英語力を高めるためのトレーニングとしては「インプット」「アウトプット」の2つがあります。インプットとは、単語や文法の記憶やリーディング、リスニングなど英語による情報を頭に入れるトレーニングのことを指します。逆に「アウトプット」とは、ライティングやスピーキングなど、自ら持っている知識やスキルを使って発信するトレーニングのことを指します。
前回の記事では、インプットの重要性についてお伝えしましたが、今回はアウトプットのトレーニングの重要性についてもご紹介したいと思います。アウトプットは特に日本人に足りないトレーニングのため、大学受験での勉強などですでに十分なインプットがある英語学習者であれば、アウトプットのトレーニングを少しこなすだけでも大きく英語力を高めることができるようになります。
第二言語習得から考えるアウトプットの重要性
第二言語習得におけるアウトプットの重要性を唱える仮説として有名なのが、メリル・スウェイン氏による「アウトプット仮説」です。スウェインは、第二言語の習得においてはインプットのみが重要な役割を果たすと唱えたクラッシェンの「インプット仮説」に反論し、インプット自体の重要性は認めつつも、より第二言語習得の効率を高めるためにはアウトプットも重要であるという主張を展開ししました。今回は、このスウェインのアウトプット仮説も参考にしつつ、第二言語習得におけるアウトプットの役割を4つご紹介したいと思います。
- ギャップに気づくことができる
- 仮説を検証できる
- より細かい点に意識が向く
- 言語知識の自動化が進む
1. ギャップに気づくことができる
アウトプットが果たす1つ目の役割は、自分が伝えたいこと(Want)と、実際に英語で伝えられること(Can)との間のギャップに気づくことができるという点です。アウトプットの機会を得ることで、「これは英語でなんて言うのだろう?」ともどかしくなる機会が自然と増え、結果として新たなインプットが促進され、より注意深くインプットができるようになります。
2. 仮説を検証できる
アウトプットが果たす2つ目の役割は、自分自身の中間言語(第二言語を習得する過程の言語)が正しいのかを検証する機会が得られるという点です。例えば、相手から英語で話しかけられ、英語で返答するシーンを想像してみてください。もし自分のリスニング内容が間違っておらず、正しい発音で正しい返答をすることができれば、その英語は相手に正しく伝わり、スムーズに会話は続くはずです。逆に、自分の返答に対して相手が怪訝な顔をすれば、自分の発音や文法、単語選定などが間違っており、正しく意味が伝わらなかったことが分かります。このように、アウトプットを通じて自分の英語に対して相手からのフィードバックを得られることで、何が正しく伝わり、何が間違って伝わったのかを検証することができ、中間言語を修正する機会を得ることができます。
3. より細かい点に意識が向く
アウトプットが果たす3つ目の役割は、アウトプットの過程でインプット時には気づくことができなかった第二言語のより細かい規則や文法などに意識を向けることができるという点です。基本的にリスニングなどのインプットは意味を把握するための「意味処理」を促進するのに対し、アウトプットは意味処理に加えて文の構造なども含めた「統語処理」を促進する役割を果たします。例えば、何も意識せずスムーズにリスニングできる英文も、いざ自分でスピーキングしようと思うと、ここに「the」を入れるべきか、複数形にしたほうがよいのか、過去形でいうべきか現在完了で言うべきか、迷ってしまうことがあります。このようにアウトプットにおいては、文の意味だけではなく構造まで含めたより細かい点に意識を向ける必要があるため、結果としてより深いレベルの理解が促進されます。
4. 言語知識の自動化が進む
アウトプットが果たす4つ目の役割は、アウトプットのトレーニングを通じて、第二言語知識の自動化が促進されるという点です。最初はゆっくりと意識して考えなければ組み立てることができなかった英文も、何度もアウトプットのトレーニングを繰り返すことで、いずれは自動的に口に出すことができるようになります。このように意識的処理から無意識的処理へと移行することで、人は思ったことをほぼ瞬時にアウトプットすることができるようになります。
アウトプットによる効率的な英語学習法
