アメリカやイギリスなどの人からも「ニュージーランドの英語はわかりにくい」と言われるほど、独特な発音やスラングがあるニュージーランド英語。隣国オーストラリアの英語もアメリカやイギリスの英語とは異なりますが、ニュージーランド英語はオーストラリア英語とも異なります。
オーストラリア英語が「オージー・イングリッシュ」と呼ばれるのに対し、ニュージーランド英語が「キーウィ・イングリッシュ(Kiwi English)」と呼ばれるのをご存知ですか?「キーウィ」はニュージーランド固有の鳥で国を象徴する国鳥でもありますが、ニュージーランド人の愛称でもあります。キーウィが話す英語ということで、このように呼ばれるようになったのでしょう。
今回は、「キーウィ・イングリッシュ」の特徴と魅力について解説します。
ニュージーランド英語の歴史
1770年にオーストラリアに上陸したスコットランド人の探検家キャプテン・クックは、オーストラリアに到達する前にニュージーランドを訪れていたそうです。その当時、ニュージーランドにはすでに原住民族マリオが生活しており、「Aotearoa(アオテアロア)」と呼ばれていました。オーストラリアは囚人流刑地として早くからイギリス人の入植が進みましたが、ニュージーランドは1840年にイギリス政府とマリオ族との間で条約が結ばれ、公式にイギリスに併合されてから本格的な入植が始まっています。このような歴史からもわかるように、ニュージーランドで英語が使われるようになったのは19世紀半ばからです。イギリス人の入植により確立された英語であり、母語としては世界で最も新しい英語と位置づけられています。
ニュージーランド英語の特徴は、公用語の1つであるマリオ語の影響を受けていることです。マリオ語からの借用語が多く、特に動植物の呼び名はマリオ語が使われています。ニュージーランドの国鳥である「キーウィ」がその代表例で、マリオ語の呼び名がそのまま英語としても使われるようになりました。これはオーストラリアの原住民族アボリジニの呼び名がそのまま残った「コアラ」や「カンガルー」などと同様です。
現在では、ニュージーランド全土で均一の英語が使われていますが、スコットランドからの入植者が多かった南島南部には、スコットランド特有の語彙や発音が残っています。一方、北島北部に位置するニュージーランド最大の都市オークランドでは、多民族で構成される環境などの影響もあり、個人による訛りの変容も見られます。
ニュージーランド英語の綴り
ニュージーランド英語はイギリス英語をベースとしているため、綴りもイギリスと同じです。アメリカ英語と比較すると、「-or」が「-our」、「-ter」が「-tre」、「-ize 」が「-ise」、「-yze」が「-yse」、「-ense」が「-ence」に変化します。ニュージーランド英語とアメリカ英語の違いと言うより、イギリス英語とアメリカ英語の違いですが、参考までに例を示しておきます。
アメリカ英語 | ニュージーランド英語 | 意味 |
labor | labour | 労働 |
harbor | harbour | 港・ハーバー |
theater | theatre | 劇場 |
liter | litre | リットル/体積 |
organize | organise | 組織する |
recognize | recognise | 認める |
analyze | analyse | 分析する |
license | licence | 免許 |
defense | defence | 防衛・ディフェンス |
ニュージーランド英語の発音
イギリス英語をベースとするニュージーランド英語ですが、発音は独自に発展しており、アメリカ英語はもちろん、イギリス英語、オーストラリア英語とも異なります。以下がニュージーランド英語の発音の特徴です。
/e/ が /i/ になる
- egg:エッグ → イッグ
- yes:イエス → イィス
- festival:フェスティヴァル → フィスティヴァル
- pen:ペン → ピン
- ten:テン → ティン
/i/ が /ə/ になる
- hit:ヒット → フット
- fish:フィッシュ → フッシュ
- chips:チップス → チュップス
- six:シックス → スックス
/æ/ が /e/ になる
- bad:バッド → ベッド
- accident:アクシデント → エクスィドゥント
- cat:キャット → ケット
- that:ザット → ゼット
/ei/ が /ai/ になる
- today:トゥデイ → トゥダイ
- rain:レイン → ライン
- name:ネイム → ナイム
- reservation:リザヴェイション → リザヴァイション
- Okey:オーケイ → オーカイ
/ai/ が /ɔi/ になる
- I:アイ → オイ
- nine:ナイン → ノイン
- five:ファイヴ → フォイヴ
/eə/ と /iə/ が同音異義語になる
- hair と here (ヒア)
- beer と bear (ビア)
- really と rarely (リァリ)
マリオ語からの借用語がある
- さつまいも:kumara (クマラ)
- アワビ:paua (パウア)
- ウニ:kina (キナ)
- ホキ:hoki (ホキ)
「R」の巻き舌がない
イギリス英語と同様に「R」の発音が消える「non-rhotic」なので、アメリカ英語のように「R」を巻き舌で発音する「rhotic」とは異なり、日本人には発音しやすいのが特徴です。
単語を省略する
- afternoon → Arvo(アーヴォ)
- flat coffee → Flatty(フラッティ)
- BBQ(バーベキュー)→ barbie(バービー)
- brother → Bro(ブロ)「男友達」という意味
ニュージーランド英語とアメリカ英語・イギリス英語との違い
ニュージーランド英語とイギリス英語は綴りがほぼ同じですが、違う単語を使う場合もあります。また、発音に関してはすでにニュージーランド英語の特徴を解説しましたので、ここではアメリカ英語とイギリス英語の違いの解説とします。
使用単語の違い
日本語 | アメリカ英語 | イギリス英語 | ニュージーランド英語 |
