洋書多読におすすめ!英語で読みたいビジネス書5選

ビジネスの参考になる本を英語で読みたいと思う方もたくさんいるでしょう。「ビジネス書」と一口でいっても様々なものがあります。スティーブ・ジョブズやイーロン・マスクのような世界的企業家の伝記から、経済・マーケティングの解説書、そしてビジネスマナーについてのものなど枚挙にいとまなく、何を読めばいいか迷ってしまうこともあるのではないでしょうか。

ここでは、様々な観点からビジネス一般の参考になるような洋書をセレクトしました。ご紹介するのは、ビジネスに限らず、国際政治や歴史、そしてテクノロジーなどをテーマとした書を含む幅広いラインナップです。

1. FEAR: Trump in the White House(Bob Woodward著、2018年初版)


Bob Woodwardは、70年代に「ウォーターゲート事件」を報道したことで世界的に知られるようになったジャーナリストです。その彼が、2016年にアメリカ大統領に選出され、世界を揺るがしたドナルド・トランプ氏について取り組んだのが “FEAR”(邦題『FEAR 恐怖の男 トランプ政権の真実』)です。

もともとビジネスマンであったトランプ氏が、どのようにして政治家となったのかが記されており、ビジネスにも政治にも興味がある人には一読する価値のある本となっています。アメリカ政治について多少の予備知識は必要かもしれませんが、英語自体は平明で読みやすく書かれています。

トランプ政権では「ロシア疑惑」を始めとするスキャンダルが相次いでいますが、一流のジャーナリストであるWoodwardは、当事者たちから直接にインタビューして得た情報だけを公平に書き記しています。また、トランプ氏や側近たちの、イランや北朝鮮などに対するストラテジーも詳しく記載されているので、これから世界がどのようなコースをたどっていくのか深く考えさせられる一冊です。

2. The Right Stuff(Tom Wolfe著、初版1979年)


近年は、SpaceXなどの民間企業による宇宙開発や「宇宙観光」の可能性などが話題となっています。惜しくも本年 (2018年)に死去したTom Wolfeによる本書(邦題『ザ・ライト・スタッフ』)は、アメリカの宇宙開発をテーマにしたノンフィクションです。英紙ガーディアンによって、2016年にThe 100 Best Non Fiction Booksの一冊としても選出された名著でもあります。

本書は、約25%の確率で死亡するくらい危険であったテストパイロットたちの話で始まり、当時のソビエト連邦に対抗するかたちで始まったマーキュリー計画へと話が進みます。その過程で、人類史上はじめて音速を突破した伝説的パイロット、Chuck Yeagerにも触れられます。彼が試験機のX-1で初の音速飛行に成功したくだりは名文なので、以下に引用します。

As the X-1 nosed over at the top of the climb, Yeager now had seven minutes of…Pilot Heaven…ahead of him. He was going faster than any man in history […]. He was master of the sky. His was a king’s solitude, unique and inviolate, above the dome of the world.
“The Right Stuff”54頁より引用)

“The Right Stuff” は1983年に映画化され、そちらも名作として広く知られています。原作と映画版をあわせて味わうことで、宇宙開発という今またホットなテーマがどのようにして始まったのかを疑似体験できるでしょう。

3. Space Odyssey(Michael Benson著、初版2018年)


SF映画の金字塔として知られる、スタンリー・キューブリック監督の『2001年宇宙の旅』は1968年に公開され、50周年にあたる本年(2018年)はIMAX化され再上映されました。完成までに4年の歳月と莫大な製作費、そして当時の最新技術が費やされた映画ですが、そのプロセスを垣間見せてくれるのが本書です。

本書を読むと、大規模な映画制作とは、巨大なビジネスプロジェクトでもあることが理解できます。キューブリック監督が、いかにしてスポンサーであるMGM社のトップたちと毎日のように交渉を続けながら、当時は無名であった若手たちの才能を発掘し、試行錯誤を繰り返しながらついに傑作の完成にこぎつけたかを物語として読むことができる本となっています。

見どころは、才能豊かな人々が、キューブリックという力強く、ときには傲慢なリーダーのもとで結集し、各自でアイデアを出し合いながら革命的な映像技術を推進していった点でしょう。このドキュメントを読むことで、大きなプロジェクトを進めるためには、資金やスタッフの数だけではなく、リーダーの意志とメンバーたちの円滑なコラボレーションも重要であることが強く感じられます。

4. Women & Power(Mary Beard著、初版2017年)


著者のMary Beard は、古代ローマについての歴史書 『SPQR ローマ帝国史』でよく知られている学者です。その彼女が、現代における男女の力関係や性差別といった問題を、歴史を参照しつつ短くまとめ、ベストセラーとなったのが本書です。

近年では、職場における女性の立場を向上させようとする動きが世界的に広まり、日本にも浸透しつつあります。そのような変革の波の中で、これまで「男性中心的」であった社会の仕組み自体にも目を向けることの大切さが、本書のテーマとなっています。例として米民主党のヒラリー・クリントン氏や、ドイツ首相のアンジェラ・メルケル氏といったパワフルな女性たちに触れつつ、新しい社会のあり方を考えるよう読者を促します。

日本のビジネス界においても、女性の存在感がどんどんと増してきています。また、海外の取引先とビジネスをするにあたっても、旧来の価値観だけではお互いを理解し合えないような時代となってきています。それを考えると、本書は女性のみならず、男性にとっても必読と言えるのではないでしょうか。

5. The Subjugate(Amanda Bridgeman著、初版2018年)


最後に、今年の11月にリリースされたばかりのフィクションをご紹介します。本書は近未来を舞台にした小説ですが、テクノロジーと倫理、そして社会や宗教のあり方を考えさせられるシリアスな作品となっています。ビジネスや技術による社会の変容、そしてその中で人間としてのあり方とは何かが追究される物語です。

プロットとしては、電子テクノロジーの使用を拒否する宗教コミュニティで殺人事件が起こり、それを解決しようと奮闘する二人の刑事が主人公です。捜査の過程で、容疑者として浮かび上がってくるのが “Subjugate”(隷属者)と呼ばれる、先端技術によって個性を除去された元凶悪犯たちです。作中では、テクノロジーによって個々人の性格を変えることは可能なのか、またテクノロジーを拒否することは正しいことかなど、技術革新を続ける現代社会における問いも重要なテーマです。

AIやオートメーションなどの発達により、10年後の社会は今とは全く違ったものになっているかもしれません。これから起こりうる変化に対し、将来をできる限り正しく予見すること、そして人間としての倫理についても考えることが大切になってくるでしょう。ビジネス社会が直面しつつあるそのようなタスクのために、洞察に満ちた本書は貴重な指針となってくれるかもしれません。

まとめ

以上、グローバル化によって変動する社会のなかで助けとなるような洋書をご紹介しました。宇宙開発から遺伝子治療、そしてデジタルテクノロジーなどにより、現代のビジネスは果てしない発展をとげています。一方で、男女差別や人種差別、宗教問題など、克服されなければならない課題も多くあります。この混乱の中で方向を見誤らないためにも、英語の習得はもちろん、社会全体を見渡せる広い視野を持つことがますます大切となってくるでしょう。洋書を読むことで、その両方を達成することができれば一石二鳥ではないでしょうか。

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茂呂  宗仁

茨城県生まれ、東京在住。幼少期より洋画に親しみ、英語へのあこがれを抱くようになる。大学・大学院では英文学を専攻し、またメディア理論や応用言語学も勉強。学部時代より英米で論文発表も経験。留学経験なくして英検1級、TOEIC970、TOEFL109を取得。現在は英会話講師兼ライター・編集者として活動中。