水を飲んでも吐いてしまう。通勤の電車に乗れない。一日のうち動けるのは数時間だけ。周りからは「つわりは誰にでもある」と言われ、休むと言い出せない。
この記事では、妊娠悪阻(重いつわり)で就業が難しいときに使える制度を、条文と公的資料にもとづいて整理します。先に書いておくと、医師の指導を会社に伝えるための公式な書式があり、提出すると事業主は記載内容に応じた措置を講じる必要があります。我慢の量を競う話ではありません。
記載内容は2026年10月時点で、末尾に挙げた公的機関の資料にもとづいています。症状や就業の可否は主治医の指示に従ってください。
結論:主観ではなく、医師の指導として伝える
- 母性健康管理指導事項連絡カードを主治医に書いてもらい、事業主に提出する
- 提出があれば、事業主は記載内容に応じた措置を講じる必要がある。根拠は男女雇用機会均等法第13条
- 通勤がつらい場合、通勤緩和の措置がある。時差通勤、勤務時間の短縮、在宅勤務などが例示されている
- 休業することになった場合、健康保険の傷病手当金という仕組みがある
- 残業や深夜業の免除は、請求すればよく医師の指導を待つ必要がない
連絡カードが効く理由
つわりの訴えは、どうしても主観的に聞こえます。だからこそ、医師の指導という形に変えることに意味があります。
厚生労働省が案内している母性健康管理指導事項連絡カードは、主治医等が記入し、本人が事業主に提出することで、医師の指導内容を事業主に正確に伝えるための書式です。提出があれば、事業主は記載内容に応じた措置を講じる必要があります。連絡カードの提出がなくても、女性労働者からの申出の内容が明らかであれば措置を講じる必要があるとされています。
- 受診時に、何がどの程度できないかを具体的に伝える(食事が取れない、通勤ができない、何時間なら座っていられる等)
- 連絡カードの記入を依頼する。書式は厚生労働省のサイトから入手できる
- 記入されたカードを事業主(人事または上司)に提出する
- どの措置を取るかを確認し、内容を書面で受け取る
段階ごとに使える措置
全休する前に、間の段階があります。厚生労働省の案内によれば、妊娠中の女性労働者に対して企業に求められる措置には次のものがあります。
| 困っていること | 対応する措置 |
| 通勤の電車に乗れない | 通勤緩和。時差通勤、1日30〜60分程度の勤務時間短縮、交通手段や経路の変更、在宅勤務などが例示されている |
| 座り続けられない、横になりたい | 休憩に関する措置。休憩時間の延長、休憩回数の増加、休憩時間帯の変更 |
| 立ち仕事や力仕事ができない | 軽易な業務への転換。妊娠中の女性が請求した場合、他の軽易な業務に転換させなければならない(労働基準法第65条第3項) |
| 残業や夜勤に耐えられない | 時間外労働・休日労働・深夜業の制限。妊産婦が請求した場合はさせることができない(労働基準法第66条第2項、第3項) |
| 勤務時間そのものが長すぎる | 症状等に対応する措置として、作業の制限、勤務時間の短縮 |
| まったく就業できない | 症状等に対応する措置としての休業 |
上から順に試せるようになっています。「休むか辞めるか」の二択ではなく、通勤緩和と休憩の措置だけで乗り切れる時期もあります。
時間外・深夜業の制限については、押さえておく点があります。妊産婦が請求した場合という条件だけで、医師の指導は要件になっていません。診断を待たずに請求できます。深夜業は午後10時から午前5時までの就業を指します。
休業する場合の収入
全国健康保険協会の案内によれば、傷病手当金は業務外の病気やけがで療養のため仕事を休んだ場合に支給されるもので、連続する3日間を含んで4日以上仕事に就けなかったときに、4日目以降の仕事に就けなかった日に対して支給されます。
- 1日あたりの額は、支給開始日以前の継続した12か月間の各月の標準報酬月額の平均額を30で割った額の3分の2に相当する額
- 支給される期間は、支給開始日から通算して1年6か月
- 休んだ期間について給与の支払いがある場合は、支給が調整されることがある
- 申請書には医師が記入する欄がある。連絡カードとは別の書類なので、両方を依頼する
「通算して1年6か月」という点が、つわりの波と噛み合います。途中で復帰した期間は算入されないため、出勤できる時期と休む時期を行き来しても使えます。
産前休業までの期間の組み立て
厚生労働省の案内によれば、産前休業は女性労働者が請求すれば出産予定日の6週間前(双子以上の場合は14週間前)から休業できるとされています。つわりが重い時期は妊娠の初期から中期にあたるため、産前休業までの期間をどうつなぐかが論点になります。
