乳がんの治療後に仕事へ復帰するとき、元の働き方に一度で戻さない

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治療が一段落して、復職の話が出てきた。体力は戻りきっていない。通院と服薬は続く。元の部署に戻れるのか、同じ働き方ができるのか、誰とどう話せばよいのかが分からない。

この記事では、乳がんの治療後に復職するときの進め方を、国の指針にもとづいて整理します。先に書いておくと、治療と仕事の両立については国の指針があり、主治医と職場をつなぐための様式例まで用意されています。手探りで交渉する必要はありません。

記載内容は2026年10月時点で、末尾に挙げた公的機関の資料にもとづいています。治療や就業の可否については主治医の判断に従ってください。

結論:主治医・会社・自分の三者を、書面でつなぐ

  1. 治療と就業の両立支援について、国の指針(令和8年厚生労働省告示第28号)がある
  2. 指針には、職場復帰の可否等について主治医の意見を求める様式例が示されている
  3. 最初に「勤務情報を主治医に提供する」ステップがある。ここを飛ばすと噛み合わない
  4. 復帰は段階を踏む形にできる。両立支援プラン・職場復帰支援プランの作成例がある
  5. 傷病手当金は支給開始日から通算して1年6か月。復帰後に再び休んでも、復帰期間は算入されない

復職の前に整える順番

厚生労働省の案内によれば、2026年2月10日に「治療と就業の両立支援指針(令和8年厚生労働省告示第28号)」が定められています。指針には別添として、次のような様式例が示されています。

様式例 使う場面
勤務情報を主治医に提供する際の様式例 最初に使う。どんな業務をしているかを主治医に伝える
治療の状況や就業継続の可否等について主治医の意見を求める際の様式例 治療を続けながら働く場合に使う
職場復帰の可否等について主治医の意見を求める際の様式例 休業から戻るときに使う
治療と仕事の両立支援カード 支援の状況を整理する
両立支援プラン/職場復帰支援プランの作成例 いつまでに何をするかを計画の形にする

順番が大事です。多くの人は「復職できますか」と主治医に聞くところから始めますが、その前に自分の業務の内容を医師に渡す必要があります。医師は職場の実態を知らないため、業務内容が分からないまま可否だけを判断することはできません。

  1. 業務内容、勤務時間、残業の有無、通勤時間、立ち仕事や重量物の有無、出張の頻度を書き出す
  2. それを主治医に渡し、職場復帰の可否と必要な配慮について意見をもらう
  3. その意見を会社(人事、産業医、上司)に提出する
  4. 職場復帰支援プランを作る。段階的に戻す形を含めて検討する
  5. 決まった内容を書面で受け取り、見直しの時期を決める

復帰の形をどう設計するか

一度に元の働き方に戻す必要はありません。段階を踏む形を提案できます。

段階 内容の例
第1段階 短時間勤務から始める。通勤の負担が大きければ在宅を併用する
第2段階 勤務時間を延ばす。負荷の高い業務を少しずつ戻す
第3段階 通常勤務に戻す。残業や出張の扱いを個別に決める

各段階の期間と、次に進む判断の基準を決めておいてください。「体調を見ながら」だけだと、戻すタイミングの判断が毎回ゼロからの交渉になります。

会社と決めておきたいこと

  • 通院の頻度と時間帯。定期的に抜ける日をどう扱うか
  • 副作用が出やすい時期があるなら、その時期の業務配分
  • 重い物を持つ作業や、長時間の立ち仕事の扱い
  • 出張や泊まりを伴う業務の扱い
  • 体調が崩れた場合に、どこまで戻してよいか(再び短時間勤務にするなど)
  • プランの見直しの時期(例:1か月ごと)

5つ目を先に決めておくと、「せっかく戻したのに」という気兼ねなく調整できます。戻す方向だけでなく、下げる方向のルールも同時に決めておいてください。

収入の仕組みを押さえる

全国健康保険協会の案内によれば、傷病手当金は業務外の病気やけがで療養のため仕事を休んだ場合に支給されるもので、連続する3日間を含んで4日以上仕事に就けなかったときに、4日目以降の仕事に就けなかった日に対して支給されます。

