取引先への謝罪文をAIに作らせた経験、46.8%にのぼる。“身内”である社内向け(39.7%)を上回る

取引先からお詫びのメールが届いたとき、その文面を誰が書いたのかを考えることは、ほとんどないはずです。しかし本調査では、社外への謝罪文をAIに作らせた経験がある人が46.8%にのぼることが分かりました。ビジネスの現場で受け取る謝罪文のうち相当数が、AIによって下書きされたものである可能性があります。

謝罪文は、仕事で書く文章のなかでも最も気が重いものです。相手を怒らせずに事実を伝え、過不足なく詫びる必要があり、書き手の負担は小さくありません。そこに生成AIが入り込むのは自然な流れとも言えますが、実際にどの程度使われているのか、誰に向けた文章で使われているのかは、これまで明らかにされてきませんでした。

EnglishHubでは、業務でメールやチャットを使用している会社員340名を対象に、仕事の文章作成とAI利用の実態を調査しました。

調査結果のポイント

  • 社外への謝罪文をAIに作らせた経験がある人は46.8%。うち15.3%は「よくある」と回答
  • AI利用は社内向け(39.7%)よりも社外向け(46.8%)のほうが高い
  • 「使いたいとも思わない」と社内だけを拒否した人は21名、社外だけを拒否した人は8名
  • 課長クラス以上では社外56.7%に対し社内36.7%と20.0ポイントの差。この使い分けは管理職層にのみ見られた
  • 任せたい理由の1位は「言葉選びや書き方に自信がないから」52.1%。「書くこと自体が精神的につらいから」は9.7%
  • 部下が取引先への謝罪文をAIに作らせていても77.4%が容認。「注意する」は6.2%

社外への謝罪文、46.8%が「AIに作らせたことがある」

謝罪・お詫びの文章をAIに作らせた(下書きさせた)経験を聞いたところ、社外(取引先・顧客)向けで46.8%が「よくある」「たまにある」と回答しました。うち15.3%は「よくある」で、日常的にAIが謝罪文を書いていることになります。

社外向けと社内向けの謝罪文でAIを使った経験の割合を比較した積み上げ棒グラフ
謝罪・お詫びの文章をAIに作らせた(下書きさせた)ことはあるか

これは「送り手の何割に経験があるか」を示す数字であり、実際に届く謝罪文の何割がAI製かを示すものではありません。ただし、取引先の担当者のおよそ2人に1人が経験者であることを踏まえれば、受け取った謝罪文がAIによって下書きされたものである可能性は、決して低くないと言えます。

背景には、謝罪文が「書きたくない文章」の筆頭であることがあります。仕事で書く文章のうち「気が重い・できれば書きたくない」と感じるものを聞いたところ、「謝罪・お詫び」が65.9%で最多となりました。

気が重い文章の種類別の割合を示した横棒グラフ
仕事で書く文章のうち「気が重い・できれば書きたくない」と感じるもの(複数選択)

身内には使わず、取引先には使う

興味深いのは、社内(上司・同僚)向けの39.7%よりも、社外向けのほうが高いという点です。社外だけで使っている人が43名、社内だけで使っている人が19名と、明確に社外へ偏っています(McNemar検定、p=0.004)。

さらに「なく、使いたいとも思わない」と明確に拒否した人を見ると、社内向けだけを拒否した人が21名、社外向けだけを拒否した人が8名でした(p=0.024)。社外で使いやすいというより、社内でこそ避けられていることになります。

理由は本調査では聞いていないため断定できませんが、自由回答には示唆的な声がありました。

相手先については使い分けが必要だ。さすがに近しい人や尊敬する人に対してはAI利用ははばかられる。前提として、AIで作成したことがばれるのは困る

そっけない体温を感じない文章となるため、文章に慣れた者が相手なら見抜かれると思う

普段から文章を見慣れている相手ほど気づかれやすい、という感覚がうかがえます。裏を返せば、自分の文体を知らない社外の相手には使いやすいということでもあります。

なお、社外向けで「使いたいとも思わない」と答えたのは14.4%にとどまりました。すでに使っている層と「使いたいと思ったことはある」層を合わせると85.6%に達し、謝罪文をAIに任せることへの抵抗は、すでにごく少数派です。

相手で使い分けているのは管理職だけ

この傾向は、役職によって大きく異なりました。課長クラス以上では、社外向け56.7%に対して社内向けは36.7%と、20.0ポイントの差が生じています。

役職別に社外向けと社内向けのAI利用経験を比較した横棒グラフ
役職別 謝罪文をAIに作らせた経験がある割合

一方、主任・係長クラスでは社外57.1%・社内55.7%とほぼ差がなく、一般社員も社外40.5%・社内35.2%と5.2ポイントの差にとどまります。課長クラス以上では「社外だけに使う」人が13名、「社内だけに使う」人が1名と一方向に偏っており(p=0.002)、相手によってAIを使い分けているのは管理職層だけという結果になりました。

