近年、幼いうちから子どもに英語を学ばせる家庭が増え、就学前や小学校低学年のうちから英語の資格試験に挑戦する子どもも多くなりました。
英語の資格試験といって、大人がまず思い浮かべるのはTOEICやTOEFLかもしれません。しかし、大人が受けることを想定して作られたテストを子どもが受けるのは簡単なことではありません。設問によっては社会問題を論ずることが求められる場合もあります。
その点、実用英語技能検定試験(英検)には、英語学習をある程度こなしてきた子どもなら十分に挑戦できる級があります。また、近年では英検Jr.(旧称:児童英検)という、小学校低学年や入学前の子どもでも無理なく挑戦できる試験も導入されました。
そこで今回は、小学生以下の子どもや保護者からの注目度も高い英検と英検Jr.について、受験時の年齢などの最適なタイミングや子どもが受験するメリットを考えます。
英検とは?
「英検(実用英語技能検定試験)」は文部科学省が後援する、伝統があり信頼性の高い英語の試験です。5級から始まり、最上の1級に至るまで、準2と準1を含め計7つの級があります。
3級以上では、二次試験でスピーキング能力が問われるほか、4級・5級でも級認定とは別に、単体で合否を判断するスピーキングテスト(オンラインでの録音形式)が実施されます。また、3級~1級ではライティング問題が出題され、より高い4技能のスキルが求められる傾向にあります。特に準2級以上になると、社会問題について自分の意見を述べることが求められるなど、難易度が高くなります。
英検Jr.とは?
英検Jr.(旧称:児童英検)は、英語を学び始めて1年程度の子どもでも受けられるようにデザインされた試験です。「級」によってレベルが分けられる通常の英検とは異なり、英検Jr.では「Gold」、「Silver」そして「Bronze」という3つの「グレード」によってレベル分けされます。
すべてのグレードに関して言えることですが、視覚性と聴覚性に焦点があてられており、幼い子どもでも抵抗なく受けられるようなテストになっています。特に最下グレードのBronzeでは、文字が使用されません。そのため、アルファベットをまだ習得していない年代の子どもでも受験が可能です。
また、英検Jr.は通常の英検と異なり、成績として示されるのが合格・不合格という判定ではありません。何パーセント正しく答えられていたか、という正答率が結果として表示されます。80パーセント以上正しく答えられた場合、次のグレードに挑戦することが許可される仕組みです。
英検Jr.は何歳で受けられる?
英検や英検Jr.には、何歳以上にならなければ受けられない、という制約はありません。英会話スクールなどで日頃から英語になじんでいる子どもならば、半年~1年ほど英語を学べば英検Jr.のBronzeに十分トライできます。先述したように、Bronzeでは文字が使われません。主に英語を聞き、それに該当する絵や画像を選ぶ、という形式なので、文字を学習する前の子どもも抵抗なく取り組めます。「apple」という単語の音声が流れたら、リンゴの絵に丸を付けるような仕組みです。
ただし、たとえば3歳前後の子どもの場合、そもそも「試験を受ける」という体験自体が初めてかもしれません。英検Jr.受験には30~45分程度のテストに取り組む集中力が必要です。その意味では、小学校に入ってある程度、試験慣れしてからチャレンジする方が、子どもの負担は軽いでしょう。
英検は何歳で受けるべき?
英検Jr.とは異なり、通常の英検では合否がはっきりと判定されます。そのため、英検にトライするのは子どもがある程度、英語力に自信をつけてからのほうが好ましいでしょう。時期尚早に受け始めて、不合格を繰り返してしまうと、子どもの学習モチベーションを下げかねません。それでは本末転倒なので、普段の取り組みの成果が表れ、子どものやる気につながるように英検を用いることを心がけてください。
普段から英語を勉強している子どもなら、小学校中学年に達したころから、通常の英検を受験することが現実的になります。5級と4級の級認定にはスピーキングとライティングが求められないので、高度な英語力を身につけていなくても挑戦できます。「何歳までに何級を取得しておくべき」といった普遍的なガイドラインは存在しません。子ども一人ひとりの進捗状況にあわせ、適切な級を受験させましょう。
英検・英検Jr.を受験するメリット
子どもが英検や英検Jr.を受験するメリットは、大人が試験を受けるメリットとは異なります。受験生や大人の場合は、大学に合格したり仕事で昇進したりする、という社会的な利益を主とする動機づけがあります。これを第二言語習得理論では「道具的モチベーション(instrumental motivation)」と呼びます。
一方で、子どもがそのような直接の利益のために英検を受けるケースは少ないのではないでしょうか。子どもにとってもっと大切なことは、英語を習得した達成感や喜びを味わうことです。これは、先の道具的モチベーションと比して「統合的モチベーション(integrative motivation)」と呼ばれます。英語を用いるコミュニティに積極的に参加し、そこから得られる充実感が統合的モチベーションの源泉となります。
子どもが英検を受験する一番のメリットは、この統合的モチベーションが高まることです。統合的モチベーションを試験への積極的な参加によって高め、その結果、英語がいっそう好きになる、という流れが理想的です。以上に挙げた2つのモチベーションを混同し、子どもに時期尚早なかたちで英検の受験を押し付けることがないよう注意してください。
小学生のうちに3級取得も夢ではない?
ではここで、たとえば子どもが小学校入学時点で英語を学び始めた場合、その子が英検受験に取り組むペースの一例をモデルケースとして挙げてみたいと思います。
まず、1年間英語に触れていれば英検Jr.のBronzeは十分射程圏内へと入ってくるので、小学校2年のときにBronzeを受けてみましょう。順調に学習が進めば、3〜4年生までにGoldまで獲得ができるでしょう。Goldが取得できたら、通常の英検にトライすることも現実的になります。4〜5年になって5級をとり、小6前後に4級を取得できれば、とても順調に英語学習が進んでいる証と言ってもいいでしょう。英語が大好きで、熱心に取り組める子どもならば、小学校在学中に3級まで取得することも可能です。ただ、これはあくまで一例なので、子どもの英語習得レベルに合わせ、焦らずに取り組みましょう。
3級以上の試験にはスピーキングとライティングが加わるため、英語で話す力だけでなく、書く能力が必要になります。したがって、早いうちから4技能をバランスよく伸ばしていくことがとても重要です。小学校の中学年に達したら「話す」「聞く」だけでなく、「読む」「書く」能力にも配慮した学習を始めることが大切です。
まとめ
英検と英検Jr.についての概要、そしてそれぞれを受験することのメリットや留意すべき点を俯瞰してみました。子どもの受験は大人の受験と異なり、あくまで英語学習の一層の充実を図るためのものであるという点を、お伝えできたと思います。子どもの英語習得を長い目で見守りつつ、英語学習の一助として英語試験を活用してみてください。
【参照サイト】公益財団法人 日本英語検定協会
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茂呂 宗仁
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