『TOEIC L&R TEST 上級単語特急 黒のフレーズ』著者・藤枝氏に聞く!英単語の覚え方のコツ

TOEICのスコアアップを目指して勉強する多くの人が抱える、単語学習に関する悩み。「何回やっても頭に入らない」「効果的な覚え方を知りたい」という声は、学習者からしばしば聞かれます。

また、英文法やリスニングといった様々な学習に取り組む必要がある中で、「そもそも、TOEICで語彙力はどこまで重要なのだろうか」と、単語学習の必要性に確信が持てずにいる方も少なくないのではないでしょうか。

そこで今回は、13年にわたってTOEIC L&R TESTの研究を行い、990点(満点)も取得されている、『TOEIC L&R TEST 上級単語特急 黒のフレーズ』の著者である藤枝暁生先生に、TOEICにおける語彙力の重要性や、おすすめの単語学習法についてお話を伺いました。

掲載されている語彙の難易度は高く、TOEICで満点を狙う学習者までを対象としている一方、600点レベルの人からでも無理なく取り組めるよう様々な工夫が凝らされている『黒のフレーズ』。藤枝先生は、「英語上級者との距離を縮めたいなら、単語」と断言します。今、単語学習で壁にぶつかっているという方は、ぜひアドバイスを参考にしてみてください!

話し手:藤枝暁生氏

1963年東京都生まれ。1986年中央大学法学部法律学科卒。大学卒業と同時に損害保険会社に入社、現在は、SOMPOリスクマネジメントに勤務しており、企業向けのコンサルタントとして、主に自然災害のリスクアセスメントを担当。TOEIC L&Rテストは、2007年3月から100回以上の連続受験を継続中。2014年4月、独学で990点満点を取得。以後、数々の学習会を主催し、講師としてTOEICの学習指導を続けている。著書に、『TOEIC L&R TEST 上級単語特急 黒のフレーズ』『サラリーマン居酒屋放浪記』『サラリーマンのごちそう帖』(朝日新聞出版)『TOEIC L&R テスト 860点奪取の方法』(旺文社)。

インタビュー目次

TOEICでスコアアップを目指す上での語彙力の重要性

Q:TOEICにおける語彙力の重要性とは

藤枝氏:語彙を学ぶことによって、英文を正確に読めるようになり、読むスピードも圧倒的に上がります。

昔のTOEICに登場する単語は今ほど難しくなかったので、そこまで高い語彙力は求められていませんでした。TOEICは2016年5月に新形式に変わっていますが、実はその1年ほど前から語彙の難易度は上がってきています。とは言え、当時はPart5の「正解ではない選択肢」の中に難しい単語が入っている程度でした。今では、Part7の長文問題の中にも英検1級レベルの単語がたくさん出てきます。

長文の場合、前後の内容を理解できていれば、単語自体の意味が多少分からなくても読めることもあります。でも、推測しているとどうしても時間がかかりますし、あくまで推測なので正確に読めているとも限りません。

『TOEIC L&R TEST 上級単語特急 黒のフレーズ』著者の藤枝暁生氏

『TOEIC L&R TEST 上級単語特急 黒のフレーズ』著者の藤枝暁生氏

また、TOEICのリスニングパートに登場する単語はリーディングパートの単語に比べると難しくはありませんが、最近のテストには、会話の長さが以前に比べて長いものや、スピーカーの話す速度が速いものが含まれています。そのため、「よく考えれば意味が分かるレベル」ではなく、「瞬時に分かるレベル」で単語を習得しておく必要があります。

TOEIC990点満点の藤枝氏に聞く、おすすめの英単語学習法

Q:「英単語がなかなか覚えられない」という人に向けて、おすすめの学習法やコツを教えてください

藤枝氏:単語帳を使った学習で最初にやってもらいたいのは、「単語の認識度」を分類することです。まずは、1冊に掲載されている全ての単語に目を通し、自分の知っている単語と知らない単語を仕分けする作業が重要です。

仕分けの方法としては、「意味が分かる単語」「意味は分からないが、何となく見覚えはある単語」「見たこともない単語」の3つに分けるのが一般的です。単語を認識度で分けることで、「全く見たことがない単語はとりあえず置いておいて、まずは見たことがある単語を覚えよう」など、学習の方向性を決めることができます。

あとは、目・耳・口・手の全部を使って覚えていくことですね。見るだけで覚えられなかったら聞いてみる。聞いてみるだけで覚えられなかったら書いてみる。書くのが面倒だったら言ってみる。どの方法が向いているかは人によって異なるので、色々試して、ぜひ自分に合った方法を見つけてみてください。

時間帯について言うと、新しい単語は寝る直前に覚えるのがおすすめです。人間の脳は寝ている間に記憶を整理するので、寝る前は単語を覚えるのに最適です。寝る直前に10個から30個くらい単語を覚えて、朝起きたらすぐ、手元にある本を開いてどれくらい覚えているか検証してみてください。意外と朝になっても覚えていますから。

