語学や国際交流について興味を持つ中で、「日本で暮らす外国人の助けになりたい」「日本語や日本文化を世界に広げる仕事がしたい」などと考えたことはありませんか。
日本語を学ぶ人たちと日々向き合い、学習者のそばで目標達成をサポートできるのが、日本語教師の仕事です。
日本国内の語学学校のように、それぞれ異なる母語を持った学習者が集まるグループ形式の授業では、日本語を日本語で教える「直接法」での指導が一般的です。一方、海外で行われている日本語レッスンの場合は、英語やその国の公用語での説明を交えながら教えるケースも多く、日本語の指導スキルに加えて外国語の語学力を活かせる機会もあるでしょう。
このように、日本語教師の活躍の場は、日本国内だけにとどまらず、世界中に広がっています。
この記事では、日本語教師になるための主なルートに加え、2024年4月から導入された国家資格「登録日本語教員」についても解説します。
※記事内の情報は、2024年7月調査時点のものです。
目次
日本語教師の需要は?日本語教育を取り巻く現状
日本語学習者は世界に370万人以上
日本語教師として働くことを考えるにあたり、まずは世界的な日本語教育需要の動向を押さえておく必要があるでしょう。
独立行政法人国際交流基金(The Japan Foundation)が発表した2021年度のレポート(※1)によると、外国語としての日本語教育を実施している機関の数は、世界141の国と地域で合計1万8,000ヵ所以上にのぼります。世界には249の国と地域の分類がある事実を踏まえると、すでにその半数以上をカバーするエリアで日本語教育が行われていることがわかります。
また、2021年度の日本語学習者数は、世界でおよそ379万人でした。前回の調査結果(2018年度)と比べると、学習者数は1.5%程度減少しているものの、調査が開始された1979年以来、過去3番目に多い数字であり、引き続き日本語教育の堅実な需要が見込まれます。
さらに、本調査の対象は、語学学校などの教育機関で日本語を学んでいる人たちのため、独学や個人レッスンで勉強をしている人に加え、これから日本語を学びたいと考えている潜在的な学習者の存在も考慮すると、日本語教育のニーズはさらに大きく広がっていると考えられます。
※1:Survey Report on Japanese-Language Education Abroad 2021|国際交流基金
日本国内での公立日本語学校新設の動きも
日本国内では、人口減少に歯止めをかける施策の一つとして、地方に公立日本語学校を新設し、海外からの留学生の受け入れを促進して地域の活性化を図ろうとしている自治体もあります。
宮城県大崎市は、日本ではじめて公立の日本語学校を立ち上げた北海道上川郡・東川町の例に続き、2025年に新たな公立日本語学校を開校するべく準備を進めています(※2)。
日本語学校の新設時には、教員などの人材の確保も欠かせません。今後、地方創生の文脈から、日本語教育施設の整備や外国人留学生の受け入れ促進を目指す自治体が増えた場合、日本国内での日本語教師に対する需要がさらに高まっていく可能性も考えられます。
※2:公立日本語学校開校へ 大崎市が県と覚書交わす 県が支援へ|NHK NEWS WEB
日本語教師になるために資格は必要?
