「英語学習は、辛いものだ」。そんな風に思っている方は、案外多いのではないでしょうか?しかし、継続することがなによりも大切な英語学習においては、「楽しむこと」が上達の秘訣です。
そんな「楽しく継続できる英語」を提供している人がいます。それが、生きた英語をPodcastやYouTubeを通して伝えている「HAPA英会話」のセニサック淳さんです。教科書では学べない実践的な英会話から、文化を取り入れた多くの表現、知識、ローカル情報を学ぶことができます。
2014年2月にスタートしたHAPA英会話のPodcastは今年で4年目を迎え、10月には2,000万ダウンロードを突破しました。iTunes Japanの『Best of 2014/2015/2017』に選出され、Podcastランキング1位を誇る大人気番組となっています。
今回English Hub編集部では、今や英語学習者から絶大な人気を誇るHAPA英会話の運営責任者であるセニサック淳さんに、創設秘話や他の英会話スクールにはない、HAPA英会話ならではの特徴をお伺いしてきました!
母親が日本人、父親がアメリカ人のロサンゼルス生まれ育ちのハーフ。幼い時期から両文化で育ち、日米双方の教育を受ける。カリフォルニア州にあるUC Santa Barbara大学を卒業し、交換留学で一年間、一橋大学で大学生活を送る。その後、石川県内灘町役場で国際交流員として赴任し、2年間の勤務を経て、ロサンゼルスへ帰国、2011年に英会話学校「BYB English Center」をアーバインで開校。現在は英語学習サイト「HAPA英会話」を運営している。
インタビュー目次
1. セニサック淳さんって、どんな人?
「僕は日本人?それとも、アメリカ人?」葛藤があった幼少期
僕はロサンゼルスで生まれ育ちました。父がアメリカ人、母が日本人のハーフです。言語に関していえば、父は英語、母は日本語を話していたので、子供の頃は英語と日本語の区別がありませんでした。そんな中、僕が4歳のときに、父が僕を日本人学校に入れようと言い出したのです。
父は、おばあちゃんに罪悪感を感じていたのだと思います。一人っ子の母をアメリカに連れて行ったので、おばあちゃんはずっと一人で日本に住んでいました。「今後はおばあちゃんとも日本語でコミュニケーションをとってほしい」。そんな父の想いで、僕は幼稚園からアメリカの日本語学校に通い始めました。
しかし、当時の僕は教育面でいうと英語の方が強く、日本語がおかしかったのと外見もハーフだったので、いじめの対象になりました。それで最初は苦労しましたが、気づいたら1年後には話し方やジェスチャーだけではなく、読む漫画なども日本人の子供と同じになっていました。
そうして、僕がすっかり日本人になっていた小学校4年生のとき、両親は僕をアメリカンスクールに転校させることを決意しました。当時は周りの友達はみんな日本人だったので、僕はほとんど英語を話せず、父との会話は母が通訳として入っているような状況でした。
そのため、転校の話を聞いたときは、かなり反発しました。「僕は日本人だ!」と。このとき、初めて両親に反発しましたね。しかし両親は、「とりあえず行ってみなさい。ダメだったら戻すから。」と僕を言いくるめました。まんまとその言葉に騙された僕は結局、アメリカンスクールへ転校することになりました。
中学生になり、日本人の淳からアメリカ人のJunへ
最初の1、2年は一般のアメリカ人の生徒さんたちには付いていけなかったので、ESLという英語を第二言語で学ぶ子供達の特別クラスで、中学生になるまで勉強しました。そして気づいたら自分の周りにはアメリカ人の友達がどんどん増えていました。
中学校でバスケットボールをやり始めて、土曜日は補習校で勉強していたのですが、バスケットボールの練習と学校が重なるので、「みんな遊んでいるのに、なぜ僕だけ勉強しないといけないの?」と両親に反発していました。今になって振り返ると、あのときやらせてもらってよかったと、両親には感謝していますけどね。
中学卒業後には日本語をまったく話さなくなり、当時の日本人の友達とも距離ができました。高校に入り、英語の変なアクセントも無くなってやっと一人のアメリカ人として認められるようになった僕は、日本語を話す自分をカッコ悪いと感じ、中学校を卒業してから大学へ入るまでの約6年間は日本語を話しませんでした。日本語を話すのは家での母親とのコミュニケーションのみだったので、大学に入ったときは日本語は話せないし、読むのも微妙なレベルでした。
しかし大学生になり、日本の大学に交換留学をしたときにすごいスピードで日本語が戻ってきました。バイリンガル教育をやっている親御さんがよく言うのが、子供の頃にしっかり語学をやっておけば頭のどこかに残っているので、思い出すのが早いということです。1年間で日本語能力も伸びましたし、「日本に住む」という僕にとって初めての経験で、日本人の学生と遊ぶ居心地の良さを感じ、また日本に住みたいという気持ちが芽生えました。
