7月9日、明星高等学校(東京・府中市)の高校生を対象に、サーキュラーエコノミー(循環型経済)をテーマとした出張授業を行いました。今回は、「MEISEI SDGs VISION〜地域と世界を明星がつなぐ〜」というスローガンのもと、独自のSDGs推進宣言を掲げる明星高等学校と、ハーチ株式会社の産学連携授業として実施。社会を「もっと」よくするアイデアを集めたメディアIDEAS FOR GOOD、日本のサステナビリティを海外に発信する英語メディアZenbird、そして英語学習者を支援するポータルサイトEnglish Hubの3つのメディアが協力し、英語のレクチャーから教室でのワークショップまで、高校生に向けたオリジナル授業を展開しました。
目次
江戸時代の循環型社会「サーキュラー・エドノミー」を学ぶ
サーキュラーエコノミー(循環型経済)とは従来の資源を採掘し、製造、そして消費された後に廃棄、というリニア(直線)型の経済システムを見直し、廃棄物も資源として捉え、循環させる経済の仕組みのことを指します。欧州を中心に発展した概念ですが、日本でも江戸時代には、この「循環型」のシステムが確立されていたといわれています。現代にも応用可能な取り組みもあることから「サーキュラー・エドノミー」として注目されています。
今回は明星高校の2年生を対象に、サーキュラー・エドノミーについて2コマ100分の授業が行われました。前半はZenbird編集長のロジャーによる英語の講義『Japan’s Circular Economy:EDOnomy』で、エドノミーの基本的なアイデアを学び、後半は各クラスで、講義の振り返りやグループワークを通して、内容の理解を深めました。エドノミーについて基本的な知識を身につけるだけでなく、現代で実践されている事例について生徒が自ら調べ、最終的には、身近な取り組みを世界へ発信することをゴールに据えた学びの時間となりました。
なお、講義は全て英語で行われるため、押さえておくべきキーワードについて事前資料を配布しました。その中から、サーキュラー・エコノミーを考える上で、知っておくべき重要単語をいくつか紹介します。
「サーキュラー・エコノミー」の理解に役立つキーワード
- circular economy(循環型経済)
- linear economy(直線型経済)
- resilience(回復力、跳ね返り、弾力)
- efficiency(効率)
- coexistence(共存)
- waste(廃棄物、浪費)
- consumption(消費)
- upcycle(アップサイクル)※廃棄物に、デザインやアイデアといった新たな付加価値を持たせることで、別の新しい製品にアップグレードして生まれ変わらせること
- composting(堆肥化)
講義『Japan’s Circular Economy:EDOnomy』
世界と共有すべき日本の「共存」のマインドセット
今回の講義は、Zenbird編集長のロジャーによる全編英語で行われました。リニア型経済について「True or False」(正誤クイズ)でウォーミングアップした後、まずは、SDGsに関する日本の現状が紹介されました。持続可能な開発ソリューション・ネットワーク(SDSN)による世界165カ国のSDGs到達度ランキングで、日本は上位20組にランクイン。フィンランドやドイツなどのヨーロッパ諸国からは遅れをとっているものの、アジアにおいては首位という結果に。さらにロジャーは、日本における金剛組(578年創業)をはじめとする長寿企業の多さについても触れ、「日本には世界と共有すべき秘密と知恵がある」と話しました。
当時、世界最大の都市であり、200年以上続いた江戸。SDGsという言葉が生まれる遥か以前から、循環型の社会を確立させることができた理由を「coexistence(共存)のマインドセット」であるとロジャーは指摘します。日本には自然に対して畏敬の念を抱く文化があり、自然をコントロールするのではなく、共に平和に生きていく方法が模索されていたのです。
江戸時代の循環型社会を特徴づける「5R」
そして、そのような江戸特有の循環型社会を理解する上で欠かせないキーワードの一つが「5R」です。これは現代におけるreuse(再利用)・reduce(減らす)・recycle(再循環)の「3R」にrepair(修理)・return(戻す)を加えたもの。5Rの代表的な事例のひとつが着物です。着物は生地を一切無駄遣いすることなく仕立てることができ、つぎはぎによる修繕も可能。子ども用の着物も縫い目をほどけば、成長に合わせてサイズを大きくしていくことができます。また、江戸時代の「食」も循環型でした。江戸で収集された排泄物は農村部によって買い取られ、畑での肥料として使用されていたのです。
