英語で言いたいことが浮かばない?スピーキング力を左右する「概念化」はこう鍛える

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英語での会話中に、相手から「Why?」と理由を尋ねられて、上手く説明できずに困った経験はありませんか?「言いたいことはあるのに、英語にできない」という場合もあれば、「そもそも理由自体が思い浮かばない」というケースもあるでしょう。学習者を悩ませるこれらの現象には、スピーキング時の脳のプロセスである「概念化」が関係していることが考えられます。概念化のスキルを鍛えることは、素早く論理的に英語を話す上で非常に重要です。今回は、英語のスピーキング力に大きな影響を与える、概念化についてご紹介します。

概念化とは?


そもそも概念化とは何かについてみていきましょう。スピーキングのプロセスは、第二言語習得研究に基づき以下のように分類することができます。

  1. 概念化:言いたいことを思い浮かべる
  2. 文章化:単語や文法知識を用いて文章を作る
  3. 音声化:作った文章を声に出して発話する

スピーキング力を伸ばそうと考えた場合、プロセスの2つ目にあたる「文章化」にスポットが当たりがちです。しかし、実はその前段階である「概念化」も、文章化と同様に重要なプロセスです。なぜなら、言いたいことが明瞭でなければ、第二言語である英語で分かりやすい文章をつくることはできないからです。概念化のスキルを磨くことで、英語で文章化する際の負荷を減らすことができます。

日本人学習者が抱える「概念化」の課題

続いて、概念化に関して多くの日本人学習者が抱える課題をみていきましょう。

1. 言いたい内容を複雑な日本語で考えてしまう

1つ目の問題は、自分で英訳できるレベルを上回る複雑な日本語で概念化をしてしまう点です。日本語としてはそれほど難解な表現を使っているつもりはなくても、いざ英訳をしようとすると単語や表現がスムーズに出てこないということはしばしば起こります。言いたい内容を意識的にシンプルな日本語で考えることによって、英語での文章化がスムーズになります。

短期集中型の英語コーチングプログラム「PROGRIT(プログリット)」を運営する株式会社プログリット代表取締役社長の岡田祥吾氏は、著書『英語学習2.0』の中で概念化について以下のように述べています。

文章化の能力は、日本人がどれだけ努力しても、日本語の文章化力を超えることはむずかしいです。そうすると、概念化の時点でむずかしいことを考えていると、それに文章化の力が追いつかず、結局何も言えないということになってしまうのです。

言いたい内容を簡素化することに対して、抵抗を感じるという人も少なくないでしょう。「もっと細かなニュアンスまで伝えたいのに」と、もどかしい気持ちになるかもしれません。しかし、自分の考えを正確に伝えようとするあまり、何も言えないという状態になるよりは、要点だけであっても相手に伝わった方が、日常での多くのコミュニケーションは円滑にすすむでしょう。

岡田氏は、最終的には英語のまま概念化できるようになるのが望ましいという考えを示した上で、初級者から中級者は「シンプルな日本語」に置き換えて概念化をすることが、文章化する上で役立つと述べています。スピーキング力を上達させる過程では、文章化の前に、まずは自分の考えを明瞭で平易な日本語で思い浮かべることがポイントだと言えます。

2. 理由を説明すること自体に慣れていない

「Why?」と理由を聞かれてすぐに答えられない場合には、前述の「考えを英語に直すことができない」というパターンに加え、「日本語でも理由を答えられない(=思いつけない)」ということが考えられます。社会人や大学生に向けて学習法を配信する人気メディア「Study Hacker」での連載(※2017~2018年)でも知られる、「英語職人」こと時吉秀弥氏は、多くの日本人が理由を話すことを苦手とする原因は、日本語と英語の会話のパターンの違いにあると指摘します。

時吉氏が説明するように、日本語での会話は、しばしば共感や協調をベースに進められます。相手の発言に対して「分かる!」や「そうだよね、私も」のように反応することが、相手の意見への好意的な反応だとみなされます。一方、英語の会話では、相手の意見に対して「なぜそう思うの?」と理由を聞くことによって相手への興味を示すと時吉氏は説明します。日本語での会話中に「なぜ?」と聞かれると、場合によっては、自分の意見を否定されているように感じてしまうことさえあるでしょう。