また、単語を覚える場所も工夫してみるとよいでしょう。例えば電車の中や喫茶店など、自分が単語を覚えやすいと感じる場所を探してみてください。

最後にズバっと言ってしまうと、単語が覚えられないと言っている人は、大抵繰り返しが足りていないです。10〜20回というのは、やったうちに入りません。それは「覚えられない」のではなくて、「やっていない」ということです。100回やって覚えられないのであれば、何かしらの方法を考えなければいけませんが、もしまだ10〜20回しかやってないのであれば、ただ足りていないだけです。

『TOEIC L&R TEST 上級単語特急 黒のフレーズ』について

Q:『黒のフレーズ』を使った学習で身につくスキルを教えてください

藤枝氏:『黒のフレーズ』で身につく豊富な語彙力は、英文を「正確に読む力」と「圧倒的な読解スピード」に貢献します。これに尽きますね。

TOEICテストは、年々ハイスコアを取りづらくなっています。10年前にTOEICを受けて900点を取った人が今試験を受けたら、おそらく800点を取れないでしょう。それは、問題が難しくなっているのと同時に、受験者のレベルが上がってきているためです。

TOEICのスコアは偏差値のようなものなので、受験する人のレベルが上がれば、これまでのようにはスコアが出なくなります。つまり、例えば「900点を取りたい」とか「満点を取りたい」と思ったら、自分より上にいる人を倒す必要があります。「900点を取っているあの人は、憧れの存在です」なんて言っていたら駄目で、その人に勝たないといけない。そうすると、手っ取り早く英語力を伸ばすには、やはり「単語」なんです。

これまでにたくさん英語の文章を読んできたような上級者は、文法力や英文の構造を見抜く力に長けています。そういった部分に関しては、触れてきた英文の量の桁が違うので、簡単には勝てません。しかし、語彙力であれば、「その単語を知っているかどうか」というだけのシンプルな話なので、頑張れば上級者にも勝てるんです。だから、自分よりも上の人に勝ちたいと思ったら、語彙を増やしていくことです。単語集などを使って語彙を増やし、経験不足を補っていくことで、上級者との距離を縮めることができます。

『黒のフレーズ』に掲載している単語は1,000語ですから、本気でやろうと思ったら、1~3ヶ月でものにできます。

Q:『上級特急』とタイトルにある通り、難易度の高い単語が中心です。本番の試験で登場する頻度はどれくらいでしょうか

藤枝氏:まず、『黒のフレーズ』では、掲載している単語を、最も易しいAランクから順に、A・B・C・Sの4つのランクに分けています。このうち、AランクとBランクの単語は試験にしょっちゅう出ているので、優先度を高くして覚えてもらえたらと思います。Cランク・Sランクの単語は、Aランク・Bランクほど頻繁には試験に出てこないですが、TOEICを何回も受けているような人であれば、きっと「これ見たことあるな」と思うはずです。

『黒のフレーズ』に載せた見出し語の1,000個は全て、TOEICの公開テストやIPテスト、あるいは日本や韓国で発売されている公式問題集などで、私が実際に目撃したものばかりです。それも、1回ではなく、少なくとも2回以上目撃したものだけを選んでいます。

他の多くの本と異なるのは、『黒のフレーズ』では、問題の解答に直接的には関係しないような単語も掲載している点です。昔のTOEICテストは、拾い読みするだけでも全問正解することが可能でしたが、今は隅々まで読まないと正解できない問題が増えています。文章中に「読まなくていいエリア」というものがほぼ無いので、わからない単語が少しでもあると、内容を正確に理解できなくなってしまいます。そのため、Part7の片隅に出てくるような単語も徹底的に拾って掲載しました。

また、Part5・6には「正解の選択肢にはならないけど、誤答の選択肢の常連」という単語が結構あるのですが、『黒のフレーズ』ではそれらの単語も拾っています。

例えばPart5の問題を解いているときに、「多分、Aが正解だと思う。自信はないけれど。BとCは違う。Dの単語は知らないな・・・もしかしたら私が知らないだけで、Dが正解なのかも?」みたいに考えていると、問題を解く手が止まってしまいます。そうすると、そこであっという間に5秒、10秒が過ぎていく。そんな風に迷う問題が数問あると、時間のロスがどんどん蓄積されて、最後のPart7で時間が足りなくなります。単語を知ってさえいれば、一発で「これは違う」と消去して先に進めるんです。「主役ではないけれど、名脇役としてTOEICを盛り立てている単語」にまでスポットを当てているというのが、『黒のフレーズ』の特徴の1つですね。

Q:語彙の難易度以外でこだわったポイントがあれば教えてください

藤枝氏:「学習者が最後までやり切れる単語帳にしたい」という想いから、『黒のフレーズ』では、「Round1」から「Round5」まで、各チャプターの単語の難易度に差がないように単語を並べています。

一般的な単語帳は、最初の章に500~600点レベルの英単語が掲載されていて、後ろになるにつれて難しくなっていくという章立てですが、私は常々「果たして、その構成で本当に多くの人が最後までやり抜けるのだろうか」と疑問を感じていました。そのような章立ての場合、英語初心者の方だと、単語帳の後半になると、1ページに知っている単語がほぼ無くなってしまうため、どうしても挫折しやすくなるという懸念があります。また、800~900点レベルの学習者にとっても、単語帳の前半に簡単なものばかりがあると、やる気がなくなってしまうことが考えられます。