原則、日本語教師として働くために取得が義務付けられている資格はありません。語学学校などの教育機関では、下記3つの条件のいずれかを満たすことを応募要件として課している求人案件が多くみられます。
- 大学・大学院で日本語教育を専攻する
- 日本語教師養成講座を修了する(420時間分)
- 日本語教育能力検定試験に合格する
1. 大学・大学院で日本語教育を専攻する
一つ目は、大学や大学院で日本語教育を専攻し、関連分野で学位を取得する方法です。
在学中は、日本語教育に関するアカデミックな知識を習得できるほか、外国人留学生を対象とした学内での教育実習や、海外の大学への派遣型研修などの機会も広がっており、日本語教師になるために必要な経験を積むことができます。
ただし、すでに別の専攻で大学を卒業している方や、これから数年間をかけて学位取得を目指す時間的余裕がないという方にとっては、ややハードルの高い選択肢となるでしょう。
2. 日本語教師養成講座(420時間分)を修了する
二つ目は、文化庁によって認定された日本語教師養成研修で学ぶパターンです。
法務省告示の日本語教育機関で勤務するためには、日本語教員の要件として文化庁が認め、届出を受理した期間・団体で420時間以上の研修を修了し、なおかつ学士・修士または博士の学位を有している必要があります。
日本語教師養成講座を提供するスクールでは、完全通学型のプログラムに加えて、通信講座と対面での実技研修を組み合わせた複数の選択肢を用意している場合もあり、仕事を続けながら空き時間を使って学ぶ人や、土日のみで講座に通う受講生も多くいます。
履修のペースにもよりますが、すべての科目を修了するまでには、6ヶ月~1年程度の時間がかかるケースが一般的です。
3. 日本語教育能力検定試験に合格する
上記2つのルートと比べて、より短い時間で日本語教師になる道を切り開ける可能性があるのが、日本語教育能力検定試験での合格を目指す方法です。
日本語教育能力検定試験は、日本語教育に携わる上で必要となる基礎的な知識・能力の検定を目的とし、公益財団法人日本国際支援協会(JEES)が年に一度実施しています。
学位の有無などを問わず誰でも挑戦できる試験ですが、直近の3年間(令和2年度~4年度)の合格率は23~24%程度(※3)と狭き門になっており、合格を目指すためにはしっかりと事前準備をした上で試験に臨む必要があります。
※3:日本語教育能力検定試験 応募者・全科目受験者・合格者数推移|日本国際支援協会
国家資格導入!「登録日本語教員」になるには?
認定日本語教育機関での勤務には登録日本語教員資格の取得が必須に
2024年4月より、「登録日本語教員」の国家資格が創設されました。この新制度の導入に伴い、認定日本語教育機関(※4)で日本語を教える際は、登録日本語教員としての資格取得が必須となります。
認定日本語教育機関以外の語学学校で働く場合は、上記で紹介した主な3つのルートを経るなど、従来通りの流れで日本語教師を目指すことが可能です。
また、すでに認定日本語教育機関で勤務している現役教師については、法施行から5年後の令和11年3月31日までの間、登録日本語教員資格を保有していなくとも勤務が認められる経過措置が設けられています。
新たな国家資格である「登録日本語教員」の取得は、日本語教師に必須の知識・スキルを身につけた証明として、今後多方面での幅広い活用が予想されます。特にこれから日本語教師を目指す方の場合は、資格の取得が長期的な視点で有利に働くと考えられるでしょう。
※4:日本における日本語教育の質の確保のために設けられた新たな認定制度の下、文部科学大臣によって適正かつ確実に日本語教育を実施することができると認められた教育機関のこと。
2つの資格取得要件:日本語教員試験合格と実践研修の修了
登録日本語教員の資格を取得するには、日本語教員試験に合格し、文部科学大臣が認める登録機関での実践研修を修了しなければなりません。
1. 日本語教員試験
日本語教員試験は、基礎試験と応用試験の二つで構成されています。登録日本語教員養成機関の講座を修了するなど、規定の要件を満たす受験者は試験の免除を受けられます。
文部科学省が主催する2024年度の日本語教員試験は、11⽉17日(日)に実施予定で、出願受付期間は8月1日〜9月6日です。
2. 実践研修
実践研修とは、日本語指導に必要な技術の習得を目的とし、文部科学大臣の認可を受けた登録実践研修機関が行う研修のことです。
日本語教員試験(基礎試験)の合格者、あるいは登録日本語教員養成機関の養成課程修了者(修了見込み者)のみを対象としているため、希望者はまずいずれかのルートで受講要件を満たす必要があります。
このように、日本語教員試験での合格(または養成講座の修了)と、実践研修の修了という二つのプロセスをクリアした後、登録手続きと登録証の交付を経て、登録日本語教員として認定される仕組みです。
まとめ
国家資格化により、今後さらに注目度が高まっていくことが期待される日本語教師の仕事。日本語教育に関する確かな知識を元に指導経験を積んでいけば、働く場所や年齢を問わず、世界で活躍できるチャンスが広がります。
「語学に関わる職に就きたい」「長く続けられる仕事でキャリアを積みたい」という方は、日本語教師としての働き方を考えてみてはいかがでしょうか。
English Hub 編集部
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