不妊治療で退職する前に、社内の制度を自分で探す手順

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通院の日が直前まで決まらない。朝の採血のために遅刻し、注射のために早退する。有給は尽き、上司への説明も毎回しどろもどろになる。治療と仕事のどちらかを選べと言われている気がしてくる。

この記事では、不妊治療を続けながら働くために使える仕組みを、公的資料にもとづいて整理します。先に書いておくと、厚生労働省が「不妊治療連絡カード」という様式を用意していて、治療中であることを会社に伝えたり会社の制度を利用したりするときに使えます。手ぶらで相談する必要はありません。

記載内容は2026年10月時点で、末尾に挙げた公的機関の資料にもとづいています。治療の内容やスケジュールについては主治医に確認してください。

結論:連絡カードを使い、会社の制度を引き出す

  1. 厚生労働省が不妊治療連絡カードという様式を用意している。Word版とPDF版がある
  2. 治療中であることを伝えるときや、会社独自の制度を利用するときに使う
  3. 不妊治療に使える制度を整えた企業を認定する「くるみんプラス」という仕組みがある
  4. 認定基準に挙げられている措置が、そのまま「会社に求められる形の一覧」になる
  5. 中小企業向けには両立支援等助成金があり、会社側にも整える動機がある

不妊治療連絡カードとは何か

厚生労働省の案内によれば、不妊治療連絡カードは「不妊治療を受けている従業員等が、企業側に、不妊治療中である事を伝える際や、企業独自の制度等を利用する際に使用する等、仕事と不妊治療との両立を行う従業員と企業の方をつなぐツール」とされています。

Word版とPDF版が用意されており、【連絡事項】欄の記載例とリーフレットも公開されています。

  • 厚生労働省のサイトからカードを入手する
  • 主治医に記入を依頼する。治療の予定や必要な配慮を書いてもらう
  • 会社(人事または上司)に提出する
  • 会社の制度のうち、どれを使えるかを確認する

この様式が効くのは、「言いにくいことを口頭で説明する」という負担を、書面に置き換えられる点です。詳細を自分の言葉で説明しなくても、必要な情報が伝わります。

会社に求められる措置の一覧

どんな配慮を求めればよいか分からない、という場面があります。ここで使えるのが「くるみんプラス」の認定基準です。

厚生労働省の案内によれば、くるみんプラスは次世代育成支援対策推進法に基づく「くるみん」等の認定を受けた企業が、不妊治療と仕事の両立にも取り組み基準を満たすと認定されるものです。3種類のくるみんそれぞれに「プラス」が付き、くるみんプラス、プラチナくるみんプラス、トライくるみんプラスと呼ばれます。

主な認定基準として挙げられているのが次の内容です。

基準 内容
休暇制度と働き方の措置 不妊治療のための休暇制度(年次有給休暇を除く)を設けたうえで、半日または時間単位の年次有給休暇、所定外労働の制限、時差出勤、フレックスタイム制、短時間勤務、テレワークのいずれかを不妊治療に利用できるようにすること
方針の周知 不妊治療と仕事の両立推進の方針を示し、措置内容とともに労働者へ周知すること
理解の促進 両立に関する研修などで労働者の理解を促進すること
担当者の選任 不妊治療と仕事の両立に関する相談に応じるための担当者(両立支援担当者)を選任し、労働者に周知していること

一つ目の列挙が、そのまま相談の材料になります。「半日または時間単位の年次有給休暇、所定外労働の制限、時差出勤、フレックスタイム制、短時間勤務、テレワークのうち、どれが使えますか」と聞けばよいということです。

四つ目も確認する価値があります。両立支援担当者が置かれている会社なら、上司を飛ばしてそこに相談できます。

治療のスケジュールと仕事の噛み合わせ

不妊治療の難しさは、通院の日が直前にしか決まらないことです。そこを前提にした設計にしてください。

  • 通院が集中する時期と、比較的落ち着く時期を主治医に確認する
  • 「月に何回、朝の何時までに受診が必要」という形で頻度と時間帯を整理する
  • 直前にしか日程が決まらないことを、あらかじめ会社に伝えておく
  • 急に抜けても業務が止まらない共有の形を作っておく
  • 半日や時間単位の休暇が使えるかを確認する。丸一日の有給では持たない

3つ目を先に伝えておくことが重要です。「明日の朝、抜けます」という連絡が毎回突然に見えると、信頼の問題として受け止められます。先に「このような性質の治療である」と共有しておけば、個別の連絡が予定通りの出来事になります。

