「語彙や文法は努力、スピーキングは度胸が必要。」海外で活躍する日本人インタビュー(第3回)

「海外で活躍する日本人が語る、おすすめ英語学習法」

English Hub編集部オリジナルインタビュー企画「海外で活躍する日本人が語る、おすすめ英語学習法」は、英語を使って海外で活躍している日本人ビジネスマン・ビジネスウーマンの方から、これまでのリアルな体験に基づいておすすめの英語学習法やビジネスの現場で英語を使う際のポイントを教えてもらうコーナーです。プロの英語講師でもネイティブでもなく、皆さんと同じ日本人英語学習者の立場としてどのように英語と向き合い、乗り越えてきたのかを等身大の姿で語ってもらうことで、必ず今後の勉強に役立つヒントが見つかるはずです。ぜひインタビュー内容を参考にしながら英語学習のコツを掴みましょう。

今回のゲスト:ボーン 陽子さん

第三回目は、理学療法士(フィジオセラピスト)として英語を武器に活躍されているボーンさんにインタビューをしました。最近モントリオールに転居され、ケベックでも同職種で働くため現在はフランス語を勉強中とのこと。カナダのオンタリオ州在住時の経験を主にお話を伺いました。

名前 ボーン 陽子さん
職業 理学療法士 physiotherapist
居住地 カナダ・ケベック州・モントリオール
主な学習法 簡単で短い小説を読む
ボーン陽子

インタビュー

Q:現在の職業と仕事内容について教えてください。

理学療法士は一般的には病気や怪我で身体が不自由になったり、痛みがある人に運動や徒手で施術をして元の状態へ導いていく仕事です。ですが、スポーツ選手のコンディショニングや、産前、産後の運動療法など職域は広いです。病院勤務での業務は、患者さんの歩行練習や運動療法、呼吸練習、退院前指導などです。

Q:いつから本格的に英語を学び始めましたか?

親の転勤で中学一年生でカナダに住むことになった時からです。それから高校卒業までカナダで過ごしました。大学四年間と、卒業後三年ほど日本で働き、その後大学院のために再びカナダに来て現在に至ります。

Q:ある程度英語を使えるようになったと実感するまでにどのくらい期間がかかりましたか?または、どんなときにそう感じましたか?

半年から一年くらいでしょうか。皆の話していることがわかるようになった時です。ちゃんとした文章でなくても、知っている単語を並べれば相手もだいたい理解してくれてることがわかると意思疎通も楽になりました。

Q:英語を使えるようになっていったプロセス(どのように学んだか)を教えてください。

ESLがある学校だったので、算数、音楽、家庭科、体育以外はずっとそこで勉強でした。英語が上手くなるにつれて、皆と同じ授業が増えていきました。最終的には、現地の高校生とシェークスピアを勉強しました。

Q:英語をマスターする上で一番必要だと思うことは何ですか?

努力(語彙や文法)と度胸(スピーキング)です。

Q:海外で仕事を探している時に、どうやって求人を探していましたか?また、今の仕事はどうやって見つけましたか?

初めは、大学院在学中に理学療法士のアシスタントの仕事をしていました。アシスタントの仕事は日本で臨床経験があれば免許は必要なかったのです。カナダの理学療法士の免許を取得後は病院の求人を探せばすぐに見つかりました。

Q:海外で仕事を得る際に、努力したことや準備したことを教えてください。

カナダの理学療法士の資格試験を獲得するまで苦労しました。筆記試験の他に実技試験があるのですが、特別なセミナーに参加したり、同じような受験者と練習したりしました。一度落ちましたが、二度目で合格できました。仕事を探すとき準備したことは、履歴書の書き方が、日本とずいぶん違うので現地の人に見てもらいました。

Q:仕事の現場で英語を使うとき、どんなことを心がけていますか?

時には患者さんの命に関わるので、相手に迷惑がられても自分が納得いくまで確認することを心がけています。あと、何でも書面(カルテ)に記しておくことも大事です。

Q:英語を使えるようになって一番よかったことは何ですか?

他の国の人とコミュニケーションがとれることで、考え方や視野が広がったと思います。専門分野の文献が英語のほうが圧倒的に多いので、最新の研究や情報も知り得ることができます。

Q:異なる国の人々と接する際に、日本人とはここが違うなと思う点を教えてください。

宗教、政治に対する考え方がはっきりしている点でしょうか。タブーな話題でもあるので深く探るのは難しいですけど、日本人にはない感覚だと思います。

Q:英語力を維持・向上し続けるために心がけていることはありますか?

