キャリア20年以上のベテラン通訳者が語る英語習得への道のり【インタビュー】

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語学のエキスパートとして英語と向き合う通訳の仕事。異なる言語を話す人間同士をつなぐ通訳者は、ビジネス、メディア、スポーツなど、さまざまなコミュニケーションの場に欠かせない存在です。

今回の【英語を使って働く人インタビュー】では、通訳・翻訳エージェントの「テンナイン・コミュニケーション」で会議通訳者として活躍する木内裕也さんに、これまでのキャリアや自身が取り組んだ英語学習法についてお話を伺いました。

ベテラン通訳者が考える、英語力を磨く過程での心構えや、通訳に必要な資質とはどのようなものなのでしょうか。

話者プロフィール:木内裕也さん

会議通訳者 木内裕也さん会議通訳者、ミシガン州立大学研究者。20年以上にわたり、数多くの国際会議やビジネス会議の通訳に携わる。2009年5月にミシガン州立大学(MSU)にてアメリカ研究博士号を取得。現在はMSUのオンライン大学院プログラムディレクター。翻訳書籍に「組織を救うモティベイター・マネジメント」、「マイ・ドリーム – バラク・オバマ自伝」など。

インタビュー目次

通訳者を目指したきっかけ

Q:通訳者として働きたいと思ったきっかけや理由を聞かせてください

小さな頃から英語を勉強していて、英語がずっと好きでした。将来通訳者になりたいと思ったのは、大学進学について考えるようになった時です。1998年の長野オリンピックで語学ボランティアを行ったこともあり、本格的に通訳を目指すようになりました。

英語習得までの道のりと学習方法

Q:通訳者を目指すことを決心した時点での英語力は?

通訳者を目指すと決めたのは高校生の時で、当時のTOEICスコアは750点くらいだったと思います。英検は確か準1級を持っていました。

その後、大学在籍中に交換留学でアメリカの大学に行った際は、現地の授業についていくのにとても苦労したことを覚えています。

Q:現在の英語力に到達するまでの道のりについて教えてください

英語力を磨く過程では、大学受験時に英語の基礎体力となるような文法や単語を一生懸命勉強したのが役に立ったと思います。

アメリカの大学・大学院へ通っていた頃、普段の生活で英語を使っていたことも大きな要素でした。しかし同時に、アメリカにいる外国人の学生の英語力が伸び悩む姿もよく見ます。実際のところ、どこに住んでいるかだけでなく、その環境の中でどれだけ英語に触れ、英語力の向上を意識しながらいかに工夫・努力できるかが重要なのではないでしょうか。

特に英語圏で生活していると、「これで充分」と慢心してしまう可能性が日本にいる時よりも高いと思うので、その点には気を付ける必要があります。

Q:英語スキルの向上に効果的だった学習法は?

通訳者としては、シャドーイング(※)などのトレーニングを基本としています。

英語スキル全体の場合は、少しずつ学習を継続することです。週に1回、1日で7時間勉強するのは大変ですが、毎日1時間の勉強は可能なはず。英語学習は、長期的な目線で考えることが必要だと思います。

また、知らない単語・英語表現や、理解があやふやな点があったら、それらを疎かにせず、きちんと自分のものにする努力を今でも行っています。

シャドーイング:英語の音声を聞き、そのすぐ後に続いて発音や抑揚を真似しながらリピートする練習法のこと。

通訳者としてのキャリアとやりがい

Q:通訳者として働き始めてから、どのような壁にぶつかりましたか?

私の場合は、通訳者として現状より1つ上のレベルの仕事に挑戦する際に壁を感じました。「社内の打ち合わせ」が「社外の人との打ち合わせ」に、さらには「社外への公式発表」へとステップアップしていくなど、同じ分野の通訳に取り組む中でも、扱う内容や求められるレベルが変わります。

困難な壁にぶつかった時でも悲観的になりすぎず、きちんと客観的に自己評価をした上で向上の策を練る。そして、ゆっくりでも着実に実力を上げることが大切です。

Q:通訳者に必要だと感じる資質は?

通訳の現場で必要なのは、迷わない、悩まない、落ち込まないこと。ミスは誰にでもありますが、そこから負のスパイラルに陥らないこと。とはいえ、現場からの帰路では猛省します。

また、自己満足をしないことも大切です。自分では「ほぼ100%訳せた!」と思っても、早口で聴衆が内容を理解できないようでは通訳の価値がありません。また、きれいな訳をしても、通訳した言語のネイティブスピーカー以外の参加者が多い会議であれば、その人たちにとっては理解しづらい表現になっているかもしれません。

そのため、通訳をする際は「相手にちゃんと伝わるか」を常に意識しています。

Q:通訳を担当する専門分野の勉強にはどのように取り組んでいますか?

通訳の依頼がよくある分野で自分が弱いと思うテーマに関しては、案件がなくても新聞などで日々の情報チェックを欠かさないようにしています。慣れない分野の案件が来た際は、最近何が話題なのか、業界としてどの方向に進もうとしているのかなどを含め、まずはその分野の基本を知ります。

マクロのイメージをきちんとつかんでおくことで、通訳時の大きなミスを避けられます。

Q:通訳業務の中で特にやりがいを感じる場面や案件は?

長時間の会議は、通訳を聞いているだけでも疲れてしまうものです。無事に通訳を終え、帰り際の聴衆の様子に目を向けた時、疲労感がなさそうで、有意義な会議ができたという表情が見られるとやりがいを感じます。

また、参加者が一人も対象言語を話さないなど、通訳者がいなければ絶対に成立しない会議が無事に終わると、規模や難易度にかかわらず嬉しいものです。

英語学習に取り組む人たちへのメッセージ

Q:英語力向上や、英語を使う仕事に興味がある読者へのメッセージをお願いします

英語に限らず、外国語を身につけると、より多くの人と出会い、話すことができます。それが自分自身の知識や経験につながり、そこからさらに他の人との共有も可能になります。

その楽しみを忘れず、英語を使って自分はどんな価値を提供できるのか意識して、ぜひ一層の実力アップを目指してください。

編集後記

通訳者として仕事にあたる際、自分が話した内容が相手にきちんと伝わっているかを常に意識しているという木内さん。スピーカーの話を素早く・正確に訳すのはもちろんのこと、聞き手の属性・状況も理解した上で言葉を選ぶきめ細やかな配慮に、通訳という仕事の奥深さ・難しさが感じられます。

相手の立場を汲んだコミュニケーションは、プロの通訳者だけでなく、私たちが英語を話す場面においても大切なポイントではないでしょうか。

英語を使って働く中では、異なる文化を持つ人同士でやり取りをするシーンが数多くあります。そんな時、円滑なコミュニケーションのために、英語力そのものを磨くことに加え、状況に応じて言葉を選ぶ柔軟性や応用力が鍵となるはずです。

9,000名以上の通訳者・翻訳者が登録する「テンナイン・コミュニケーション」
ベテランの通訳者・翻訳者が数多く登録するエージェント、「テンナイン・コミュニケーション」は、通訳・翻訳業に加え、語学分野での専門性を活かした英語教育サービスも提供しています。

「シャドーイング」や「リプロダクション」をはじめとする通訳のトレーニングメソッドを取り入れたテンナインの「One Month Program」では、1ヶ月の短期集中で英語力を強化。海外出張、英語会議、プレゼンなどのタスクが目前に迫り、限られた時間の中で効率的に英語力を磨きたいビジネスパーソンにおすすめのプログラムです。

【関連サイト】テンナイン「One Month Program」

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English Hub 編集部

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