洋書の多読は、英語学習のなかで重要なプロセスです。でも最初はどの本から始めればいいのか迷ってしまう人も多いのでないでしょうか。Amazonなどのオンラインサービスにより、わざわざ大規模な書店に行かなくても洋書が購入できるようになった一方で、ネット上では情報が多すぎて、どこを出発点にすればいいのか悩むこともあるでしょう。
今回は、自分の興味にあった本、英語学習に役立ちそうな本などを、効率的に見つけるためのサイトをご紹介します。情報があふれる時代だからこそ、便利なサイトを活用して無駄なく洋書選びをしてみましょう。
Goodreads
まずご紹介するのが、世界中の読書好きが交流するために作られたSNSの Goodreadsです。
2007年に立ち上げられた老舗のSNSで、Facebookのアカウントなどを通して簡単に登録することができます。いったんアカウントを作ったら、まずはこれまでに読んだことのある本を検索して “Read(読了済み)”と登録していきましょう。また、これから読みたい本は “Want to read” として登録してみてください。これを通して、どのような本が自分に向いているのかを、Goodreadsはサジェストしてくれます。(英語で書かれた本が主なので、日本語の本は英訳を探して登録してください。)
サイト上には、各本に対するユーザーによるレーティングが表示されており、原著の人気度を手っ取り早くチェックすることができます。加えて、一般読者によるレビューも英語で数多く記載されているので、それを読むだけでも英語の勉強になるでしょう。
また、このサイトの機能で見逃せないのが、ユーザーによって作成される本のリストです。「Listopia」というセクションに行くと、様々なテーマにそって作られたリストを探すことができます。ここで、英語学習者に役に立ちそうなリストをいくつか参照してみましょう。
- “Books Everyone Should Read At Least Once”
このリストには20,000冊近くの本が登録されており、ジャンルも多岐にわたります。「誰もが読むべき本」がテーマなので、世界的に知られた古典も数多く入っています。このリストに目を通せば、どのような本が英語圏で広く読まれているのかがすばやくチェックできます。 - “ Best Love Stories”
これはロマンス小説を中心にしたリストです。2019年1月現在、トップになっているのは、19世紀イギリス作家のジェーン・オースティンによる “Pride and Prejudice”で、英語圏における本書の根強い人気がうかがわれます。また『トワイライト』や『ブリジット・ジョーンズの日記』など、日本でも認知度の高い本の原著もランクインしているので、なじみのある作品のオリジナルを探してみるのも楽しいかもしれません。 - “Best Business Books”
ビジネス本に特化したのがこちらのリストです。デイル・カーネギーやマルコム・グラッドウェル、マイケル・ルイスのような、翻訳版を通して日本でも人気の著者による本が多数ランクインしているのが特徴です。世界中でどのようなビジネス書が注目を集めているのかをチェックするのに最適でしょう。
ALL-TIME 100 Novels
1923年に創刊された米タイム誌が、その創業年から2000年代までに出版された英語の小説を100冊厳選したのが ALL-TIME 100 Novelsです。主としてシリアスな文芸作品が多くみられますが、SFや探偵小説、グラフィック・ノベルなども盛り込まれており、多岐にわたるジャンルで優れた小説を一覧することができるリストになっています。
このリストの中で、日本人学習者にとって最もやさしく書かれているのが、C. S. Lewis著の “The Lion, the Witch and the Wardrobe” (邦題『ライオンと魔女』)でしょう。本書は、映画化されたことで日本でも知られている『ナルニア国物語』シリーズの第一巻にあたります。魔法の衣装ダンス(wardrobe)に入った4人の子どもたちが、ナルニア国に迷い込んでしまうファンタジー小説です。子どもの読者を対象に書かれている物語ですが、裏にはキリスト教のメッセージが盛り込まれており、大人にとっても読み応えのある作品になっています。
その他にも、私立探偵フィリップ・マーロウが主人公のハードボイルド小説 “The Big Sleep”(邦題『大いなる眠り』)や、南北戦争を背景としてスカーレット・オハラの波乱の人生を語る歴史小説 “Gone with the Wind” (邦題『風と共に去りぬ』)、人間の残虐性を明るみに出して激賞された “Lord of the Flies” (邦題『蝿の王』)など、多読をするならぜひ目を通しておきたい作品が満載です。高いクオリティの物語を味わいたい学習者にとっては、このリストは優れた羅針盤となってくれるでしょう。
The 100 best novels written in English
TIMEのリストと似たものに、英ガーディアン紙による The 100 best novels written in Englishというものがあります。文筆家・書評家として知られるRobert McCrum氏が2015年に作成したリストですが、20世紀以前の古典的作品も多く収録されているのが特徴です。
20世紀の作品については、TIMEのリストと重なる作品がいくつかあります。一方で、19世紀に書かれた作品がバランスよく選ばれているのがこちらの長所でしょう。19世紀には、新聞の連載小説としてエンターテイメント性の高い作品が書かれるようになり、現在でも読者を惹きつけるものが少なくありません。このリストには、以下のような作品が挙げられています。
- “Frankenstein” (邦題『フランケンシュタイン』)Mary Shelley著 (1818)
数多くの映像化を通して、“Frankenstein” はイギリス文学の中でも最もよく知られた本の一冊となっています。「科学を駆使した結果、モンスターを作り上げてしまう」という話は、人工知能や遺伝子工学などが急激に発達している現在だからこそ読む価値のあるテーマかもしれません。 - “Alice’s Adventures in Wonderland”(邦題『不思議の国のアリス』)Lewis Carroll著 (1865)
