなどで1000時間以上は学習していますが、英語習得のためにはさらに1000時間の英語学習が必要です。1000時間を、仮に1年でやり切ると期限を決めると、毎日3時間勉強する必要があると逆算で分かるわけです。そうして初めて、自分の1日に3時間を割り振って、生活に落とし込めます。
結局、英語学習は、ビジネスと同じなのです。製造業でもプロジェクトでも、「何かを納品する」となると、仕事には3つの要素があります。納期と、価格と、品質です。「いつまでに、いくらで、こういう品質のものを何個納品します」というのが普通ですよね。英語学習もビジネスと同じアプローチで、「いつまでに、どういう品質を、いくらのお金をかけてやるのか」ということを、計画を立ててやれば良いだけです。
それなのに、なぜか「学習」となると、まるで修行かのように、やること自体に価値を見出してしまう人が少なくありません。そして、色々な教材に手を出し、迷い道に入ってしまう。
Q:教材を選ぶ際のポイントはありますか
教材選択に関しては、インストラクショナル・デザインの研究者であるジョン・ケラーが開発した、「ARCS(アークス)モデル」という理論があります。
「Attention(注意)」「Relevance(関連性)」「Confidence(自信)」「Satisfaction(満足感)」という、学習者の意欲を向上させる4つの要素の頭文字をとったものです。
ARCS(アークス)モデル
- Attention(注意)
- Relevance(関連性)
- Confidence(自信)
- Satisfaction(満足感)
これらの要素の中でも、大人の学習者にとって特に大事なのが「Relevance(関連性)」です。実務や自分の目標と関連がない情報は、大人になると、なかなか覚えられません。興味も関連性もない英単語を、単語帳で一生懸命覚えようとしても、効率は非常に悪くなってしまいます。逆に、自分の仕事に関係のある単語であれば、それがたとえ英語以外の外来語であったとしても、すぐに覚えられますよね。
ゴールがはっきり決まると、ARCSモデルに基づいて実務に近い教材が選べるので、効率的なプログラムにできるわけです。
実際にトライズでも、一人ひとりの受講生の方のゴールに合わせて教材を選んでいます。たとえば、同じ医師の方でも、外国人の方を診察したい方と、学会で発表をしたいと考えている方では、教材は異なります。
自分にとってのゴールに近い教材だと興味を持てる上、実際の現場でも使うので、学んだ内容がどんどん身についていく。そうすると、「ああ、勉強して良かったな」というSatisfaction(満足感)なども感じられます。
「学び方」を学べば、あらゆる学習に応用できる
Q:改めて、今、『ムダな努力を一切しない最速独学術』を書かれた想いを教えてください
読んでいただくと分かる通り、この本は英語学習に特化しているわけではなく、ありとあらゆる学習全般に応用できる内容になっています。
私は常々、トライズを受講された方々が、英語力の伸びだけでなく「学習方法自体を学習する」というメタ学習的なことを達成されていると感じていました。プログラムを修了された方と話していると、「トライズで学習方法が分かったので、これで他のことをやれます」とおっしゃる方が多いのです。「この学習方法で、次はプログラミングを学びたいです!」という方も、けっこういらっしゃいます。
インストラクショナル・デザインに基づくトライズのプログラムを受講した人なら、身についた学習方法を英語以外の勉強にも応用できるのは、考えてみれば、ある種当然のことと言えるでしょう。
コロナ禍において、新たに学ぶ必要性は非常に高まっています。通勤時間が無くなるなど、働き方が変化したという方はもちろん、業界や会社の状況によっては、転職を考えている方もいるでしょう。学習ニーズが高まる今、「学習方法」自体を世の中に知らしめることには、大きな価値があると考えました。
日本社会は、この30年沈滞しています。個人も会社も、新しいチャレンジを恐れて成長できていません。学習することは、個々人がサバイブするためにも、会社が変わり、世の中が変わっていくためにも必要です。
独学なら、費用をそれほどかけずに、自分のニーズに最適化した教材で、自分のペースで学べます。eラーニングなどを含め、教材は世の中にたくさんあるので、それらを自分でうまくデザインできるのがベストです。英語学習の場合も、まずは、この『ムダな努力を一切しない最速独学術』で紹介している方法に沿って取り組んでもらえればと思います。
また、トライズでは、この本で紹介している学習プロセスをサポートするために、一人ひとりの受講生に専属コンサルタントがついています。本を読んで試してみた上で、もし「やはり手助けがほしい」と感じたら、トライズに来ていただければと思います。
編集後記
自分にとっての英語学習のゴールと、達成期限を尋ねられたときに、即答できる方は少ないのではないでしょうか。三木氏にお話を伺い、まずはこれらの2つを明確にすることが、学習効率を高めるためにも、モチベーションを維持するためにも重要であると感じました。今、思うように英語力が伸びず焦りを感じている方は、三木氏のアドバイスや、『ムダな努力を一切しない最速独学術』で紹介されている手順を参考に、学習をデザインしてみてはいかがでしょうか。
【参照サイト】トライズ(TORAIZ)の公式サイト
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