ガソリン | gas | petrol | petrol |
市街地 | downtown | city centre | city centre |
炭酸飲料 | soda | fizzy drink | fizzy drink |
テイクアウト | take out | take away | take away |
ビーチサンダル | thongs | flip-flops | jandals |
ハイキング | hiking | trekking | tramping |
水着 | swimsuit | swimming costume | togs |
薬局 | drugstore | chemist / pharmacy | chemist |
ズッキーニ | zucchini | courgette | courgette |
「T」の発音の違い
アメリカ英語では「T」の発音が「d」や「r」のような音になりますが、イギリス・ニュージーランド英語では「t」の音になります。
単語例 | アメリカ英語 | イギリス・ニュージーランド英語 |
water | ウァーラァー | ウォーター |
letter | レラ-/レダ- | レター |
「CA」の発音の違い
アメリカ英語ではcaの発音は「キャ」ですが、イギリス・ニュージーランド英語では「カ」になります。
単語例 | アメリカ英語 | イギリス・ニュージーランド英語 |
castle | キャッスル | カッスル |
can’t | キャーント | カーント |
アクセントの違い
太文字にアクセントがあります。
単語例 | アメリカ英語 | イギリス・ニュージーランド英語 |
garage | ga-rage | ga-rage |
address | add-ress | ad-dress |
perfume | per-fume | pre-fume |
ニュージーランド独特の表現
- Kia Ora:マリオ語でHelloの意味。「キア・オラ」と聞こえる。
- Cheers/ Ta:Thanksを意味するスラング。「チアーズ」「タ」と発音する。
- Chur:Thanksの意味だけでなく、Hi! Cool! I agree… のような意味もある。
「チャー」と聞こえる。目上の人には使わないように! - Cheerio:Goodbyeの意味。「チアリオ」あるいは「チェリオ」と聞こえる。
「Ta」と「Cheerio」は北欧由来の言葉。 - eh?:付加疑問文の文末「~isn’t it?」や「~right?」のような役割。
「~だよね?」という意味で「エイ?」と聞こえる。 - Yeah…nah:Yeahで同意したすぐ後に、「ちょっと待てよ、違うかも」と感じたときにNahで否定。「イエィ…ナァー」と聞こえる。
ニュージーランド英語は訛っているのか?
ニュージーランド英語は「訛っていてわかりにくい」と言われ、アメリカ英語はもちろん、ベースであるイギリス英語、隣国のオーストラリア英語とも異なります。しかし、それは「訛り」なのでしょうか?アメリカ英語を標準とすれば、ニュージーランド英語は訛っているのかもしれません。しかし、ニュージーランド英語を標準とする人にとっては、他の英語が訛っているように聞こえるのではないでしょうか。つまり、世界にはいろいろな英語が存在し、国や地域による「訛り」はそれぞれの「違い」に過ぎないということです。
ニュージーランド英語の発音は非常にユニークですが、それはマリオ語の影響を受けたことや多民族国家になったことが深くかかわっています。もちろん、イギリス併合による文化の流入や恵まれた自然なども影響を及ぼしたでしょう。このように文化的・社会的・環境的要素が複雑に絡み合いながらニュージーランド英語は発展し、そこから「違い」が生まれたのです。そしてこの「違い」がニュージーランド英語の魅力であり、面白さでもあります。穏やかなキーウィに囲まれながら、ニュージーランド英語の魅力であるユニークな発音を楽しんでみてはどうでしょう。
まとめ
独特な発音であることから、「ニュージーランド英語ってどうなの?」と感じる方もいるかも知れませんが、学校で習うアメリカ英語が正しい英語あるいは標準英語というわけではありません。ただ単に「聞き慣れている」というだけのことです。世界にはいろいろな英語が存在し、そこに優劣はありません。留学先選びで大切なのは、楽しみながら英語を学べる国かどうかということ。なぜなら、語学習得には精神的な要素が大きくかかわるからです。「どんな英語なのか」に焦点を当てる前に、どのような人に囲まれながら留学期間を過ごし、どのようなことをしてみたいのかに焦点を当てて留学先の候補を考えてみてはどうでしょう。
心地いい距離感を保ちながらフレンドリーに接する人が多いニュージーランドは、日本人にとって居心地がいい国です。大自然と都会の融合も魅力的。落ち着いた環境でじっくり英語学習をしたい方におすすめの国です。
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ニュージーランド留学におすすめの語学留学プログラム
ニュージーランドに語学学校のある語学留学プログラムをご紹介します。
首都オークランドで英語を学ぶ「EFの語学留学プログラム」
EFの語学留学は、創業以来50年の実績を誇り、海外留学、語学教育、学習研究、文化交流などの事業をグローバルに手掛けるイー・エフ・エデュケーション・ファーストの直営語学学校へ留学できるプログラムです。世界22ヵ国に広がるEFの語学学校には100カ国以上から生徒が集まり、インターナショナルな環境で語学力を磨けます。授業外でもイベントやアクティビティなど、留学仲間との交流の場がたくさん用意されています。留学エージェントを通しての留学ではなく、プログラム運営機関の直営校で学ぶ大きなメリットは、希望、目的に応じて渡航先や期間、カリキュラムなど、留学プランをフレキシブルにオーダーメイドできる点。また仲介費等は一切かからず、国内留学カウンセラーと現地スタッフの円滑な連携によるサポートを受けられます。
カプランオークランド校で学ぼう!「Kaplan(カプラン)の語学留学プログラム」

