お気に入りの英語学習ツールは何ですか?テキストを使うより、普段から好きな映画や音楽を楽しみながら語彙力やリスニング力を強化する学習者が増えているようです。
動画配信サービスを利用すれば、自宅でも気軽に幅広い英語のコンテンツが楽しめるようになりました。でも、ただ字幕なしでたくさんの映画タイトルを見たり、英語の歌詞を口ずさんでいれば、聴く力、話す力が磨かれるのでしょうか?闇雲に視聴するよりも無駄のない、鑑賞時間を効果的にスキルにつなげる方法が、きっとあるはずです。
映画や小説を通して英語力を向上させる近道とは?
デジタルハリウッド大学の駿河台キャンパスでは2月7日、「今年こそ英語で映画・小説を楽しむ 近道をみつけるセミナー」が開催されました。「世界に日本を発信する」をテーマに掲げ、現在、30ヵ国以上の国籍の学生が在籍しているというデジタルハリウッド大学は、グローバル人材の育成と英語教育に力を注いでいます。
セミナーで語られた映画や小説を通して英語を学ぶツールやテクニックは、実際に話者が実践し、効率的だった方法や、デジハリの学生たちに好評なツールなど、効果が検証済みのものばかり。今回はその、フィクション使った英語上達への「近道」を、English Hub読者のみなさんにご紹介します!
洋書を楽しみながら、英語力を伸ばしたい!
ペーパーバックを買い込んで読破しようと意気込んだものの、始めのページを読むのに何時間もかかってしまい挫折した経験はありませんか?英語の達人たちは、見慣れない英単語ばかりの読書がいやになり、投げ出したくなったことはないのでしょうか。
「英語ハックス」などの著作を持つ著名ブロガーの堀正岳氏は、高校生時代、数カ月にわたってテーマ指定のない膨大な量の英作文を課されて苦心した後、ライティング力が格段にアップしたことに気付いたそうです。そして「大量の一見無駄な経験を頭にくぐらせると、必ず蓄積が起こる」と考えるように。「最初から重要なことだけを選んで蓄積することはできない」けれど、「無駄な情報にあなたにとっての意味が生まれる日を待つ」というのが、そんな堀氏からのアドバイスです。
「人生を変える小さな習慣」をテーマとしたブログ、Lifehacking.jpを運営。ブログでは、仕事術、ライフハック、テクノロジー、ソーシャルメディアなどについて執筆。「ライフハック大全」など著書多数。
読むスピードは徐々に加速する
とはいえ、辞書を片手に頑張っても1日に1ページしか読み進められない場合、300ページを読み切るのに1年近くかかってしいます。そう考えるとやる気を失いそうですが…。
堀氏は、1日に1ページ、辞書を50回ひきながらの読書が、やがて2ヵ月で一冊読破できるようになり、ついには1日で300ページの洋書一冊を読み切るまでに加速したといいます。最初は徐々に、やがては急速に、ペースが上がることを信じて読み続けることが肝心です!
読書を通して英語力を高めるには?
ここで、英語で読書するポイントについて、特に印象深い堀氏のコメントを2つ、ご紹介します。
- 単語帳は作らない
- 好きでたまらないものを選ぶ
読書の過程で、いずれ何度も同じ言葉に出会います。繰り返し出会った言葉は覚えるものなので、単語帳は作る必要がないそうです。そして「カッコつける」ことなく、本当に読みたい本を選ぶことが継続の秘訣。読みたくてたまらない書籍を見つけたら、躊躇せずに読み進めましょう!
興味の赴くままに英語に触れる
また、堀氏は次のような方法でも日常生活に英語を取り入れ、蓄積を増やしているそうです。
- 鑑賞した映画の要約や背景などの情報を海外のサイトで調べる
- 英文記事で気になる訴訟の経緯などを追う
- 「Medium」などのウェブサービスで興味分野をフォローする
- ポッドキャストでニュースを聞く
好きなことについての情報を収集する時間は、生活の一部。「学習のための時間」がなかなか確保できなくても、じぶん時間を英語で楽しむ工夫で英語との接点を増やし、英語力につなげましょう。
活きた英語を映画から学ぶ
続いて、デジタルコミュニケーション学部講師で、英語教員のReggie Mathes氏と、日本で生まれ育ち、本格的に英語を学んだのは英国の大学院への留学時というOlga氏が、それぞれの経験をもとに編み出した映画を通して英語を学ぶメリットや具体的な学習法を伝授してくれました。
英語圏で実際に使われるボキャブラリーやセンテンスを場面中で学ぶことができる映画は、英語学習者にとって理想的なツールです。「言語と文化には深いつながりがある」と語るMathes氏は、文化的・社会的背景とともにスラングを含むリアルな表現に接することができる映画の力を強調。Olga氏も、教科書からは学べない、身近なコミュニケーションや会話術を学べる映画の効用を語りました。
デジタルハリウッド大学 デジタルコミュニケーション学部 客員講師英語担当。映像制作・ディレクションの研究などのキャリアを持ち、豊富な経験にもとづく指導が人気。
デジタルハリウッド大学デジタルコミュニケーション学部 客員講師・デジタルコンテンツ研究科 助教(大学院)。ロンドンの大学院でファッションとテクノロジーの関係性を学び、3Dモデリングから洋服をデザインするファッションデザイナー。米プリンストン大でも教鞭を取る。
映画から英語を学ぶ難点
ナチュラルスピードの英語を字幕なしで理解することを目標に、洋画を鑑賞する学習者は少なくありません。でも、「映画中のセリフはネイティブでも聴き取れないこともある」とMathes氏は言います。ささやき声、ローカルなスラングなどは、ネイティブスピーカーも意味を推測するしかないことがよくあるとのこと。会話を100%聴き取ることを目指す必要はないようです。
