TOEIC L&Rのスコアアップに向けて、どんな対策に取り組んでいますか?
これまでに何度もTOEICを受験し、少しずつスコアを伸ばしてきた学習者でも、自分の勉強法や現状の学習プランは最適なのか、立ち止まって考える瞬間があるのではないでしょうか。はじめてのTOEICテストに向けて勉強をスタートする人ならなおさら、何から手を付ければよいのか、どうすれば無理なく学習を継続できるのかといった学び方についての疑問は尽きないでしょう。
今回は、英語資格試験対策に強いスクール「バークレーハウス語学センター」で各種試験対策の指導にあたる高橋舞先生に、お話をうかがいました。「独学で対策を始めるべきか、まずはスクールで講座を受講すべきか」など、TOEIC受験に臨む方が抱きがちな疑問に、TOEIC満点講師の高橋先生が答えてくれます。
米国ミシガン州中央ミシガン大学院修了。専攻は応用言語学。大学院在学中に、大学付属の語学学校で主にアラビア系の大学入学&編入希望者に対し、英語で英語を教える実践的なティーチングメソッドを身につけながら、TESOL(英語教授法)取得。2017年からバークレーハウスに勤務。大学・専門学校・企業で、文法、英会話から資格試験対策まで幅広く授業を行う。分かりやすく、丁寧な指導と個人個人に合わせた学習・留学アドバイスで受講者からの信頼と人気を得ている。TOEIC 990点、IELTS 8.0点取得。バークレーハウス公式ブログ「No.1 English」でも執筆中。
目次
1. TOEICスコアアップに向けて独学で対策するには?
Q. TOEIC L&Rのスコアアップに向けて、独学でも強化可能なスキルは?
リスニング、リーディングどちらのスキルも独学で強化可能です!ただし、これには3つ条件があります。以下の3つの条件をクリアしたうえでTOEIC対策を始めると、より効果的に効率的に進められます。
まずは、TOEICのパートごとの問題形式・特徴を理解
TOEIC L&R未受験の方は、一度受けてみるのが一番手っ取り早い方法ですが、いかんせんお金がかかるので、出来れば受験回数は少なくしたい方も少なくないと思います。その場合は、TOEICの公式サイトに載っているサンプル問題を解いたり、公式問題集の1回分のテストを解いてみるだけでも、TOEICはこういうものなのかというのがつかめると思います。
自分の今の実力を知り、目標スコアと期限を決める
自分の現時点の実力を知らなければ、目標とするスコアが低すぎたり高すぎたりということも起こりえます。学習プランも立てられないということになってしまいます。実力を知るという意味でも、可能であれば模試や本番のテストを受けてみましょう。
英語の基礎力(例えば絶対知っておくべき単語や文法など)を身につける
TOEICに限ったことではありませんが、英語の学習は家づくりと同じで、土台がしっかりしているかどうかが、長持ちするかしないかの分かれ目になります。
もちろんすでに身についている方はこの3つ目はスキップしてもらって大丈夫です。しかし、少しでも不安だったり、英語学習から結構離れているという方は、確かめるという意味でも、どれだけ覚えているかをテストし、自分の今の実力を知るための指標としてみましょう。
この3つをクリアしておくと、TOEICの問題はもちろん、英語そのものの理解度が変わり、効率的に学習を続けられます。さらに言えば、おまけでスピーキングとライティングの力も同時にアップさせられます。
