普段見ない景色や異なる文化に触れる海外旅行は、多くの人にとって特別な体験です。旅行中はさまざまな場所を訪れ、食事やアクティビティを楽しみ、できる限り多くの思い出を残したいと思うものですが、予算には限りがあります。価値のあるモノ・体験にはそれに見合った対価を支払うべきですが、無駄な出費は抑えたいもの。
そこで今回は海外旅行中に役立つ、賢いお金の節約術をご紹介します。
目次
海外旅行で費用を抑える上で意識すべきポイント
自分は旅に何を求めているのか、その目的を明確にする
旅に目的を求める、というのも野暮なことかもしれません。とりあえず行ってみる、という姿勢も時には必要でしょうし、その経験は決して無駄にはならないでしょう。しかし、自分が旅から何を得たいのか、何を求めているのかしっかり考えることで、目的地選びや旅程設計の精度が上がり、予算が抑えられる可能性も高まります。
例えば、「異文化に浸りたい」「現地の人々と英語で交流したい」ということであれば、必ずしも欧米諸国である必要はなく、英語を公用語としているシンガポールやフィリピン、インドでも可能です。これらのアジア諸国は、比較的日本から近く、物価も欧米に比べるとリーズナブルです。
あるいは、「美しい自然に癒されたい」ということであれば、そもそも国内旅行でいいのかもしれません。人気の海外旅行先ランキングなどを見ていると、どの国・地域も魅力的に見えてくるものですが、第三者の意見は参考程度にとどめつつ、あくまで自分がどうしたいのか考えてみるのをおすすめします。
旅の体験をより豊かに!目的地について予習をしておく
なんてことのない体験も、感じ方次第でとても価値のあるものになります。例えば、木々の生い茂る美しいハイキングコースを歩いているとして、それ自体気持ちのいい体験であることに違いはありませんが、その場所が実はその国・地域の神話や歴史に紐づく、重要な場所だと知ったらどう感じるでしょうか?「特別感」はより増すでしょうし、実際にその内容を知れば、「美しい自然に癒される」以上の深淵な体験となるに違いありません。
あるいは、その国には実は悲惨な戦争から復興した過去がある、という前知識があれば、現地の街並みや、そこで暮らす人々が談笑する姿も、一層美しく思えるものです。このように、知識によって心が動かされることは多いですし、予習をしておくことで旅のコンテキストがより豊かになります。そして、多くの場合、ここにお金はそれほどかかりません。
旅を「トランスフォーマティブ」にする
ここで知っておくべきコンセプトが「トランスフォーマティブ・トラベル(Transformative Travel)」(※1)です。これは「旅の経験が旅行者の内面にも変容(transformation)をもたらす」という考え方で、新しい環境に身を置き、異なる文化に触れ、学ぶことで、価値観が変わり、視野も広がり、精神的・人間的に成長することを意味します。
※1参照:BBC Travel「Transformative Travel」
最もリーズナブルな価格を調べる
ホテルや航空券の価格は時期によって変動します。これは「ダイナミックプライシング」と呼ばれており、例えば、多くの人が旅行をする連休中であれば、ホテル・航空券の需要が高まるので価格は高くなり、逆に平日であれば需要は下がり、価格も安くなります。このように、価格は需要と供給に応じて変動するものなので、費用を抑えるのであれば、最も安いタイミングを調べましょう。
「比較サイト」でホテルや航空券の最安値をチェック!