『黒のフレーズ』では、見開き1ページに掲載されている10個の単語が、上から下にいくにつれて難しくなるという体裁にしています。最初の3つが最も易しいAランク、次の3つがBランク、その次の2つがCランクで、最後の2つが最も難易度の高いSランクです。

例えばTOEICで600点ぐらいの人は、10個ある見出し語のうち、まずは上から3つ目までだけを集中して覚えていってもらうのがおすすめです。上から3つ目の単語までを一通り覚えたら、最初のページに戻って、今度は上から6番目の単語までを覚えるようにしてもらうと良いでしょう。「最後のページまでたどり着いた」ということが自信を与えてくれますし、本に愛着もわきます。

既に800点ぐらいの人の場合は、上から6番目の単語までを覚えてください。6番目までの単語、つまりAランクとBランクの単語が覚えられれば、900点を十分狙えるようになります。

各ページの下から4つ目までの、Cランク・Sランクの単語はかなり難しいので、相当ハイスコアを狙う人以外にはあまり必要がないかもしれません。でも、単語学習においては、学習者と単語との「相性」もあるので、一般的には難易度が高いとされる単語でも、意外とスッと覚えられてしまうこともあります。上から3つ目まで、あるいは6つ目までの単語だけを見ようとしている時に、自然とその下の単語も目に入ることがありますよね。流し見をしてみて、もし簡単に覚えられそうな単語があれば、せっかくなので一緒に覚えてしまいましょう。

Q:『黒のフレーズ』では、音声も利用できます。おすすめの活用方法を教えてください

藤枝氏:書籍の方は「日本語→英語」の順で覚えてもらう構成ですが、音声には英語だけのバージョンも用意しているので、「英語を聞いて、音だけで意味を理解する」という練習をしてもらうのがおすすめです。

また、アプリの「abceed」を使えば、音声の再生スピードを簡単に調整できます。学習に慣れてきたら、徐々に再生スピードを速くしてみてください。英語のノンネイティブである我々日本人は、英語がゆっくりだと、つい日本語で意味を考えてしまいます。1.2倍速や1.5倍速のように音声の速度を上げ、日本語に訳していては音に追いつけない状態にすることで、英語のままで意味を取れるようになっていきます。

Q:『黒のフレーズ』に取り組んでいる学習者からの声は

藤枝氏:やはり「難しい」という感想が多いですね。でも、難しいですと言いながらも、みんな嬉しそうなので良かったです。この本を手にして、「思っていたよりも易しかった」というのは、おそらく失望の声なので。

レベル感が近いTOEIC単語帳としては、アルクさんの『キクタンTOEIC(R) L&Rテスト SCORE 990』が挙げられますが、黒のフレーズでは、より難易度の高い語彙も掲載しています。

TOEICは「夢を叶えるための架け橋」

Q:英語学習者へメッセージをお願いします

藤枝氏:TOEICそのものはスコアにすぎませんが、TOEICで英語の底力をつけておくと、必ず、次のステップに行きやすくなります。実際に、TOEICで目標スコアを達成した後に、転職や海外勤務、TOEIC講師への転身など、次のステップへと進んだ人をたくさん知っています。私は、TOEICは「夢を叶えるための架け橋」だと思っています。

TOEICは年間200万人以上が受ける試験なので、ともに頑張っている仲間が沢山います。SNSなどで仲間を見つけて、切磋琢磨し、何より楽しみながら、英語の運用力を養っていっていただきたいです。

英語に限らず、第二外国語は「言葉」ですから、続けていれば必ずできるようになります。できるようにならなかったのは途中でやめた人だけです。「ただの言葉だ」ということを忘れずに、ぜひ学習を続けてみてください。

インタビュー後記

今回は、『TOEIC L&R TEST 上級単語特急 黒のフレーズ』著者の藤枝暁生先生に取材をさせていただきました。お話を聞かせていただくなかで、藤枝先生のTOEICに対する熱意がひしひしと伝わってきました。

筆者も現在、実際に『黒のフレーズ』に取り組んでいますが、数あるTOEIC単語帳の中でも抜群の難易度と質の高さだと感じています。TOEICでハイスコアを目指している方は、是非『黒のフレーズ』を手にとってみてはいかがでしょうか。


『TOEIC L&R TEST 上級単語特急 黒のフレーズ』概要

商品名:TOEIC L&R TEST 上級単語特急 黒のフレーズ
著者:藤枝暁生
定価:935円(税込み)
発売日:2020年9月18日
出版社:朝日新聞出版

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佐藤 千嘉

中学2年時にニュージーランドの現地校へ1年間留学。高校進学後、オーストラリアへ交換留学で再び1年間留学。高校在学中に英検1級、TOEIC965点、TOEFL iBT106点を取得。早稲田大学国際教養学部に現役合格。英会話講師やTOEICコーチの経験を経て、現在はフリーライターとして活動している。

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