Q. TOEIC対策教材、参考書、問題集選びのポイントは?
TOEICの教材や参考書は、本屋に行ってもたくさん並んでいるので、どれにするか迷いますよね。実際に受講生からも「教材がありすぎて分からない」「おススメの教材は?」という声をよく聞きます。
ただ正直なところ、私の「おすすめ」には、あくまでも私の主観的な感想も含まれてしまうので、全員に適しているとは言えません。
そこで、自分に合ったものを選ぶには、次の2つのポイントを必ずチェックしましょう。
自分のレベルと目標スコアに合っているか
第1に、先ほどの繰り返しになりますが、自分の現時点での英語力がどれくらいかを確かめましょう。
これは、一度TOEICを受けてみるというのが一番ですが、試験日に日程が合わない方や予約ができない方、または実力を測るだけのために受験料を払うのはもったいないと思う方もいらっしゃると思います。
もし、すでにTOEICの教材や参考書をお持ちであればそちらで確かめるも良しです。教材が何もないという方で、できるだけ安く楽に確認したいという方は、ネットで簡単にチェックできます。簡単な文章の穴埋め問題など(TOEIC L&RのPart 5のような問題)を解いていき、終わった後にCEFR(英語の運用能力を国際標準で表す基準)のA1~C2までの等級や、それに対応する点数が示されます。参考までに、比較的簡単に測定できるサイトをご紹介します。
- Understanding the Common European Framework of Reference for Languages | EF SET
- Test your English and get to know your English level
こちらはあくまでも簡易版となっているので、正確な評価が出ないかもしれませんが、だいたいの今の英語力が無料で確認できます。
上記のサイトなどで自分の実力がCEFRに当てはめるとだいたいどのくらいかが分かった方はそれをもとに、そして英検やTOEFL、IELTSなどの他の資格を受けたことのある方はご自身の実績をもとに、TOEICで狙う目標のスコアを決めましょう。
目標のスコアを決める際に目安になるのが、各試験のスコアの換算表です。次のサイトでスコアの換算表が見られるので、TOEICに換算してみて自分のだいたいの実力を確認します。
そして、自分の実力に適し、さらにTOEICの目標とするスコアをターゲットにした教材を選びましょう。
最初に、私の感想が入り主観的になるのでおすすめはしないといいましたが、独学に適した参考書の構造という観点では、『模試テスト① → TOEIC対策 → 模試テスト②』の流れで学習できるものがおすすめです。1回目のテストで自分の実力を確認し、TOEICテストを理解。そして各パートの対策をした後に、2回目の模試で学習成果を確認できるからです。1人で学習していると、なかなか成果が目に見えないので不安になりますが、このタイプの教材は、教材を解く前と後で自分の実力を測れるので良い指標になると思います。
ここまでで、自分の今のレベルと目標スコアを設定して、教材を絞り込んだとしても、まだ選択肢は絞り切れないと思います。
自分の学習スタイルや好みに合っているか
そこで、考慮すべきなのが2つ目のポイントです。自分の学習スタイルに合わせて選定します。自分がどのように学習を進めて行くタイプなのかによって選ぶべき教材も変わってきます。
例えば単語の覚え方一つでも、「書いて書いて書きまくって覚える」という方もいれば、「聞いて耳で覚える」という方もいます。または、「絵や図と一緒に覚える」と視覚的に覚える方もいると思います。
さらに、学習スタイルが人それぞれであるように、教材の好みも十人十色です。教材に書き込むのが好き、読み物というよりはドリル形式がいい、e-bookで通勤・通学に持ち運びやすいのが好き、などなど。あとは、紙質やデザインなども自分の好みに合わせたほうが良いです。
自分の学習スタイルや好みに合わせて教科書を選ぶことによって、続けるのが苦痛になったり、教科書を3ページ目までやってあとは新品同様のまま手つかずになったり、といった可能性も少なくなります。
オンラインショッピングで購入する方も、可能であればまず本屋に行って中身を確かめて、紙の質感や本の厚さ、自分が飽きずに続けられそうかどうかを実際に手に取って感じてみましょう。そのときに得られた直観やフィーリングは、学習にも大きく関わってきます。
