部活動の連帯責任、「部内のいじめ」は8割が大会辞退やむなし。一方で未成年喫煙は賛否が二分

高校の部活動では、一部の部員が問題を起こした際に、関与していない部員を含めた部全体が大会を辞退したり、対外試合禁止となったりする「連帯責任」の運用が長く続いてきました。近年はこの是非をめぐる議論が活発化し、日本学生野球協会は2025年4月施行の処分基準において、憲章違反をしていない部員に不利益を科すことは「不合理な処分である」と明記しています。

では、実際に世の中の人々は、どの事案までを「部全体の責任」と考えているのでしょうか。EnglishHubでは、全国の20代〜60代以上の男女400名を対象に、部活動の連帯責任に関する意識調査を実施しました。

調査結果のポイント

  • 「部内での後輩へのいじめ」は80.8%が「部全体の大会辞退もやむを得ない」と回答
  • 一方で未成年喫煙55.2%、未成年飲酒56.0%、万引き56.8%は、いずれも賛否がほぼ半々に分かれた
  • 人にけがをさせた「自転車の危険運転」は39.2%にとどまり、「大会規定で禁止された道具の使用」(72.2%)を33.0ポイント下回った
  • 問題を起こしたのが顧問・監督の場合、「部員を出場させるべき」は73.2%となり、部員の場合(35.2%)から38.0ポイント上昇
  • 連帯責任を「当然」と考える人は4.8%。「何人から部全体の問題か」も回答が分散し、共通の基準は見られなかった

合意がある事案と、意見が割れる事案

高校の部活動で一部の部員が問題を起こしたとき、「部全体が大会を辞退するのもやむを得ない」と思う事案をすべて選んでもらいました。

事案別に見た、部全体の大会辞退もやむを得ないと答えた割合の横棒グラフ
事案別「部全体が大会を辞退するのもやむを得ない」と答えた割合(複数選択)

最も多かったのは「部内での後輩へのいじめ」の80.8%、次いで「大会規定で禁止された道具の使用」が72.2%でした。いずれも7割を超えており、部全体の責任を問うことに広い合意があると言えます。

一方、最も低かったのは「遠征先での無断外出」の11.8%でした。同じ「部員の不祥事」でありながら、最上位のいじめとの差は69.0ポイントに達しています。

喫煙・飲酒・万引きは、賛否がほぼ半々

注目したいのは、上位2つの下に続く事案です。「飲食店での悪ふざけ動画の投稿」58.2%、「万引き」56.8%、「未成年飲酒」56.0%、「未成年喫煙」55.2%、「SNSでの他校への誹謗中傷」53.2%と、5つの事案が50%台に集中しました。

これらはいずれも、部全体が辞退すべきかどうかについて世論がほぼ半分に割れている状態です。報道でもたびたび取り上げられる未成年の喫煙ですら、44.8%は「部全体が辞退する必要はない」と考えています。さらに「定期テストでの集団カンニング」は46.5%と過半数を割りました。

つまり、社会的な合意がある事案は「部内でのいじめ」と「禁止された道具の使用」に限られ、その他の多くの事案では、部全体の辞退が妥当かどうかの共通見解が存在していません。

法に触れる行為より、大会の公平性

行為の重さと、辞退の支持率は一致していませんでした。「自転車の危険運転でけがをさせた」は39.2%にとどまり、実際に他人へ被害を与えた事案であるにもかかわらず、「大会規定で禁止された道具の使用」(72.2%)を33.0ポイント下回っています。「万引き」も56.8%で、道具の規定違反には及びませんでした。

支持率が高い上位2つに共通するのは、いずれも部活動そのものに関わる事案だという点です。いじめは部の人間関係の問題であり、禁止された道具の使用は大会の公平性を直接損ないます。部の外で起きた個人の行為は、たとえ法に触れるものであっても、部全体の責任とは切り離して捉えられる傾向が見られました。

顧問の不祥事なら、73.2%が「出場させるべき」

事案を起こしていない部員が大会に出られなくなることについては、「気の毒だが、チームである以上やむを得ない」が60.0%、「本人に責任はないので、出場させるべき」が35.2%、「チームの一員として、連帯責任は当然」が4.8%でした。

ところが、問題を起こしたのが部員ではなく顧問・監督だった場合、「出場させるべき」は73.2%へと上昇します。部員の場合と比べて38.0ポイントの差です。

部員の不祥事の場合と顧問・監督の不祥事の場合を比較した積み上げ棒グラフ
事案を起こしていない部員が大会に出られなくなることをどう思うか

この変化はほぼ一方通行でした。部員の場合は辞退を容認していたのに、顧問の場合は「出場させるべき」に転じた人が153名だったのに対し、その逆は5名にとどまります。

部員か顧問かで判断を変えた人数を比較した横棒グラフ
問題を起こしたのが「部員」か「顧問」かで判断を変えた人(実数)

この傾向は、子どもの部活動状況によってさらに強まります。子どもが現在運動部に所属している回答者では82.0%が「出場させるべき」と答え、子どもがいない回答者(71.5%)を10.5ポイント上回りました。

子どもの部活動状況別に見た、顧問の不祥事の際に部員を出場させるべきと答えた割合
顧問・監督の不祥事のとき「部員は出場させるべき」と答えた割合(子どもの部活動状況別)