1938年の創業以来80年以上にわたり、海外留学・語学教育・進学などの分野で世界各地の学習者を支えてきた『カプラン インターナショナル ランゲージ』。英語圏6ヵ国のほか欧州3ヵ国に広がる語学学校では、12歳~80代という幅広い年齢層の世界中からの留学生が年間5万人以上学んでいます。オリジナル教材に基づくレッスンと「使える英語」の実用を組み合わせた独自の学習メソッド「K+(ケープラス)」は、学習者のニーズに合わせて専門家チームによって開発されました。レッスンで使用する教材はオンライン学習ツールと連動しており、学んだトピックを授業外でも効率的に復習できます。課外アクティビティへの参加の機会も豊富で、留学期間を通じて英語のインプットからアウトプットまでを効果的に促してくれる環境です。調査では、生徒の97%が友達や家族にもカプランを薦めたいと回答。利用者満足度の高さがうかがえます。
ニュージーランド語学留学におすすめの留学エージェント
ニュージーランド留学におすすめの留学エージェントをご紹介しています。はじめてニュージーランド留学を検討されている方、ニュージーランド留学の情報収集をしたい方はぜひ参考にしてください。
顧客満足度No.1!従来の最大半額で留学が可能な「スマ留」

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国内最大級の留学・語学学校の総合サイト「School With」

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語学留学先を国別に見る

reisuke

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