Q. 独学でTOEIC L&R対策を行う学習者におすすめの勉強法は?
学習法をお伝えする前に、知っておいていただきたいことは、私自身もともと英語が得意だったわけではないということです。中学・高校時代はいわゆる運動バカといわれるタイプで、「gentleman」をゲンテーマンと読んでいました。しかも大学にもスポーツ推薦で入ったため、きちんと英語を学び始めたのは大学に入ってからでした。
ですから、私自身、色々試行錯誤しながら勉強してきたという実体験と、講師としては他の著名な先生方から比べるとまだまだひよっこではありますが、今までに教えてきた受講生が実際に点数を伸ばした方法を踏まえて共有していきます。
まず、リスニング対策とリーディング対策の両方におすすめなのが、とにもかくにもTOEIC教材のリスニング問題の「音読」です。
「音読」を効果的に取り入れるには、ただ単に文章を読むだけでなく、内容をきちんと理解したうえでしっかり声に出していく必要があります。
例えば、教材として一番使いやすいものは「Part 3」と「Part 4」です。Part 3は、2~3名の会話文、Part 4は、スピーカーが1人で話す説明文の問題です。
学習の流れは次の通りです。
- 音声を1回聞く
- 誰がどこでどんな話をしているのかを把握
- 数回聞き直して理解度を高める
- スクリプトを精読し、すみずみまで内容を確認
- スクリプトを見ながらスラスラ読めるまで音読
- シャドーイング(できればスクリプトは見ずに)
この①~⑥を行うと、実は一石三鳥で、①~③の部分でリスニング力、④~⑤でリーディング力、⑤~⑥ではスピーキング力が伸びてきます。こちらの方法は少し難しいので、英語に苦手意識がある方にはPart 1とPart 2の問題を使って同様に練習してみましょう。
スピーキング力は必要ないと思っている方もいるかもしれませんが、そんな方にも私は音読に勝る学習法はないと思っています。音読を加えることによって、リスニングとリーディングの2つの対策を同時にしていることになります。
例えば、以下の文章を読んでみてください。
All four proposals to the committee were unanimously approved.
(参照:https://dictionary.cambridge.org/ja/dictionary/english/unanimously)
こちらの文章が発音できない方、もしくはスラスラと読めなかった方は、リスニング音声で流れても理解できないでしょう。
こちらは辞書の例文なので音声はありませんが、上の方法で文章をしっかり読んで語彙や文法、文構造を理解し、そのあとにまるで自分が発信したかのように、この文章を読めるようになると、音声で聞いたときにすんなり理解できるようになります。いうまでもなく、精読が含まれるのでリーディング力UPにもつながります。
「自分で発音できないものは、一生聞き取れないし理解できない」
こちらは、ことわざや慣用句にでも仲間入りさせたいぐらい広めたいものですし、英語講師であればこれを受講生に伝えていない人はいないと思います。残念ながら、受講生の間でまだそこまで認知度は高くないなという印象を、セミナーや授業のたびに受けます。
意味を意識しながら音読するという方法に勝る勉強法はありません。まだ取り入れてなかった方はぜひ行ってみてください。
Q. 独学でTOEIC対策に取り組むデメリットは?
独学のデメリットは、「モチベーションを保てない」「続かない」がおそらく一番にあげられます。
もちろん自分で学習プランを立てて、しっかり管理できる方は独学で問題ありません。しかし、そもそもどのようにプランを立てたらいいのか不明という方、自分の弱点・強みは何なのか分からない方、テレビ・携帯に吸い寄せられる、とにかく自分に甘い!という方は、独学のみでは限界を感じ、三日坊主とはいかないまでも、学習を中断してしまいがちです。
そういった方は、自分の重い腰を上げてくれる「やる気のスイッチ」のような存在のスクールに通うというのも一策です。
2. TOEIC対策のスクール/講座を効果的に活用するには?
Q. プロの指導を受けることで得られるメリットとは?
スクールに行くことで、「課題をやらなくてはいけない」「次のレッスンまでに問題を解かなくてはいけない」という、焦りや軽いプレッシャーを得られます。また、講師と話すことは、自分の学習の進捗状況を相談したり、不明点や疑問点が解消されたりする機会や、心が折れそうになったときのセラピーのような役割にもなると思います。
また精神面だけでなく、プロの指導を受けることで自分でも気づかなかった弱点に気づくことができ、TOEICの対策に必要な知識についても技術面でのインプットを得られます。
特にリーディングパートは、ある程度は独学で進められますが、いずれ壁にぶつかってしまうパートだと思います。実際に受講生からのダントツに多い質問は、リーディングに関するものです。「最後まで終わらずに塗り絵(マークシートを適当に塗りつぶすこと)をしてしまった」「点数がなかなか上がらない」「読むスピードを上げるにはどうすればいいのか」など、悩みが多いパートです。
単語を覚える、文法や文構造を理解することは独学でできても、リーディングの時間の使い方や問題の見分け方など、TOEICで目標スコアに達するためのテクニック的なことは、TOEICに精通した講師に教わるとスコアの伸び率も安心感も段違いです。