これには「比較サイト」を利用するのがおすすめです。ホテルや航空券などを予約する際、「ブッキングドットコム(Booking.com)」や「エクスペディア」といった、いわゆる「予約サイト」を利用された経験のある方も多いのではないでしょうか?ホテルの検索→予約までを全て行える便利なサービスですが、いくつもの予約サイトがあり、各サイト上の掲載料金を自力で比較しようとすると手間がかかります。
「比較サイト」ではこれらの予約サイトを集約し、ホテルごとに各予約サイトの価格を比較できます。まずは比較サイトを利用し、最安値を調べましょう。おすすめの「予約サイト」「比較サイト」と、各サービスの特徴については、「海外旅行でのホテル選びのポイントと注意点は?おすすめサイト・アプリも紹介」を参照ください。
民泊サイトも検討する
民泊サイトは、個人や事業者が登録している宿泊施設を旅行者が予約し、利用できるサービスです。日本ではAirbnb(エアビーアンドビー)が最も知られています。世界的に普及しているブランドで、時にはホテルよりもリーズナブルな価格で部屋が見つかる事もあるので、あわせて検討してみるのがおすすめ。
マンションやアパート、一軒家も提供されているので、部屋の状態についてはホテル検討時以上に入念に確認する必要がありますが、条件検索の精度は高く、また、気になることがあればホスト(施設提供者)に直接連絡できます。やりとりも、自動翻訳されるので便利です。
「オフピーク」を選ぶ
スケジュールを柔軟に調整できるのであれば、「オフピーク」を狙って旅行に行きましょう。これは、春休みやゴールデンウィークなどのいわゆる「ピーク」時を選択肢から外す(offする)ことを意味します。
海外旅行に行く人が多い時期は、ホテルや航空券の価格も高騰します。また、旅行先でも、休日や祝日、長期休暇中は、どこも混み合っている可能性が高いです。例えば、中華圏では春節(旧正月)は長期休暇となっており、各地が混雑する上、多くのサービスが営業を停止しているので、注意が必要です(文化体験として、あえて訪れる場合は別として)。可能であれば、その国・地域のカレンダーにも目を通しておきましょう。
「ワーケーション」を検討する
狙ったタイミングで有給休暇の取得が困難な場合、仕事をしながら旅行も楽しむ「ワーケーション」を検討するのもいいでしょう。ここ数年で、テレワークが浸透し、場所にとらわれない柔軟な働き方が可能となりつつあります。実際、観光庁もワーケーションを、働き方改革と連動した「新たな旅のスタイル」と位置づけており、その普及を促進しています。無給休暇ではありませんし、これもまた1つの節約術ではないでしょうか?
配車サービス(アプリ)を利用する
海外旅行での課題の1つが移動です。電車やバス以外の選択肢として、タクシーを利用する方も多いかも知れませんが、目的地の説明で手間どったり、いわゆる「ぼったくり」に遭うなど、懸念もいくつかあります。そこでおすすめしたいのが配車サービス(アプリ)です。これは、一般的にスマホアプリを通じて、必要な時に自動車と運転手を呼べるサービスのことを指します。
例えば、その代表的ブランドの1つである「Uber」は、世界中の10,000を超える都市で利用が可能。使い方は、まず行き先を指定し、車両サイズや料金を確認の上、配車を確定。近くにいるドライバーとのマッチングが行われ、お互いの名前と目的地を確認した後、サービスが開始されます。乗客を目的地まで送り届けると、両者は1~5までの星の数を選択して、お互いを評価します。
このように、目的地をあらかじめ設定できるので口頭で説明する必要がなく、また、乗る前に確認した金額だけが請求されるのでぼったくりの心配もありません。運転手の評判(星の数)も確認できるので安心です。Uber以外にも「Grab」や「Gojek」など、海外で利用可能な配車サービスはいくつもあります。旅行を検討している国・地域でどのような配車サービスが利用可能かをチェックしてみるのをおすすめします。
ローカルな飲食店で食事をする
食事を観光客向けのレストランに限定すると選択肢も少なく、価格も割高な場合が多いです。ホテルのスタッフや、タクシーの運転手など、旅先で知り合った人に、地元で人気のレストランなどを教えてもらうといいでしょう。
また、市場を訪れてみるのもおすすめ。地元の住民たちに混じって買い物をすることで、その日常生活を体験できます。食事が運ばれてくるのを待つのではなく、自ら能動的に探しに行くという体験も、時にはあっていいのではないでしょうか。
レビューサイト(アプリ)を活用する
飲食店を探す際には、レビューサイトも活用しましょう。おすすめは「Yelp(イェルプ)」と「トリップアドバイザー」。いずれもアプリ版が提供されており、GPSと連動して現在地周辺のレストランを表示してくれます。ユーザーレビューを確認でき、総合評価も5つ星基準で表示されているので一目瞭然。
Yelpでは「ヘルス&メディカル」や「ビューティー&スパ」、「金融サービス」など、「レストラン」以外の検索カテゴリーも豊富で、会計士や電気技師まで探せます。トリップアドバイザーは、検索条件が充実。「ヴィーガン料理あり」や「お子様に優しい」といった項目もあり、絞り込みの精度が高いと言えます。不慣れなアプリの利用にハードルを感じる場合は、Google マップで周辺の飲食店を探してみてもいいでしょう。
言葉が通じない場合は「Google翻訳」を活用!