英語の会話においては、日本語で会話をするとき以上に理由を聞かれることが多く、しかもそれは決して否定的な反応ではないという知識を頭に入れておくだけでも、急な質問を受けたときに困惑せずに対応できます。

概念化スキルを鍛える方法

これまで見てきたように、英語を話す上で「概念化」は文章化に関わる非常に重要なプロセスだと言えます。ここからは、概念化のスキルを鍛えるための方法についてみていきましょう。

英語で言えなかったことは、日本語から見直す


前述の岡田氏は『英語学習2.0』の中で、概念化を強化するトレーニングとしてオンライン英会話サービスを活用することをすすめています。岡田氏は、英会話のレッスンが終わった後に行うべきこととして、次のような方法を提案しています。

まずエクセル(Googleスプレッドシートでもよい)の列に、言いたかったが言えなかったことを記入します。次に1つ右の列に、それをシンプルな日本語に言い換えたものを記入します。最後にもう1つ右の列に、それを英訳したものを記入するのです。

上記のひと手間をレッスン後に加えることで、シンプルな日本語で概念化する力が身についていきます。また、題材が「自分が言いたかったが、言えなかったこと」である点も、学習に効果的だと言えるでしょう。

参考書に載っているような例文は、不特定多数の学習者に向けて書かれていることが多いため、抽象的な内容のものや、自分では実際に使う機会が無いと感じるものが少なくありません。結果として、様々な英語表現が紹介されていても、今ひとつ学ぶ意欲が沸かないと感じる学習者も多いのではないでしょうか。一方、「自分が言いたかったが言えなかったこと」であれば、うまく伝えられなかった悔しさがモチベーションに繋がります。また、今後同じ内容について英語で話す機会も、参考書の例文に比べ格段に多いでしょう。

英会話レッスンの時間内に話すだけでもアウトプットの練習にはなりますが、上記の学習法をプラスすることで、レッスンで得た学びを自分の中に蓄積していくことができます。既に英会話レッスンを受講している人も、これからトライしようとしている人も、取り入れる価値のある学習法と言えるでしょう。

意見と理由をセットで考える習慣をつける

前述のように、日本人の多くは理由を述べること自体にあまり慣れていません。衝突を好まず、空気を読むという文化の影響もあり、理由を明確に述べることに対して少し抵抗がある人もいるでしょう。理由を答えるのが苦手と感じる人におすすめしたいのが、日常で「好き」や「嫌い」という感情を抱いたときに、「なぜそれを好き(嫌い)と感じたのか?」と自問してみる方法です。対象は、通勤電車で目にした広告といった些細なものでも構いません。理由を常に意識する癖をつけることで、英語で理由を説明する場面でもアイディアが浮かびやすくなることを実感できるでしょう。

また、第二言語習得研究の知見を基にしたトレーニングで知られる「ENGLISH COMPANY(イングリッシュカンパニー)」でも、概念化は重視されています。ENGLISH COMPANYが英語上級者を対象に提供しているアウトプットコースでは、理由を瞬時に思いつく力を身につける方法の1つとして、「意見+理由」を2分間言い続けるというゲーム形式のトレーニングが取り入れられています。

「わざわざ理由を言わなくても、相手もなんとなく分かるだろう」という感覚を捨て、普段から理由を意識するように心がけることで、英語で理由を述べる際のハードルを減らすことができます。

まとめ

今回は、英語のスピーキング力アップに欠かせない概念化についてご紹介しました。「語彙や文法の知識はあるのに、スピーキングがどうしても苦手」と感じている人は、一度概念化の部分に課題がないか意識してみることをおすすめします。言いたい内容の日本語を見直してみることで、口から英語が出やすくなるのをきっと実感できるでしょう。

【参考書籍】『英語学習2.0』岡田 祥吾 著
【参照サイト】英語のパーソナルジム ENGLISH COMPANY

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English Hub 編集部

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