続いて、現代の東京におけるエドノミーの事例が紹介されました。例えば、世田谷の Fablabはrepairの精神を受け継ぐコミュニティで、スマートフォンや玩具、扇風機まで「ほぼ全てのものについて修理方法を教える」というコンセプトを掲げています。彼らの真の目的は修理することではなく、「修理しよう」というマインドセットを伝えることにあります。その他にも、自家製の堆肥を持ち寄る 「1.2 mile community compost-Omotesando-」プロジェクト(表参道)や、地域とのつながりを提供するレストラン Maruta (調布)、サステナブルな暮らしについて考える場を提供する R(アーーーーール) (石神井台)など5Rと共鳴する活動が紹介されました。
約30分間、オールイングリッシュの講義にも関わらず、生徒たちから「現代の社会において江戸時代の循環型システムが機能しなくなった1番の原因はなにか」「5Rについて現在の日本人が改善すべきことはあるのか」という質問が挙がるなど、活況のうち講義終了となりました。
身近な「エドノミー」を探してみよう
後半は各クラスで、講義の振り返りとグループワークを行いました。それぞれの教室には、ハーチ(IDEAS FOR GOOD・Zenbird・English Hub)のメンバーたちが担任教師と協働し、ファシリテーターとして参加しました。
講義の振り返りでは、5Rやcircular economyなどエドノミーを理解する上で必要なキーワードについて、生徒がある程度理解している様子が見られました。日頃からSDGsに関する活動に取り組んでいる明星高校の生徒たちの、サステナブルなテーマに関する興味関心の深さを感じました。その後のグループワークで与えられた課題は「世界に伝えたい、日本のソーシャルグッド:身近なエドノミーを紹介しよう!」です。生徒には各自のタブレット端末でキーワード検索から始めてもらいました。ハーチのメンバーがサーキュラーエコノミーやSDGsに関連するキーワードと身近な地名を組み合わせて検索することがポイントであると伝え、生徒たちの自発的なリサーチを促しました。
授業の最後は、各グループによる身近なエドノミーの紹介が行われました。身近な事例としてブックオフやイオンのサステナブルな取り組み「 Loop 」、学内でも取り入れられている「 mymizu 」などが挙がり、生徒たちにとってリサイクル・リユース・リデュースなどの取り組みが、すでに生活の一部として定着していることが分かりました。
編集後記
本講義の内容について、生徒たちにアンケートを行ったところ、「エドノミー」や「5R」について、共感や興味・関心が喚起されたことを示す回答が多く得られました。また、講義が全て英語で行われたことに対しても、「特別な経験をした」「聞くことに集中できた」と前向きな反応が得られました。
受講した生徒たちの声
- 英語だといつもより理解しようとするから、いろいろ考えながら聞くことができました。
- 自分の英語力も高められ、エドノミーについても知る良いきっかけになった。
- 便利になることが、環境破壊につながらない世界になっていけばいいなと思いました。
最近はSDGsに取り組んでいるアーティストやタレントも多く、音楽やファッションといったユースカルチャーと不可分の大きな潮流になっています。明星高校の生徒たちをはじめとするZ世代はSDGsへの関心が高いとされており、その先例が江戸時代の日本にあったということを知ることで、自国の文化を見直す機会にもなり得ます。
また、エドノミーや現代の日本におけるSDGsに関連したさまざまな取り組みを世界に伝えるためにも英語力は不可欠です。若い世代が、英語学習への意欲やSDGsへの関心を高めるきっかけになるような授業を、今後も継続的に展開していくことの大切さについて改めて気付かされました。
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Toshi
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