| 時期 | 使う仕組み |
| つわりが重い時期 | 連絡カードを提出し、通勤緩和・休憩・勤務時間短縮・休業等の措置を受ける。休業なら傷病手当金 |
| 症状が落ち着いた時期 | 措置の内容を見直して復帰する。残業・深夜業の制限は請求を続ける |
| 出産予定日の6週間前から | 産前休業(多胎は14週間前から) |
| 出産の翌日から8週間 | 産後休業。産後6週間は就業できない |
措置は一度決めたら固定ではありません。症状が変われば見直せます。連絡カードを出し直すこともできるので、主治医に相談してください。
会社が応じない場合
妊娠や出産、それに関する措置を求めたことを理由とする不利益な取扱いは禁じられています。会社との話で行き詰まった場合、都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)が相談先です。
- 連絡カードを提出した日付と、提出先を記録しておく
- 会社から示された措置の内容を書面で受け取る。口頭なら自分でメモを残す
- 断られた場合は、その理由を聞いて記録する
- 都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)に相談する
働き方を見直すきっかけにする場合
つわりで通勤が難しかった経験は、復帰後の働き方を考える材料にもなります。子どもが生まれたあとも、通勤と勤務時間の固定は制約として残ります。
オンラインで完結しやすい仕事として、Webデザイン、ライティング、動画編集、Webマーケティング、オンラインアシスタントなどがあります。通勤がなく、時間帯を選べる形は、体調や子どもの都合で予定が崩れる状況と噛み合います。
ただし、症状が重い時期に無理をするものではありません。体調が許す範囲で、調べるところから始めてください。学ぶ場としては、オンラインで複数の分野を横断して学べるスクールがあります。SHElikesは、Webデザインやライティング、マーケティングなどのコースを定額で受講できる形になっているため、どの方向が自分に合うか決めきれていない段階でも始めやすい設計です。
よくある質問
つわりで休むのは甘えだと言われます
就業が難しい状態かどうかは医学的な判断です。母性健康管理指導事項連絡カードを主治医に書いてもらい、事業主に提出してください。提出があれば、事業主は記載内容に応じた措置を講じる必要があります。
通勤だけが無理です。全休しかないのでしょうか
通勤緩和の措置があります。医師等から通勤緩和の指導を受けた旨の申出があれば、時差通勤、1日30〜60分程度の勤務時間短縮、交通手段や経路の変更、在宅勤務などの措置を講じる必要があるとされています。
残業を外してもらうのに診断書は必要ですか
妊産婦が請求した場合、時間外労働、休日労働、深夜業をさせることはできないとされています。請求すればよく、医師の指導は要件になっていません。
休んだら収入がなくなりますか
傷病手当金の仕組みがあります。連続する3日間を含んで4日以上仕事に就けなかったときの4日目以降について、標準報酬月額の平均額を30で割った額の3分の2に相当する額が支給されます。支給開始日から通算して1年6か月までです。
症状が落ち着いたら措置はどうなりますか
措置は固定ではありません。症状が変われば見直せます。連絡カードを出し直すこともできるため、主治医に相談してください。
まとめ
妊娠悪阻で就業が難しいとき、まずやるのは主観の訴えを医師の指導に変えることです。母性健康管理指導事項連絡カードを主治医に書いてもらい、事業主に提出してください。提出があれば、事業主は記載内容に応じた措置を講じる必要があります。
全休の前に段階があります。通勤緩和(時差通勤、勤務時間の短縮、在宅勤務など)、休憩に関する措置、軽易な業務への転換、勤務時間の短縮、そして休業です。上から順に試せます。
残業や深夜業の免除は、妊産婦が請求すればよく、医師の指導は要件になっていません。診断を待つ必要はありません。
休業する場合は傷病手当金の仕組みがあり、支給は通算して1年6か月までです。途中で復帰した期間は算入されないため、症状の波に合わせて使えます。会社が応じない場合は、都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)に相談できます。
この記事で参照した資料
English Hub 編集部
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