TOEIC L&Rテストは、日々の生活や国際的なビジネス環境で求められる英語でのコミュニケーション能力を評価する手段として、幅広く認識されています。日本では、年間およそ200万人の英語学習者がTOEICを受験しています。さらに、企業の中には、採用プロセスや昇進の判断材料の一つとしてTOEICスコアを活用している例も少なくありません。
しかし、実際のところ、英語力の高さをアピールするには、どれくらいのTOEICスコアを取得すればよいのでしょうか。この記事では、TOEICのスコア帯別に期待される英語コミュニケーション能力の詳細や、スコアの分布状況などについて、試験の運営元であるIIBCのデータをもとに解説します。
TOEICスコア別・英語力到達度の目安
まずは、TOEICのスコア帯ごとに期待される英語スキルの詳細について、IIBCが公表している「PROFICIENCY SCALE|TOEICスコアとコミュニケーションレベルとの相関表」を参考にしながらみていきましょう。
TOEICスコア220点~
通常会話で最低限のコミュニケーションができる
TOEIC220点以上のスコアは、日常会話において最低限のコミュニケーションを取ることができるレベルです。
- 相手がゆっくりと話してくれたり、同じ内容を繰り返したり、別の言葉で説明してくれたりすれば、簡単な会話の内容を理解することができる
- 自分の身の回りの話題であれば、英語で応答をすることも可能
- 単語や文法、構文知識に関しては不十分な点が多くあるものの、相手が英語を母語としない人に対して特別な配慮をしてくれる場合には、お互いの意思を伝え合うことができる
TOEICスコア470点~
日常生活のニーズを充足し、限定された範囲内では業務上のコミュニケーションができる
TOEIC470点以上のレベルでは、基本的な英文法・構文に関する知識を活かし、日常会話だけでなく、ビジネスシーンにおいても一定のコミュニケーションが可能となります。
- 日常生活において会話の要点を把握し、必要な英語でのやりとりを問題なくこなせる
- 仕事上の限られた場面では、英語でのコミュニケーションが可能である
- 複雑な状況での対応や意思疎通には個人差がある
- 表現力には不足があるものの、自分の考えを伝えるのに必要な語彙力を身につけている
TOEICスコア730点~
どんな状況でも適切なコミュニケーションができる素地を備えている
TOEICスコア730点以上のレベルになると、あらゆる状況で適切なコミュニケーションを取るための英語の基礎能力を有しているといえます。
- 日常的な会話を完全に理解し、迅速に応答できる
- 業務上の英語コミュニケーションにおいて重大な問題は生じない
- 英語の正確性と流暢さには個人差がある
- 文法や文構造に誤りが見られることがあるが、意思疎通に支障をきたすほどではない
TOEICスコア860点~
Non-Nativeとして十分なコミュニケーションができる
TOEICスコア860点以上を取得すると、英語の非母語話者として、さまざまな場面で十分なレベルの英語コミュニケーション能力を有しているとみなされます。
- 自身の経験範囲内であれば、専門外の話題でも適切に理解し、的確に表現できる
- ネイティブスピーカーのレベルには完全には達していないが、それに近い英語能力を持つ
- 語彙、文法、文構造を正確に理解し、英語を流暢に使いこなす力がある
TOEICは何点取れたらすごい?
学習者が目指すべきTOEICスコアは、個人の目標や英語の使用目的によって異なります。「〇〇〇点以上が取れたらすごい」と一概に言えるような絶対的な基準はありませんが、取得スコアをもとに受験者全体の中での自らの立ち位置を把握することは可能です。
2023年度に日本で実施されたTOEIC L&Rの受験者数は、公開テストと団体受験を合わせて約170万人でした。平均スコアは612点で、ハイスコア取得者の割合は下記の通りとなっています。
- 745点~:8.2%
- 795点~:6.8%
- 845点~:5.0%
- 895点~:4.4%
※参照:IIBC|公式データ・資料 各テストの平均スコア・スコア分布・受験者数
グローバル企業や、英語講師などの語学を専門とする仕事の求人案件では、応募の際にTOEIC800点以上のスコア取得を基準ラインとして定めているケースが多くみられます。つまり、TOEICで800点程度のスコアが取得できれば、英語を日常的に使いながら仕事をするためのスキルが備わっているといえるでしょう。
TOEIC900点はどれくらいのレベル?
TOEIC900点以上のスコアは、高度な英語力を示す指標として広く認識されています。このレベルに到達した学習者には、具体的にどのような英語スキルが備わっているのでしょうか。
TOEIC Programの運営元であるIIBCは、TOEICスコアをもとに「どんなタスクができるのか」を示したCan Doリストを公開しています。リスニング、リーディングそれぞれで450点(合計900点以上)を取得した場合に「学習者ができること」として期待される具体的な項目は下記の通りです。
- 職場で発生した問題点について議論をしている同僚の話が理解できる
- CNN等のテレビニュースを聞き、内容(どこで何が起こったのか)を理解できる
- 自分の業務に関する議論の流れ、結論の理由が理解できる
- 自分の専門分野での発表やプレゼンテーションを聞いて理解できる ほか
- 自分の専門分野の高度な専門書を読んで理解できる
- TimeやNewsweekといった雑誌の記事を読んで内容を理解することができる
- 自社製品の販売に関する契約書類を読んで理解できる
- 同業他社のアニュアルレポートを読んで理解できる ほか
※出典:IIBC|TOEIC L&R参考情報 スコアに応じてできること Can Doガイド
このCan Doリストの内容から、TOEICスコア900点以上の取得者は、業界や職種ごとに専門性が求められるビジネスの場において、英語での情報収集や幅広いインプットを的確に処理するスキルが備わっているといえます。
リスニング・リーディングだけでない4技能評価の必要性
TOEIC L&Rテストは、日本で最も広く活用されている英語能力試験の一つです。しかし、TOEIC L&Rでのテスト科目はリスニングとリーディングの2技能のみであり、スピーキングとライティングスキルを測るには、別途TOEIC Speaking & Writing Tests(TOEIC S&W)を受験する必要があります。
実際の英語コミュニケーションでは、聞く・読む力だけでなく、話す・書くというアウトプットスキルも同様に重要です。TOEIC L&Rでハイスコアを取得できても、スピーキングやライティング面に大きな課題がある場合、実践的な英語コミュニケーションのシーンで困難に直面する可能性があります。
英語学習者は、TOEIC L&Rのスコア向上に注力するだけでなく、多様な学習メソッドや評価方法を取り入れることで、4技能をバランスよく伸ばし、より総合的な英語コミュニケーション能力を身につけられるでしょう。
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