【吉田研作先生インタビュー(後編)】オンライン学習のメリットと課題とは?

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オンライン英語

コロナ禍における外出自粛の生活で、仕事や学校においても、リモートワークやオンラインクラスルームなど、新しいスタイルの働き方や学び方が定着しつつあります。

English Hubでは、世界中の人々が繋がりやすいオンラインや仮想現実の世界でも役に立つ「総合的且つ実践的な英語力」の必要性を唱える、上智大学名誉教授の吉田研作先生と、「英会話イーオン」の語学教育研究グループでグループ長を務める堀田和江氏に、お話を伺いました。

インタビューの【前編】では、主に吉田先生に、これからの時代において日本人に求められる英語力についてお話しいただきました。【後編】では、「オンライン学習」「マンツーマンと集団授業」といったテーマについて、吉田先生と堀田氏のお二人から、コミュニケーションを可能とする英語力を育むために必要な学習について、英会話イーオンでの具体的な取り組みも交えて語っていただきました。

話者プロフィール:上智大学名誉教授 日本英語検定協会会長 吉田 研作(よしだ・けんさく)氏

吉田研作先生1948年京都生まれ。上智大学外国語学部英語学科卒業。同大学大学院言語学専攻修士課程修了。ミシガン大学大学院博士課程修了。現在、上智大学言語教育研究センター教授、言語教育研究センター長および日本英語検定協会会長を務める。英語教育、バイリンガリズム、異文化間コミュニケーション教育の第一人者。文科省などの外国語教育に関する各委員会にも携わり、英語が使える日本人の育成に関する研究、活動を行っている。

話者プロフィール:イーオン語学教育研究グループ グループ長 堀田 和江(ほった・かずえ)氏
イーオン堀田さん

サンフランシスコ州立大学修士課程終了。イーオンで英会話を学んだことがきっかけになり、英語教師になるため渡米。米国の大学院で英語教授法(TESOL)を専攻し、帰国後はイーオン教師として勤務。現在はイーオンのカリキュラムと連動した、レッスンで使うオリジナル教材の開発にたずさわっている。

目次

英語学習の可能性を広げたオンライン。しかし課題も?

Q. 広がりを見せている「オンライン学習」のメリットは何だと思いますか?

吉田先生:オンラインの英語学習にはメリットとデメリットの両方があると思います。まず、メリットだと感じたのは、オンラインだと、教室の座る場所にかぎらず、みんなが平等に英語の音を聞けることです。

発音のレッスンも今はオンラインが効果的です。コロナ禍では対面で何かを行う場合、みんなマスクをしています。発音は音だけでなく、口を見ながら聞くのが普通なので、マスクをつけたままでは発音練習はできません。オンラインであればマスクをする必要がないため、単に音を聞くだけでなく、口の形を見ながら、聴覚と視覚の両方を使い複合的にしっかり理解できます。

そしてオンライン学習の一番のメリットは、海外の生の英語に触れる機会が増えることです。例えば、日本に呼べないような、海外の有名な先生も、オンラインであれば講演してもらうことができます。日本の小学校とシドニーの小学校をオンラインで繋いで、それぞれの生徒たちがお互いの街を紹介し合うような活動も可能です。ネット社会が広がることによって、こうした機会がどんどん増えることは、英語学習者にとって大きなメリットになります。

Q. オンライン学習では得られない要素とは?

吉田先生:生きた英語を身に付けるには、人と会って直接コミュニケーションをとる経験や、英語を話す肌感覚を持っていることが基本ではないでしょうか。そのために、その場の空気を肌で感じながら、コミュニケーションをとるという体験が大切だと思います。というのも、コミュニケーションの中で言葉が果たしている役割は30%ほどで、それ以外はジェスチャーや肌感覚など、五感的な要素です。

僕自身、コロナ禍で、家にいながら海外旅行がしたいと思い、VR機器を買いましたが、視覚と聴覚は良いけれども、飛行機を降りた時に感じる、独特の匂い、あるいは湿気や乾いた空気など、そういった感覚が一切伝わってきませんでした。やはりオンラインでは、その場の空気を感じることができないと、身を持って体験しました。

マンツーマンと集団授業、それぞれのメリット・デメリット

Q. マンツーマンと集団授業、それぞれの強みについて教えてください

吉田先生:マンツーマンと集団授業はどちらにも良さがあり、両方とも必要、というのが僕の考えです。

マンツーマンの良さは一人ひとりのニーズに合わせた学びが可能な点です。そして、「生徒と先生」という関係があるからこそ、生徒はいろいろなことを聞き、学び、覚えやすいというメリットもあります。

その一方で、クラスメート同士で助け合い、学び合う経験を得ることはできません。そこでオフラインの集団授業が必要になります。集団授業の場合、生徒たちが会話の主体となり、先生は生徒たち同士の会話を促すファシリテーターのような役割を務めます。