上記で説明したように、アウトプットは第二言語習得において多くの重要な役割を果たしています。それでは、具体的にアウトプットのトレーニングを行うときは、どのような点に注意すればよいのでしょうか。第二言語習得の観点から、効果的にアウトプットの力を高めるためのポイントを5つご紹介したいと思います。
- アウトプット機会を増やす
- ギャップを把握したらインプットにつなげる
- フィードバックがある環境でトレーニングする
- 回避しているかどうかを意識する
- 自動化できるまで繰り返す
1. アウトプット機会を増やす
アウトプットのトレーニングにおいて重要なのは、とにかくその量を増やすことです。特に日本においては仕事で英語を使っている方を除けば、英語を日常的にアウトプットできる機会は非常に限られています。オンライン英会話を利用する、英語で日記を書く、友人とのチャットを英語にする、など、日常的に英語をアウトプットする環境を用意することが前提となります。また、定期的に英語圏へと海外旅行に出かけるのもおすすめです。
2. ギャップを把握したらインプットにつなげる
スピーキングやライティングの練習をしていると、必ず「これ、英語でなんて言うのだろう?」「この英語で正しいのかな?」といった疑問が出てきます。こうした疑問は、正しいインプットを増やす絶好の機会となります。疑問が出てきたときにそのまま放置していると、せっかくのインプットの機会を逃してしまい、アウトプットの力は高まりません。自分が「伝えたいこと」と「伝えられること」との間に少しでもギャップを感じたら、その都度メモをとるなどして後からでもよいのでしっかりとその表現をインプットできるよう習慣化しましょう。
3. フィードバックがある環境でトレーニングする
英語のライティングやスピーキングにおいては、間違った発音や単語、文法の選択をしたとしても意味だけは正しく相手に伝わることがよくあります。しかし、意味が伝わったからといって間違った英語を何度も話していると、誤った言語規則を習得してしまう「化石化」という現象が起こります。この化石化が起こると、誤りを正すのに長い時間がかかってしまいます。そのため、アウトプットのトレーニングをするときは、できるかぎり相手からフィードバックがもらえる環境で行うようにしましょう。例えばオンライン英会話であれば、間違った発音や単語の使い方をしたときはその場で指摘してもらうようにするなど、アウトプットの量だけではなく質にも意識を向けたトレーニングを行うことが重要です。
4. 回避しているかどうかを意識する
自分が伝えたいことを、自分が十分に運用できる知識だけでアウトプットしようとする傾向があることを「回避」と呼びます。例えば、本当は伝えたい内容が10あるにも関わらず、英文が思い浮かばないので5だけで伝えるのをやめてしまうといった行動もそうですし、自分の意図に100%合致する単語が分からないので、多少意図と違っていても、自分がよく使う簡易な表現だけを用いて伝えるといった行動です。難しい内容を簡単な英語に置き換えてアウトプットすることができる能力自体は評価されるべきですが、この回避が頻繁に起こっていると、いつも使い慣れている同じような表現ばかりに頼ってしまい、なかなか新しい語彙や表現の幅を増やすことができません。アウトプットをするときは、ついつい「回避」をしてしまっていないか、客観的に自分のスピーキングやライティングを意識するようにしましょう。
5. 自動化できるまで繰り返す
アウトプットのトレーニングにおいて重要なことは、とにかくアウトプットを「自動化」できるまで繰り返し練習するということです。どのような英文を話そうかを頭で考えたりしなくても自然と口から言葉が出るようになれば、その表現は身についたと言えます。自動化のトレーニングは、車の運転や楽器の練習と同じで、繰り返しあるのみです。
まとめ
いかがでしょうか?英語学習におけるアウトプットの重要性がお分かりいただけるのではないかと思います。これまで日本ではアウトプットのトレーニングを十分に行える環境がありませんでしたが、最近ではリーズナブルな価格で毎日英会話ができるオンライン英会話や、気軽に英会話を楽しめる英会話カフェなど、アウトプットに使えるサービスが増えてきています。ぜひ上記の点を意識しながらアウトプットの機会を増やしていきましょう。
English Hub 編集部
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