数学者として知られていたルイス・キャロルが、子供向けに著したのが本書です。ディズニーによる映画版も人気で、そちらを通してこの物語に触れた方も多いでしょう。主人公のアリスのみならず、「赤の女王」や「チェシャ猫」のような有名なキャラクターも本書で初登場するので、映画版が好きな方はぜひ手に取ってみてください。 - “The Sign of Four” (邦題『四つの署名』)Arthur Conan Doyle著 (1890)
近年は、人気俳優ベネディクト・カンバーバッチ主演のドラマ『シャーロック』が人気となり、コナン・ドイルによる原作に興味を持たれた方も多いことでしょう。”The Sign of Four” は、シャーロック・ホームズを主人公とした2作目の長編にあたります。第1作『緋色の研究』で始まったホームズと助手のワトソンの関係が深まりを見せる作品で、推理小説ファン必読となっています。
ピューリッツァー賞(Pulitzer Prize)
「ピューリッツァー賞」というと、日本では主にジャーナリズムに与えられる賞として知られていますが、小説や詩、戯曲などの文学作品も対象となっています。「全米図書協会賞 (National Book Award)」とならび、アメリカで最も権威のある文学賞となっています。
ピューリッツァー賞で押さえておきたいのは、フィクションのみならず、ノンフィクション部門もあることです。優れたノンフィクションの洋書を見つけたいときには、ピューリッツァー賞を受賞した作品から探してみるのがいいでしょう。先にご紹介したGoodreadsには、” Pulitzer Winners : General Non-fiction” というリストがあるので、人気のノンフィクション作品を見つけたいときに役に立ちます。
このリスト上で、日本の英語学習者ならチェックしておきたいのが、アメリカの歴史家 John W. Dower による “Embracing Defeat” (邦題『敗北を抱きしめて』)でしょう。第二次大戦後の日本をテーマにした本書は、それまで知られていなかった米軍占領下の日本文化をいきいきと描きだし、1999年の出版とともに日米でセンセーションとなりました。ダワーによる英文は美しく書かれており、歴史書にありがちな退屈さを全く感じさせない名著です。
マン・ブッカー賞(The Man Booker Prize)
最後にご紹介するのが、イギリスでもっとも権威のある文学賞である The Man Booker Prize です。
ブッカー賞を与えられた作品は、ほぼ必ず国際的ベストセラーになるほど有名です。受賞にまで至らなくても、“longlist” や “shortlist” 上に候補となるだけで、英語圏では大きな話題となります。2018年度は、グラフィック・ノベルやクライム・サスペンスといった、従来は考慮されなかったジャンルの作品が候補となり、本賞の広がりを見せた年となりました。
ブッカー賞受賞作も、Goodread上でリストとして簡単にチェックすることができます。以下では、ブッカー賞作品の中でも日本の英語学習者に特におすすめしたい本をいくつか取り上げたいと思います。
- “The Remains of the Day”(邦題『日の名残り』) Kazuo Ishiguro著(1989)
近年ノーベル文学賞を受賞した、日系人作家のカズオ・イシグロの出世作となったのが “The Remains of the Day” です。伝統に固執するあまり、自らの過ちに気づけないイギリス人執事の視点から書かれた本作は、アンソニー・ホプキンス主演で映画化されたことでも知られています。イシグロ作品はいずれも落ち着いた文体で書かれているので、手応えのある英文を楽しみたい方にはうってつけです。 -
“Life of Pi”(邦題『パイの物語』)Yann Martel著 (2001)
インド人の少年がトラとともに海を漂流するこの物語は、アン・リー監督による映画版が世界的ヒットとなったことで、日本でも広く知られています。映画はオリジナルに忠実ですが、原作には「あらゆる生き物が死ぬ島」など、映像化されていない冒険が数多く含まれています。映画版を楽しんだ方も、原著を読むことでいっそうのスリルを味わえるでしょう。 -
“The Narrow Road to the Deep North” (邦題『奥のほそ道』) Richard Flanagan著 (2014)
オーストラリア出身の著者による本作は、第二次大戦中の日本軍の捕虜収容所、そして後半は戦後の日本を舞台に話が展開します。収容所における連合軍捕虜たちの地獄のような生活や、戦後日本社会での元軍人の孤独などが深く印象に残る作品となっています。日本人でない作家が書いたとは信じられないほど、戦後日本の雰囲気を見事に再現しており、先にご紹介したジョン・ダワーの “Embracing Defeat” とあわせて読むといっそう楽しめる小説です。
まとめ
以上、洋書の多読をするにあたって本選びに便利なサイトをご紹介しました。学校で与えられるような教科書とは違って、「洋書多読」には自分でテキストを選べるという自由があり、そこが英語学習としても楽しめるプロセスです。お気に入りの映画や海外ドラマの原作から、ノーベル賞作家による文学作品まで、選択の余地は限りなく広がっていきます。ここでご紹介したサイトを通して、何度でも読み返したくなるような作品を探してみてください。
【関連ページ】「洋書多読におすすめ!」記事一覧
茂呂 宗仁
最新記事 by 茂呂 宗仁 (全て見る)
- 英会話教室への通学で挫折しないために心がけるべき5つのこと - 2019年11月28日
- 英会話教室に通学するモチベーションを保つ5つのコツ - 2019年11月5日
- 【映画に学ぶ英会話10】ハロウィンに見たい名作ホラー映画5選 - 2019年10月18日
- 「英会話教室は意味がない」は本当? スクールで効果を出す5つのコツ - 2019年10月12日
- 英会話教室・オンライン英会話で「話題がない」と悩む方へのおすすめトピック&気を付けたいNGトピック! - 2019年10月9日