Q. TOEIC対策のスクールや講座選びの際に意識すべきポイントは?
こちらは教材選びのポイントと似ていますが、様々な面で自分に合っているかどうかを確認します。
基本的にスクールの場所、レッスンが受けられる時間帯、料金がまず目につくポイントだと思います。ただ、TOEICのスコアアップを目指しているのであれば、講座やレッスンの内容も要チェックです。
特にスクールで受講すると決めた方は体験レッスンを受けてから、申し込むのがおすすめです。最近は体験レッスンを無料で受けられるスクールが多いので、実際に受けたらこんな感じなのか、というのを体感してみましょう。
プラスで、レッスン以外のサービスや特典に目を向けることも大事です。よくある内容では、「教材プレゼント」や「レッスン1回分無料」など、スクールの数だけ特典の内容も変わります。
ただ、TOEIC対策のレッスンを受けられるスクールや講座は山のようにあるので、自分でこれだけは譲れないという条件を並べてみましょう。
例えば、「値段の安さと家からの近さは絶対に譲れないけれど、授業時間は早くても良い」「仕事の後に受けたいから、遅い時間に開講していて、かつ職場から近いことが必須」など。条件を出すときはあくまでも自分の負担にならないかが大事です。少しでも負担に感じると、続かない原因になりかねないので。
スクール選びや講座選びは、物件選びと同じです。自分のライフスタイルや学習スタイルに合ったものを選び、自分への負担を可能な限り少なくしましょう。
Q. レッスン/講座の受講をスコアアップにつなげるために、心がけるべきことは?
受講中は、自分の疑問点をできるだけクリアにするようにしましょう。レッスンを受けるだけでは、スコアは伸びません。レッスンを毎日受けて缶詰状態で学習するというのであれば話は別ですが。
レッスンを受けてはい、終わり。という風になってしまっては、せっかくインプットされた知識が流れ出てしまいます。それを防ぐために、予習復習を行いましょう。
予習を行い自分が分からないところをスクールで講師に聞く、そしてレッスンを受けて新たに出てきた知らなかったことを自分のものにするために復習をする。このサイクルで独学+レッスンを組み合わせて、相乗効果が得られます。
言い方は悪いですが、成果は「講師をいかに利用できるか」にかなり左右されると思います。お金も払っているわけですし、限られたレッスン時間内でできる限り吸収できるように、決して受け身にならずガツガツ受講してください。そうでないと、お金の無駄です。
3. TOEIC対策に取り組む学習者へのアドバイス
TOEICの学習で必ずやらなければならないことは、「休頭日を設ける!」ことです。こちらは、「休肝日」をもじったもので、読み方は私も分かりません。この質問に答えながら考えました。
お酒を飲む方は、肝臓を休めてあげる「休肝日」という言葉を聞いたことがあるのではないでしょうか。TOEICの学習を継続することはもちろん大事ですが、毎日お酒を飲むと肝臓が疲れてしまっていつも通りのパフォーマンスができなくなってしまうように、学習時も情報を入れすぎるとかえって作業効率が落ちてしまうことがあります。
ですから、たくさん知識を詰め込んだ頭を思い切って1日休めてあげましょう。そうすると、情報でいっぱいだった頭の中が整理されて新しく英単語だったり文法だったりを覚えるためのスペースと能力を取り戻せます。
「学習」はいわゆる「ちりつも」といわれるものの代表だと思います。すぐに結果が出るわけではなく、学習の成果・努力の結果が出るまで時間がかかります。そのとき焦ってしまって頭をフル稼働させると逆に非効率です。
目標のスコアを取るためのプランを考えるときに、必ず休憩時間・休頭日を入れて作成しましょう!
インタビュー後記
バークレーハウス人気講師の高橋先生が、試行錯誤しながら英語を身に付けた学習者時代と、講師として接してきた受講生たちとの対話を振り返りながら、TOEIC対策にまつわる質問に丁寧に答えてくださいました。高橋先生のアドバイスを聞き、やるべきことが明確になったと同時に、心が軽くなった人も多いのではないでしょうか。
適度に休頭日を取り入れつつ、自分に合った無理のない方法で、目標スコアに向けての学習に取り組みましょう!
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