2017年度にノーベル文学賞を受賞したカズオ・イシグロは、日系人作家であることもあり日本でも広く翻訳が読まれています。『日の名残り』や『わたしを離さないで』など、映画化により話題となった作品の邦題を、誰もが一度は耳にしたことがあるのでないでしょうか。
今回は、そんなイシグロ作品の中から英語学習者ならぜひとも原著に目を通しておきたい5作品をご紹介します。どの作品もエンターテイメントとして楽しめるのみならず、偉大な作家による英語を吸収することによって、大きな学習の助けとなるでしょう。
A Pale View of Hills (1982)
イシグロのデビュー作『遠い山なみの光』は、彼の長編群のなかでも最も短く、読みやすく仕上っています。自伝的要素も強くあらわれている作品で、懐かしみのある日本の風景が端正な文章でつづられているのが魅力です。イシグロ入門としてもうってつけの作品と言えるでしょう。
An Artist of the Floating World (1986)
戦後の日本を舞台に、旧式な価値観にとらわれた浮世絵画家を描くのが『浮世の画家』です。『遠い山なみの光』と同じように日本を舞台とした作品で、学習者にとってもなじみやすい作品です。戦後日本の雰囲気が、英語を通して見事に再現されているのが最大の見所でしょう。英ガーディアン紙の100 Best Novels にも選出された名著です。
The Remains of the Day (1989)
ブッカー賞を受賞し、イシグロの作家としての地位を築いたエポックメイキングな作品が『日の名残り』です。1950年代のイギリスに始まる歴史小説ですが、「物語を語ること」とは何なのかを問いかける野心的な文学作品ともなっています。オスカー俳優のアンソニー・ホプキンス主演による1993年の映画版も見逃せません。
Never Let Me Go (2005)
さまざまなジャンルで執筆してきたイシグロですが、本作『わたしを離さないで』は、近年人気のディストピアSFとして書かれ、ブッカー賞候補ともなりました。謎めいた環境で育つティーンたち、そして彼らを待ち受ける残酷な運命が、読むものの胸を打つ秀作です。キーラ・ナイトレイ主演の映画版も大きな話題となりました。#MeTooムーブメントとあいまって、世界で旋風を巻き起こした米ドラマ『ハンドメイズ・テイル』などが楽しめた人には、お気に入りになること間違いなしでしょう。
The Buried Giant (2015)
2019年9月現在、イシグロの最新長編であるのが『忘れられた巨人』です。「ファンタジー小説」のスタイルがとられており、『ホビット』や『ゲーム・オブ・スローンズ』のファンなら強く惹かれることでしょう。その一方で、本作が問いかける「記憶」と「権力」の関係は、世界でナショナリズムやポピュリズムが台頭している今だからこそチェックしておきたいポイントです。
まとめ
ノーベル賞受賞によって、次回作への期待がますます高まるイシグロですが、今回は英語学習者にぜひ読んでもらいたい5冊をご紹介しました。「ノーベル賞作家」といっても、彼が書く英語そのものは平明で親しみやすく、また日本人に馴染みが深いテーマも幾度も取り上げられています。
2018年は、スキャンダルにより選考が見送られたノーベル文学賞ですが、2019年度は2作家が同時受賞となるようです。10月に発表をひかえた今だからこそぜひ、まだ最新受賞作家であるイシグロの英語に触れておきましょう。
【関連ページ】「洋書多読におすすめ!」記事一覧
【関連ページ】英語多読、何を読む?洋書選びに役立つサイト5選【保存版】
茂呂 宗仁
最新記事 by 茂呂 宗仁 (全て見る)
- 英会話教室への通学で挫折しないために心がけるべき5つのこと - 2019年11月28日
- 英会話教室に通学するモチベーションを保つ5つのコツ - 2019年11月5日
- 【映画に学ぶ英会話10】ハロウィンに見たい名作ホラー映画5選 - 2019年10月18日
- 「英会話教室は意味がない」は本当? スクールで効果を出す5つのコツ - 2019年10月12日
- 英会話教室・オンライン英会話で「話題がない」と悩む方へのおすすめトピック&気を付けたいNGトピック! - 2019年10月9日