親の介護が始まった。通院の付き添い、ケアマネジャーとの打ち合わせ、夜の見守り。有給が尽きて、遅刻と早退が増える。上司に言いにくくなり、辞めることを考え始める。
この記事では、介護を理由に辞める前に使える制度を、条文や公的資料にもとづいて整理します。先に書いておくと、介護休業は「介護をする期間」ではなく「介護の体制を作る期間」として設計されています。この理解の違いで、使い方が変わります。
記載内容は2026年10月時点で、末尾に挙げた公的機関の資料にもとづいています。具体的な扱いは勤務先、ハローワーク、自治体に確認してください。
結論:辞める前に、制度で時間を買う
- 介護休業は対象家族1人につき通算93日、3回まで分割できる
- 介護休業給付は休業前の賃金の67%。無給で休むわけではない
- 介護休暇は対象家族が1人なら年5日、2人以上なら年10日。通院の付き添いに使える
- 93日は介護そのものをする期間ではなく、サービスを組んで体制を作る期間として使う
- 辞める場合でも、雇用保険の「特定理由離職者」に該当し得る
介護休業と介護休暇は別の制度
混同されやすい二つですが、使う場面が違います。
| 制度 | 介護休業 | 介護休暇 |
| 期間 | 対象家族1人につき通算93日 | 対象家族1人なら年5日、2人以上なら年10日 |
| 分割 | 3回まで | 日単位などで細かく取得できる |
| 使う場面 | 体制を作る、入退院や施設探しなどまとまった時間が必要なとき | 通院の付き添い、ケアマネジャーとの面談などの単発の用事 |
| 給付 | 介護休業給付(賃金の67%) | 賃金の扱いは会社の規定による |
大阪労働局の資料によれば、介護休業は対象家族1人につき3回まで、通算して93日、介護休暇は対象家族が1人以上の場合は年5日、2人以上の場合は年10日とされています。
対象家族の範囲
同資料によれば、対象家族は配偶者、父母、子、配偶者の父母、祖父母、兄弟姉妹、孫です。
見落とされやすいのが配偶者の父母です。義理の親の介護も対象に含まれます。
要介護状態の定義
同資料によれば、両制度に共通する要介護状態の定義は、介護保険の要介護度2以上であること、またはそれ以外で一定の要件を満たすこととされています。
つまり、要介護2未満でも一定の要件を満たせば対象になり得ます。認定が出ていない、あるいは要支援の段階でも、まず会社に確認してください。「認定が軽いから使えない」と自己判断で諦めてしまう人が多い部分です。
介護休業給付で何割入るか
ハローワークの資料によれば、介護休業給付金は同一の対象家族について通算93日を限度に3回までに限り支給され、支給額は原則として休業開始時賃金日額に支給日数を掛けた額の67%とされています。
- 申請は事業主を経由して行うのが一般的。会社の担当に手続きを確認する
- 休業期間中に賃金が支払われている場合は、支給額が調整されることがある
- 93日を3回に分けられるため、入院、退院後の調整、施設入所の準備など、節目ごとに分けて使える
3回に分割できる点は実務的に大きいです。93日を一度に使い切るのではなく、状況が動くたびに取る形にできます。
93日を何に使うか
ここが分かれ目です。93日で介護をしきろうとすると足りません。この期間は、自分がいなくても回る体制を作るために使ってください。
| やること | 内容 |
| 要介護認定の申請 | 市区町村の窓口または地域包括支援センターへ。認定が出ないとサービスが使えない |
| 地域包括支援センターへの相談 | 高齢者の介護の総合窓口。どのサービスがあるかを把握する |
| ケアマネジャーの選定 | ケアプランを作る役割。相性と連絡の取りやすさで選ぶ |
| サービスの組み立て | 訪問介護、デイサービス、ショートステイなどを平日の昼にどう入れるか |
| 自分の勤務時間との突き合わせ | サービスで埋まらない時間帯を洗い出し、会社に相談する内容を決める |
| 緊急時の連絡体制 | 自分が仕事中に何かあったとき、誰がどう動くかを決めておく |
5つ目を飛ばすと、復帰後に同じ状況に戻ります。「サービスで埋まらない時間帯がどこか」を数字で出してから会社に相談すると、短時間勤務や時差出勤の相談が具体的になります。
会社に相談できること
介護休業と介護休暇以外にも、育児・介護休業法にもとづく措置があります。就業規則で確認してください。
- 所定外労働の制限。残業を免除してもらう
- 時間外労働や深夜業の制限
- 短時間勤務、時差出勤、フレックスタイムなど、働く時間をずらす措置
- テレワーク。通院の付き添いの前後を在宅にできると負担が変わる
- 転勤の配慮。介護の状況を考慮するよう求める