背景として、管理職層は生成AIの業務利用そのものが進んでいます。課長クラス以上で「ほぼ毎日」または「週に数回」使う人は80.0%で、一般社員(53.8%)を大きく上回りました。

AI利用頻度別に社外向け謝罪文でのAI利用経験を示した横棒グラフ
生成AIの業務利用頻度別 社外への謝罪文をAIに作らせた経験がある割合

「つらいから」ではなく「うまく書けないから」

謝罪の文章をAIに任せたい理由として最も多かったのは「言葉選びや書き方に自信がないから」で52.1%でした。「時間を短縮したいから」が25.9%で続き、「書くこと自体が精神的につらいから」は9.7%にとどまっています。

AIに任せたい理由の内訳を示した横棒グラフ
謝罪の文章をAIに任せたい(任せた)理由

負担を避けたいという感情的な動機よりも、文章の品質を担保したいという実務的な動機が上回りました。謝罪文でAIが使われるのは、書き手が楽をするためではなく、失敗できない文書だからこそという側面が強いと考えられます。

受け取る側から見ると、この動機は示唆的です。AIが使われているのは手抜きのためではなく、失礼のない文章にするためです。つまり、届いた謝罪文が過不足なく整っているほど、AIの手が入っている可能性がある、という見方もできます。

部下が使っていても、77.4%が容認

部下や後輩が取引先への謝罪文をAIに作らせていた場合の反応を聞いたところ、「内容を確認していれば問題ない」が67.6%、「問題ない」が9.7%で、合わせて77.4%が容認する結果となりました。「注意する」はわずか6.2%です。

部下のAI利用に対する反応の内訳を示した横棒グラフ
部下や後輩が取引先への謝罪文をAIに作らせていたら、どう思うか

さらに、自分自身がAIを使っている人では、部下の利用に否定的な回答は10.1%にとどまりました(使っていない人は36.4%、p<0.001)。組織のなかで、対外文書へのAI利用を止める力はほとんど働いていないことになります。

まとめ

本調査で見えたのは、謝罪文へのAI利用がすでに日常の一部になっているという事実です。社外への謝罪文をAIに作らせた経験がある人は46.8%、うち15.3%は「よくある」と回答しました。「使いたいとも思わない」と明確に拒んだ人は14.4%にとどまり、部下の利用を止める人も6.2%しかいません。

しかも、それは手を抜くためではありませんでした。理由の1位は「言葉選びや書き方に自信がないから」であり、失礼のない文章にするためにAIが使われています。受け取る側から見れば、届いた謝罪文が丁寧で過不足なく整っているほど、AIの手が入っている可能性がある、ということでもあります。

一方で、その使われ方には無意識の線引きがありました。身内である社内には使わず、取引先には使う。自由回答にあった「近しい人や尊敬する人に対してはAI利用ははばかられる」という声は、その感覚を端的に表しています。誠意をどう示すかという判断が、相手との距離によって変わっているのです。

これだけ広がっている一方で、「どこまでAIに任せてよいか」の共通認識は、まだどの組織にもありません。全文を任せるのか、下書きだけなのか、社外文書は対象外とするのか。謝罪という失敗できない場面だからこそ、個人の感覚任せにせず、チームや会社として線引きを共有しておく段階に来ていると言えます。

調査概要

回答者の役職・従業員数・生成AI利用頻度の構成比を示した横棒グラフ
回答者の属性
調査名称 仕事の文章作成とAI利用に関する実態調査
調査期間 2026年8月
調査対象 業務でメールまたはチャットを使用している会社員・公務員等
有効回答数 340名
調査方法 インターネット調査(無記名式)
調査主体 EnglishHub(GRASグループ株式会社)

※同一回答者による重複回答が確認されたため、重複分を除外して集計しています。

※本調査では、利用した生成AIが勤務先の許可を得たものか、個人のアカウントかは調査していません。本記事の数値は、利用形態を問わない「AIに作らせた経験の有無」を示すものです。

※構成比は小数点第2位を四捨五入しているため、合計が100%にならない場合があります。

引用について

本記事のデータ・画像・文章を引用する際には、必ず元記事である「EnglishHub」からの引用である旨をリンクつきで併記してください。

(例)引用元:EnglishHub「取引先への謝罪文をAIに作らせた経験、46.8%にのぼる