  • 1日あたりの額は、支給開始日以前の継続した12か月間の各月の標準報酬月額の平均額を30で割った額の3分の2に相当する額
  • 支給される期間は、支給開始日から通算して1年6か月
  • 休んだ期間について給与の支払いがある場合は、支給が調整されることがある
  • 申請書には医師が記入する欄がある。受診時に依頼する

この「通算して1年6か月」が、がんの治療と復職の往復に効きます。一度復帰して、治療の都合で再び休むことになっても、復帰していた期間は1年6か月に算入されません。短時間勤務での復帰が早すぎたと分かったときに、戻る余地が残るということです。

相談できる窓口

  • 治療している医療機関のがん相談支援センター。就労に関する相談を受け付けている施設がある
  • 職場の産業医、保健師、人事。両立支援の窓口になる
  • 都道府県労働局や労働基準監督署。不利益な取扱いに関する相談
  • ハローワークの専門窓口。離職後の再就職について

1つ目は使われていないことが多い窓口です。治療のことだけでなく、仕事の相談もできる施設があります。通院している病院に設置されているか聞いてみてください。

働き方そのものを見直す場合

通院と体調の波が続く見込みなら、時間と場所の自由度が高い働き方を検討する余地があります。

オンラインで完結しやすい仕事として、Webデザイン、ライティング、動画編集、Webマーケティング、オンラインアシスタントなどがあります。通勤の負担がなく、調子のよい時間帯に作業を寄せられる点が、治療を続けながら働く状況と噛み合います。

ただし、復職直後は体力の回復と仕事の再開だけで手一杯になります。始めるとしても、生活が落ち着いてからで十分です。学ぶ場としては、オンラインで複数の分野を横断して学べるスクールがあります。SHElikesは、Webデザインやライティング、マーケティングなどのコースを定額で受講できる形になっているため、どの方向が自分に合うか決めきれていない段階でも始めやすい設計です。

よくある質問

主治医に復職の可否を聞いたら、曖昧な答えでした

業務の内容を伝えていない可能性があります。治療と就業の両立支援指針の別添にある「勤務情報を主治医に提供する際の様式例」を使って、業務内容、勤務時間、残業、通勤、立ち仕事や重量物の有無を先に渡してください。そのうえで意見を求めると、具体的な答えが返ってきます。

いきなり元の勤務に戻すのが不安です

段階を踏む形を提案できます。指針には両立支援プラン/職場復帰支援プランの作成例が示されています。各段階の期間と、次に進む判断の基準、そして体調が崩れた場合に戻すルールまで決めてください。

復帰したあとに再び休むことになったら

傷病手当金は支給開始日から通算して1年6か月です。復帰していた期間は算入されないため、再び休むことになっても残りの期間を使えます。

通院で定期的に抜けることを伝えづらいです

産業医や保健師が置かれている職場なら、そちらを入口にしてください。頻度と時間帯を数字で示し、その形なら業務が回るという案を一緒に出すと、調整の相談になります。

就労について相談できる場所はありますか

治療している医療機関にがん相談支援センターが設置されている場合、就労に関する相談を受け付けていることがあります。通院先に設置されているか聞いてみてください。

まとめ

乳がんの治療後に復職するとき、手探りで交渉する必要はありません。治療と就業の両立支援指針(令和8年厚生労働省告示第28号)に、主治医と職場をつなぐ様式例が示されています。

順番が大事です。最初に勤務情報を主治医に提供し、そのうえで職場復帰の可否と必要な配慮について意見をもらってください。業務の内容を伝えないまま可否を聞いても、具体的な答えは返ってきません。

復帰は段階を踏む形にできます。各段階の期間、次に進む判断の基準、そして体調が崩れた場合に戻すルールまで決めてください。下げる方向のルールを先に決めておくと、気兼ねなく調整できます。

傷病手当金は支給開始日から通算して1年6か月で、復帰していた期間は算入されません。早すぎた復帰だったと分かったときに戻る余地が残ります。通院先にがん相談支援センターがあれば、就労の相談ができる場合があります。

この記事で参照した資料

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