やはり常に、英語にふれていることだと思います。海外生活は長いですが、いつになっても知らない単語に出会うのでその都度調べるようにしています。私の場合はスペルを見ないと覚えられないので。

Q:今までで一番効果的だと思った学習方法を教えてください。

スピーキングについて

共通の趣味のある友達を作ること。私の場合はテニス仲間でした。テニスなどスポーツはプレイ中はさほど喋る必要はないですが、ペアを組んだりするうちに仲良くなれますし、ラケットや靴はどこのブランドがいいとかどの店が品揃えがいいとか自然に話題が増えました。

ライティングについて

英語の家庭教師の先生から毎日一文でもいいから文章を書くようにするといいと勧められ、日記をつけていました。

リスニングについて

はじめはニュースやドラマなどのテレビは難易度が高いため、子供向けのテレビ番組をよく見ていました。

リーディングについて

なるべく短い本や、日本語で読んだことがあったり、映画でみたりして内容を知っている小説を読んでいました。知らない単語は片っ端からノートに書いていると、何度も出てくる単語は自然に覚えられるようになりました。

発音について

大きな声ではっきり、腹式呼吸を意識すること。ネイティブの発音に近くなくても結構通じます。

Q:おすすめの英語教材や参考書などがありましたら教えてください。

TOEFLや TOEIC などの点数を上げたい人は、テスト対策本で勉強すること。一般的な英語力アップについては、ニュースや新聞で学習するのがおすすめです。現在話題になっていることを英語でどう表現するかを知ることができます。

Q:最後に英語学習中の読者に向けてのアドバイスを一言お願いします。

私の個人的な考えですが、英語を学習する際に二回は壁にぶち当たるように思います。一つ目は、ネイティブのスピードについていけないことです。これは耳が慣れるのと、たくさん自分から発言することで少しずつクリアできます。二つ目は、なんとなく英語はわかるようになったがいまいち伸び悩む時期です。これは語彙を増やしたり、本を読んだりして表現の幅を広げていくことが重要です。

インタビュー後記

今回は、カナダで理学療法士として活躍中のボーンさんへのインタビューでした。

ボーンさんがお話してくださった英語学習のポイントのなかでも効果的な学習法としてなるほど!と感じた点は、「語彙や文法は努力、スピーキングは度胸が必要」「リスニングは子供向けのテレビ番組を見る」「発音は大きな声ではっきり、腹式呼吸を意識する」という3点でした。これらのことは、日本にいても留学先の海外にいても、自分自身で意識をすれば実行することが可能な学習法です。難易度が決して高くないという面でも、コツコツと努力さえすれば誰でも身に付けることができる方法ではないでしょうか。
 
大人になってから英語学習を始める方にとっては、若い頃から本格的な英語環境があったボーンさんの例は特別に感じるかもしれません。しかし、そのような環境があったボーンさんが、長年意識している点がこれらの基本的なポイントであり、決して難しい学習法ではないという事実にはとても興味深いものがありました。そして、やはり英語学習は、地道に基礎を重ねる事が大事なんだという事を気付かされました。

また、「海外生活は長いですが、いつになっても知らない単語に出会うのでその都度調べるようにしています。」というボーンさんのコメントは英語学習者にとって、”ずっと海外で生活していても未だに知らない単語はあるんだ”と安心感を与えてくれたと共に、”いつになったら完璧な英語が話せるのだろう”という不安をも拭い去ってくれるアドバイスとなったのではないでしょうか。

カナダで活躍されているボーンさんからは、英語学習のヒントとなるアドバイスをたくさんいただけました。ご協力どうもありがとうございました!

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カナダ在住。各地図書館の本を読破することが楽しみの一つ。いわゆる本の虫。言葉や文字にとても惹かれ、現在は英・仏語を話し、国内外で語学講師の経験を持つ。移住を機にリモートワーカーとなり執筆、翻訳、通訳、取材、商品紹介のキャッチ等を手がける。述べ20カ国以上を旅した経験から世界は繋がっていると体感し、国も人種もボーダレスな人生を謳歌する一児のママ。(ブログ:https://sasaki.themedia.jp/