指導者の責任を生徒に負わせることについては、立場を問わず強い抵抗があることが分かります。

「連帯責任は当然」と考える人は4.8%

今回の調査で、連帯責任を積極的に肯定した人は4.8%にとどまりました。多数を占めたのは「気の毒だが、やむを得ない」の60.0%です。連帯責任は、正しいものとして支持されているというより、割り切れなさを抱えたまま受け入れられている状況がうかがえます。

「何人から部全体の問題か」も割れた

何人が関わっていたら「一部の問題」ではなく「部全体の問題」だと感じるかについても、回答は分散しました。

何人から部全体の問題と感じるかの回答分布を示した横棒グラフ
何人が関わっていたら「部全体の問題」だと感じるか

「2〜3人から」23.8%、「1人でも部全体の問題」22.5%、「半数以上から」19.5%、「5人程度から」18.5%と、いずれも2割前後で並び、「何人であっても部全体の責任とは考えない」も15.8%を占めました。人数についての共通の基準は存在していません。

この点について、日本学生野球協会が2025年4月から施行した処分基準では、飲酒・喫煙を例に「部員全員」が関与した場合は対外試合禁止1か月、「数名が実施し部員の4分の1が同席」および「1名のみ」の場合は処分なしと、関与人数に応じた段階が示されています。今回の調査で最も多かった回答が「2〜3人から」であったことを踏まえると、競技団体が定めた基準は、世論の感覚とおおむね近い位置にあると言えそうです。

年代による違いは「いじめ」だけに現れた

年代別に見ると、多くの事案では統計的に有意な差は見られませんでしたが、「部内での後輩へのいじめ」だけは年代が上がるほど支持率が高くなりました(p=0.019)。

年代別に見た、部内のいじめで大会辞退もやむを得ないと答えた割合の横棒グラフ
年代別「部内での後輩へのいじめ」で大会辞退もやむを得ないと答えた割合

若い世代ほど、いじめであっても部全体の責任とは考えない傾向が見られます。なお性別、部活動経験、大会出場経験による差は、いずれの事案でも統計的に有意ではありませんでした。

自由回答から

自由記述の内容をキーワードで分類したところ、こちらから提示していないにもかかわらず29.8%が「連帯責任」という言葉を自分から使っていました。

自由回答に登場したテーマの出現率を示した横棒グラフ
自由回答に登場したテーマ

辞退に否定的な意見としては、次のような声が寄せられました。

法律では、個人の責任を他人に負わせることはないのに、なぜ部活動はこのような風潮が残っているのか不思議です。自分は悪いことをしていないのに大会に出れない理不尽さは、本人に心の傷を残してしまう(50代・男性)

不祥事を起こしたのが何人以上で大会出場停止など、ハッキリと人数を決めた方が良いと思います。たった一人が不祥事を起こしただけで連帯責任というのは、あまりにも可哀そうすぎる(40代・男性)

一方、辞退を容認する意見は、多くが教育や抑止という観点から述べられていました。

問題を起こしていない部員にとっては、出場できないのは残念だとは思います。しかし学校を代表しての出場なので、それなりの責任や自覚を持たないといけないのも事実だと思います(40代・男性)

発覚した者だけを罰するようにしてしまうと、同様の行動をしている者が他にもいたとしても、仲間を庇おうとして事実を隠す可能性が考えられます(40代・男性)

実際、自由記述で教育的な意義に言及した29名のうち、「出場させるべき」と答えたのは13.8%にとどまり、全体(35.2%)を大きく下回りました。

まとめ

本調査で明らかになったのは、部活動の連帯責任について一律の世論は存在しないという事実です。「部内でのいじめ」のように8割が辞退を認める事案がある一方、未成年の喫煙や飲酒、万引きでは賛否がほぼ半々に分かれ、問題を起こしたのが顧問・監督であれば7割以上が部員の出場を求めました。

連帯責任を「当然」と考える人はわずか4.8%です。それでも辞退が容認される場面があるのは、制度そのものが支持されているからではなく、事案の中身によって判断が変わるためだと考えられます。

学校や競技団体に求められるのは、不祥事の発生を一律に部全体の処分へ結びつける運用ではなく、「どのような事案か」「誰が起こしたか」「何人が関与したか」に応じた基準を明示し、それを事前に共有しておくことです。

調査概要

回答者の性別・年代・部活動経験の構成比を示した横棒グラフ
回答者の属性
調査名称 高校の部活動における連帯責任に関する意識調査
調査期間 2026年8月
調査対象 全国の20代〜60代以上の男女
有効回答数 400名
調査方法 インターネット調査(無記名式)
調査主体 EnglishHub(GRASグループ株式会社)

※構成比は小数点第2位を四捨五入しているため、合計が100%にならない場合があります。

引用について

本記事のデータ・画像・文章を引用する際には、必ず元記事である「EnglishHub」からの引用である旨をリンクつきで併記してください。

(例)引用元:EnglishHub「部活動の連帯責任、「部内のいじめ」は8割が大会辞退やむなし。一方で未成年喫煙は賛否が二分

参考文献

  • 公益財団法人日本学生野球協会 処分基準制定委員会「日本学生野球憲章違反行為に関する処分基準案」2024年12月2日 PDF
  • スポーツ庁「運動部活動の在り方に関する総合的なガイドライン」2018年3月 リンク