3つ目は会社によって選べる措置が違います。「どの措置を用意しているか」を人事に直接聞いてください。就業規則に書かれていても運用されていない場合、逆に書かれていなくても個別の相談に応じる場合があります。
それでも辞めることになった場合
離職理由の扱い
ハローワークが示している特定理由離職者の範囲には、家族の事情に関わる項目が含まれています。該当するかどうかの判断はハローワークが行いますが、離職理由が離職票にどう書かれるかが実務上の起点になります。
- 退職の理由を会社に伝えるとき、家族の介護に伴うものであることを明記する
- 要介護認定の結果など、状況を示す書類を用意する
- 離職票を受け取ったら、離職理由の欄を必ず確認する
- 内容に認識の違いがある場合は、ハローワークで申し立てられる
辞めたあとの働き方
介護は期間が読めません。だからこそ、辞めたあとの働き方を考えるときは、時間と場所の自由度が高い形かどうかで見てください。
オンラインで完結しやすい仕事として、Webデザイン、ライティング、動画編集、Webマーケティング、オンラインアシスタントなどがあります。通院の付き添いやケアマネジャーとの面談が平日の昼に入っても、作業の時間を夜や早朝に動かせます。
ただし、学び始めてすぐに収入になるものではありません。介護休業中や、サービスが組めて少し余裕ができた時期に基礎を作る時間の設計になります。
学ぶ場としては、オンラインで複数の分野を横断して学べるスクールがあります。SHElikesは、Webデザインやライティング、マーケティングなどのコースを定額で受講できる形になっているため、どの方向が自分に合うか決めきれていない段階でも始めやすい設計です。
よくある質問
要介護認定が出ていなくても介護休業は使えますか
要介護状態の定義は、介護保険の要介護度2以上であること、またはそれ以外で一定の要件を満たすこととされています。認定が軽い、あるいは出ていない段階でも対象になり得るため、自己判断で諦めず会社に確認してください。
義理の親の介護でも対象になりますか
対象家族の範囲には配偶者の父母が含まれています。配偶者、父母、子、配偶者の父母、祖父母、兄弟姉妹、孫が対象です。
介護休業中の収入はどうなりますか
介護休業給付として、原則として休業開始時賃金日額に支給日数を掛けた額の67%が支給されます。同一の対象家族について通算93日を限度に3回までです。休業中に賃金が支払われている場合は調整されることがあります。
93日では介護が終わりません
93日は介護そのものをする期間ではなく、体制を作る期間として設計されています。要介護認定の申請、ケアマネジャーの選定、サービスの組み立てまでを進め、自分がいなくても回る形を作ってください。3回に分割できるため、状況が動く節目ごとに取る使い方もできます。
通院の付き添いだけなら何が使えますか
介護休暇が該当します。対象家族が1人以上の場合は年5日、2人以上の場合は年10日で、介護や病院への送迎等のその他の世話に使えます。取得の単位は会社の規定を確認してください。
まとめ
介護で辞めることを考え始めたら、まず制度で時間を買ってください。介護休業は対象家族1人につき通算93日、3回まで分割でき、介護休業給付として休業前の賃金の67%が支給されます。介護休暇は対象家族が1人なら年5日、2人以上なら年10日です。
対象家族には配偶者の父母も含まれます。要介護状態の定義は要介護度2以上、またはそれ以外で一定の要件を満たすこととされているため、認定が軽い段階でも諦めず確認してください。
93日の使い方が分かれ目です。介護そのものをする期間ではなく、要介護認定の申請、地域包括支援センターへの相談、ケアマネジャーの選定、サービスの組み立てまでを進め、自分がいなくても回る体制を作る期間として使ってください。そのうえで、サービスで埋まらない時間帯を数字にして会社に相談すると、短時間勤務や時差出勤の話が具体的になります。
それでも辞めることになった場合は、離職理由の記載を必ず確認してください。介護は期間が読めないため、次の働き方は時間と場所の自由度で選ぶ価値があります。
この記事で参照した資料
English Hub 編集部
最新記事 by English Hub 編集部 (全て見る)
- 妊娠悪阻で働けないとき、説明ではなく書面で措置を求める方法 - 2026年10月29日
- 切迫早産で退職を迫られたら、辞める前に確認する連絡カードと傷病手当金 - 2026年10月29日
- 更年期で仕事を辞めたいとき、重い時期に判断しないための選択肢 - 2026年10月28日
- 子どもの発達障害で仕事が続かないとき、2025年に広がった休暇と支援の窓口 - 2026年10月28日
- 子どもの不登校で仕事を辞める前に、試せる働き方と相談できる先 - 2026年10月28日


