会社側にも整える動機がある

厚生労働省の案内によれば、両立支援等助成金(不妊治療及び女性の健康課題対応両立支援コース)は中小企業事業主を対象とし、不妊治療に加えて月経・更年期症状への休暇制度等を利用しやすくする環境整備に取り組み、当該休暇制度等を労働者に合計5日(回)以上利用させた中小企業事業主を支援する助成金とされています。

つまり、制度を作って実際に使わせることが会社にとっての要件になっています。中小企業に勤めている場合、この助成金の存在を伝えることが制度整備の後押しになる場合があります。

辞める判断をする前に

治療は期間が読めません。だからこそ、辞める判断の前に確認しておきたいことがあります。

確認すること なぜ必要か
会社の休暇制度 不妊治療のための休暇制度があるか。年次有給休暇とは別に設けている会社がある
時間単位・半日単位の有給 制度があるかどうかで、持ちこたえられる期間が変わる
テレワークと時差出勤 朝の受診の後に出社する形が取れるか
短時間勤務 収入は下がるが、辞めるより選択肢が残る
休職制度 治療に専念する期間を取り、在籍を保てるか
両立支援担当者 置かれているなら、相談の窓口になる

5つ目は見落とされがちです。辞めるのではなく一定期間休む形が取れるなら、在籍と健康保険の資格を保ったまま治療に集中できます。

働き方そのものを変える選択

通院の予定が読めない状態が続くなら、時間と場所の自由度が高い働き方を検討する余地があります。

オンラインで完結しやすい仕事として、Webデザイン、ライティング、動画編集、Webマーケティング、オンラインアシスタントなどがあります。朝の受診のあとに自宅で作業を始められる形は、直前に日程が決まる治療と噛み合います。

学び始めてすぐに収入になるものではないため、まだ働けている時期に基礎を作っておくのが現実的です。学ぶ場としては、オンラインで複数の分野を横断して学べるスクールがあります。SHElikesは、Webデザインやライティング、マーケティングなどのコースを定額で受講できる形になっているため、どの方向が自分に合うか決めきれていない段階でも始めやすい設計です。

よくある質問

治療中であることを会社に伝えたくありません

伝える範囲は自分で決められます。不妊治療連絡カードは、詳細を自分の言葉で説明せずに必要な情報を伝えるための様式です。両立支援担当者が置かれている会社なら、上司を飛ばしてそこに相談する方法もあります。

どんな配慮を求めればよいか分かりません

くるみんプラスの認定基準に、半日または時間単位の年次有給休暇、所定外労働の制限、時差出勤、フレックスタイム制、短時間勤務、テレワークが挙げられています。このうちどれが使えるかを会社に聞いてください。

有給が尽きてしまいます

不妊治療のための休暇制度を年次有給休暇とは別に設けている会社があります。また、半日単位や時間単位の年次有給休暇が使えるかを確認してください。丸一日の有給を使い続ける形では持ちません。

通院の日が直前にしか決まりません

そういう性質の治療であることを、あらかじめ会社に伝えておいてください。先に共有しておけば、個別の連絡が突然の出来事に見えなくなります。急な抜けでも業務が止まらない共有の形も作っておいてください。

辞めるしかないと思っています

休職制度があるかを確認してください。辞めるのではなく一定期間休む形が取れるなら、在籍と健康保険の資格を保ったまま治療に集中できます。

まとめ

不妊治療を続けながら働くとき、まず使えるのは厚生労働省の不妊治療連絡カードです。治療中であることを伝えるときや、会社独自の制度を利用するときに使う様式で、Word版とPDF版が公開されています。言いにくいことを口頭で説明する負担を、書面に置き換えられます。

どんな配慮を求めればよいか分からない場合は、くるみんプラスの認定基準が一覧として使えます。半日または時間単位の年次有給休暇、所定外労働の制限、時差出勤、フレックスタイム制、短時間勤務、テレワーク。このうちどれが使えるかを聞いてください。両立支援担当者が置かれているなら、そこが相談窓口になります。

通院の日が直前にしか決まらないという性質は、先に会社に共有しておいてください。それだけで、個別の連絡の受け止められ方が変わります。

中小企業には両立支援等助成金があり、休暇制度等を労働者に合計5日(回)以上利用させた事業主を支援する仕組みになっています。制度を作って実際に使わせることが要件であるため、会社側にも整える動機があります。辞める前に、休職制度の有無まで確認してください。

この記事で参照した資料

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