言葉が通じず、オーダーが困難な場合はアプリ「Google翻訳」を活用しましょう。キーボード入力はもちろん、手書きや音声、画像読み込み、スマホのカメラを使ったリアルタイム翻訳など、さまざまな手段で翻訳できるのが魅力です。「会話」をオンにしてから日本語で話せば、翻訳したい言語で読み上げてくれますし、英語・日本語のメニューが無い時も、カメラを使った画像読み込みで翻訳が可能。無料なので、ダウンロードしておいて損のないアプリと言えます。
キャッシュレス決済を利用する
旅先で大量の現金を持ち歩くのは時にリスキーです。そこで、おすすめしたいのが「キャッシュレス決済」。クレジットカードやデビットカードはもちろん、「Apple Pay」や「Google Pay」等のスマホ利用可能なサービスでキャッシュレス決済ができれば、現金の盗難・紛失を避けられます。また、何より身軽でスマートです。
経済産業省の公表によると、日本でのキャッシュレス決済比率は約30%にとどまっており、利用者はまだ少なめですが、アメリカやイギリスなどの主要各国では40%~60%台、韓国に至っては90%以上となっています(※2)。このように、旅行先によってはキャッシュレス決済が普及している可能性があるので、あらゆる決済方法が可能な状態にしておくのをおすすめします。中でもApple PayとGoogle Payは世界各国で利用できるので、旅行前にいずれかを設定しておくといいでしょう。
※2 参照:経済産業省「キャッシュレス更なる普及促進に向けた方向性」
使いすぎを防ぎたいなら、デビットカードがおすすめ
利用した金額が口座から即座に引き落とされるデビットカード。残高分しか使えないので、使いすぎを防げるのがメリットです。日本ではまだあまり普及していませんが、海外での普及率は高く、Visaの調査によると、2021年の世界のVisa取扱高(金額)の52%がデビットカードでした(※3)。
海外で利用可能なデビットカードでおすすめは、外貨利用に特化した「Wise」。Wiseのデビットカードは、Wiseのマルチカレンシー口座に連結しており、1つのアカウントで約50もの通貨を同時管理できます。カードを利用時、決済に使う外貨を保有していれば手数料は無料。決済外貨を保有していない場合も、格安の両替手数料(通貨によって異なる)(※4)で支払えるのが嬉しいポイント。利用方法も簡単で、まずはwebサイトより会員登録の後、カードをオーダー(通常2週間以内に手元に届きます)。カードが届いたら有効化を行い、アカウント内に資金をチャージします。発行手数料のみ1,200円かかりますが、年会費は無料。海外ATMでの引き出しも、月2回、30,000円相当額まで手数料無料で行えるのが魅力です(※5)。
※3 参照:ITmediaビジネス ONLINE「デビットカードは日本のキャッシュレスの切り札になるか?」
※4 参照:Wise「Wise(ワイズ)のシンプルな手数料」
※5 ATMによっては手数料がかかる場合があります
水筒を持っていく
海外では水道水が飲めない国・地域も多く(※6)、現地で飲料水を買わなければいけない場合もあるでしょう。しかし、小さいペットボトルをその都度買っていてはお金もかかりますし、環境負荷も高いです。なるべく大容量で購入し、水筒にいれて持ち歩くようにすると節約になります。宿泊先にウォーターディスペンサーがあれば、そこで補充しましょう。
※6 参照:関西電力「コラム|水道水がそのまま飲める国は12カ国だけ 世界と日本の水道事情とは【浦上拓也】」
価値ある体験にはしっかりと対価を支払う
海外旅行は、異文化について学び、視野を広げ、自身の心や価値観を根底から揺さぶるチャンスです。無駄な出費は極力抑えつつ、価値ある体験にはしっかりと対価を払いましょう。今回ご紹介したように、目的地の歴史や文化についてあらかじめ知識を身につけておくことで、旅の体験もより豊かになります。ただ、ツアーや食事など、お金を払って試してみないと分からない事も実際は多いもの。旅の真価は、自身の経験や成長にあるという前提に立ち、何がお得かを考えてみてもいいのではないでしょうか。
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