英語字幕で見ておきたい日本映画傑作選!日本文化を英語で語ろう!

2020年東京オリンピックを1年後に控え、英語で日本的な「おもてなし」をしようとする気運が高まっています。しかし、日本の文化を英語で伝えるためには、英語力だけでなく、自国の文化そのものの知識が求められるでしょう。

現代文化の一角として、日本映画は長年にわたって世界で広い支持を受けてきました。それらを英語字幕で見ることで、英語力を磨きながら日本文化を世界的な視点から見直すことができます。また、日本語のセリフを英語字幕とともに見ることで、日本語での発想をどのように英語に変換するかについて学ぶことも多いでしょう。

今回は、アメリカのCriterion社(※)によって英語字幕付きでblu-ray化されている作品をご紹介します。米国版blu-rayソフトは、日本と基準が同一なので、安心して国内盤プレーヤーで再生できます。Criterionの発売するソフトは映像・音声の見事なリマスターに加えて、英語字幕の質の高さと特典の豊富さでも高名です。特に、特典の一つであるパンフレットは、作品についてのエッセイやインタビューが満載なので、英語のテキストとしても楽しく活用できます。

※Criterionによるソフトは、アメリカのAmazon.comなどを経由することで購入可能です。また、日本のAmazon.co.jpで見つけられる場合もあります。
※Criterion版のblue-rayソフトに収録されている英語字幕は、日本語のセリフを訳したものに限られており、英語のセリフには字幕が付されていません。購入にあたってはご注意ください。

Seven Samurai(『七人の侍』1954)

グローバルな知名度において『七人の侍』を凌ぐ日本映画はないでしょう。アクションシーンでのスローモーションやマルチカメラ撮影など、当時の革新的技術を結集して作られた3時間の超大作です。「農民が山賊と戦うために、貧しい侍を雇う」というプロットはよく知られていますが、物語の底には黒澤明監督による反軍国主義が流れています。戦後日本はいかにあるべきか、という彼のコメントとしても見ることのできる大切な作品です。トランプ大統領らに代表されるように、世界各国でナショナリズムが支持を得ている現在だからこそ、いっそう学ぶことの多い映画でしょう。

Tokyo Story (『東京物語』1953)

『七人の侍』と並んで世界的評価が高いのが、小津安二郎の『東京物語』です。戦後の平和な日本を舞台として、老境の夫婦が成長した子どもたちを訪ねて旅をするという物語です。しかし作品をつらぬくのは、平和ではあってもモラルが欠けている人々への批判的視点です。日本を代表する大女優の原節子が鍵となる役を演じていることでも、今見直す価値は高められていると言えるでしょう。「昔の日本人は偉かった」という、よく見受けられるノスタルジアやナショナリズムへの否定としても、一見することをおすすめします。

Godzilla(『ゴジラ』1954)

2013年のハリウッド映画『パシフィック・リム』で “kaiju” という言葉が英語となっているのに驚いた方も多いでしょう。その元祖と言えるのが、1954年に公開された『ゴジラ』です。当時の「第5福竜丸事件」にインスパイアされて、核実験により眠りから覚めた怪獣が日本を襲う、というプロットが生まれました。最近では、Godzillaという名前に由来する “godzillion”(とてつもない数)という新語 もネイティブによって広く使われています。2014年にハリウッドでリメイクされ、続編の”Godzilla: King of the Monsters”も今年公開予定なので、あらためて日本発のオリジナルに立ち返ってみませんか?

Late Spring(『晩春』1949)

『東京物語』に加えて、小津安二郎と原節子のコンビで広く知られているのが『晩春』です。口うるさい親戚と、愛情あふれる父親にはさまれ、結婚すべきか悩む女性という、今でも共感を呼ぶテーマを扱っています。英語表記の看板など、占領下の日本の情景が詩情ゆたかに描かれており、父と娘が一緒に能を観劇するシーンは特に印象に残ります。さらに、謎めいた「壺のショット」は、 “The riddle of the vase” と呼ばれ、のちに様々な解釈を生むことになりました 。

このエッセイ (Abe Mark Nornes, “The Riddle of the Vase: Ozu Yasujiro’s Late Spring (1949)” ) は、 “ Japanese Cinema: Texts and Contexts” に収録されています。多彩な日本映画が、さまざまな視点から論じられており、各エッセイも10ページ前後と読みやすくまとまっています。

Merry Christmas Mr. Lawrence(『戦場のメリークリスマス』1983)

2016年に逝去したデビッド・ボウイが主演の、異色の日本映画が『戦場のメリークリスマス』です。戦中のアジアにおける日本軍の捕虜収容所を舞台として東洋と西洋文化が激しく対決するさまがドラマティックに描かれます。坂本龍一や北野武ら日本人俳優たちの英語による見事な演技も、英語学習者にとってお手本となるでしょう。また、自国の慣習にこだわるあまり、多文化的な視点や価値観に対して盲目となってしまう危険についても学ぶことができる作品です。

まとめ

以上、米Criterion社によって発売されている日本映画のなかから、日本の英語学習者がぜひ押さえておきたい作品をご紹介しました。最近では、アニメ・マンガ文化が世界を席巻していますが、クラシックな映画から学べることはまだまだ多くあります。世界で愛されている作品を、リマスターされた美しい映像で楽しみながら、日本語と英語について一考してみるのもいかがでしょうか?

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茂呂  宗仁

茨城県生まれ、東京在住。幼少期より洋画に親しみ、英語へのあこがれを抱くようになる。大学・大学院では英文学を専攻し、またメディア理論や応用言語学も勉強。学部時代より英米で論文発表も経験。留学経験なくして英検1級、TOEIC970、TOEFL109を取得。現在は英会話講師兼ライター・編集者として活動中。

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