2. HAPA英会話は、偶然のアクシデントで生まれた
日本に住んで芽生えた、アメリカと日本の「架け橋になりたい」という想い
結局アメリカの大学を卒業して、石川県で国際交流員として働くことになりました。そこは外国人がいないような小さな町で、日本の昔ながらの風習が漂っていました。そこで僕は日本の良さや、東京では学べない日本の深い部分を学ばせてもらい、アメリカや日本の文化に対する興味が深まりました。そのときに、教えることを通して「架け橋になりたい」という気持ちが芽生えました。
両親が日本人向けのマンツーマンの英会話教室を経営していたこともあり、僕も10代の頃から英語の講師をしていて、このときから日本人に英語を教える楽しさを感じていました。それらの経験がきっかけとなり、自分の知識や幼少期に得た経験をもっと日本人に知ってもらいたいという想いで、まずは英会話学校をスタートしました。
もともとは英会話学校の生徒のためにつくった「HAPA英会話」
英会話学校を始めた数ヶ月間は、生徒さんが4、5人しかいなくて寂しかった上に、最初の生徒さんが朝8時に来て、最後の生徒さんが夜の10時に来ていたので、生徒さんが少ない中でもスクールに1日中いなければならないという大変なパターンでした。
そのため、空いた時間をどうするかと考えたときに、「インターネット」に興味を持ち始めました。時間を効率的に使わないといけないですし、生徒さんに教えている中で、みんな同じ悩みや同じミスをしたり、共通の質問があることに気づきました。毎回それを個別に教えるのも大変なので、最初は自分が作ったレッスンノートを「HAPA英会話」に掲載しました。HAPA英会話のブログは、今では多くの方に見てもらっていますが、もともとは生徒さんのためにつくったものだったのです。
生徒さんがレッスンが終わった後にHAPA英会話のサイトを見れば、復習としてレッスン内容を見れるというものでした。それをつくって何が起こったかというと、日本に住む日本人が、僕の英会話学校の生徒さんと同じ悩みをインターネットで検索し始めて、どんどん「HAPA英会話」の検索ランキングが上がっていったのです。
最初はすごい簡素だったものが、気づいたら日本にいる多くの人がHAPA英会話を見て勉強をしている状況になり、少しずつプレッシャーを感じ始めました。これを機に、「多くの人に変な英語を教えてしまったら大変だからちゃんとしたノートをつくらなければ!」と思い始めたのがHAPA英会話の始まりで、割とアクシデントなできごとでした。
3. HAPA英会話で教えているのは、人との距離を縮める生きた英語
教科書の英語ではなく、リアルな英語を教えたい
ロサンゼルスで英語を学ぶ駐在員さんにはエリートが多く、TOEICのスコアは最低でも600点から700点は持っているような人たちです。そのようなある程度の英語力がある人たちが、「仕事の場ではあまり困らないのに、スターバックスやマクドナルドに行ったときに店員さんが話す英語がまったく理解できなくて、ショックを受けた」と英会話学校に来るんですよね。
なぜかというと、教材の英語はきれいな英語なので理解しやすいのですが、実際にアメリカに来ると現地の若いアルバイトの子が話す、砕けた英語が多いので聞き取れないということが起こるからです。そのような悩みを解決するために、ネイティブの先生同士の会話を2分程度録音し、それをレッスンで使ったところ、生きた英語を学べるという点で生徒さんたちの反応が良くて、それを英会話のレッスンで使い始めました。
アメリカにすでに住む人だけでなく、日本にいる人にもアメリカに来る前に英語への理解を深めてもらい、実際にアメリカに来たときのショックやギャップを少なくしたいという想いがHAPA英会話にはあります。
せっかくアメリカに来てアメリカ人と話すのであれば、「アメリカ長いの?」「こいつは何者だ?」と、不思議に思われるくらいの自然な英語やスラングを話せるほうが、彼らとの距離を縮められると思うんですよね。自然な英語が、現地の人と仲良くなるきっかけになるんです。
日本とアメリカ両方の感覚を持つ「HAPA英会話」だからできること
僕が、HAPA英会話でしかできないと思っていることがあります。他の英語学習媒体と大きく違う点は、僕が「ハーフで育ち、日本の教育もアメリカの教育も受けてきたということ」です。
ただ英語を教えているだけではないんですよね。日本人とアメリカ人の両方の立場や考え方から、アメリカ人が考えていることを日本人にわかりやすいように日本語で伝えることが、僕にはできます。どんなに優れている英語ネイティブの先生であっても、日本人が持つ独自の感覚を直訳するのは難しいですよね。日本人だからこそわかるような言葉もあります。そういった感覚の面で、僕は日本とアメリカ両方の言語や文化について、第三者の目線で教えることができます。そういったハーフならではの感覚的な部分を、HAPA英会話ではシェアしていきたいです。