Q. 大人の学習者にとっても集団での学びは重要ですか?

吉田先生:実際のコミュニケーションは1対1よりも、複数人で行われることが多いので、日本人は大人も子どもも集団でのコミュニケーションスキルを伸ばすべきです。むしろ、大人の方がグループレッスンで学ぶメリットがあるかもしれない。実際に、ビジネスの場でも、1対1のコミュニケーションより、複数人を交えた場でのコミュニケーションやネゴシエーションの方が多いのではないでしょうか。

これからの時代に求められる英語力を育むイーオンの取り組み

Q. 教師がファシリテーターを担う形の集団授業は、イーオンでも行われていますか?

堀田氏: 日本の教育はアクティブラーニング(※1)、つまり「教えこむ」のではなく「気づかせる」「考えさせる」といった「能動的に学べる自律した子どもを育てる方向」に大きく舵をきって来ました。

特に子どもたちの場合は、英語力のみならず、21世紀型スキル(※2)といった「これからの時代を生きていく上で必要な能力」を伸ばしたいと考えています。普段のレッスンでは、グループワークを積極的に取り入れ、コミュニケーション力はもちろん、グループ内で役割分担をすることで、主体性、実行力、統率力、責任感などが養われることも意識しています。

教師が一方的に教え込むことを止め、ファシリテーターとして、子どもたちが「自分たちで気づく」ことができるように工夫していると、子どもたちは気づいたことをとても積極的に話してくれるようになってきました、私たちが全く気づかないような小さなことまで気づいて教えてくれるので、驚かされることがよくあります。

※1 学習者が能動的に学びに向き合うように設計された教授・学習法
※2 国際団体「ATC21s」が提唱する、これからの時代を生き抜く上で特に必要とされるスキルのこと。コミュニケーション能力や論理的思考力、情報リテラシーなどを含む

Q. 高校生以上の大人の学習者にとって、集団での学びの効果とは何でしょう?

堀田氏: 大人の学習者に限ったことではありませんが、

  • 同じレベルの学習者が成長している様子を見ることで、「自分でもできる」という自信につながる。また、学習の仕方を参考にすることができる
  • 仲間から共感してもらったり、認めてもらったりすることで、成功体験ができ、それがさらなる学習やもっと大きな挑戦への動機づけとなる(承認欲求が満たされる)
  • 足りない点をお互いにカバーし合える、安心できる環境でコミュニケーションすることができる

といった効果が期待できます。

ただ、大人の場合は、自分が長年学習してきたスタイルというものがあります。ノンネイティブ同士が英語で話すことに抵抗がある方もいらっしゃいます。「英語をツールとして様々な人とコミュニケーションすることが大切」ということは伝えつつ、一人ひとりの学習スタイルを考慮しながらアドバイスをするようにしています。

Q. 自律した学習者を育むために必要な指導とカリキュラムについて教えてください

堀田氏: 学生や大人の学習者の方には、個々の能力・適性に合わせて、単語や文法をスマホで隙間時間に予習復習できるコンテンツや、効率よく学んでもらえるアプリ、多読などができるオンラインコンテンツなど、自宅学習をサポートする教材を提供しています。

それでも、なかなか自分でペースを作るのは難しいという方には、日本人教師が目標を設定し、日々のトレーニング・学習も管理し、学習のペースを作っていくお手伝いをする「AEON UP」というコーチングサービスを提供しています。

また、学習者が自分の目標を設定し、学習の仕方をしっかりと把握できるようにすることも大切です。そのために、イーオンでは「CAN-DOリスト」(※3)を用意し、できたこと、できなかったことを自分でチェックしながら振り返り、それを意識し、自己評価できるようにする。つまり、自分の学習に責任を持ち、自ら考えることができるようになることをサポートしています。

※3 生徒の能力・技能を「~することができる」といった箇条書きで示したもの。学習到達目標を設定する際に用いられている

編集後記

日本における英語教育の第一人者として、長年その発展に寄与されてきた吉田先生が、これから必要とされる英語力について示した見解は、「英語で意思疎通ができればいい」という本質をついたものでした。

今後、メタバースが定着し、VRを通じて世界中の人々が気軽に繋がり、コミュニケーションをとる時代が到来した時、自分の考えを伝え、相手の意見を理解する能力も含めた、真のコミュニケーション力が問われるのだと感じました。

日本の教育現場では2020年より小・中・高と順次、新たな学習指導要領が施行され、4技能5領域を重視する実践的な英語教育が行われています。それに呼応する形で、イーオンのレッスンでも、生徒自身が「英語で何をするのか」について考え、能動的な学習姿勢を身に付けることに力が注がれています。

そういった中で、英語力のみならず、主体性や協調性といった非認知能力の重要性にも話は及び、英語教育の奥深さやポテンシャルに思いを馳せるひとときとなりました。

【関連ページ】【吉田研作先生インタビュー(前編)】英語教育の第一人者が考える、メタバース時代の英語力とは?
【参照サイト】英会話イーオンの公式サイト
【関連ページ】英会話イーオンの口コミ・評判

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