IELTSはアメリカ留学にも有効?TOEFLとの違いは?

イギリス発の英語テスト「IELTS(アイエルツ)」は、アメリカ発の「TOEFL」に比べると、日本ではまだ知名度が低いかもしれません。IELTSとTOEFL、どちらも英語能力証明テストとして世界的に受け入れられているものですが、スタイルや内容には多くの違いがあります。どちらを受けるか迷っている方のために、今回は両者を比較し、どんな違いがあるのかを考えます。

1. IELTSはアメリカ留学にも有効?

もともとIELTSは、イギリスをはじめ、カナダ、オーストラリアなどでの就学や移住を目的とする人向けに開発されました。しかし現在では、アメリカでもIELTSが普及しており、採用する教育機関や組織は3,400以上にのぼります(2023年7月現在)。さらに、1,000人以上の外国人留学生を受け入れているアメリカの4年制の大学(college、university)の約99%がIELTSを採用しています。このことから、IELTSはアメリカ留学にも十分に有効といえるでしょう。

現在、世界中で年間300万人以上がIELTSを受験しています。こちらのリンクから、アメリカでIELTSを採用している組織の検索ができます。

2. IELTSとTOEFLの違いは?

ここからは、IELTSとTOEFLを項目ごとに比較していきます。

フォーマット

現在のTOEFLでは、コンピュータ上で回答する「iBT」が主流です。一方のIELTSは、コンピュータ形式のCDI(Computer-delivered IELTS)が日本でも導入されつつありますが、試験会場は、紙と鉛筆による従来のテスト形式の会場と比べると限られます。そのため、地域にもよりますが、手書きが苦手な場合にはTOEFLの方が受けやすいテストかもしれません。

テストフォーマットにも大きな違いがあります。TOEFLでは、リーディングとリスニングはマルチプルチョイス方式であるのに対し、IELTSでは、従来の手書きスタイルのテストでもCDIでも、回答を記入またはタイプしなければなりません。自分自身で回答をすべて書く必要があるIELTSでは、プレッシャーも大きくなるかもしれません。

スピーキング

IELTSのスピーキングテストは、コンピュータに向けて音声を録音するTOEFLとは異なり、試験官と1対1の面接形式で行われます。ネイティブ試験官との面接で緊張してしまうような人には、TOEFLの方が有利かもしれません。逆に、実際に面と向かって話すことに安心感を感じるタイプの受験者には、IELTSが適しているでしょう。また、TOEFLの試験はおよそ2時間ですべて終了しますが、IELTSの場合、スピーキングテストは別の日に実施される場合があります。1日で全て終わせたいという人にはTOEFLの方が便利です。

ライティング

ライティングについては、TOEFLでは、「Academic Discussion Task(100語程度で回答)」「Integrated Task(150~225語で回答)」が1問ずつ出題され、試験時間は合計29分ほどです。一方のIELTSも、ライティングでは「アカデミック・モジュール」「ジェネラル・トレーニング・モジュール」どちらの場合も、約150語を書く「Task 1」と約250語を書く「Task 2」と分けられています。60分で合計400語程度なので、ワード数だけを単純に比較すれば、IELTSではTOEFLよりも時間をかけて少ないワード数に取り組むことになります。

統合型の問題

IELTSでは、ライティング、リーディング、スピーキング、リスニングの4技能別にテストが出題されます。一方のTOEFLでは、英文を読み、それについての音声をリスニングし、さらにそれについてライティングするといった統合的な形式の問題が含まれます。

受験料

受験料は、TOEFLがUSD245、IELTSは25,380円〜27,500円です(※運営団体やペーパー版/コンピューター版の受験形式によって受験料が異なる)。たとえば「1USD=140円(2023年7月現在のレート)」で計算すると、TOEFLの受験料はおよそ34,300円となり、IELTSよりやや高くなっています。ただし今後、料金の変更や為替の変動によって差が生じる可能性もあります。

対策のための教材やスクール

書店に出向けば英語学習書のコーナーで対策本を簡単に見つけることのできるTOEFLに比べると、国内出版社から出版されているIELTS関連書籍の数は多くはありません。また、スクールで試験対策に特化したコースを受講したいと考える場合も、現状、選択肢が多いのはTOEFL対策コースでしょう。

ただし、IELTSについては、日本英語検定協会とブリティッシュ・カウンシルによる日本での共同運営が開始されて以降、受験者数は年々増加しており、それに合わせて利用できる試験対策のツールや機会も増えていくことが見込まれます。学習者のニーズに伴い、多くのスクールでIELTS対策コースが新設される動きも見られます。また、TOEFL、IELTSそれぞれの対策レッスンが可能な講師の在籍するオンライン英会話サービスも少なくありません。

3. IELTSとTOEFL、どちらを受ける?

このように、IELTSとTOEFLにはいくつかの違いがありますが、現在、どちらも世界各国の教育機関や組織に広く受け入れられています。まずは、スコアの提出先がIELTS、TOEFLを受け入れているかを確認し、いずれも受け入れられている場合は、どちらが自分に適しているかをよく検討して決めることをおすすめします。2つのテストのスタイルと、それぞれに求められる英語スキルの違いをよく見極め、より良いスコアを取りやすい方を選ぶのが最善だと言えるでしょう。

まとめ

今回は、IELTSとTOEFLという2つの国際的な英語テストの違いを比較しました。どちらも、海外へ留学したり、海外で仕事を得たりするために必要な高い英語能力を求めるものですが、両者にはそれぞれ異なる個性があります。もし事情が許せば、両方とも受験して、どちらがより自分の英語能力をより良く反映してくれるかを体験してみるのもいかがでしょうか?

※本文中の記述は、2023年7月現在の情報に基づくものです。変更の可能性がありますので、最新の情報については運営団体の公式サイト等でご確認ください。

【参照サイト】IELTS in the USA
【参照サイト】IELTS(アイエルツ)公式テストセンター | 公益財団法人 日本英語検定協会
【参照書籍】IELTSブリティッシュ・カウンシル公認問題集

記事監修:正木 伶弥先生

ブリティッシュ・カウンシル公認 IELTSエキスパート。14歳時、同機関の奨学金により、英ゴスフィールドにあるボーディング・スクールへ1か月間、人生初の留学。翌年中学校卒業後またすぐ渡英し、別のボーディング・スクールを経て、ロンドン大学クイーン・メアリー校へ進学・卒業。同校卒業直前にCELTA (Certificate in Teaching English to Speakers of Other Languages) を取得し、帰国後はIELTSをメインに指導。TOEFL iBT120点、英検1級取得後、IDP公式IELTS教員研修修了(日本第一号)。2022年には書籍『はじめてのIELTS対策トレーニング』を出版。

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Yukari

オーストリア、ウィーン在住。日本の大学ではフランス語を専攻、卒業後は英国の大学院で国際政治を学ぶ。これまでロンドン、ニューヨーク、トロント、モントリオール、パリ、シンガポールに在住。各英語圏における英語の違いに興味を持つ一方、イギリス英語に魅せられる。現在はリサーチャーとして主に欧州における英語・フランス語圏の政策調査に携わる傍、執筆活動も行う。