4. 2,000万ダウンロードを突破したポッドキャストの裏側
ポッドキャストで届けたいのは英語だけではなく、「セニサック淳らしさ」
ポッドキャストは今年で4年目を迎え、2,000万ダウンロードを突破しました。ポッドキャストを始めた当初は、2分間で英語学習に関する内容のみの配信を考えていました。しかし、せっかくやるのであれば「僕自身も楽しみたい」という思いがありました。楽しくやらないと、続きませんしね。そこで、僕がポッドキャストで英語だけを教えてしまうと自分らしさを出すことができないと感じたんです。そのため、イントロ部分にはまったく英語学習の内容に関係ない、普段のアメリカでの生活や日常で話す英語をシェアしています。その部分は、どれだけ批判されたとしてもずっと続けようと思っています。
今振り返ってみると、ポッドキャストが自分の4年間の日記のようになっているんですよね。たまに過去のイントロ部分を聞くと、当時の考えや想いがよみがえり、昔の自分に戻った気持ちになります。面白いので、自分自身でも、やっていてよかったと感じています。
英語を話すのに大事なのは「ハート」
ポッドキャストでインタビューを始めたもう1つの理由は、「リスナーさんに共感を提供したい」ということでした。長い間、英会話学校の生徒さんや、HAPA英会話のユーザーの方々と話をしていて感じたのが、みんないずれは「英語を流暢に話したい」という想いがあり、僕のことを憧れの存在としてみている方が多いんです。
しかしそもそも、普通の日本人が経験する英語学習への苦労と、ハーフである僕がした苦労は違うんですよね。僕は日本人のみなさんが経験している苦労をしていないんです。だからこそ、僕が伝えられない「共感」をインタビューを通してリスナーの方々に伝えています。どんなにめちゃくちゃな英語でも、気にせずにどんどん話しかけるような人たちをポッドキャストに呼びたかったんですよね。
英語を話すのに大事なのは「ハート」です。「人が好き」や、「根性がある」ということが大切なのです。アメリカにいる日本人全員が英語を流暢に話せるわけではありません。今までの英語学習で苦労した点を、日本人の立場で聞いてみたかったんです。おそらく、共感できる人たちはたくさんいらっしゃると思います。日本人は、「まだ英語が話せないからアメリカにいけない」と考えてしまいがちですが、本当はそんなに壁は高くないんです。ハートさえあれば大丈夫なんだ、ということに気づいて欲しかったんです。
ポッドキャストのインタビューで初めて知った、1人の人間としての母の一面
今までのインタビューで1番好きな回は「第99回 母との対話」です。僕は家族とも仲が良く、コミュニケーションはよくとっているほうですが、自分の母と一人の人間として、今まで抱えてきた悩みや、結婚という深い部分まで話をしたのは、人生で初めてでした。あのエピソードは自分自身が歳を重ねた後にも、絶対にまた聴くと思っています。僕としても、母との記録に残る貴重な話ができましたし、今までの母の苦労を身をもって感じ、改めて両親には感謝の気持ちでいっぱいです。
5. プレミアムコースのリニューアルについて
アウトプットを増やしたプレミアムコースには、初の初心者コースも
HAPA英会話では、日々の努力を最大限に生かし、英語を話すことにおいて必要不可欠な能力・技術を着実に身につけるためのオンライン英会話を用意しています。当コースは、1週間ごとに学習テーマが設定されています。そして日々の課題は、受講者が自分自身の経験をもとに、学習したテーマについて英語で話せるようになることを目的に構成されています。
今回、その「プレミアムコース」をリニューアルしました。学んだことを使うまでは本当に理解しているかわからないので、ここではアウトプットを多めにしたかったのです。
中級者向けの教材は英語のみです。もしかしたら問題も読めないということが起こるかもしれませんが、わからなかったときに辞書を引いて欲しかったのです。コースの中の英語だけではなく、ちょっとした所から拾えるところがたくさんあると思うので、わからない単語を調べるときに和英ではなく、英英の辞書を使うなど、英語に触れる量を増やして欲しいです。また、以前までは中級者のみだったのですが、今回はHAPA英会話初の初級者のコースもスタートしたので、幅広く挑戦してくれることを願っています。
※2018年9月のプレミアムコースの募集は終了しています。次回の募集は2019年1月を予定しています。
6. HAPA英会話への想いと今後について
自分自身がパッションを持ち、教えることを楽しむ
僕は今、さまざまなコンテンツをつくっているので、YoutuberやPodcaster、ブロガーとも言われますが、本質的には、「先生」なんですよね。人と話をしながらパッションを持って人に教えること。自分の知識を教えることが、自分にとってやっていてよかったなあと思うことです。
