洋書多読におすすめ!英語で読みたいスパイ・探偵小説9選

子どもの頃に、「スパイ」や「探偵」といった職業に憧れたことがある人が多いのではないでしょうか?「スパイ小説」や「探偵小説」のようなジャンルが人気であり続けるのも、私たちの中にある幼少期の淡い願望が関係しているのかもしれません。

今回は、ミステリーの中でも「スパイ」や「探偵」にフォーカスをあて、世界中で愛読されている作品をその著者とともにご紹介したいと思います。共感できるキャラクターや息をのむプロットを中心に展開される物語ばかりなので、洋書を数多くこなしたいという人にはうってつけのジャンルだと言えるでしょう。また、世界を股にかけた物語も多く、旅行・留学・赴任を控えた人や海外生活に興味のある人にもおすすめです!

Eric Ambler

エリック・アンブラー(1909-1998)は、多くの読者によって「英語圏における最高のサスペンス作家」や「現代政治スリラーの父祖」と見なされており、その功績から、大英帝国勲章を受賞した大作家です。主として、一般人がアマチュア探偵として活躍する物語を数多く執筆し、現代でも彼による作品の評価は高まるばかりです。ここでは、イギリスの権威ある出版社 the British Library により、2016年に “Classic Thrillers” の一環として再刊行された3作品をご紹介します。

Passage of Arms(1959)


武器の道』は、兵器の密輸や過激化するイスラムなど時代を先取りしたテーマで、再刊された今こそ読んでみたい1冊です。シンガポールやインドネシアなど東南アジアを舞台に、ゲリラによって放棄された大量の武器を見つけた男、利益をかすめとろうとする実業家、そして彼らの策謀に巻き込まれたアメリカ人夫婦たちをめぐる物語は、最後まで目が離せません。インドネシアは、バリ島などが人気のリゾート地となっていますが、その雰囲気を味わうにもおすすめの1冊です。

The Light of Day(1962)


エドガー賞を受賞した本作の主人公は、ギリシャに住むイギリス人のタクシー運転手です。金銭問題に悩まされている彼が、ある日出会った謎の客をカモにしようとし、逆に国際的犯罪集団の一員として働かされる羽目となります。主な舞台はトルコ、特にイスタンブールの名所である博物館「トプカプ宮殿」がキーとなる設定なので、イスタンブール旅行を考えているならばぜひ手にとってみましょう!

A Kind of Anger(1964)

本作の主人公は、抜群の知性を持ちながらも、事業の失敗によって憂鬱な日々を送っているジャーナリストです。スイスで勤務する彼が、亡命したイラク軍人の殺人事件に巻き込まれ、自らも命を狙われながらヨーロッパを股にかけて真犯人を追求します。「中東問題」という、まさに現在ニュースを賑わせているトピックを扱っており、出版から半世紀たった今でも読者を引きつけてやまない秀作です。

Ian Fleming

世界一有名なスパイ「ジェームズ・ボンド/007」の創作者であるイアン・フレミング(1908 – 1964)は、映画シリーズの歴史的成功もあいまって、世界的ベストセラー作家となりました。ボンドが活躍する彼の一連の作品には、今でも愛読者がいたるところに存在します。また、2020年の公開予定である25作目は、タイトルが “No Time to Die” に決定したようです。『カジノ・ロワイヤル』に始まるボンド小説の中でも、今回は「スペクター3部作(Spectre Trilogy)」と呼ばれる3作を見てみましょう。

Thunderball(1961)

国際的テロリスト集団「SPECTRE(スペクター)」、そして首領のエルンスト・スタヴロ・ブロフェルドが初登場するのが『サンダーボール作戦』です。SPECTREによって強奪されたNATOの核爆弾をめぐって、ボンドが奔走します。舞台はカリブ海で、スキューバダイビングの様子がいきいきと描かれているのが魅力です。トロピカルなリゾートへ想いを馳せている方には、旅のイメージを膨らませるのに役立ちそうです。

On Her Majesty’s Secret Service(1963)

再びSPECTREの陰謀がテーマとなる『女王陛下の007』ですが、ボンドが結婚する唯一のエピソードとしても人気のある作品です。本作では「生物兵器(biological weapon)」によるテロという、各国政府の脅威となっているテーマが扱われ、不安定な現代社会を生きる私たちにとっても一読に値するでしょう。著者フレミングの博識ぶりが垣間見れる1冊で、またスイスでのスキーチェイスのアクション描写は迫力満点です。映画版も名作なので、そちらもぜひ鑑賞しましょう!

