なぜ英語が聴き取れないのか?第二言語習得研究から考える原因別のリスニング対策法

英語の4技能の中でも多くの日本人が苦手としているのは「スピーキング」と「リスニング」です。ネイティブとのコミュニケーションにおいて、聴いて理解できないことが書いてもらえば理解できたという経験を持つ方も少なくないでしょう。では、なぜ私たちは英語が聴き取れないのでしょう?

そこで今回は、英語を効率的に学ぶために知っておきたい第二言語習得研究から考える原因別のリスニング改善法をご紹介します。

  1. 第二言語習得から考えるリスニングのプロセスとは?
  2. リスニングができないとは?
  3. リスニングが聴けない原因別の対策法

第二言語習得から考えるリスニングのプロセスとは?

第二言語習得研究では、リスニングがどのような過程を経て習得されるのかというプロセスを以下の3つに大別しています。

  1. 音声知覚
  2. 意味理解
  3. 情報整理

「音声知覚」とは耳から入った音声を分析して「何を言っているのか」を知覚することを指し、「意味理解」とは聴き取った音声を自分の知識と照合して「どんな意味なのか」を理解することを指します。そして「情報整理」とは聴き取った情報を記憶し、新たな情報と組み合わせて理解できる段階のこと。この段階まで上達すれば、コミュニケーションはスムーズに行うことができます。

段階3までリスニング力を上げるには「音声知覚」と「意味理解」のプロセスが重要です。英語授業の読解を思い出してみてください。知っている単語や文法が多ければ多いほど、早く内容を理解できますよね。リスニングもこれと同じで、「何を言っているのか」が分かり、それが「どんな意味なのか」を瞬時に理解できれば、スムーズなコミュニケーションになるのです。日本人が苦手な技能である「スピーキング」と「リスニング」は音声を介するという点では似ていますが、スピーキングがアウトプットなのに対し、リスニングはインプットの作業になります。従って「リスニング」は「リーディング」の作業と非常に似ているのです。

ここで重要なポイントは、「音声知覚」と「意味理解」がワーキングメモリ内で競合していることです。ワーキングメモリとは一時的に情報を保持しながら処理する能力のことで、脳内のメモリ容量には限界があるという考えに基づいています。つまり、メモリの中には一定量の情報しかとどめておくことができないということです。リスニングで音声知覚にメモリを大量に使えば、意味理解に使うメモリが少なくなってしまいます。意味理解に十分なメモリを割くためには、音声知覚を高速化・自動化する必要があるでしょう。

リスニングができないとは?

一口に「リスニングができない」と言っても、その現象は人それぞれです。その現象を分類すると以下の3つが考えられます。

  1. 単語を知らないから聞けない(語彙力がなく聴いても読んでも理解できない状態。)
  2. 単語は知っているが音が聴き取れない(ある程度の語彙力はあるが、音を聴き取ることが困難な状態。カタカナ英語で覚えてしまっているのが原因。読めば分かる。)
  3. 音は聴けているが意味がとれていない(聴き取ることに集中しすぎて、音声知覚にメモリを多く使用し、意味理解が疎かになっている状態。ゆっくり聴けば分かる。)

上記を参考に、自分の「リスニングができない」という現象がどこに当てはまるのかを確認してみてください。自分の現象を知ることは、効率よくリスニング力を高めるために不可欠です。

リスニングが聴けない原因別の対策法

自分自身の「リスニングができない」現象がはっきりしたら、以下の対策法を試してみましょう。

原因1:単語を知らないから聞けない(読んでも分からない)

原因1の対策法は、シンプルに単語の勉強をすることです。単語・語彙力はリスニング力のベースです。知っている単語が多ければ多いほど容易に理解できるようになります。読んで分かるのはもちろん、聴いても分かるように音読しながら覚えましょう。

原因2:単語は知っているが音が聴き取れない(読めば分かる)

原因2の対策法は、発音の勉強です。単語を知っているにも関わらず聴き取れないということは、その単語の正しい発音を理解できていないのが一番の原因となります。正しい音韻が頭の中に記憶されていないため、音声を知覚した後に、その音を脳内に記憶された語彙と参照する際に時間がかかってしまう、あるいはうまく参照できない状態となります。正しい母音・子音の発音やアクセント・音声変化・イントネーションなどを重点的に学ぶようにしましょう。

原因3:音は聴けているが意味がとれていない(ゆっくり聞けば分かる)

原因3の対策法として効果的なトレーニングは、 シャドーイングです。音は聴けているものの、後から内容を尋ねられるとよく分からないという状態は、音声知覚はできているものの、そこに意識が集中してしまっているため、結果として意味理解に割くリソースが少なくなっているのが原因です。これは数字をリスニングするときなどにもよく起こります。発音、リエゾン、スピード、イントネーションなどを意識したシャドーイングをすることで、音声知覚を高速化・自動化することができるので、意味理解に十分なメモリを割けるようになります。

まとめ

いかがでしょうか。今回は、第二言語習得研究の観点から「なぜ英語の聴き取りができないのか」を探り、原因別のリスニング対策法をご紹介しました。より効率的にリスニング力を高めるためには、聴き取りができない原因を突き止めることが大切です。音の変化を聴き取ることから始まり、情報のまとまりを理解し、スピードや声の調子を意識した音読活動をすることで、段階的にリスニング力は高まっていきます。やった分だけ確実に身につくリスニング力。ぜひ実感してみてくださいね!

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reisuke

オーストラリア在住11年目。英語が最も苦手な教科でありながら英語を話すことに憧れ、海外生活を始める。コミュニケーションのツールとして英語を身につけ、現在では英語で夢を見るまでに。日本語教師として活動していることもあり、英語と日本語の文法の違いや国による英語の違い、言語と文化のつながりなどをライターとして発信中。

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