身近なテーマを選ぶ
映画から学んだボキャブラリーや表現を会話に活かしたいなら、実際に自分が英語で会話するシチュエーションが登場しそうな映画を選びましょう。Olga氏は留学先のロンドンでは、英国カルチャー満載の実生活に近い背景の映画を繰り返し観て学び、友人との会話に頻出のカジュアルな表現が身に付いたと言います。
ボキャブラリーを学び、リスニングスキルも鍛える
では具体的に、どんな手順で映画鑑賞をすれば、効果的に英語力向上につなげることができるのでしょうか。Mathes氏は、最初は母国語でストーリーを楽しみ、その後は英語学習という目的に集中して2分程度のシーンに区切りながら、繰り返し観ることを推奨します。手順は次の通り。
- 字幕を消し、英語の音に集中しながら観る
- わからなかったところのみ、英語字幕で確認
- 知らないキーワードがあれば、書き出して調べて、覚える
- もう一度見て全て理解できるか確認
但し、英語字幕が表示できないものもあるので、レンタルの際は注意してください。もう一つの懸念は、英語字幕を読むことに集中すると、音声がなかなか耳に入らないこと。リスニングしつつ、聴き取れなかった部分だけ字幕で確認したいときは、VLCのメディアプレイヤーを通して字幕を音声の少し後から表示させる方法(delayed subtitles)もおすすめだそうです。
発音やスピーキングも鍛えられるLRRCRメソッドとシャドーイング
もっと貪欲に、映画で学んだことをスピーキングにも活かしたいなら、Mathes氏が紹介してくれた「LRRCRメソッド」を試してみませんか?
- Listen:セリフを聴く
- Repeat:一時停止し、セリフに続いて声に出して繰り返す練習をする
- Record:納得のいくリピートができるようになったら、自分の声を録音する
- Compare:登場人物の音声と自分の発音を比較してみる
- Repetition (long term):登場人物同様に発音できるようになるまで、これを繰り返す
「Repeat」ができるようになった上級者には、シャドーイングもおすすめとのこと。プレーヤーを停止することなく、「Repeat」の代わりにシャドーイングを行うことで、より流暢でスピードのあるスピーキング力を鍛えることができます。
映画からネイティブのコミュニケーションを学んだというOlga氏も、短いセリフの口真似から始めて、徐々に長いセリフを登場人物と同じスピードで話せるように繰り返し練習することが効果的だったと言います。
デジハリで活躍中!英語学習サポートツール
最後に、自らも英語を含む多数の言語を同時に学習中というデジタルハリウッド株式会社 代表取締役社長兼CEOの吉村毅氏より、大学における英語教育の取り組みについて、紹介がありました。韓国語を既に完全にマスターしたという吉村氏は、複数の言語を学んだ経験からも、母国語と言語間距離の離れた言語を習得することの難しさを語り、それでも必ずゴールが見える日が来ると学習者にエールを送ります。また、デジタルハリウッド大学内の図書館である「メディアライブラリー」館長の橋本大也氏より、DVD鑑賞時に活用できる書籍の紹介も。
英会話ロボットMusio
英語学習を手助けしてくれるAIロボットがあることをご存知ですか?デジタルハリウッド大学では、米国のAKA社と連携し、AIを活用したクリエイター向け英語教育開発に取り組んでいます。英語の講義では、AIロボット「Musio(ミュージオ)」が学生たちと英会話をはずませます。ネイティブスピーカーであるMusioの発音チェックを受ける学生たちの姿は真剣。一人ひとりの発話の機会が増え、活気ある講義が実現しているそうです。
スクリーンプレイ・シリーズ
メディアライブラリーに所蔵されているという「名作映画完全音声セリフ集 スクリーンプレイ・シリーズ」は、映画中の登場人物のセリフがすべて書き下ろされたシナリオ集です。画面で見る字幕は字数制限のため、実際のセリフとは少し異なるもの。スクリーンプレイには、本来のセリフにできるだけ忠実に文字化されたスクリプトが掲載されています。また、映画ごとに「会話スピード」「発音の明瞭さ」など項目別のリスニング難易度が表示されているので、映画選びの参考になります。オンラインでも一般販売されているので、気になる一冊を入手してスクリプト片手に映画鑑賞してみませんか?
もっと楽しく、もっと効果的に
映画のチョイスについて、Olga氏は「何度も同じ映画を観ることになるので、大好きな映画を選ぶことが大切」とコメント。「英語字幕を読む」「発音してみる」「字幕なしで確認」など、異なる方法で同じシーンを繰り返し観ること。それが、達人たちに実証されてきた、英語でのコミュニケーションを自分のものにする「近道」でした。登場人物のセリフで出会った表現を、本当に会話で使ってみるつもりで取り込む意気込みも必要です。
デジタルハリウッド大学の公開講座は広く一般に公開され、在籍中の学生ではなくても主に無料で参加申し込み可能です。興味のある方は、ぜひ公式サイトからスケジュールをご確認ください。
講座主催者概要
デジタルハリウッド大学
映像、3DCG、アニメ、プログラミングなど複数の専門領域を通して、クリエイティブ&コミュニケーションを多角的に学ぶ4年制大学。業界の最前線で活躍するプロの教員による指導が魅力。
English Hub 編集部
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