You Only Live Twice(1964)

ブロフェルドとの最終的対決を描いた本作は、舞台が日本であることが最大の見所です。フレミングによる、当時の日本についての観察を楽しんでみましょう。『007は二度死ぬ』と訳されている本書ですが、オリジナルのタイトルは微妙にニュアンスが違うのが見て取れます。題名は “you only live once”(生きるのは一度だから、悔いのないように生きよ)という定番フレーズ(現代では頭文字をとった “YOLO” というスラングとして、若者を中心に多用されています)のもじりです。「YOLO」の精神で、フレミングの名作から多読を始めてみませんか?

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John le Carré

自身も「秘密情報部(SIS/MI6)」の一員として活動していた経歴のあるジョン・ル・カレ(1931 – )は、スパイ小説というジャンルを文学的レベルに高めた大御所です。多くの作品が映像化されていますが、近年では『ナイト・マネジャー』がAmazonプライムで人気を博しています。現在でも執筆活動はおとろえず、最新作 “Agent Running in the Field” は2019年10月に発売予定となり、ファンの間で期待が高まっています。ここでは、彼の数多い著書の中でも、ひときわ人気のある「Karla Trilogy」 (日本語では「スマイリー三部作」)をご紹介します。

Tinker Tailor Soldier Spy(1974)

「Karla Trilogy」の1冊目『ティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイ』は、2011年に映画版が『裏切りのサーカス』という邦題で公開され、一般読者のあいだでも知名度が高い作品です。英情報組織の上層部に潜入したソビエトの二重スパイ(double agent)を主人公のスマイリーが追いつめる、スリルと悲哀に満ちた名作です。「ソ連国家保安委員会(通称KGB)」のボスで、謎に包まれた宿敵「Karla(カーラ)」が初登場することもあり、必読の1冊と言えるでしょう。

The Honourable Schoolboy(1977)

3部作の第2作『スクールボーイ閣下』の主となる舞台は、中国返還前の香港です。カーラによって、ソビエトから香港、そして中国本土へと流される謎の資金のゆくえを求めて、東南アジアを奔走するイギリス人の若者が主人公です。2019年は、中国政府と香港の民主派のあいだで幾度となく衝突が続いていますが、両者の緊張関係の背後にある歴史を知るためにも適した1冊となっています。また、近年大きな問題となっている「マネーロンダリング」がテーマとして描かれた先駆的作品でもあります。

Smiley’s People(1979)

ロシアと欧米諸国のあいだで緊張が高まっている現在ですが、その背景を考えるためにも、KGBが敵国にスパイを送り込むメソッドを描きこんだ『スマイリーと仲間たち』は、興味のつきない1冊です。『ティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイ』で登場した顔ぶれが再結集し、英情報部とカーラの戦いのクライマックスが見られます。イギリス、ドイツ、スイスなどヨーロッパを股にかけた物語で、特にラスト近くで描かれる、冷戦時代の「ベルリンの壁」は読むものの記憶から離れないでしょう。3部作の有終の美をかざる、読み応えのある物語です。

まとめ

今回は、「スパイ小説」や「探偵小説」などから、名作をピックアップしてご紹介しました。どの作品も、物語としての面白さに加えて、観光名所として有名なロケーションが描写されていたり、現代の国際政治を考えるうえでヒントとなる背景が説明されていたりと、英語の学習をいっそう楽しめるものとする要素が満載です。エンターテイメントとしても、海外旅行のガイドとしても、国際ニュースの参考書としても、ぜひこれらの洋書を多読し、英語学習に活用してみましょう!

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茂呂  宗仁

茨城県生まれ、東京在住。幼少期より洋画に親しみ、英語へのあこがれを抱くようになる。大学・大学院では英文学を専攻し、またメディア理論や応用言語学も勉強。学部時代より英米で論文発表も経験。留学経験なくして英検1級、TOEIC970、TOEFL109を取得。現在は英会話講師兼ライター・編集者として活動中。

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