HAPA英会話を始めた当初は幸い、英会話学校もやっていたので、そっちがメインで生計を立てていました。HAPA英会話は興味があってやっていたことだったので、数字は追いかけなかったんですよね。ただ自分がすごい好きなことで、生徒さんからの質問でこれを動画にしたら他の人にもためになることだというので、ただ自分が楽しんでいて、気づいたら他の人も一緒に勉強してくれるようになったので、それがすごく幸運でしたね。もし最初からお金を追ってコンテンツを作っていたら、今とは違う形になっていたかもしれません。
HAPA英会話として目指す方向性は・・・
昔のインターネットがなかった時代と比べると、今は本当に便利な時代になりましたよね。英語だけではなく、どこに住んでいてもいろいろな情報収集ができる時代です。
僕自身もYoutubeで先生をしていて感じたことなのですが、英語を教えるときには、誰しもが先生として正しい答えを言いがちなんですよね。だけどHAPA英会話では、ナチュラルな部分やリアルな部分を追求しているので、パッと聞かれたときに、普通ではない答えをすることがリアルな英語だと気づいたんです。
Youtubeの「How are you?」ビデオなんかも、「How are you?と聞かれたらなんと返しますか?」と聞かれたときに、通常であれば「I am good」とか「Great」だと思いますが、現地の人たちに実際に聞いてみたところ、「返事をしない」というのも一つの答えだということがわかったのです。Hapa英会話ではそういったリアルな英語を教えていきたいと思います。
そして、言語だけではないんですよね。アメリカの生活がうまくいっている方を見ていると、言語以上に「文化や価値観の理解」を大切にしています。今はネットでこういった情報が得られる時代なので、HAPA英会話としては「英会話」はもちろん、こういった「文化」ももっともっと学べるようにしていきたいと思っています。アメリカ人が実際にどう思っているか、とか、フィーリングの部分をもっと発信していって理解してもらいたいです。
人と人を繋つなげてくれる「英語」を、もっと多くの人に届けたい
このあいだInstagramで生徒さんに「なぜ英語を勉強しているのですか?」という質問を投げかけました。そこで多かったのは、「友達を作りたい」という答えでした。他にも、「世界の人とつながりたい」「外国にいる人とコミュニケーションをとりたい」という声も多く、最終的には、「人との繋がり」だと感じました。5年後、10年後に、アメリカでの生活を思い出したとき頭に浮かぶのは、「仕事で成果を出したとき」というよりは、現地の人と仲良くなり、日本に帰っても連絡が取れるような友達ができたことだと思うのです。なので、コミュニケーションの部分というのは非常に大切にしている部分です。
僕自身も、世界を旅行するようになって、英語のすごさに気づきました。ヨーロッパや東南アジアなどに行ったときに、英語が話せるというだけで、現地の方と仲良くなれてしまうのです。この前もバリに行ったときにツアーガイドの方と仲良くなり、家に連れて行ってくれたんです。観光ガイドでは教えてくれないようなバリの文化やスポットを教えてくれて、食事まで振舞ってくれました。
このようなあたたかい経験をしたときに、コミュニケーションだけでなく、世界中の人と人をつなげる英語のすごさに気づきました。もっともっと、日本に住んでいる人にも、自分が感じているこの楽しさや、感動に気づいて欲しいのです。日本に住んでいる人にも、英語が話せれば世界中の人々とつながることができるというメッセージをこれからも発信していきたいです。
7. 編集後記
今回のインタビューで淳さんが強調されていたのは、「自然な英語は人と人をつなぐ」ということです。HAPA英会話がもつ、他の英会話スクールとの大きな違いは、教科書通りの“正しい英語”だけではなく、形式に捉われない“口語的な英語”を学べるという点です。英語を話せるというだけで、新しい世界が広がり、出会える人の数も増えていきますが、「自然な英語」は、さらに人との距離を縮めてくれます。
また、お話の中で印象的だったのは、「教えることが大好き」と話す淳さんのパッションです。Youtube動画やポッドキャストからも伝わるように、自分自身が心から英語を教えることを楽しむ淳さんの前向きな姿勢を感じました。インタビュー中も終始笑顔で、インタビュー終了後も、「楽しかったです!」と答えてくれた淳さん。楽しむことを大切にする淳さんがつくるHAPA英会話だからこそ、英語学習者を楽しませ、継続させることができるのだと思います。
ポッドキャストの2,000万ダウンロードを記念して配信された淳さんのインタビューも大変面白い内容でした。英語学習を考えている方はぜひ、淳さんと一緒に、生きた英語を学んでみてはいかがでしょうか?
【参照サイト】Hapa英会話のウェブサイトを見る
English Hub 編集部
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